スポットバイトのトラブルとは?【企業側、労働者側】業務委託や派遣との違い、予防するためには?
【この記事の法律監修】
森江 悠斗弁護士(東京弁護士会)
森江法律事務所
スポットバイトという働き方が注目されています。本業の仕事にもプライベートにも使っていない隙間時間に少しだけ働いて家計の足しにできる気軽さが受けているようです。スポットバイトは企業側にもメリットがあり、短時間・短期間だけ忙しくなる業務の人手をコスト安に確保できます。
ただこのスポットバイトには落とし穴があり、行政機関もトラブルを警戒しています。
この記事では、スポットバイトの働き方を確認したうえで、スポットバイトに関連する労働者や企業のトラブルについて紹介します。
さらに、労働者と企業がスポットバイト・トラブルを回避する方法も解説します。
なおスキマバイトやスポットワーク、スポットワーカーという言葉もありますが、本稿ではスポットバイトと表記します。
スポットバイトとは
スポットバイトは法律用語ではなく、短時間労働(者)の俗称です。厚生労働省は短時間労働者を、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者、と定義していてスポットバイトはこれに含まれます。
参考:パートタイム労働者とは|厚生労働省
したがってスポットバイトもアルバイトもパートタイマーも短時間労働者なわけですが、ではなぜスポットバイトという特殊な名称がつけられているのでしょうか。
スポットバイトの特徴
スポットバイトという特殊な呼び方がされるのは、従来の短時間労働者とは異なる採用方法や働き方、給与の支払方法となっているからと推測できます。その特徴は次のとおりです。
<スポットバイトの特徴>
- 労働者は、スポットバイト・マッチング会社が提供するスマホのアプリで簡単に仕事をみつけることができる
- スポットバイト労働者と勤務先企業は雇用契約を結ぶ
- 履歴書の提出や採用面接が不要なことが多い
- 採用期間は数時間や1日、数日など、超短時間・短期間が多い
- 隙間時間に働いている人が多い
- 給与は即日払いが一般的(日雇い型)
ただし特徴といっても法的根拠があるわけではないので、上記の項目に当てはまらないスポットバイトもあります。
スポットバイトの雇用形態と、派遣社員や業務委託との違い
スポットバイトはその雇用形態から、派遣社員や業務委託とは区別されます。
スポットバイト労働者は勤務先企業に雇用されることになり、両者は雇用契約を結びます。スポットバイトでは、スマホのアプリで仕事を獲得することが多いのですが、アプリの運営会社(スポットバイト・マッチング会社)はスポットバイト労働者と勤務先企業の両者を結びつけているだけです。
- スポットバイト、勤務先企業、スポットバイト・マッチング会社の関係の概念図
スポットバイト・マッチング会社が両者を結びつける | ||
スポットバイト | ←雇用契約→ | 勤務先企業 |
スポットバイト労働者は勤務先企業と雇用契約を結んでいる点において、派遣社員ではありません。派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結び、勤務先企業に出向いて(派遣されて)働く形態になっており、スポットバイトとは大きく就労形態が異なります。
またスポットバイトは業務委託を受けて働く人とも異なります。フリーランスなどの個人事業主は、仕事を提供する企業と業務委託契約を結びますが、スポットバイトでは業務委託契約は使いません。
例えば飲食店のテイクアウトの料理を配達する人は、業務委託で働くことがあります。配達業務を希望する人はまず、配達業務を紹介する会社に登録します。登録すると、配達業務紹介会社から配達の仕事を紹介されます。このとき配達業務紹介会社と配達をする人は業務委託契約を結んでいます。
ちなみに業務委託で仕事をする人は、どの企業とも雇用契約を結ばないので、そもそも労働者には当たりません。
スポットバイトのニーズは増えている
矢野経済研究所によると、スポットバイト仲介サービスの市場規模は、2021年度の496億円から2023年度の824億円へと66%も拡大しているようです。
参考:スポットワーク仲介サービス市場に関する調査を実施(2023年)|矢野経済研究所
またタイミー(運営会社は株式会社タイミー)やスポットバイトル(ディップ株式会社)といったブランド名を聞いたことがある人も多いでしょう。さらに最近はLINEヤフーやメルカリといった異業種からの参入も増えています。
スポットバイト市場が盛り上がっているのは、労働者側にも企業側にもメリットが大きいからです。多くの労働者は実質賃金がなかなか増えないなかで、本業とは別の働き口を求めています。本業の仕事に支障が出ないように働くにはスポットバイトが適しています。
一方の企業側は、さまざまな業種で慢性的な人手不足に悩んでいます。また、仮に働く人を確保できる見通しが立ったとしても正社員で雇用すると人件費がかさんでしまいます。そうなると繁忙期だけ労働者を増やすことができるスポットバイトは好都合です。
そして労働者と企業の双方に良いのが、手間がかからないことです。スポットバイトなら労働者は履歴書を作成しなくてよく、採用面接も受けなくて済みます。企業は採用活動が不要になります。
こうした都合の良さがスポットバイトを普及させたと推測できるわけですが、歪みも生じています。そこで次の章から、スポットバイトで生じるトラブルを、労働者側と企業側にわけて解説していきます。
スポットバイト労働者側のトラブルと予防・対策
スポットバイトに関するトラブルについては厚生労働省も把握していて、企業や労働者に注意喚起しています。
本章ではそれらのトラブルのうち、働く人(スポットバイト労働者)に関わるものを紹介します。さらに、スポットバイト労働者がトラブルを回避する方法も解説します。
1.弱い労働者のなかでも特に弱い存在
労働者と勤務先企業の間でトラブルが生じると、経済力などが圧倒的に弱い労働者が不利になることが少なくありません。労働者を保護する労働基準法や労働組合法といった法律が存在することからも、労働者が弱い存在であることがわかります。
そしてスポットバイト労働者は、働く期間が極端に短いことから勤務先企業との関係性が薄くなり、職場でのポジションも低いことから、弱い労働者のなかでも、事実上、更に弱い存在になり得ます。そのためスポットバイト労働者は、誰よりも注意して働く会社を選ぶ必要がありますし、賃金や業務内容といった労働条件をしっかり確認すべきです。
2.トラブルの種類
スポットバイトで働く労働者が巻き込まれやすいトラブルには次のようなものがあります。
<スポットバイト労働者が巻き込まれやすいトラブル(例)>
- 仕事内容や労働条件が事前に聞いていたものと異なる
- 労働条件の書面での明示がない
- パワハラなどのハラスメント
- 給与の未払い、交通費の未支給
なお、これらはスポットバイトの場合に限られるトラブルではないことにご留意ください。もっとも、先述したように、スポットバイトの場合は会社との関係性が希薄になりがちであり、トラブルに巻き込まれやすいとも推測されます。
2-1.労働災害
労働者が仕事中に業務によってケガを負ったり病気を発症したりして、労働災害として認定されると労働者災害補償保険(以下、労災保険)から保険給付を受けることができます。保険給付とは、自己負担なく病院で治療(療養補償給付)が受けられたり、治療のために働けなくなったときの賃金の代わりのお金が給付(休業補償給付)されたりすることです。
企業などは労働者を1人でも1日でも雇えば、それがどのような勤務形態であっても労災保険に加入しなければなりません。労災保険の保険料は全額事業主(企業など)が負担します。したがってスポットバイト労働者も、自身では労災保険の保険料を負担せず、労災を負ったときは保険給付を受けることができます。
短時間労働者は常に労災の対象外であるなどと勘違いして、適切な対応を怠る使用者も存在し得ますので、注意しましょう。
2-2.労働時間のカウント間違い
スポットバイト労働者の賃金はほとんどの場合、時給で支払われます。働く時間の長さによって収入が増減するので、労働時間はスポットバイト労働者にとって死活問題になります。ところが悪意ある企業は労働時間のカウントで「ズル」をする場合があり得ます。
例えば制服がある職場では、着替えにかかる時間も法律上は労働時間にカウントしなければなりません。社員が仕事をしているところを見学するなどの研修を経てから業務に着手するときは、その時間も労働時間に含まれます。
悪意ある企業は「着替え中や見学中は仕事をしていないから賃金は支払わない」というでしょう。
このような労働時間に関する複雑なルールも、スポットバイト労働者が抱えるトラブルの種になりえます。
2-3.適正な賃金が支払われない
適正な賃金が支払われない最たる例は、最低賃金を下回る額で働かされることです。スポットバイト労働者にとって時給の額は最大の関心事なので「さすがに最低賃金を下回る会社で働くことはないだろう」と思うかもしれません。しかし先ほど説明した制服の着替え時間や見学時間を労働時間から外されると、実質的に最低賃金を下回る可能性があります。
また午後10時から午前5時までの時間帯は25%増の割増賃金を支払わなければなりませんし、1日8時間、週40時間を超える労働にも同様の25%増の割増賃金が義務付けられています。
2-4.仕事内容が事前に聞いていたものと異なり、労働条件の書面での明示もない
求人票に「誰でも簡単にできる仕事」「初心者歓迎」「ノルマなし」といったことが書かれてあったのに、実際に指示された仕事が難しかったり、初めてではどうしても失敗が多くなったり、ノルマを課せられたりすることもあります。
さらに悪意ある企業なら、スポットバイトが仕事を完成させられなかったり、ミスをしたり、ノルマを達成できなかったら、賃金を減額するかもしれません。
企業はたとえ1日しか働かないスポットバイトであっても、採用時に労働条件を明示しなければならず、そのなかに従事すべき業務と賃金の額の決定方法も含めなければなりません。労働条件の明示は、労働基準法15条で規定されているので、仕事内容が事前に聞いていたものと異なる状態は同法に抵触する可能性があります。
参考:e-GOV法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
2-5.パワハラなどのハラスメント
スポットバイト労働者は、勤務先企業との関係において弱い立場になってしまうわけですが、さらに深刻になるのは職場内でも弱者になることです。リーダー、課長、店長、先輩社員、新人担当といった、スポットバイト労働者に指示を出す立場の人が、スポットバイト労働者の弱さにつけこんでパワハラやモラハラなどの嫌がらせをすることがあります。
さらに、スポットバイトは勤務時間が極端に短いため、労働者自身が「少しの間だから我慢しよう」と考えがちで、ハラスメントが表面化しにくい状況になっています。その結果、スポットバイト労働者が不当な扱いに対して対処できなければ、不利益を被ることになります。
2-6.誰も守ってくれない
労働者にスポットバイトを紹介するスポットバイト・マッチング会社も、スポットバイトに関するトラブルを把握していて、対策に乗り出しているところもあります。しかしスポットバイト・マッチング会社は仕事を紹介するだけで、スポットバイト労働者を雇用しているわけではないので守る義務はなく、その保護は限定的となるでしょう。
では勤務先企業はスポットバイト労働者を守ってくれるでしょうか。勤務時間が短いと、どうしても企業への貢献度が小さくなるので、事実上、勤務先企業がスポットバイト労働者を守る動機は小さくなっても不思議はありません。例えば、正社員とスポットバイトがもめた場合、企業の労務担当者が「正社員に辞めてもらっては困る」と考えたら、たとえ両者に非があっても正社員寄りの判断をするかもしれません。
3.トラブルに遭わないために労働者ができること
スポットバイトで働く労働者がトラブルを回避する方法を紹介します。
<スポットバイト労働者が採り得る対策>
- 評判の良いスポットバイト・マッチング会社の紹介サービスを利用する。または悪評が立っていない企業で働く
- 労働条件の明示を求める
- ハラスメントを受けたら勤務先企業の管理部門やスポットバイト・マッチング会社に通報する
- 弁護士に相談する
3-1.評判の良いスポットバイト・マッチング会社の紹介サービスを利用する。または悪評が立っていない企業で働く
スポットバイト・マッチング会社や、スポットバイトを導入している企業のなかには、スポットバイト労働者からの評価を公表しているところがあります。労働者が、評判の良いスポットバイト・マッチング会社のサービスを使い、評判の良い会社で働くことは、トラブル予防になります。
「仲間」であるほかのスポットバイト労働者が「良いスポットバイト・マッチング会社だ」あるいは「スポットバイト労働者を大切にしてくれる職場だ」と評価しているところはトラブルが少ないでしょう。
3-2.労働条件の明示を求める
法律上当然のことですが、スポットバイト労働者が、勤務先企業に対し、働き始める前に労働条件を明示してもらう必要があります。労働条件の明示を嫌がる企業はコンプライアンスに問題があります。
3-3.ハラスメントを受けたら勤務先企業の管理部門やスポットバイト・マッチング会社に通報する
スポットバイトとしての勤務が1日で終わるにしても、その間にハラスメントを受けたら、勤務先企業の管理部門やスポットバイト・マッチング会社に通報したほうがよいでしょう。それがスポットバイトの働く環境を改善するきっかけになるからです。
3-4.弁護士に相談する
スポットバイト・トラブルは労働問題なので、スポットバイト労働者が弁護士に相談すべき場合もあります。弁護士に相談するメリットは、後ほど紹介します。
企業側のトラブルと予防・対策
労働者対企業のトラブルでは、力が強い企業が「ヒール」になったり、「トラブルの原因をつくっている」と疑われたりすることがありますが、もちろんその逆も起こっています。悪意ある労働者を雇ってしまうと企業は損害を被ることになり、それはスポットバイトでも同じです。
また、自社の店長や職場のリーダーなどが正しい労務の知識を有していないと、スポットバイト労働者に対して悪質な対応をしてしまうことがあります。例えば、店長が、長期間働いてくれているアルバイトを守るために、スポットバイト労働者にパワハラをするなどといったトラブルがあり得ます。このような事態は企業の信用を失墜させるでしょう。
スポットバイトを導入する企業はトラブルに備える必要があります。
1.トラブルの種類
スポットバイトを導入した企業が巻き込まれやすいトラブルは次のとおりです。
<スポットバイトを導入した企業のトラブルの種類>
- 勤務態度が悪い、サボる
- 職場に現れない
- スポットバイト労働者にSNSで悪口を書かれる
- 過失又は低スキルによる損害の発生
- 現場の社員の不適切な行動(例:店長がスポットバイト労働者にパワハラを行う)
- 自社の社員が副業禁止義務に違反してスポットバイトをしていることが発覚する
1-1.勤務態度が悪い、サボる
勤務態度が悪かったり仕事をサボったりする労働者は、スポットバイト労働者に限らず正社員にもいるでしょう。しかしスポットバイト労働者には「この職場には長くはいない」という心理が働きやすいので、勤務先企業へのロイヤリティ(忠誠心)が減りやすくなり、企業としては質の良い労働が得にくいかもしれません。
1-2.職場に現れない
そしてロイヤリティが低いと勤務先企業への貢献意欲も減るので、無断欠勤につながる可能性があります。
同じ人でも、長期間働いているアルバイト先には「職場のみんなに迷惑をかけたくない」という思いから無断欠勤しなくても、スポットバイト先にはそのような思いが働きにくくなる、ということは起こりえます。
1-3.スポットバイト労働者にSNSで悪口を書かれる
悪意のある労働者は、自分の力不足のせいで職場の人に注意されているのに、それを逆恨みしてSNSや掲示板に勤務先企業の悪口を投稿することがあります。この問題もスポットバイトでは「この職場には長くはいない」という心理が働くと、悪口投稿の動機になってしまうことがあります。
1-4.過失又は低スキルによる損害
スポットバイト労働者は職場に短期間・短時間しかいないため、十分に教育・指導ができません。そのためどうしてもスキル不十分のまま仕事をしてもらうことが多くなります。そうするとミスが増え、勤務先企業に損害をもたらしてしまいます。
1-5.現場の社員の不適切な行動
スポットバイトに関する「現場の社員の不適切な行動」とは、例えばチェーン展開している企業において、店長がスポットバイト労働者だけにパワハラを行うなどといった行動です。
本社としては、人手が足りない店にスポットバイト労働者を入れることで労働力を確保したつもりでも、現場の店長は「スポットバイト労働者は労働の質が低く困っている」と感じるかもしれません。そうなると店内のスタッフたちの間でも、本社と店の間でも不協和音が発生してしまうでしょう。
こうしたストレスが、現場の社員の不適切な行動の引き金になることがあります。
1-6.自社の社員がスポットバイトをしている
多くの企業が従業員の副業を認めるようになりましたが、それでもなお、副業を禁じている企業はまだまだたくさんあります。スポットバイトは、副業が禁じられている会社の社員にとって、発覚しにくい副業といえるかもしれません。
2.トラブルに遭わないために企業ができること
スポットバイトに関するトラブルが深刻化すると、企業の生産性が低下する事態に陥りかねません。しかしスポットバイトは人件費を抑制しつつ人手確保を実現する有効な手段なので、企業としてはスポットバイトをあきらめるのではなく、トラブルを回避しながらスポットバイトを導入したいところです。
企業がスポットバイトに関するトラブルを回避する方法には次の方法があります。
<トラブルに遭わないために企業ができること>
- 労働法に関わるコンプライアンスを徹底する
- スポットバイト労働者が担当する仕事を明確にする
- スポットバイト労働者を大切に扱う
- スポットバイト・マッチング会社と協議する
- 社員の副業を認める。または、副業を厳格に禁じる
- 弁護士に相談する
1つずつ確認していきます。
2-1.労働法に関わるコンプライアンスを徹底する
もしスポットバイトを導入している企業の経営者や労務担当者、職場長などに、スポットバイト労働者を軽視する考えがあったら、それは改めるべきでしょう。スポットバイト労働者を貴重な戦力として自社に迎え入れ、適切に処遇すべきです。
適切な処遇のうち、スポットバイトに関わる労働法関連のコンプライアンスの徹底は基本になります。次のことが守られているか、当然のことを含みますが、改めて現場レベルで詳細に確認することをおすすめします。というのも、スポットバイトの導入により、関わる労働者が増え、トラブルの可能性は比例的に高まると思われるためです。
<スポットバイトに関わるコンプライアンスの項目>
- 労働条件明示義務を徹底する
- 労働時間を把握する(例:準備時間が労働時間に含まれているかの確認等)
- 労働時間の端数計算を適正に行う
- 社内規程の見直し
なお上記の項目はスポットバイトだけのものというわけではなく、正社員やアルバイトなどにも当てはまります。
2-2.スポットバイト労働者が担当する仕事を明確にする
スポットバイト労働者の業務スキルや労働の質が、正社員や長期アルバイトより低くなってしまうのはやむをえない部分があります。企業としては「その代わり、自社に都合のよい時間帯に、しかも低賃金で働いてもらえている」と考えることができます。企業は、スポットバイト労働者に多くのことや難解なこと、高度なことを期待しないことが肝要です。
企業はスポットバイト労働者に担当させる仕事を明確にしたほうがよいでしょう。スポットバイト労働者には「この仕事だけをやっていただきます」と明示します。現場の長には「スポットバイト労働者にはこの仕事だけを担当させてください」と指示してみてはいかがでしょうか。
このようにすることでスポットバイト労働者も、スポットバイト労働者を使う現場も、混乱しないで済みます。
2-3.スポットバイト労働者を大切に扱う
スポットバイトの経験者から、ハラスメントを受けたことがあるという声があがっていることを、企業としては重く受け止めるべきです。当然のことではありますが、コンプライアンスを徹底したうえで、社内にスポットバイト労働者を大切に扱う気運を高める必要があります。
例えば職場の長が、社員や長期アルバイトにはクリーンな仕事を与えて、スポットバイト労働者に人が嫌がる仕事を与えていたら、それはスポットバイト労働者を大切に扱っているとはいえず、改めることをおすすめします。
2-4.スポットバイト・マッチング会社と協議する
もし企業の経営者や採用担当者、職場の長が、スポットバイト労働者の労働の質に疑問を感じたら、その人を紹介したスポットバイト・マッチング会社に報告したほうがよいでしょう。適切なクレームはスポットバイト・マッチング会社の社内にフィードバックされて改善につながるからです。
さらに企業からスポットバイト・マッチング会社に、自社にマッチした人材を紹介して欲しいと伝えることも有効です。企業が人材ニーズを伝えると、スポットバイト・マッチング会社は時給や業務内容、業務時間などについてアドバイスをしてくれます。
2-5.社員の副業を認め、又は、副業を厳格に禁じるなどの方針を決める
副業を禁じている企業で、自社の社員が他社でスポットバイトをしてしまう問題には、2つの解決方法があります。
1つ目の解決方法は社員の副業を認めてしまうことです。例えば、副業をやりたい社員が会社に申請して、会社が許可したら副業ができる、というルールにすれば「隠れ副業」や「不適切副業」を予防できます。
2つ目の解決方法は、副業を厳格に禁じることです。副業をしているが発覚したら減給や降格といった処分の対象とするというルールをつくることができます。
いずれの解決方法も、もし企業が採用すれば社員に大きなインパクトを与えるので、きちんと就業規則で定めたほうがよいでしょう。
2-6.弁護士に相談する
企業が抱えるスポットバイト・トラブルでも、弁護士が頼りになります。企業が弁護士に相談するメリットを、次の章で紹介します。
弁護士に相談するメリット
弁護士は、スポットバイトで働く人にも、スポットバイトを導入した企業にも、頼りになる存在です。労働関連のトラブル解決を専門にしている弁護士ならスポットバイトの実情にも精通しているので、スポットバイト労働者にも企業にも、良い解決策を提供できます。
トラブル発生後の処置を一任できる
スポットバイトで働く目的も、スポットバイトを導入する目的も、どちらもより良い仕事をすることのはずです。したがってスポットバイト労働者にとっても企業にとっても、トラブル発生後の処置は目的外のことになります。
弁護士に依頼すれば、トラブル発生後の処置を一任することができ、自分は仕事に専念できます。
守ってくれる人になってもらえる
スポットバイト労働者はどうしても孤立しがちです。ほとんどの場合、勤務先企業の採用担当者と接触することなく仕事を始めますし、職場に入っても勤務時間・期間が短いので一緒に働く人とのコミュニケーションは深まらない傾向にあります。
孤立した状態で業務上のトラブルに巻き込まれると、誰からも守ってもらえません。しかし弁護士に相談すれば、強い味方が1人できるわけです。また弁護士は、目先のトラブルだけでなく、スポットバイトという働き方が抱える問題についても、依頼主(スポットバイト労働者)に教えてくれるでしょう。それはこれからの働き方に有益な情報になります。
働く環境を改善できる
これは企業のメリットになりますが、スポットバイトのトラブル解決のために弁護士を雇ったとしても、弁護士は解決するだけにとどまらず、働く環境についてもアドバイスしてくれます。なぜならスポットバイト・トラブルは、働く環境によって発生することがあるからです。
その企業にスポットバイトに関するルールがなければ、そのルールの制定に弁護士が協力することができます。労働時間に関する知識やハラスメント予防法などを含め、弁護士は自身が持っている働き方に関する知識を、その企業に提供します。
スポットバイト・トラブルで弁護士に相談することが「労務問題を起こさない会社」になるきっかけになるわけです。
まとめ~新しい働き方のトラブルにも解決策がある
スポットバイトが抱える問題について、労働者と企業の双方の視点から解説しました。スポットバイトは労働者にとって理想の働き方の1つであり、企業にとっては貴重な人材確保策の1つになりえます。しかし都合が良い分、不都合なことも起こるわけです。
スポットバイトは新しい働き方なだけに、労働者も企業も慣れていないのでトラブルが起きているのかもしれません。労働者も企業も、これまで経験したことがないトラブルなので、戸惑うことも多いでしょう。
そこで頼りになるのが弁護士です。労働関係に詳しい弁護士なら、労働者と企業の利益を最大化して不利益を最小化する方策を考え、双方に提案することができます。多くの弁護士事務所は、初回の相談を無料にしているので、気軽に「こんなことで困っている」と伝えてみてください。