生まれ育った人吉球磨地域のお困りごと・不幸を減らしたい。市役所職員から夢だった弁護士へ転身/中嶽修平弁護士(ひとよし法律事務所)
一度は公務員になったものの、夢を諦めきれず司法試験に挑戦したという中嶽先生。弁護士過疎地域でもある、生まれ育った人吉球磨地域に事務所を開設され、市民からの様々な相談に対応されています。
弁護士を目指した理由とこれまでについて
これまでの経歴について教えてください。
球磨郡水上村出身で、人吉高校、熊本大学法学部を卒業し、2004年に人吉市市役所に入庁しました。市役所では税務課に配属され、主に住民税、国民健康保険税、軽自動車税などの賦課事務を担当していました。
2008年に市役所を退職して大阪大学法科大学院に入学し、弁護士になったのは2013年です。
弁護士になってからは、まず福岡市の「あさかぜ基金法律事務所」で経験を積んだ後、2016年3月に「ひとよし法律事務所」を開設して現在にいたります。
元々市役所にお勤めだったのですね。弁護士になろうと思った時期などを教えてください。
なにか印象的な出来事があったわけではないのですが、幼い頃から弁護士に対する漠然とした憧れはありました。
私は覚えていないのですが、母が言うには、中学時代に皆の前でそれぞれ将来の夢を発表する機会があり、私は「弁護士になりたい」と言ったらしいんです。
それを聞いて周囲は笑ったそうですが、当時はそれくらい遠い世界の話だったのかもしれませんね。
本気で弁護士になりたいと思ったのは高校生の時で、そのために法学部に進学しました。
ところが当時は司法試験の合格率が今よりかなり低く、大学卒業後に何年も挑戦して合格するという人が多かったんです。しかも就職氷河期で、中途半端に司法試験に挑戦してから就職するのは非常に厳しい状況でした。
一方で公務員だった父は、私にも安定した公務員になるよう強く勧めていました。
また妹が二人いるので、私が親に頼って司法試験の勉強を続けるわけにはいかなかったんですね。
それで私は公務員志望に切り替えて、人吉市市役所に入庁しました。
一旦公務員になられてから、再び弁護士を目指されたのですか?
そうなんです。市役所で働いていると、市民に関する様々な情報を見聞きしますし、電話や窓口で直接お話を聞く機会もたくさんありました。
そういった経験を通じて、「困っている人がこんなにいるんだ」と痛感したんですね。これは、社会に出たからこそわかったことでした。
ところが人吉球磨地域には弁護士が2人しかおらず、相談したくてもできない人がたくさんいるんじゃないかと思ったんです。
そういった現状を目の当たりにする中で、夢だった弁護士になってお役に立ちたいという思いが再び湧き上がってきました。
ちょうどその頃は法科大学院制度ができたばかりで、弁護士になる間口が広がった時期でした。
「これなら弁護士になれるかもしれない」と思い、公務員2年目から法科大学院入学に向けて勉強を始めました。
そして大阪大学法科大学院に合格して、2008年に退職しました。
せっかく公務員になって仕事にも慣れたのに退職するというのは、かなり勇気のいる決断でした。
ただ一度きりの人生ですから、「悔いが残らないようにしたい」という気持ちのほうが強かったですね。
法科大学院には3年間通いましたが、国の援助で学費を捻出し、奨学金を借りて生活し、足りない分は親に援助してもらっていました。
公務員になることを勧めていたお父様は、法科大学院への進学に反対されませんでしたか?
最初はかなり驚いたようですが、周囲の人にも相談して、「息子がせっかく夢を叶えたいと言っているんだから応援してはどうか」と促されたようで、最終的には応援してくれました。
親の理解と援助がなければ弁護士になれなかったと思うので、今でも感謝しています。
弁護士になってから、まず福岡市内の法律事務所を選ばれた理由を教えてください。
地元人吉に事務所を構えたいと思っていましたが、弁護士として全く経験がない状態で独立するわけにはいきません。
そこで、まずは数年経験を積もうと思って「あさかぜ基金法律事務所」を選びました。
ここは弁護士過疎地域に赴任する弁護士を養成する事務所で、様々な支援を受けながら経験を積めるということで自分に合っていると思ったんです。
現在の業務について
注力している分野を教えてください。
弁護士自体が少ないので、それこそありとあらゆる困り事が寄せられます。
「この分野には力を入れていないので他に行ってください」ということでは、そもそも私がここにいる意味がないと思っています。
ですから特定の分野に偏らず、どんな相談でもお受けするようにしています。
私は町医者のような存在でありたいと思っているんです。
町医者のもとには様々な病気や体調不良の方が訪れ、治療できるものは対処します。しかし大きな病院で検査や手術が必要だと判断すれば、そうしてもらいますよね。
それと一緒で、私が対応できるものは対応し、難しいものは適切な弁護士へおつなぎする。その判断をすることも、地域の弁護士の大切な役目だと思っています。
事務所として、どういったことを大切にされていますか?
市民の方が相談しやすい事務所であること、市民に寄り添う事務所であること、そして市民のお困りごとや不幸を減らす事務所でありたいと思っています。
そのためには事務所でただ待っているだけでなく、まちづくりの活動に参加したり、元々所属していた消防団にOBとして顔を出したり、積極的に地域と関わるようにしています。
弁護士の相談料の相場は30分5,500円(税込)ですが、当事務所では30分2,200円(税込)にしているのも、「弁護士に相談すべきことなのかわからない」「ちょっと聞いてみたい」といった方でもご相談いただきやすいようにという理由です。
仕事や家庭の事情などで平日日中にご相談いただくことが難しい場合は、土日祝や夜間の相談にも対応しています。
地域に弁護士がいる意味というのは、どういったところだと思いますか?
やはり、近くで気軽に相談できるというところです。
たとえば、多くの弁護士がいる熊本市内まで相談に行こうと思えば、片道1時間半から2時間はかかりますし、交通費だけでも5,000円以上かかるでしょう。特にご高齢の方、病気をお持ちの方、小さなお子さんがいらっしゃる方などにとっては、そのハードルはかなり高いです。
その結果相談を諦めてしまい、トラブルに巻き込まれたり、トラブルが大きくなりかねません。ですから、地域に弁護士がいること自体に大きな意味があると思っています。
先生の強みや事務所の特徴を教えてください。
まずは弁護士として10年以上の経験があり、弁護士になった当初から弁護士過疎地域への赴任を見据えて目の前の案件に取り組んできたこと、そして人吉市に来てからも数多くの案件を解決してきたことで、見通しを立てたり様々な解決方法を提案できるところは強みです。
また行政関係の様々な役職も務めており行政と連携して問題を解決したり、農業委員会の委員も務めておりますので、農地に関する知識や経験も豊富です。
税理士、司法書士、不動産業者など、地域の様々な専門家、専門業者とも信頼できるネットワークがあることも強みですね。
私の事務所にご相談いただければ、なにかしら解決の糸口は見つかると思います。
公務員としての経験が弁護士業務に生きていると感じますか?
はい、もちろんです。
税務課に勤務していたので、税金関係の知識は豊富です。弁護士業務では税金が関係することも多く、解決方法によって翌年の税金や健康保険料が上がることもあります。そういった知識も踏まえてアドバイスや解決ができるところは強みですね。
また窓口対応もしていましたので、市民の方がどういう想いで日々暮らしていらっしゃるか、どういうお困りごとを抱えているか、直接聴くことができた経験も今に生きています。
先生が取り組んでいるIT化について教えてください。
LINEを使う方が多いので、依頼者とはLINEで連絡できるようにしています。またZoomなどを使ったオンライン相談にも対応しています。
他方、ITツールを使いこなせない方も少なくありませんので、そういった方も取り残さない事務所でありたいですね。
今後の目標など
今後の目標などを教えてください。
ライフワークとして、地元を少しでもよくしていきたいという想いがあります。そのために、市民の方や中小企業のお役に立てるよう貢献していきたいですね。
また、できるだけ長く事務所を続けることも地域貢献になると思います。
相談を考えている方へ一言お願いします。
ご相談いただいた結果、問題がないならそれに越したことはありません。また問題があったとしても、早めにご相談いただくことで早めに対処できます。
なにかお困りごとや不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
弁護士情報
弁護士名:中嶽 修平
所属弁護士会:熊本県弁護士会
事務所名:ひとよし法律事務所
事務所HP:https://hitoyoshilaw.wixsite.com/hitoyoshilaw
事務所住所:熊本県 人吉市上青井町140-29-202 アンビアンス青井
経歴:
1981年 球磨郡水上村に生まれる
2000年 人吉高校卒業
2000年 熊本大学法学部入学
2004年 熊本大学法学部卒業
2004年 人吉市市役所入庁(税務課配属)
2008年 人吉市市役所退職
2008年 大阪大学法科大学院入学
2011年 大阪大学法科大学院卒業
2012年 司法試験合格
2012年 第66期司法修習生(熊本配属)
2013年 福岡県弁護士会登録・あさかぜ基金法律事務所入所
2016年3月 ひとよし法律事務所開設
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