交通事故の過失割合【被害者側・加害者側】~適切な損害賠償額は?~
【この記事の法律監修】
加藤 孔明弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸カトウ法律事務所
交通事故に遭遇した際、「過失割合はどう決まるのだろう?」「相手から提示された過失割合に納得できない」と感じる方も多いのではないでしょうか。過失割合は損害賠償額に直接影響する重要な要素であり、その決定方法や交渉術を理解しておくことは非常に大切です。
本記事では、過失割合の基準や計算方法、追突事故や右折時の事故など具体的なケース別の過失割合の目安、そして過失割合交渉を有利に進めるためのポイントについて詳しく解説しています。
この記事を読むことで、被害者の方は適正な過失割合を主張し、納得のいく損害賠償を得るための知識を身につけることができます。加害者の方は自分の責任を正しく理解し、誠意ある対応を行うための指針を得られます。また、過失割合交渉のストレスや不安を軽減し、早期解決に向けた具体的な行動を知ることができます。
1.交通事故の過失割合とは?
ここでは、交通事故における過失割合の決定方法や、その基準について解説します。
1-1.過失割合を計算するための基準や計算の仕組み【双方】
過失割合の計算には、以下の基準を用います。
1-1-1.基本過失割合
実際に起こった事故について、過去の判例から類似する事故類型を参考に決められた過失割合を「基本過失割合」と言います。
例えば、「自動車とバイクが正面衝突した」、「信号で停止している車に追突した」といった事故類型に基づいて、「7:3」や「10:0」といった基本過失割合が設定されます。
1-1-2.修正要素(天候、道路状況、運転手の行動など)
基本過失割合はあくまで一般的な基準であり、個別の事情を考慮して過失割合を修正します。修正要素には以下のようなものがあります。
- 時間:夜間だったかどうか
- 天候:雨や雪などの天候状況
- 運転手の行動:飲酒運転、無免許運転、スマホの使用など
- 歩行者(被害者)の年齢等:幼児、児童、高齢者、身体障がい者等
1-1-3.過失割合の計算
基本過失割合に修正要素を加味して、「+5%」や「-20%」といった加算・減算を行い、最終的な過失割合を計算します。たとえば、基本過失割合が「8:2」であっても、修正要素により「75:25」となる場合があります。
1-2.事故発生から過失割合が確定するまでの一般的な手続きや流れ【双方】
ここでは、事故発生から過失割合が確定するまでの一般的な流れを解説します。
1-2-1.事故状況を確認し、お互いの認識を一致させる。
まずは、事故の状況を正確に把握するため、次のような内容を確認します。
- 事故の当時の信号の色
- 右左折の合図を出していたか
- 左右確認していたか
- 一時停止したか
- 走行速度(徐行or速度違反)
認識の違いがあれば、ドライブレコーダーの映像、現場写真、警察の実況見分調書、当事者・目撃者の証言などから事故当時の状況を確認します。
1-2-2.過失割合を計算する
事故状況の認識が一致すれば、過去の判例に基づいて基本過失割合を決定し、修正要素を考慮して最終的な過失割合を計算します。
1-2-3.当事者同士が過失割合について合意する
最終的な過失割合について当事者同士で話し合い、納得して合意すれば過失割合が決定します。合意できない場合は、調停や裁判によって解決を図ります。
1-3.運転者の責任と道路交通法の基本【双方】
自動車・バイクなどの運転者は、道路交通法に基づき安全運転の義務を負っているため、道路交通法に違反している行動があれば、過失割合の計算に大きく影響します。
たとえば車間距離の保持、右折時の優先順位については下記の条文で規定されています。
道路交通法 第二十六条
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
引用:e-Gov法令検索 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)
道路交通法 第三十七条
車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。
引用:e-Gov法令検索 道路交通法(昭和三五年法律第百五号)
次の項目では、これらの条文に違反してしまった、追突や右折などの特殊な事故ケースでの過失割合について解説します。
1-4.追突、右折、自転車・歩行者などの事故ケースにおける過失割合の基準【双方】
特殊な事故ケースにおける過失割合は、次のとおりです。
1-4-1.追突事故の場合
追突事故の過失割合は、基本的に10(加害者):0(被害者)です。これは、後続車が前方車両との車間距離を適切に保っていなかったと判断されるためです。
具体的には、次のようなケースです。
- 赤信号で停車中に後ろから追突された
- 故障で路肩に停車していたところに追突された
- 歩行者のために一時停止した際に追突された
被害者にも過失がある場合(例:急ブレーキ、駐停車禁止エリアでの停車など)は、過失割合が変更される可能性があります。
1-4-2.右折時の事故(右直事故)の場合
交差点において起こる、右折車と直進車の事故は右直(うちょく)事故と呼ばれ、正面衝突に次ぐ危険な事故形態です。右折車は直進車の進行を妨げてはならないため、基本過失割合は8(右折車):2(直進車)とされています。
ただし、右折車が既に右折を開始していた場合や、直進車が速度超過や信号無視をしていた場合には、直進車の過失割合が増加する可能性があります。
1-4-3.左折時に自転車を巻き込んだ交通事故の場合
自動車と自転車が接触事故を起こした場合、道路交通法上はどちらも「車両」扱いですが、基本的には自動車の過失割合が大きく評価されます。これは、自動車の方が大きくスピードも出て危険なため、運転中の責任が重いと考えられるからです。
たとえば、自動車が左折する際に自転車を巻き込んでしまった場合の基本過失割合は、10(自動車):0(自転車)。自動車が先行していて左折中に自転車を巻き込んだ場合でも、9(自動車):1(自転車)となります。
なお、自転車が信号無視をしていた場合は、自転車の過失割合が高くなります。
1-4-4.歩行者と自動車の交通事故の場合
歩行者はいわゆる「交通弱者」として守られているため、交通ルールに従って歩行していれば交通事故に遭ったとしても、基本的に過失割合は0(歩行者):10(自動車)になるでしょう。
ただし、信号無視、不注意な飛び出し、横断歩道でない場所での横断などによる交通事故であれば歩行者の過失割合が生じる可能性があります。
直進車と歩行者の事故では、信号の状況によって次のように過失割合が変わります。
- 歩行者側が赤信号、車側が青信号 7(歩行者):3(自動車)
- 歩行者側が赤信号、車側が黄信号 5(歩行者):5(自動車)
- 歩行者側が赤信号、車側が赤信号 2(歩行者):8(自動車)
歩行者側が赤信号だった場合は歩行者の過失割合は2割〜7割と重い責任が課せられます。また、自動車側は相手が交通弱者であるため、自分が青信号であったとしても3割と重い過失割合になります。
1-4-5.児童・幼児や高齢者が絡む交通事故の場合
歩行者が児童・幼児や高齢者の場合、車側(加害者側)の過失割合が高く評価される傾向があります。具体的には、状況によって5〜20%の過失割合が加算される場合もあります。
一方、高齢者が運転していても過失割合が高くなるといったことは原則ありませんが、よそ見や前方不注意があれば過失割合が加算されます。
1-4-6.非接触事故の場合
自動車が対向する自動車をよけた際に転倒した場合、自動車の走行と自転車の転倒に相当因果関係が認められると、被害者(自転車に乗っていた人)は交通事故として損害賠償請求できる可能性があります。
相当因果関係が認められれば、事故態様を元に基本過失割合を判定し、自転車側に+5~10%の修正をすることがあります。
ただし、自転車に乗っていた人が飲酒運転だった、接触・衝突の回避行動に過失があったような場合は、被害者の過失割合が加算される可能性があります。
1-4-7.海外での交通事故の場合
海外での交通事故はその国の法律に従って処理される(属地主義)ため、交通事故を起こしてしまった、被害を受けたという場合は、安全を確保した上で速やかに警察に通報しましょう。そして、その国の弁護士資格を持った日本の弁護士か、その国の弁護士に相談しましょう。
海外では、法律や慣習が日本と異なる場合があるため、事前にその国の交通ルールや対応方法を確認しておくことが重要です。
2.過失割合の交渉術【双方】
後述しますが、過失割合は最終的な損害賠償の額に影響します。そのため、相手方や保険会社から言われるがままではなく、不満があれば主張し、納得できる適正な過失割合に落ち着くよう交渉することが重要です。
2-1.示談交渉の中で過失割合を調整し、長引かせないためのポイント【双方】
過失割合を調整するためのポイントは、「争点を明確にすること」です。
何となく「8:2では違う気がする」、「5:5でないと納得できない」では具体的に何を争点にすれば良いかわからず、示談交渉が進まなくなってしまいます。
過失割合の交渉での主な争点は、「事故状況の認識の相違」と「過失割合の計算方法の誤り」の2点です。この2点を中心に自分が何に不満を持っているか、どこに納得できていないか、を考えてみましょう。
「事故直後は信号が黄色だと思っていたが、よく考えたら青色だった」場合はドライブレコーダーや周辺の目撃情報から証拠を探します。また、「過失割合の計算根拠が違っている」と考えられる場合は過去の判例などを提示しましょう。
このような証拠探しや判例調査が苦手な方は、弁護士に依頼しましょう。弁護士は法律の専門家、そして交渉のプロでもあるため、迅速に適正な交渉を行ってくれます。
2-2.裁判で過失割合を争う場合の対応方法や裁判費用【双方】
話し合いや調停で合意できない場合は、裁判で過失割合を争うことになります。裁判は過失割合の示談交渉で長期化している場合の終局的な解決策としても有効です。
保険会社に示談交渉を依頼していた場合でも、裁判を起こす場合には弁護士に依頼しましょう。裁判には訴状の作成、裁判の出席など法律の専門知識が必要な上、相手方も弁護士を立ててくるため、裁判で勝つためには弁護士への依頼をおすすめします。
裁判を起こす場合に心配になるのが裁判費用ですが、裁判費用は弁護士費用と別であり、主なものは裁判手数料と郵便料です。郵便料は5,000~1万円程度です。
裁判手数料は訴額に応じて段階的に金額が決められており、訴額が100万円の訴訟であれば1万円、訴額が1,000万円であれば5万円、訴額が1億円であれば32万円となります。
さらに、控訴すると手数料が1.5倍、上告すると2倍の手数料が必要です。
3.それぞれの立場からの過失割合交渉【被害者側】【加害者側】
被害者側、加害者側からの過失割合交渉はどのように進めるとよいでしょうか。ここではそれぞれの立場・状況に応じた交渉方法を解説します。
3-1.被害者側の過失割合交渉【被害者側】
交通事故の被害者側の過失割合交渉は一般的に、保険会社が行います。
ただし、被害者側の過失が0であると主張する場合には、保険会社は交渉の代行ができなくなりますので、自身で行うか弁護士に委任することになります。
3-1-1.過失割合の決定における保険会社の役割
過失割合は通常、被害者側・加害者側それぞれが加入している保険会社同士で交渉します。保険会社は自分達の調査結果や警察の調書から事故状況を確認し、過失割合を計算します。
保険会社は過失割合について相手方と交渉を行ってくれますが、最終的には被害者・加害者が同意して過失割合が決定します。
3-1-2.保険会社が提示する過失割合に納得できない場合の対応方法
保険会社が提示する過失割合に納得できない場合は、弁護士に相談することで客観的な基準で交渉が可能になります。
過失割合による賠償金額・示談金の大幅な減額を防ぎたい、慰謝料や損害賠償を適正に請求したい、といったケースでも弁護士によって適正な金額を計算して請求しましょう。
3-2.加害者側からの過失割合交渉【加害者側】
交通事故の加害者になってしまうと、次の3つの責任を負います。
民事上の責任:被害者が負った怪我の治療費や損害賠償
刑事上の責任:罰金刑、禁錮刑、懲役刑
行政上の責任:運転免許の取り消し・停止等
示談交渉で被害者への謝罪と賠償に誠意を尽くしたことが認められ、被害者の怪我の程度も低ければ減刑や、不起訴になる可能性があります。そのため、過失割合の交渉は自己の主張をしつつも被害者への最大限の配慮が必要で、慎重な交渉が求められます。
3-2-1.加害者として過失割合をどう主張するべきか、適切な対応方法
交通事故の加害者となってしまった方は、被害者に対する罪悪感や自責の念から、過失割合について意見を述べることをためらう場合があります。
しかし、事故の事実関係に認識の相違がある場合や、提示された過失割合に疑問を感じる場合、被害者への配慮を忘れずに、正当な権利を主張することも検討してみてください。
3-2-2.保険会社が提示する過失割合に納得できない場合、加害者としてどう異議を申し立てるか
任意保険に加入していれば保険会社が示談交渉を代行してくれますが、民事上の交渉しかできないため、刑事面の示談には介入しません。
しかし、加害者の立場としては過失割合交渉も大切ですが、不起訴、執行猶予や減刑も求めているため、民事・刑事の両面からのサポートが必要です。
自分の過失割合が不当に高く設定されていると感じる、刑事面に不安がある、示談交渉が長引いており早期解決したいという方は、弁護士に相談しましょう。弁護士のアドバイスがあれば適正な割合で交渉し、刑事面でも良い結果が期待できるでしょう。
4.過失割合が確定した際、保険の支払いや損害賠償に与える影響【双方】
過失割合が確定すると、損害賠償額が計算され、直接または保険を通じて支払いが行われます。過失割合が6:4や8:2の場合、被害者であっても過失が認められれば、相手の被害に対して過失割合に応じた責任が発生します。
この点から考えると、10:0以外の場合はどちらも被害者であり加害者となりますが、一般的には過失割合の高い方を「加害者」、低い方を「被害者」と呼びます。
確定した過失割合が10(加害者):0(被害者)、8(加害者):2(被害者)の場合の損害賠償額の計算は次のようになります。
4-1.過失割合が10(加害者):0(被害者)、双方に100万円の損害が発生した場合。
加害者 | 被害者 | |
損害額 | 100万円 | 100万円 |
過失割合 | 10 | 0 |
相手に請求できる損害賠償額 | 無し | 100万円 |
加害者の過失が100%の場合、加害者は被害者に対して損害の全額を賠償する責任があります。一方、被害者は過失が0%であるため、加害者に対して全額の損害賠償を請求できます。
なお、過失割合が0であれば被害者は事故に関する損害賠償責任が無くなるため、被害者側の保険会社は保険金の支払いについて過失割合で争う必要が無くなります。そうなると、保険会社は事故について利害関係が無くなり、損害賠償の代理交渉ができなくなります。
過失割合が0であれば代理人がいなくとも問題なさそうですが、実際には相手方(加害者側)が様々な理由をつけて、損害賠償額を減額してくる可能性があります。このような場合でも、被害者側の保険会社は介入できないため、自分で相手方の保険会社と交渉することとなります。
事故に遭った被害者として、慰謝料や損害賠償を適正に請求したい場合は、弁護士に依頼して正確な金額を計算し、請求してもらいましょう。
4-2.過失割合が8(加害者):2(被害者)、被害者側に100万円の損害が発生した場合。
お互いに過失がある場合は、過失割合に応じて請求額が減額されます。これを過失相殺と言います。
被害者に2割の過失があれば2割差し引くため、請求できる損害賠償額は80万円(=100万円×0.8)です。
加害者 | 被害者 | |
損害額 | 0 | 100万円 |
過失割合 | 8 | 2 |
相手に請求できる損害賠償額 | 無し | 80万円 |
4-3.過失割合が8(加害者):2(被害者)、双方に100万円の損害が発生した場合。
加害者側も100万円の損害がある場合は、過失割合の8割を差し引いた残りの2割(=100万円×0.2)は被害者に損害賠償請求できます。
この場合、被害者から加害者に20万円支払っても結局は、加害者から被害者に80万円支払うことになるため、実際には20万円を相殺して加害者から被害者へ60万円を支払います。
加害者 | 被害者 | |
損害額 | 100万円 | 100万円 |
過失割合 | 8 | 2 |
相手に請求できる損害賠償額 | 20万円 | 80万円 |
相手に請求できる損害賠償額 | 0 (20-20)万円 |
60万円 (80ー20)万円 |
過失割合が8:2としても、相手方の損害額が高額であれば、最終的な受け取り金額が0になるケースもあります。過失割合の交渉においては、過失割合だけでなく相手方の損害額、最終的な受け取り金額にも注意が必要です。
5.過失割合確定後の対処方法
過失割合が確定した後に新しい事実が発覚したり、後遺症が発症した場合に合意内容を撤回して再交渉・追加請求できるでしょうか?
5-1.原則、示談後に合意内容の撤回はできない【双方】
示談は、損害賠償請求を終結させるもののため、原則として示談後に合意内容を撤回することはできません。また、通常は示談書に、「示談書に記載の内容以外、当事者間に一切債権・債務が無い」「今後異議申し立てしない」といった、追加請求を防止する文言が入っています。
5-2.示談後に後遺障害が発覚した場合に追加請求ができるか【被害者側】
示談当時に予想しなかった後遺障害が発覚した場合は、例外的に追加請求できる可能性があります。
過去の裁判例では、示談によって放棄した損害賠償請求権は示談当時に予想していた損害に限られ、予想できなかった後遺障害の損害賠償権を認めたものがあります。
「交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、小額の賠償金をもつて示談がされた場合において、右示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた後遺症等については、被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。」
引用:示談当時予想しなかった後遺症等が発生した場合と示談の効力|最高裁判所 裁判例結果詳細
もしも示談後に後遺障害が発覚した場合、「示談時に予想できなかったものだった」、「交通事故と関係(相当因果関係)がある」の2点が証明できれば、示談後の追加請求が認められる可能性があります。
しかし、この2点の証明は非常に難しい上に、一度示談が成立して事件の清算が完了したと考えている加害者側とは紛争になる可能性が高いです。そのため、示談後の後遺障害の損害賠償を追加請求したい場合には、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
(h2)6.過失割合交渉を有利に進めるためのポイントと弁護士相談の重要性
過失割合交渉は最終的な損害賠償額に大きく影響し、加害者にとっては刑事事件が起訴・不起訴になるかどうかにも影響する可能性があります。
ここでは交通事故の過失割合交渉を有利に進めるためのポイント、弁護士相談の重要性について解説します。
6-1.相手方の交渉態度や対応を変えるための弁護士の介入の有効性【双方】
過失割合交渉において、相手方が保険会社や弁護士の場合、専門的な知識で説明されると対抗できず、適正でない過失割合や損害金で示談を成立させてしまい、示談金が大幅に減額される恐れがあります。
しかし、過失割合交渉を弁護士に依頼すると、過去の裁判例・法令を根拠に適正な過失割合を主張できます。そのため、弁護士が介入することで、相手方も適正な過失割合で交渉に応じる可能性が高まります。
このように、相手方の交渉態度や対応を変えるためにも弁護士への依頼は有効です。
6-2.過失割合の交渉に伴うストレスや不安を軽減するための方法【双方】
過失割合の交渉相手は基本的に保険会社か弁護士です。交通事故の処理に長けた専門家を相手にするには、多くの知識と交渉力が必要で、しかも合意に至らなければ長期間のストレスにさらされ、交渉結果がどうなるか分からず不安が募ってしまうかもしれません。
しかし、弁護士に依頼すれば交渉を任せることができ、日常生活など自分のやるべきことに集中しやすくなるでしょう。
6-3.事故直後にどのような行動をとれば、過失割合に有利な影響を与えられるのか【双方】
交通事故に遭った場合、まずはけが人を保護して、安全を確保した上で警察・消防署に通報します。その上で、下記の情報を確保しておくと、過失割合交渉時に使える材料となることもあるでしょう。
- ドライブレコーダーの記録
- 警察官が作成する調書
- 事故直後の現場写真(車の損傷、位置関係、天候、周辺の様子等)
- 目撃者の証言、連絡先
- 相手方との会話記録(メモ、ボイスレコーダーも有効)
とくに、事故直後の車と車(相手方)の位置関係は基本過失割合に当てはめるために重要です。また、車は安全確保のために移動することになりますが、移動前にお互いの車がどの位置にあったか分かるようにスマートフォン等で撮影しておきましょう。
6-4.過失割合が確定する前にどのタイミングで弁護士に相談するべきか【双方】
弁護士への相談は、示談成立前であればいつでも可能ですが、早いほどメリットが大きいです。事故直後に相談すれば、今後の方針や大まかなスケジュールが分かり、相手方の保険会社・弁護士への対応方法も知ることができます。
加害者になってしまった場合は刑事事件への対応が必要となるため、事故直後のできるだけ早い時期に相談しましょう。
6-5.弁護士に相談するメリット、費用【双方】
交通事故の過失割合について、弁護士に相談するメリットは次のとおりです。
- 専門的なアドバイスが得られる:法律の専門家としての適切な助言を受けられる
- 交渉を代行してもらえる:相手方との交渉を弁護士に任せることで、ストレスを軽減できます
- 適正な過失割合や賠償金を主張できる:不当な減額を防ぎ、公平な結果を目指すことが期待できます
6-6.交通事故の過失割合交渉における弁護士費用【双方】
交通事故の過失割合交渉における弁護士の相談料の相場は以下のとおりです。着手金・報酬金は弁護士ごとに差があるため、依頼前に見積もりを確認しましょう。
6-6-1.相談料
相談料は10分2,000円、20分4,000円、30分6,000円が相場で、1回あたりの相談時間は10〜30分が多いです。事前に事実関係と聞きたいことをまとめておくと、相談時間・相談料の節約につながるでしょう。
6-6-2.着手金
着手金は、弁護士に正式に依頼する際にかかる費用で、原則依頼時に一括で支払います。事情によっては後払いや分割払いに対応してくれる場合があります。
6-6-3.報酬金
報酬金とは、弁護士による案件の処理が成功した場合にのみ、依頼人が実際に得た経済的利益に応じて事後に請求される料金のことです。希望額には達しなかったが一定の慰謝料を得た場合など、部分的な成功した場合も含まれ、その度合いに応じて支払いが生じますが、全くの不成功(裁判でいえば全面敗訴)の場合は発生しません。
7.まとめ
交通事故の過失割合は、最終的な損害賠償額や示談金に直接影響します。被害者・加害者ともに、提示された過失割合や保険会社の対応に納得できない場合、弁護士に相談することで、客観的な基準に基づいた交渉が可能となります。
また、示談後に予見できなかった後遺障害が発覚した場合でも、追加請求が認められる可能性があります。適正な賠償を受けるためにも、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。