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過払い金返還請求とは?請求の流れや弁護士に依頼するメリットは?

【この記事の法律監修】  
関根 翔弁護士(東京弁護士会) 
池袋副都心法律事務所

「過払い金があるかもしれないけど、どうやって請求すればいいのか分からない」「自分で請求を進めるべきか、弁護士に相談したほうが良いのか悩んでいる」という方も少なくないでしょう。過払い金返還請求は自分で行うことも可能ですが、専門的な知識が必要となります。

本記事では、過払い金返還請求の基本的な流れや、どのような場合に過払い金が発生するか、そして弁護士に依頼するメリットについて解説します。この記事を読むことで、過払い金返還請求に関する理解が深まり、よりスムーズに過払い金を取り戻すためのヒントになるでしょう。

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1.過払い金返還請求とは

過払い金とは、簡単に言えば「払いすぎたお金」のことです。その多く払った分のお金を取り戻す手続きのことを、過払い金返還請求と言います。過去長期に渡って消費者金融、クレジットカード会社、信販会社などから借金をしていた方々は、過払い金が戻ってくるかもしれません。

利息制限法では、貸金業者が貸付金に対して請求できる利息の上限が定められています。元本の金額に応じて上限金利は異なります。

  • 元本10万円未満:年20%
  • 元本10万円以上100万円未満:年18%
  • 元本100万円以上:年15%

利息制限法の条文は以下のとおりです。

第一条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一元本の額が十万円未満の場合年二割
二元本の額が十万円以上百万円未満の場合年一割八分
三元本の額が百万円以上の場合年一割五分
引用:e-Gov法令検索 利息制限法(昭和二十九年法律第百号)

1-1.過払い金の発生の仕組み

過払い金は、主に利息制限法で定められた上限金利を超える利息を支払った場合に発生し得ます。例えば、法定利率が年15%であるにもかかわらず、年20%の利息を支払っていた場合、その差額である5%分が過払い金となり得ます。

具体的な例を挙げると、100万円を年20%の利息で借りて1年後に120万円を返済した場合につき、法定利率の年15%で計算すると、本来1年後に返済すべき金額は115万円となります。この差額の5万円が過払い金となります。

1-2.過払い金が生じていた背景

過払い金が生じていた背景には、グレーゾーン金利(利息制限法の上限金利と改正前出資法の上限金利との間の金利)の存在、及び、改正前貸金業法におけるみなし弁済規定の存在があります。

グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利を超えているが出資法(改正前)の上限金利には満たない金利を意味します。。

具体的には、利息制限法では金利が15%から20%に制限されており、それを超える金利は無効とされているのに対し、改正前の出資法が罰則を課していた金利は29.2%を超える金利としていました。また、改正前の貸金業法は、利息制限法の上限金利を超えていたとしても、債務者が任意に返済した場合等の要件を満たす場合には、有効な利息債務の弁済とみなす(みなし弁済)としていました。そのため、利息制限法の上限金利を超えたグレーゾーン金利を設定する貸金業者が多く存在していました。
利息制限法を超える金利は無効であり、グレーゾーン金利に対する返済は、みなし弁済の要件を満たさなければ過払となり得るため、過払金返還の問題が生じていました。

現在は、貸金業法及び出資法の改正により、2010年にみなし弁済の規定が無くなり、また、罰則が課される上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン金利は実質的になくなりました。これにより、貸金業者は利息制限法に従い金利を15%から20%の範囲内で設定するようになりました。そのため、過払金返還の問題が生じるのは、かかる法改正以前に貸金業者との取引があった場合となります。

1-3.過払い金の発生の条件・対象者

過払い金返還請求が可能となるためには、いくつかの条件が満たされる必要があります。以下に、主な条件を挙げます。

  • 利息制限法の上限金利(年15%から20%)を超える高い金利で借金をした経験がある
  • 「最後に借り入れた日」または「最後に返済を行った日」から10年が経過していない
  • 対象の貸金業者が倒産していない

過払い金が発生するためには、支払った利息が利息制限法で定められた上限金利を超えている必要があります。2010年に改正貸金業法及び改正出資法が施行されて以降、貸金業者は利息制限法の上限金利を守るようになっていますので、過払金が存在する可能性がある程度認められるのは、それ以前に貸金業者との取引がある方になります。

債権者から取引履歴の開示を受け、利息制限法に従った引き直し計算をし、過払金が発生している場合、10年の消滅時効にかかる前であれば、過払い金返還請求が可能と思われます。

もっとも、対象の貸金業者が倒産してしまっている場合は、請求は困難となります。

2.過払い金返還請求のメリット

過払い金返還請求を検討することには、以下のようなメリットがあります。

  • 過払い金が戻ってくることが期待される
  • 過払金が発生しない場合でも、借入残高が減少する場合がある
  • 原則、ブラックリストに載らない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1.過払い金が戻ってくることが期待される

長年に渡り利息制限法を超える金利を返済し続けてきたような場合、事案によりますが、過払い金返還請求により返還される金額が数十万円から数百万円となる場合もあります。これは、長年にわたって支払ってきた過払金額が一度に戻ってくるためです。

請求金額の算出のためには、債権者から取引履歴の開示を受け、利息制限法の上限利息に従った引き直し計算が必要となりますし、様々な法的論点等もありますので、過払金の返還請求を検討する場合には、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

2-2. 過払金が発生しない場合でも、借入残高が減少する場合がある

過払金返還請求が可能か検討するため、債権者から取引履歴の開示を受け、利息制限法の上限利息に従った引き直し計算を行った結果、過払金は生じていないものの、借入残高が減少する場合があります。

2-3.原則、ブラックリストに載らない

ブラックリストとは、信用情報機関の延滞等の情報のことです。過払い金返還請求をしても、原則としてブラックリストに載ることはありません。これは、過払い金返還請求が法律に基づいた権利行使であり、債務不履行ではないためです。

ただし、現在借入れ中の会社に対して過払い金返還請求をする場合は、その会社との取引に影響が出る可能性があるので注意が必要です。

3.過払い金返還請求のデメリット

過払い金返還請求には、以下のようなデメリットも存在します。

  • 払いすぎた過払金全額の回収が叶うとは限らない
  • 債務残高のある会社への過払い金返還請求は信用情報悪化の恐れがある
  • 過払い金返還請求で関連会社のローンやクレジットカードが使えなくなる可能性がある

それぞれ解説していきます。

3-1. 払いすぎた過払金全額の回収が叶うとは限らない

過払い金返還請求では、払いすぎた過払金の全額の回収が叶うとは限りません。以下の要因により、実際の返還額が減少したり、全く回収できない可能性があります。

  • 時効の問題
  • 和解による減額
  • 利息の扱い
  • 貸金業者の経営状況

3-1-1.時効の問題

過払い金返還請求権は、最終取引日から10年で時効により消滅します。時効が成立すると、その部分の過払い金は請求できなくなります。

民法(2020年改正前)では、返還請求権の消滅時効について以下のように定められています。

第百六十七条
1 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
引用:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)

3-1-2.和解による減額

訴訟提起に至る前に、貸金業者と任意交渉を行うことがあります。この場合、貸金業者が一部の過払い金を返還する内容で和解を提案することが多く、早期解決のために和解に応じると、全額を取り戻せない場合があります。

3-1-3.利息の扱い

過払い金にも、年5%(2020年4月1日以降は年3%)の利息が付くことがあります。過払い金に利息を含めた金額で回収が可能な否か、争点となることがあります。

民法(2020年改正前)では、以下のように定められています。

第七百四条
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
引用:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)

3-1-4.貸金業者の経営状況

貸金業者が倒産や経営困難に陥っている場合、過払い金を全額返還できない可能性があります。破産手続や民事再生手続を通じて請求できたとしても、返還額が大幅に減少してしまう可能性があります。

貸金業者の経営状況に不安を感じている方は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

3-2.債務残高のある会社への過払い金返還請求は信用情報悪化の恐れがある

現在も取引のある会社に過払い金返還請求を行うと、借金が未返済であることから、事故情報が登録されるおそれがあります。これは今後の借入に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

債務を完済した後に過払い金の返還を請求する場合には、信用情報機関には事故情報として登録されません。ただし、クレジットカードのキャッシング枠は完済していても、ショッピング枠に未払いが残っている場合など、完済したと思っていて実は残債があるケースも考えられますのでよく確認しましょう。

3-3.過払い金返還請求で関連会社のローンやクレジットカードが使えなくなる可能性がある

過払い金返還請求を行うことで、取引先の貸金業者との関係が悪化し、新たなローンやクレジットカードの利用が制限される可能性があります。そのため、将来的に新たな借入が難しくなる場合があります。

4.過払い金返還請求の流れ

過払い金返還請求の一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 取引履歴の取り寄せ
  2. 引き直し計算をする
  3. 過払い金返還請求書を送る
  4. 任意交渉
  5. 裁判
  6. 返還

各手順を見ていきましょう。

4-1.取引履歴の取り寄せ

過払い金の返還請求を行うためには、貸金業者からの取引履歴を取り寄せることから始まります。対象の業者は、クレジットカード会社や信販会社、消費者金融などです。取引の詳細がわからなければ、正確な計算ができませんので、まずは履歴を取得しましょう。

注意点として、取引履歴の保存期間は貸金業者によって異なります。法律上は10年間の保存義務がありますが、それ以前の記録は残っていない可能性があります。

貸金業者の取引履歴の保存期間は、貸金業法施行規則によって定められています。

第十七条
貸金業者は、法第十九条の帳簿を、貸付けの契約ごとに、当該契約に定められた最終の返済期日(当該契約に基づく債権が弁済その他の事由により消滅したときにあっては、当該債権の消滅した日)から少なくとも十年間保存しなければならない。(後略)
引用:e-Gov法令検索 貸金業法施行規則(昭和五十八年大蔵省令第四十号)

4-2.引き直し計算をする

取引履歴を入手したら、次は利息制限法の上限金利に基づいた計算を行います。この計算を引き直し計算と呼びます。これにより、過払い金の発生の有無や過払い金額を確認することとなります。

4-3.過払い金返還請求書を送る

引き直し計算の結果、過払い金が発生していることが確認できたら、貸金業者に対して過払い金返還請求書を送付します。

過払い金返還請求書には、以下の内容を記載し、引き直し計算書を添付して、貸金業者に送付します。

  • 請求者の特定情報(氏名、住所、生年月日等)
  • 貸金業者の名称、住所
  • 過払い金の金額とその計算根拠
  • 返還を求める旨の意思表示

4-4.任意交渉

過払い金返還請求においては、直ちに訴訟等の法的手続きを取るのではなく、過払い金返還請求書を送付した後、貸金業者と返還額についての交渉をすることが一般的です。交渉段階では、貸金業者と直接やり取りを行い、返還金額や返還方法について協議します。合意が成立すれば、合意された方法で過払い金が返還されます。

和解では、請求額の一部を減額する代わりに、速やかな支払いを受けられるというメリットがあります。返還を拒否されたり、回答がない場合は、訴訟等法的手続に進むことを検討することとなります。

4-5.裁判

任意交渉で合意できない場合、裁判を通じて過払い金の返還を請求することも可能です。この場合は、弁護士の助けを借りることを強くおすすめします。裁判では、過払い金の存在とその金額を立証する必要があります。そのため、取引履歴や引き直し計算書などの証拠が重要になります。

裁判には時間とコストがかかりますが、任意交渉で合意に至らない場合の有効な手段となります。

4-6.返還

任意交渉や裁判で過払い金の返還が認められれば、貸金業者から過払い金が返還されます。

貸金業者からの入金を確認しましたら、過払い金返還請求の手続きは完了となります。

5.過払い金返還請求を弁護士に相談するメリット

最後に、過払い金返還請求を弁護士に相談するメリットを見ていきましょう。

  • 取り戻せる金額が高くなる可能性がある
  • 交渉や手続きを任せることができる

5-1.取り戻せる金額が高くなる可能性がある

弁護士は過払い金返還請求の専門家です。貸金業法や利息制限法などの関連する法律に基づいて適切な請求額を算出し、請求することができます。また、任意交渉がまとまらない場合の訴訟等の法的手続に精通しているため、本人のみでの請求よりも高額な返還を受けられる可能性があります。(h3)5-2.交渉や手続きを任せることができる
弁護士に依頼することで、面倒な手続きや交渉を任せることができます。これにより、時間を節約できるだけでなく、専門的な知識を持った弁護士に任せることで、より良い結果が得られることが期待されます。

過払い金返還請求の手続きは、一般の人にとっては複雑で時間がかかるものです。必要書類の収集、金融機関との交渉、場合によっては訴訟の提起など、多岐にわたるプロセスが必要となります。これらの作業を全て自分で行うのは、労力と時間を要します。

弁護士は依頼者に代わって必要な書類の取得を試み、金融機関との交渉を行います。より効果的かつ効率的な交渉が可能となり、依頼者にとって有利な結果を得やすくなるでしょう。また、訴訟が必要となった場合も、弁護士が手続きを代理してくれます。

6.まとめ

過払い金返還請求は、過去に不当な金利を支払っていた事案において、余分に支払った金員を取り戻すための手続きです。複雑な手続きや交渉が多く、適切な金額の返還を受けるためには専門的な知識が必要となります。。

過払い金返還請求に不安を感じる方でも、弁護士に相談することでスムーズに進めることが期待できます。
もし、自分が過払い金返還請求が可能か疑問をお持ちの方は、弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

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