過払い金のデメリットは?種類や弁護士に依頼するメリットは?
【この記事の法律監修】
杉浦 正規弁護士(愛知県弁護士会)
西山・下出法律事務所
過払い金返還請求はいわば、自分のお金を取り戻す取り組みなので、過払い金があるすべての人は返還請求をしたほうがよい、といえます。
ところが借主(債務者)が貸主(債権者)に過払い金の返還請求をするとデメリットを被ることがあり、それで躊躇(ちゅうちょ)してしまうことがあります。
しかし借主が弁護士の力を借りれば、過払い金返還請求のデメリットを極力減らして、メリットを増やすことができるかもしれません。この記事では、過払い金返還請求で借主にデメリットが生じるメカニズムを解説したうえで、弁護士に依頼することで得られるメリットを紹介します。
過払い金とは、返還請求とは
まずは、そもそも過払い金とは何か、返還請求とはどのような取り組みなのか、を解説します。
過払い金は払い過ぎた借金の利息
本稿では、消費者金融などの貸金業者から借りたお金も、クレジットカードでの買い物も、銀行のローンもすべて「借金」と呼びます。お金を借りた借主は、お金を貸した貸主に対して将来のいつかの時点で元金に利息を加えて返済しなければいけません。
借金の貸主が利息を徴収すること自体は違法ではありませんが、利息の上限額は法律で定められていて、それを超える利息を徴収すると違法になります。。すでに支払ってしまった、違法部分の利息(徴収し過ぎた利息)のことを過払い金といいます。
つまり過払い金は「法律的に自分(借主)のお金」ということができるのです。
なお利息の上限は利息制限法という法律で定められていて、その利率は年利15〜20%です。
利息制限法 第一条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
なお元本とは元金(借りたお金の額)のことです。
自分のお金でも自分の手で取り戻さないといけないから返還請求が必要になる
残念ながら、過払い金がみつかっても自動的に借主のところに戻ってくるわけではありません。借主が過払い金を取り戻すには、貸主に対して「返還するように」と要請する必要があり、これが過払い金返還請求になります。
過払い金返還請求をする借主にデメリットが生じる理由
ここまでの説明で、次の疑問が生じると思います。
- なぜ過払い金返還請求をした借主にデメリットが生じるのか
過払い金は借主のお金なのだから、それを取り返す過払い金返還請求によってデメリットが生じるのは正しくないように感じます。しかし実際は次のようなデメリットが生じる可能性があるのです。
- 過払い金返還請求をした借主に生じるデメリット
- ブラックリストに載る可能性がある
- 消費者金融やクレジットカード、ローンなどを利用できなくなる可能性がある
- 生活保護が受けられなくなる可能性がある
- 家族や会社が知る可能性がある
- 全額返還される保証はない
どれも重要な内容なので1つずつ解説します。
1.ブラックリストに載る可能性がある
よく「クレジットカードの返済が滞るとブラックリストに載る」と言われることがありますが、同じことが過払い金返還請求を行なった借主に起きることがあります。
ブラックリストは俗称で、正確には「信用情報機関に事故情報として記録されること」です。事故情報とは、借金の返済が遅れたり(返済遅延)、未払い(滞納)が発生したりすることを指します。
貸金業者、消費者金融、住宅ローン業者、クレジットカード会社、銀行などの金融機関は、借金の情報を集めて管理している信用情報機関から情報を得ています。金融機関は信用情報機関からの情報を元に、借金の申し込みをする人の信用度を把握して、お金を貸すかどうか決めるわけです。そしてブラックリストに載っている人には、お金を貸しません。
過払い金返還請求は事故情報になりうるので、ブラックリストに載る可能性があります。
補足説明:借金完済の前と後で対応が異なる
過払い金返還請求をしても、必ずブラックリストに載るわけではありません。金融庁は「過払い金は貸金業者が自主的に返還すべきものであるから、信用情報機関に載せる情報ではない」との見解を示しているからです。そのため、信用情報機関はすでに完済した借金については、過払い金返還請求があってもその記録は残していない、という見方があります。
ただ、借金の返済中に過払い金返還請求を行うと、ブラックリストに載るとされています。借金の返済中に過払い金返還請求を行なうと、債務整理をしているとみなされ、これが事故になるからです。
2.消費者金融やクレジットカード、ローンを利用できなくなる可能性がある
ブラックリストに過払い金返還請求の情報が載ってしまうと、新たに消費者金融から借金できなくなるでしょう。消費者金融は返済遅延や滞納といった事故の記録を持つ人にお金を貸しません。同じことはクレジットカードや銀行のローンについてもいえ、これらを使えなくなる可能性があります。
また、ブラックリストに過払い金返還請求の情報が載らなくても、系列の金融機関を利用できなくなる可能性があります。例えば、クレジットカード会社A社に過払い金返還請求を行なった場合、A社の系列の銀行のローンや、A社の系列の消費者金融の融資を利用できなくなります。これはA社への過払い金返還請求の記録が、A社の系列のすべての金融機関で共有されるためです。
補足説明:ここまでの解説の整理
ブラックリストと系列の金融機関内の記録共有の説明が少し複雑になったので、上記の「1.ブラックリストに載る可能性がある」と「2. 消費者金融やクレジットカード、ローンを利用できなくなる可能性がある」の内容を整理しておきます。
完済後の借金の過払い金返還請求 |
事故としてブラックリストに載る可能性が低い |
返済中の借金の過払い金返還請求 |
事故としてブラックリストに載る可能性が高い |
ブラックリストに載ると |
信用情報機関を通じ、ほぼすべての金融機関に事故情報が共有され、新たな借金ができなくなる |
ブラックリストに載らなくても |
それでも系列の消費者金融、クレジットカード会社、銀行には情報が共有され、これらを使えなくなる可能性がある |
3.生活保護が受けられなくなる可能性がある
生活保護を受けている人でも過払い金返還請求はできますが、その結果、受給している保護費が減額されたり、生活保護が受けられなくなったりすることがあります。
保護費の減額や打ち切りは深刻な事態を招く恐れがあるので詳しく解説します。
3-1.過払い金返還請求で得たお金は収入とみなされる
生活保護制度は、生活困窮者に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障するもので、具体的には保護費を支給します。そして保護費の額は、最低限度の生活を送るために必要な額「最低生活費」をベースに算出されます。保護費と最低生活費の関係は以下のとおり。
- 最低生活費=保護費+収入
- 保護費=最低生活費-収入
上記の2つの計算式は同じ内容です。最低生活費は、保護費と受給者の収入で構成されるので、保護費は最低生活費から収入を差し引いた額になります。過払い金返還請求で得たお金も、この収入に該当します。
厚生労働省は「厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入を差し引いた差額を保護費として支給」する、と述べています。
3-2.オーバーした分を自治体に返還する
生活保護法第六十三条は次のように規定しています。
生活保護法第六十三条
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
この条文を要約すると、最低生活費をオーバーするお金を得たら、オーバーした分を自治体(生活保護を実施する機関)に返還しなければならない、となります。
最低生活費として保護費の支給を受けながら、さらに過払い金返還請求でお金を得てしまったら、受給者(被保護者)は最低生活費をオーバーするお金を得てしまうことになります。したがってオーバーした分を返還しなければなりません。それで事実上、保護費が減額されるわけです。
3-3.過払い金返還請求で生活保護が打ち切られるケース
生活保護には停止と廃止という仕組みがあります。停止は生活保護受給者でありながら保護費が受けられない状態であり、廃止は生活保護受給者でなくなる状態です。停止と廃止のルールは次のように定められています。
生活保護法第二十六条
保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。第二十八条第五項又は第六十二条第三項の規定により保護の停止又は廃止をするときも、同様とする。
この内容を過払い金返還請求について当てはめてみると、貸主が借主に返還したお金があまりに多く、借主(ここでは生活保護受給者、被保護者)がそのお金だけで最低限度の生活以上の生活を送れるようになれば、停止または廃止となるわけです。
3-4.過払い金返還請求を行うことを自治体の担当者に知らせましょう
生活保護を受けている借主が過払い金の返還を受けたら、自治体の担当者などに報告しなければなりません。過払い金の返還を受けながら、これまでと同額の保護費を受け取っていると不正受給とみなされる可能性があります。
そして不正受給が発覚すると、不正受給とみなされた額を返還するだけでなくペナルティも課されます。
生活保護法第七十八条第一項
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。
上記の条文の「徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収する」がペナルティになります。例えば、10万円分の過払い金が返還されたのにそれを隠し、その後発覚して保護費10万円の不正受給が認定されたら、最高14万円(=10万円×1.40)を徴収されます。
過払い金がみつかったら、返還請求に取りかかる前に自治体の担当者に相談、報告したほうがよいでしょう。
4.家族や会社が知る可能性がある
借主が借金の存在を家族や会社の同僚などに知られたくない場合、過払い金返還請求を実施すると知られてしまうかもしれません。もちろん借主が秘密裏に動けば、家族や会社の人が過払い金返還請求のことも借金も知る由はありません。しかし過払い金返還請求を行うにはさまざまな手続や行動が必要になるので、隠しとおすことが難しくなるのです。
また、貸主に悪意があれば、過払い金返還請求をされた腹いせに、借主の家や会社にわざと電話をかけてくるかもしれません。家族や会社の人に借金の存在を知られたくない人は、弁護士に依頼するとよいでしょう。弁護士に依頼すれば、各種手続きも貸主との交渉も弁護士が行うので、借主は過払い金返還請求中も「普通の生活」を送ることができます。
5.全額返還される保証はない
過払い金返還請求を行なっても、そして請求がとおっても、過払い金の一部しか返還されないことがあります。その場合借主は「一部でも返還されてよかった」と思うこともできますが、「わざわざ過払い金返還請求をしたのに全額返還されないのはおかしい」と感じるかもしれません。
全額返還されないことが起こりうるのは、貸主が借主の主張する過払い金の額より少ない額を主張するからです。貸主は、自社が算出した額こそ正しい過払い金の額であり、この金額であれば返還すると主張するでしょう。
このようなケースで借主に弁護士がついていると力強いでしょう。弁護士なら正しい方法で過払い金の額を算出しますし、貸主の計算方法が間違っていればそれを指摘できます。つまり借主が弁護士に依頼すると、返還されるお金が多くなる可能性があります。
デメリットがあっても過払い金返還請求は「したほうがよい」といえる理由
「デメリットがあるなら過払い金返還請求はしないほうがよいのか」と感じるでしょうか。そうではありません。
次の4つの理由から、借主に、デメリットを克服してでも過払い金返還請求に取り組むことをおすすめします。
- 過払い金返還請求は「したほうがよい」といえる理由
- 自分のお金を取り戻すのは当然のことだから
- 存在しないと思っていたお金を得ることができる経済的メリットがあるから
- 返済の負担が減るから(返済中の場合)
- 正義を貫くことができるから
1つずつ確認していきます。
1.自分のお金を取り戻すのは当然のことだから
過払い金は、貸主が法律に反して徴収してしまったお金です。つまり本来は貸主が持っていてはいけないお金であり、つまり過払い金は借主のお金です。
自分のお金が他人の手元にある状態が過払い金なので、それを取り戻す取り組みである過払い金返還請求は、借主が当然取るべき行動といえます。
2.存在しないと思っていたお金を得ることができる経済的メリットがあるから
過払い金は借主自身のお金なので「本来は」それが返還されても経済的なメリットが生じるわけではありません。しかし「心理的には」経済的なメリットが生じたように感じるでしょう。
過払い金を獲得できた人のなかには「まさか過払い金があるとは思っていなかった」という人がいます。借主が念のため弁護士に依頼して調べてもらったところ、過払い金がみつかり、返還請求をしたら実際にお金が戻ってきた、ということが起きています。
存在しないと思っていたお金が得ることができたとき、たとえそれが自分のお金が戻ってきただけでも臨時収入のように感じるでしょう。
3.返済の負担が減るから(返済中の場合)
返済中の借金についても過払い金返還請求ができます。過払い金返還請求の結果、過払い金の存在が確定されれば、その分だけ今返済中の借金の負担が減ります。
過払い金返還請求には、返済の負担を減らす効果も期待できるのです。
4.正義を貫くことができるから
悪意ある貸主は、違法な利息であると知りながら法外な利息を設定し、借主から不当な利息を取り続けていました。このようなケースで借主が過払い金返還請求をしないと、違法行為を見逃すことになり、結果として不正を容認することにつながります。したがって、返還請求を通じて過払い金を取り戻すことは、正義を貫く行為といえるでしょう。
また、貸主は過払い金を返還することで、法令を遵守する意識が高まる可能性もあります。貸金業は、我が国の経済社会において重要な役割を担っていますが、これを悪用して過払い金が生まれました。したがって、借主が過払い金返還請求を行うことは、自分の権利を守るだけでなく、貸金業の健全な運営にも寄与するのです。
貸金業法第一条
この法律は、貸金業が我が国の経済社会において果たす役割にかんがみ、貸金業を営む者について登録制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うとともに、貸金業者の組織する団体を認可する制度を設け、その適正な活動を促進するほか、指定信用情報機関の制度を設けることにより、貸金業を営む者の業務の適正な運営の確保及び資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資することを目的とする。
弁護士に依頼するとデメリットが減ってメリットが増える理由
借主は弁護士に依頼することで、過払い金返還請求によって生じるデメリットを減らして、メリットを増やすことができます。弁護士が過払い金返還請求のなかで果たす役割には次のものがあります。
- 弁護士が過払い金返還請求のなかで果たす役割
- 取り戻せる金額を多くできる可能性がある
- 手続きをほぼすべて任せることができる
- 周囲に知らせず解決できる
この3つのことをメリットと感じることができた借主は、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
1.取り戻せる金額を多くできる可能性がある
過払い金の額は取引状況に応じて変わるため、借主が算出した額と貸主が算出した額が異なることがあります。そして貸主には返還する額を少なくしたいという心理が働くため、さまざまな理由をつけて過払い金の額を少なくしようとします。
借主に弁護士がついていれば、貸主の計算方法に間違いがあればそれを指摘することができます。その結果、借主が自分だけで貸主と交渉するより、弁護士に交渉を任せたほうが取り戻せる金額を多くできる確率が高くなるわけです。
弁護士に依頼すると、借主は弁護士費用を支払わなければなりませんが、それを差し引いても借主の手元に残るお金を多くできる可能性があります。
2.手続きをほぼすべて任せることができる
借主が弁護士を雇ったときから、過払い金返還請求に関わるほぼすべての手続き、交渉を任せることができます。借主は弁護士から交渉の状況などを聞いて、和解するかどうか決断するだけで済みます。
そして手続きをほぼすべて丸投げできるメリットは、貸主との和解交渉と、交渉不成立後に訴訟に移行したときに、特に感じることができるでしょう。和解交渉と訴訟の手続きは、やることが多く、複雑で、難解なものが含まれているので、弁護士を雇うメリットが得やすいのです。
3.周囲に知らせず解決できる
弁護士に依頼すると、借主は自分で動くことがほとんどなくなるので、家族や会社の人に「何かしている」ことを知られずに済む可能性が高いでしょう。また弁護士が介入すると、貸主が妨害行動や嫌がらせをしなくなることが期待でき、このことでも周囲に知られるリスクが減ります。
周囲に知られずに秘密裏に過払い金返還請求を行いたい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
過払い金返還請求をする人が知っておいたほうがよいこと
デメリットとまではいえないものの、過払い金返還請求をする借主に不利になりかねないことを3つ紹介します。
- 過払い金返還請求には時効がある
- 貸金業者が倒産してしまう可能性がある
- 自分で手続きすることは相当困難
1つずつ紹介します。
1.過払い金返還請求には時効がある
過払い金返還請求にも消滅時効があります。
消滅時効は、原則として、取引が終了した時点が起算点となりますが、令和2年4月1日の民法改正により、消滅時効の期間が変わりました。
すなわち、令和2年3月31日までに取引が終了した過払金については、改正前民法により、消滅時効は10年間となります。
他方で、令和2年4月1日以降に取引が終了した過払金については、改正民法により、消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間のいずれか早い方となります。
2.貸金業者が倒産してしまう可能性がある
「時効10年」と聞くと時間的な余裕があると思えるかもしれませんが、そうでもありません。なぜなら貸主が倒産してしまう可能性があるからです。例えば借金をした貸金業者が倒産してしまうと、過払い金を取り戻すことはかなり難しくなります。
過払い金は事実上借主のお金なので、過払い金は借主の債権であり、貸主の債務になります。したがって例えば貸主である貸金業者が倒産して法的整理が始まったら、借主は、過払い金分の額を配当として受け取ることができます。
しかし配当はすべての債権者に権利に応じて分配されるので、借主が受け取る分配が、過払い金の額より少なくなる可能性があります。しかもこの貸金業者は倒産するほど経営が悪化しているので、配当になる原資自体が少額になっているかもしれません。
このように貸主の倒産リスクを考えると、借主は過払い金返還請求を、貸主が存在しているうちに早く行なったほうがよいわけです。「時効は10年もあるからゆっくり着手しよう」と考えないほうが無難です。
3.自分で手続きすることは相当困難
過払い金返還請求の手続きは複雑です。借主が弁護士の力を借りず、自分だけで手続きすることは困難を極めるでしょう。特に貸主との交渉と訴訟はハードルが高くなります。
3-1.過払い金返還請求の流れ(手続き)
過払い金返還請求は次のように行っていきます。
- 貸主から取引履歴を取り寄せる
- 取引履歴から過払い金を算出する(引き直し計算を行う)
- 過払い金返還請求書を作成して貸主に送付する
- 貸主と和解交渉を行う
- 和解が成立しなかったら訴訟を起こす
借主が口頭や手紙、メールなどで貸主に「過払い金があると思うので返して欲しい」と伝えても、返還されることはないでしょう。借主はまず過払い金を算出して「この額が過払い金である」と示さなければなりません。そのためには借主は貸主から、過払い金の発生が疑われる借金の取引履歴を取り寄せる必要があります。
取引履歴には、いついくら借りて、いついくら返済したかが書かれてあります。借主はここから、利息制限法で規定された上限利息(年利15~20%)を上回る返済額をみつけ、過払い金の額を計算しなければなりません。これを引き直し計算といいます。
引き直し計算ができたら、過払い金返還請求書を作成して貸主に送付します。過払い金返還請求書には次の内容を書きます。
- 過払い金返還請求書に記載する内容
- 取引内容(いついくら借りて、いついくら返済しているのか)
- 引き直し計算の内容
- 過払い金の額(引き直し計算から算出された額)
- 過払い金の振り込み期日
- 振込先の口座情報
- 過払い金の返還がない場合、訴訟する意思があることの通知
ここまで行なってから、借主は貸主と交渉を行うのです。交渉ではまずは和解を目指します。借主が主張する額を貸主が支払う(返還する)と約束すれば和解が成立します。もしくは、貸主が主張する額を借主が了承しても和解成立です。
しかし貸主が、過払い金は存在しないと主張したり、過払い金の存在は認めても、借主が主張する額より著しく少ない額しか認めなかったりすることがあります。その場合は、借主は和解で解決をするか、訴訟をするかを選択することになります。
訴訟になれば手続きはさらに複雑になるでしょう。
3-2.貸主との交渉はリスクが高い
訴訟の前段階に、貸主との和解交渉があるわけですが、借主にとってこれが高いハードルになるのは貸主との力の差が大きいからです。貸主は何度も過払い金返還請求に関する和解交渉を経験していて「やり方」や「攻めどころ」「落としどころ」を心得ています。
そのため和解交渉のなかで貸主は、それなりに説得力がある根拠を示しながら和解額を提示するでしょう。その論拠を、初めて過払い金返還請求に臨む借主が、しかも独力で崩すことは簡単なことではありません。
つまり借主が独力で和解交渉をしてしまうと、貸主に言い負けてしまうリスクがあります。それは返還される額が少なくなることを意味します。
3-3.訴訟で不利になるかもしれない
和解交渉が不成立に終われば訴訟することになりますが、この段階に至っても弁護士に依頼しないとさらに不利になるかもしれません。
裁判官は、正しい主張をしたほうを勝たせます。そのため原告(ここでは借主)も被告(ここでは貸主)も裁判の口頭弁論のなかで、自身の主張の正しさを証拠を示しながら証明しなければなりません。
被告は、自身の弁護士の力を借りて、自分たちが行った引き直し計算の正しさを主張するでしょう。したがって原告は、被告の引き直し計算は正しくなく、自分が行った引き直し計算こそ正しいと証明しなければなりません。
判決によって過払い金が一応確定するわけですが、借主がその額に納得できなければ控訴することになり手続きは難しくなります。
まとめ
過払い金返還請求は、借主が自分でやろうとすると複雑で時間もかかります。弁護士に依頼すると手続きや交渉を一任できます。
弁護士に依頼すると費用がかかるわけですが、取り戻せる金額も高くなる可能性があるため結果的に手元に残るお金を多くできる確率が高まるのです。
また弁護士は、過払い金返還請求をする借主が受けるデメリットも熟知しています。弁護士はそのデメリットを減らす手段も持っています。
これだけのメリットがあるので、多くの借主が「過払い金があるかもしれない」と感じたときから弁護士に相談しているのです。
過払い金があるかもしれないと感じた場合は、消滅時効が成立してしまう前に、早めに弁護士に相談することをおすすめします。