弁護士過疎地域・稚内で3年半以上活動。地域のために幅広い分野に対応しています/池田慎介弁護士(稚内ひまわり基金法律事務所)
北海道出身で、2021年から弁護士過疎地域・稚内で活動されている池田先生。元々検察官になりたかったというお話、一時は塾講師になろうと思ったお話、弁護士過疎地域で働く魅力など、様々なお話をうかがいました。
弁護士を目指した理由とこれまでについて
これまでの経歴について教えてください。
出身は札幌市で、札幌南高校、北海道大学法学部、北海道大学法科大学院(ロースクール)を卒業して司法試験に合格しました。
2018年に弁護士になり、札幌市内の「すずらん基金法律事務所」に入所し、2021年4月に「稚内ひまわり基金法律事務所」の所長に就任しました。
「ひまわり基金法律事務所」というのはどういった事務所なのでしょうか?
弁護士が少ない又は一人もいない「弁護士過疎地域」と呼ばれる地域でも、いつでも、誰でも法的サービスを受けられるように、日本弁護士連合会等の支援を受けて開設・運営される公的な法律事務所です。
「稚内ひまわり基金法律事務所」は2008年に設立され、私は4代目所長として赴任しました。稚内市内には現在法律事務所が2つしかなく、まだまだ弁護士が足りていない状況です。
弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
元々は検察官になりたいと思っていたんです。なにか特別なきっかけがあったわけではありませんが、ドラマなどの影響もあって中学生の頃から憧れていました。
検察官になるため大学は法学部に進学したのですが、塾講師のアルバイトが楽しくて、大学時代は勉強よりアルバイトを熱心にやっていました。
検察官になるには、基本的に大学卒業後に法科大学院へ進学して、卒業後に司法試験に合格する必要があります。
ただ塾講師として就職したいという気持ちもわいてきて、大学卒業後は法科大学院には行かず塾講師のアルバイトを続けました。
ただ毎日働くようになり、社会人として生きていくにはきちんと法律を知り、自分や周囲の人達を守れるようになりたいと思うようになりました。
それで1年ほどアルバイトを続けた後、法科大学院へ進学しました。回り道のように見えるかもしれませんが、自分が納得いくまで塾講師を続けたことで未練なく次へ進むことができました。
最終的に弁護士になろうと決めたのはいつだったのでしょうか。
司法試験合格後です。合格後に約1年の研修期間があるのですが、その期間中に検察官になるのは難しそうだとわかりました。
ただ一方で、法科大学院の授業で弁護士過疎地域について知り、弁護士過疎地域で働いてみたいという想いもありました。
というのも、過去に弁護士過疎地域で働いていた弁護士が、とても生き生きと楽しそうに話しをされていたんです。
そして弁護士が少ない地域にも法的サービスを届け、地域の方に貢献できるというのは自分に合っているかもと思いました。
ですから検察官になるのが難しそうだとわかっても、すぐに気持ちを切り替えて「すずらん基金法律事務所」に入所しました。
「すずらん基金法律事務所」は、北海道内の弁護士過疎地域へ赴任する若手弁護士を1年から3年ほど養成する事務所です。私もそこで2年ちょっと養成を受けました。
養成期間を振り返って、いかがですか?
弁護士過疎地域へ所長として赴任することを前提にしているので、サポートしてくださる先輩弁護士が様々な分野の案件を回してくれたり、指導もしてくださいました。
弁護士としてのスキルだけでなく事務所経営についても学ぶ必要があり、大変でしたが短期間で大きく成長できたと思います。
いざ赴任するときは、どのような気持ちでしたか。
不安はありました。ただそれは、仮にあと数年養成を受けても同じだと思います。
実際弁護士過疎地域へ行かなければわからないことも多いですし、先輩弁護士も赴任時は不安だったと言っていました。そして「なんとかなる」とも言っていたので、その言葉を信じていました。
実際、完全に一人で放り出されるわけではなく、定期的に日本弁護士連合会の先輩弁護士とのミーティングがあったり、わからないことがあれば質問できる体制もあります。
ですから、「いざとなれば助けてもらえる」という安心感はありました。
すでに赴任して3年半以上経ちますが、振り返ってみていかがでしょうか?
やはり弁護士に対するニーズは大きいと実感します。
弁護士過疎地域だからといってトラブルが少ないわけではなく、人が暮らす場所には必ずトラブルが発生します。
特に北海道は面積が広く、他の地域へ相談に行くのは大変ですから、各地域に弁護士がいる意義を改めて感じました。
行政の委員などに選ばれることも多く、そういった意味でも地域に弁護士がいる重要性を感じますね。
現在の業務について
注力している分野を教えてください。
そもそも弁護士が少ないので、どのような分野でも対応する必要があります。
結果的に債務整理や離婚が多いですが、事務所として特定の分野に注力することはありません。
弁護士として、どういったことを大切にされていますか?
依頼者のお話をよく聴き、お気持ちに寄り添い、できるだけ依頼者の希望を叶えることは、もちろん大切にしています。
それに加えて、バランスを取るということも大切にしています。
感情的な対立が激しいケースも多いですが、相手を必要以上に責めたり攻撃することで、トラブルが大きくなったり解決まで時間がかかることも多いです。
また、私が依頼者と一緒に感情的になってしまうと専門家としての客観的視点が持てなくなり、視野も狭くなります。
ですから、私自身もバランスを保ち、ケースごとにバランスの取れた解決を目指すように心がけています。
先生の強みや事務所の特徴を教えてください。
自分で「ここが強みです」と言うのは難しいですが、「話しやすい」と言っていただくことは多いです。
弁護士に相談するのは敷居が高いというイメージがあって、弁護士が少ない地域では特にそうです。
緊張して相談にこられる方も多いですし、相談するかずっと悩んで電話してこられる方も多いです。
そういった方でも、相談が終わった頃には表情もほぐれ、「相談してよかったです」と言っていただけることが多いです。
改めて、弁護士過疎地域で働く魅力はどういったところでしょうか?
地域の法的サービスを担っているという責任感、使命感を感じられるところは大きいです。
また弁護士としてのキャリアを考えたとき、本当に色んな案件を経験できて、都市部では若手弁護士にはなかなか回ってこない案件でも裁判所から任せてもらえます。
特定の分野だけやりたいという方には向かないと思いますが、幅広い分野に対応できる力を付けたいという方には最適な場所だと思います。
生活環境に関しても、普通に生活する分には何も不自由はありません。
今後の目標など
今後の目標などを教えてください。
ひまわり基金法律事務所の所長は任期制で、私もいずれ後任に引き継ぐことになります。まずは地域に対する法的サービスが途切れないよう、きちんとバトンを渡したいと思います。
そして私自身の弁護士人生はまだまだ続きますから、弁護士過疎地域での経験を生かして今後も多くの方のお役に立ちたいと思っています。
弁護士過疎地域に関する問題には今後も関わっていきたいですね。
弁護士過疎地域で働きたいという弁護士が増えるように発信もしていきたいですし、よりスムーズに法的サービスを受けられる環境づくりにも関わりたいです。
たとえば北海道では、被疑者・被告人が留置されている場所まで接見にいくのに片道数時間ということも珍しくありません。
それでは弁護士の負担も大きく、弁護活動にも支障が出ます。ですからオンラインで接見できる制度も実現させたいと思っています。
相談を考えている方へ一言お願いします。
弁護士は話しにくそうとか、怒られそうというイメージをお持ちの方もいらっしゃいます。ただ実際はそんなことはありませんので、安心してご相談ください。
風邪を引いたり歯が痛かったら、お医者さんにいきますよね。それと同じ感覚で、ちょっとわからないことや不安なことがあれば、お気軽に弁護士にご相談ください。
弁護士情報
弁護士名:池田 慎介
所属弁護士会:旭川弁護士会
事務所名:稚内ひまわり基金法律事務所
事務所HP:https://wakkanai-himawari.com/
事務所住所:北海道稚内市大黒3丁目5番8号 マキノ第3ビル3階
経歴:
札幌市出身
札幌南高校卒業
北海道大学法学部卒業
北海道大学法科大学院修了
2018年 弁護士登録
2018年12月 すずらん基金法律事務所入所
2021年4月 稚内ひまわり基金法律事務所所長に就任
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