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自己破産のデメリットとは?手続き中にできないことや家族への影響や、弁護士に依頼するメリットは?

【この記事の法律監修】  
北上 拓哉弁護士(三重弁護士会) 
弁護士法人決断サポート

「借金返済の見通しが立たないから自己破産を検討したい」「自己破産をしたらどのようなリスクがあるのか知りたい」「自己破産を弁護士に相談すべきか迷う」

自己破産は借金問題を解決する有効な手段の一つですが、このように漠然と不安を抱いている方は多いのではないでしょうか。自己破産にはいくつかのリスクがありますが、悪いイメージによる誤解が生まれやすいことも事実です。

本記事では、自己破産のデメリットについて、手続き中に制限される行為や家族への影響などに触れながら解説します。

この記事を読むことで、自己破産をすると起こり得るメリットデメリットを整理しながら自己破産への理解を進めることが可能です。自己破産に対する誤解を含めて不安な点を洗い出し、自身にとって最適な選択を検討することができます。

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1.自己破産とは?

自己破産とは、債務整理の一種で、裁判所に申し立てることで借金を帳消しにする手続きです。

自己破産は、破産法に規定される方法で進めます。問題なく手続きが進み、裁判所から免責許可決定(借金を免除する決定)が下りれば、借金の支払い義務がなくなるというものです。

借金がゼロになるという明確なメリットがありますが、さまざまなリスクを伴う手続きでもあります。

自己破産を検討する際は、起こり得るリスクを十分に把握した上で、自分にとって最適な選択をしなければなりません。

2.自己破産で起こる7つのデメリット

自己破産をすると起こり得るデメリットを7つ解説します。

2-1.官報に掲載される

自己破産をすると、官報に手続き内容や名前・住所などが掲載されます。

官報とは、国が発行する機関紙で、法令など政府が国民に広く知らせる事項が主に掲載されているものです。インターネット上で誰でも無料閲覧できるため、取引先や親族などが官報を見たならば、経済状況を知られる可能性があります。

しかし、一般の方が官報を見る機会はほぼ無いため、周囲に自己破産をしたことが官報によって知られてしまう可能性は低いでしょう。

2-2.財産を処分する必要がある

自己破産をする場合、一定以上の財産は処分(売却など)をして、債権者への配当に充てなければなりません。

処分する必要がある財産は次のとおりです。

  • 99万円を超える現金
  • 裁判所が換価対象として判断した資産価値があるもの

不動産や自動車などの高価な財産は、債務を精算するために換価対象となる可能性が高いです。また、処分財産には生命保険などの有価証券も含まれます。

ただし、すべての財産を処分しなければならないわけではありません。民事執行法131条各号には、差し押さえが禁止されている動産について規定があります。

民事執行法 第百三十一条

次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具

引用:e-Gov法令検索 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)

このように、家具・家電や衣類などの生活必需品は差し押さえられることがありません。また、差押禁止の財産について、他にも第131条2号〜14号に規定されています。

自己破産をしても、最低限の生活は保証されていることを理解しておきましょう。

2-3.職業や資格に制限が生まれる

自己破産の手続中は、一部の職業や資格に制限がかかります。

制限される職種は以下のとおりです。

  • 弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの士業
  • 警備員
  • 保険の外交員
  • 公証人
  • 賃金業
  • 古物商

また、会社の役員に就任している場合は、破産手続きが開始されると一度退任しなければなりません。

自分の職業が当てはまらなければ関係ないため、対象の職業がわからない場合は詳しい弁護士に確認してみることをおすすめいたします。

2-4.ブラックリストに登録される

自己破産をすると、信用情報機関に破産をしたという記録(事故情報)が登録されます。いわゆる「ブラックリスト」に登録される状態です。

ブラックリストの情報は5〜10年ほど残るため、この期間は新たな借入れをしたり、クレジットカードやローンを新たに契約したりすることは難しくなります。

これまで借入れや分割払いを頼って生活していた場合、事故情報が抹消されるまではかなりの苦労を強いられるでしょう。

2-5.保証人が借金を肩代わりしなければならない

自己破産をした場合、残った借金は保証人に請求されてしまいます。

保証人に経済的な余裕がなければ、破産が連鎖する事態になりかねません。相手の人生も狂わせることになり、築いてきた関係性が破綻することも考えられます。

家族や友人を保証人にしている場合、自己破産をすると多大な迷惑がかかることを把握しておかなければなりません。

2-6.郵便物が破産管財人に転送される

自己破産を「管財事件」という手続で進める場合、手続き中に送られる郵便物は

破産管財人に転送されて確認されます。

破産管財人とは、破産する人の財産などを管理・処分する権利を持つ人です。

郵便物の確認は、債権者や債権額に関する情報や、破産者の財産などを正確に把握し、破産手続を公正に終了させるために行われます。破産手続が終わるまでは、郵便物を直接受け取れないことを理解しておきましょう。

ちなみに、管財事件ではなく「同時廃止」という手続を使う場合は、そもそも破産管財人がつかないため、郵便物の転送もありません。

2-7.住居を自由に転移できなくなる

破産手続中は、自由に居住地を離れられなくなります。

そのため、引越しをする場合は、裁判所の許可を得なければなりません。

さらに、賃貸契約の家賃保証会社による保証審査に通らない可能性が高くなります。事故情報が信用情報機関に登録されている間は、家賃の支払い能力がないと判断され、保証を受けられないかもしれません。

この場合、連帯保証人による保証を受け入れてくれる物件を探す必要があります。

3.自己破産に関するよくある誤解

自己破産はマイナスなイメージが強いため、誤った認識をしてしまっている人も多いです。

ここでは、自己破産に関してよくある誤解について解説します。

3-1.選挙権がなくなる?

自己破産をすると選挙権を失うという認識は誤りです。

選挙権は憲法によって保障された権利であり、個人の経済状況によって失われるものではありません。

18歳以上の日本国民であれば、選挙権は平等に与えられているものであることを理解しておきましょう。

3-2.年金がもらえない?

自己破産をしても年金を受給できなくなることはありません。

年金は差し押さえが禁止されている債権です。自己破産の手続き中であっても受給が妨げられることはありません。

また、将来の年金が受け取れなくなる心配も不要です。

ただし、すでに受け取った年金については他の現金や預貯金と同じ扱いになるため、差し押さえられる可能性があります。

3-3.生活保護を受給できない?

生活保護の受給をしている場合でも、自己破産はできます。また、自己破産によって将来的に生活保護が受給できなくなることもありません。

生活保護は、憲法が定める健康で文化的な生活を保障するための制度であるため、自己破産の有無に関係なく生活に必要であれば受給できます。

3-4.自己破産したことが会社にばれる?

基本的に、自己破産をした事実が会社に知られることはありません。

自己破産の手続を管理するのは裁判所ですが、裁判所が勤務先に通知することはないからです。

ただし、次のような場合は会社に自己破産がばれる恐れがあります。

  • 会社から借入れ(給与の前借など)をしている
  • 官報をチェックする業種である
  • 自己破産によって資格制限を受ける職種である

このような場合は、あらかじめ会社に事情を説明することが望ましいでしょう。

しかし、自己破産の情報が会社に通達されることは基本的にないと言えます。

3-5.戸籍や住民票に記載される?

自己破産をしたとしても、戸籍や住民票に記載されることはありません。

戸籍や住民票に記載されるのは、住所や氏名といった、身分を示す基本的な個人情報だけです。破産歴の有無は身分にまつわる事項ではないため、戸籍や住民票に記載されることはありません。

また、本籍地の市町村が管理する「破産者名簿」の存在を気にする人がいるかもしれません。

しかし、自己破産の手続きが問題なく終了し、免責許可を得られれば破産者名簿に掲載されることはないため、心配は不要です。

3-6.配偶者の財産や子どもの進学に影響する?

自己破産をすることで家族に不利益が及ぶことは、基本的にないと言えます。

自己破産はあくまで債務者本人の借金を免除する手続きです。配偶者の財産が差し押さえられたり、子どもの進学や就職時に信用情報を見られたりする心配は必要ありません。

ただし、以下のような場合は、自己破産に家族を巻き込む可能性がある

  • 破産者名義の家に同居している
  • 車を共用している
  • 保証人になっている
  • 家族カードを利用している
  • 学資保険の契約をしている

生活を共にしている場合、自己破産をばれずに行うことは難しいでしょう。

4.自己破産中にできなくなること

自己破産の開始に伴い、できなくなることを解説します。

4-1.破産手続中

破産手続き中に制限されることを紹介します。なお、ここで挙げる事項は、手続きが終了すれば基本的に制限が無くなるものです。

4-1-1.一定の職業に就けなくなる

自己破産の手続き中は、一定の職業に就くことができなくなります。

対象の職業には、以下のようなものが挙げられます。

  • 弁護士や税理士などの士業
  • 警備員
  • 保険の外交員
  • 公証人
  • 賃金業
  • 古物商

ただし、これらの職業に一生就けなくなるわけではありません。職業の制限を受けるのは、裁判所への申立後から免責決定が確定するまでの期間だけです。

また、自己破産によって資格等が剥奪されることもありません。

4-1-2.裁判所の許可なく住居移転や海外渡航ができない

自己破産の手続き中は、住居移転や海外渡航が自由にできなくなります。

居住地を離れる場合は、裁判所の許可を受けなければなりません。これは、破産者との連絡が取れなくなり、手続きの進行が滞ることを防ぐためのルールです。

ただし、引越しや海外旅行が一生できなくなるわけではなく、破産手続きをしている期間にだけ発生する制限であることを理解しておきましょう。

4-1-3.自宅や自動車、高価な貴金属等を保有し続けられない

自己破産の手続きが開始すると、一定以上の価値がある財産は、処分(売却など)しなければなりません。

これは、財産を現金化することで、借金した相手である債権者への配当に充てる必要があるからです。

原則として、時価で20万円以上の財産は、処分対象となります(裁判所によって運用の差異があります)。そのため、次のようなものは一度手放す必要があるでしょう。

  • 自宅
  • 自動車
  • 高価な貴金属品(時計やアクセサリーなど)
  • ブランド品

生活に必要な最低限の資産以外は、自己破産中に保有し続けることは難しいと言えます。

4-1-4.一部の債権者を優先した返済ができない

自己破産をする場合、一部の債権者に優先的な返済をする行為はできません。

これは、特定の債権者に財産を与える行為をすると、その他の債権者が受け取る配当が減少し、債権者間の平等が害されるからです。

たとえば、友人や関係の深い債権者など、迷惑をかけたくない相手にだけ先に借金を返済したい場合があるでしょう。

しかしそのような行為は、否認対象行為として破産法で規定されているので注意が必要です。

参考:e-Gov法令検索 破産法(平成十六年法律第七十五号)

4-2.破産手続後

自己破産の手続きが終了後にも、自己破産の影響が出ることがあります。ここでは、破産手続きの後に制限される行為を解説します。

4-2-1.一定期間は新たな借入ができない

自己破産の手続きが終わった後、一定の期間は新たな借入ができません。

これは、信用情報機関に破産をしたという事故情報が記録されるからです。

借入れやローンの契約などは、返済能力が担保されていなければできません。ブラックリストに登録されている間は、返済能力について信用されていないということです。

事故情報の掲載期間は明確に定められているものではありませんが、5〜10年ほどは新たな借入れができないと考えていいでしょう。

4-2-2.賃貸物件に新たに入居できない

自己破産をした場合、賃貸物件を借りる際に不自由が発生することがあります。

多くの賃貸物件では、家賃保証会社の保証加入が必要です。この加入審査において、支払い能力を確かめるために信用情報をチェックする保証会社があります。

審査が厳しい会社であれば、事故情報を見られて保証加入できない可能性があるでしょう。

連帯保証人による保証が認められる物件を探さなければならないなど、賃貸物件の入居が思い通りに進まない事態になることが考えられます。

5.自己破産のメリットは?

ここまで説明したように、自己破産はさまざまなリスクを伴う手続きです。

しかし、自己破産はデメリットばかりではありません。

自己破産のわかりやすいメリットは、借金の支払い義務が全て免除されることです。借金の返済に追われる苦しみから解放され、落ち着いて生活の再建を考えながら人生をやり直せます。

また、財産を処分する必要はあるものの一定の財産は手元に残せるうえに、自己破産をしたからといって仕事を辞める必要もありません。

人生を仕切り直して再スタートしたい人にとっては、検討の価値が高い選択肢と言えます。

6.自己破産を弁護士に依頼すべき3つの理由

自己破産の手続きを弁護士に依頼するメリットを解説します。

6-1.催促・取り立てをストップできる

自己破産について弁護士に依頼をすれば、債権者からの催促や取り立てをストップできます。

これは、弁護士に依頼することで「受任通知」という債務整理の開始を知らせる通達が債権者に送られるからです。

受任通知は取り立てを止める法的な効力があるため、自己破産を開始すると、賃金業者や債券回収業者に対して催促を止めるように通達できます。

一方、依頼をせずに1人で進める場合は、受任通知を送ることができません。

催促や取り立てに悩まずに手続きを進められることが、弁護士に依頼をする大きな利点です。

6-2.複雑な手続きを一任できる

自己破産は裁判上で行う手続きです。

法的な手続きではさまざまな書類を準備する必要があり、自力ですべて進めようとするとかなりの労力を要します。

弁護士に依頼をすれば、複雑な手続きを一任できることが大きな利点です。

手続きの大部分を任せられれば、精神的な負担も軽減できます。自己破産に際しては、家族や関係者に謝罪するなど精神的に辛い場面もあるため、手続きに悩む時間は弁護士に任せてしまう方がいいでしょう。

6-3.最適な解決方法を提案してくれる

自己破産に関して弁護士に依頼をすれば、借金問題を解決するために最適な方法をアドバイスしてくれます。

そもそも、債務整理をして借金に向き合う方法は、自己破産以外にも選択肢があります。弁護士に依頼をすれば、自己破産の選択をすべきかどうかという段階から適切な判断をできることが大きな利点です。

自己破産の手続きにおいても、手続き方法や進め方で迷う場面はたくさんあるでしょう。債務整理に詳しい弁護士から専門的なアドバイスを受けることで、自分に合った適切な解決方法をスムーズに進められます。

7.自己破産を弁護士に依頼しない場合のデメリット

弁護士への依頼費用のことを考えると、破産手続きを自力で進めたいと思う人はいるでしょう。しかし、自己破産を自力で進める場合はいくつかのリスクを伴います。

7-1.手続きが上手くいかない場合がある

自己破産を自力で進めようとする場合、手続きが上手くいかなことが出てきます。

たとえば、債権者との交渉が必要な場面があるが、専門知識に基づいた主張をしなければ思いどおりに進めることは難しいでしょう。しかし、弁護士に依頼をしておけば、債権者などとの面談にも同席してサポートしてくれます。

その他の手続きも複雑なものが多いため、自己破産は自力で進めると判断を誤るリスクがあります。

7-2.あらゆる場面で時間がかかる

自己破産の手続きは複雑なものが多いため、自力で進めているとあらゆる場面で時間がかかってしまいます。

財産の処分や債権者との話し合いなど、逐一調べて悩みながら進めていては手続きが終わりません。

自己破産は人生の再スタートを切るための手続きとも言えるため、できる限りスムーズに進めて新たな生活の再建に労力をかけたいものです。自己破産をする際は、弁護士に手続きを一任して迅速な解決を図ることをおすすめします。

8.まとめ

自己破産は、財産を処分する必要があったりブラックリストに登録されたりと、いくつかのリスクを伴う手続きです。自己破産をすることで、引っ越しや新たな借入れを自由にできなくなるなどの制限が発生することがあります。

しかし、自己破産は「借金を帳消しにできる」という大きなメリットがあり、人生を再スタートさせたい人にとっては、検討の価値が高い選択肢です。

勤務先に知られたり家族を巻き込んだりするリスクも少ないため、自己破産で発生し得るリスクを落ち着いて整理し、自身に合った選択を検討しましょう。

自己破産の手続きは複雑なものが多く、債権者との交渉など専門知識が求められる場面があります。そのため、自己破産を検討する際は早めに弁護士に相談をして、アドバイスを受けることがおすすめです。

カケコムでは債務整理の実績が豊富な弁護士が多数在籍しているため、自己破産の検討段階から手続き・交渉までを安心して一任できます。自己破産を検討する場合はお早めにご相談ください。

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