鼻のヒアルロン酸の失敗とは?【被害者側、クリニック側】トラブル例や相談先、予防するためには?
【この記事の法律監修】
酒井 伸彦弁護士(愛知県弁護士会)
オーバル法律特許事務所
「鼻のヒアルロン酸注射は失敗しやすいの?」
「鼻のヒアルロン酸を失敗した場合はどうすればいい?」
鼻のヒアルロン酸注射を検討している方、クリニック側は上記のようなお悩みや疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、鼻のヒアルロン酸が失敗した場合についてのトラブル例や相談先などを【被害者側・クリニック側】に分けて詳しく解説します。
ヒアルロン注射とは?
ヒアルロン酸注射とは、しわやたるみの改善が期待できる人気のある治療法です。
肌に直接ヒアルロン酸を注入し、肌の失われたボリュームを取り戻します。
ヒアルロン酸はもともと人間の体内に存在し肌の保湿力を助ける成分です。そのため、副作用が比較的少なく安全性が高いとされています。また、顔のシワやたるみの改善、唇や頬のボリュームアップ、鼻の形状修正などさまざまな部位に対応できるのも特徴です。
ヒアルロン注射はさまざまな美容のニーズに応えられるので、多くの人にとって魅力的な治療法なのです。
近年ヒアルロン注射のトラブルが増えている
「美容医療」という言葉を誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
SNSの普及で美容医療が広く浸透し、利用者が増えたのも理由の一つといえるでしょう。
以下は、美容医療サービスに対しての相談の件数です。
年度 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
相談件数 | 2,784 | 3,798 | 6,264 | 564(前年同期 859) |
相談件数は2024年5月31日現在(消費生活センター等からの経由相談は含まれていません)
ヒアルロン酸注射だけでなく美容医療全体が身近になっている分、相談件数が年々増加しています。
内容はさまざまで、販売方法や広告、皮膚の障害や熱傷などのトラブルに見舞われた相談が寄せられています。
鼻へのヒアルロン酸注射でのトラブル例
鼻へのヒアルロン酸注射へのトラブル事例は以下のようなものがあります。
- 美容クリニックに鼻先のヒアルロン酸注射で行ったら、鼻筋など3か所を強引に勧められた。鼻が赤く腫れて痛い。
- 美容整形外科で鼻を高くするためにヒアルロン酸を注入する施術を受けたが、しこりがあって腫れた感じがするので補償を求めたい。
- 鼻を高くしたいと思い美容クリニックに行った。ヒアルロン酸の注射をしたが、腫れて痛み、形もひどい。
- 数か月前、美容クリニックで鼻にヒアルロン酸を注入した。昨夜突然痛みと腫れが出て受診したら感染症と言われた。
- 美容外科で鼻にヒアルロン酸を注入する施術を行ったあと、鼻全体が痛み紫色に変色。
- 鼻にヒアルロン酸注入後、感染症を発症した。注入したヒアルロン酸が体外に出てしまい意味がなかった。
- 妻が美容外科で鼻にヒアルロン酸を注入した。当日から痛み、腫れがあり医師に連絡したが放置され、皮膚が壊死。
参考元:消費者庁と独立行政法人国民生活センターが連携して、関係機関の協力を得て実施する事業である事故情報データバンクシステム
鼻へのヒアルロン酸注射だけでも30件以上の事故情報が寄せられています。
内容は「施術前の説明不足」「施術のトラブル」「アフターケアでのトラブル」などのケースが多いです。また、鼻のヒアルロン酸注射以外の美容医療施術のトラブルでは、モニター価格で行ったのに高額な金額を請求されたなどの「金銭のトラブル」も多数あります。
施術を受ける前に、このようなリスクがある点も理解しておくのが大切です。
【被害者側】ヒアルロン酸注射のトラブルに遭った時の相談先
万が一、ヒアルロン酸注射の施術後に前述したようなトラブルがあった場合の相談先について説明します。
施術を受けたクリニックに相談
ヒアルロン酸注射の後に異常を感じたら、すぐに施術を受けたクリニックに相談しましょう。時間が経ってから症状が出る場合もありますが、すぐに相談することで悪化を防ぎやすくなります。
たとえば、施術後に赤みや腫れが続いたり、いつもとは違う違和感を感じたりした場合、そのまま放置してしまうと症状が進行してしまう可能性があります。
合併症のリスクを防ぐためにも、早めにクリニックに連絡しましょう。
施術後に異常を感じた場合は、ためらわずにクリニックに連絡し迅速に対応してもらいましょう。
国民生活センター・消費者ホットラインに相談
ヒアルロン酸注射でトラブルが発生した場合、国民生活センターや消費者ホットラインなどの公的機関に相談も可能です。
国民生活センターとは
国民生活センターは、国民生活の安定及び向上に寄与するため、総合的見地から、国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行うとともに、重要消費者紛争について法による解決のための手続を実施しています。
引用元:独立行政法人 国民生活センター「国民生活センターの紹介」
消費者ホットラインとは
消費者ホットラインは、消費生活センター等の消費生活相談窓口の存在や連絡先を御存知でない消費者の方に、お近くの消費生活相談窓口を御案内することにより、消費生活相談の最初の一歩をお手伝いするものです。
引用元:消費者庁「消費者ホットラインの概要」
上記二つの機関は、専門の相談員がトラブルの内容を聞いた上で、適切な対応策をアドバイスしてくれます。また、寄せられた情報は国によって分析され、消費者への注意喚起や、美容施術に関連する消費者保護政策の改善に役立てられます。
弁護士に相談
ヒアルロン酸注射でトラブルが発生した場合、弁護士に相談するのも一つの選択肢です。
弁護士への相談で、どのような法的対応ができるかを提案してもらえます。
例えば以下のような場合、法的処置ができる可能性があります。
- 施術後に医師からの説明とは違う健康被害が出た場合
- 納得いかない結果になった場合
- 施術を受けたクリニックに相談したが何も対応してもらえなかった場合
- 国民生活センターや消費者ホットラインに促された場合
全ての法律事務所が美容施術に関する案件を取り扱っているわけではないため、事前に確認しておきましょう。
【被害者側】弁護士に依頼するメリット
ヒアルロン酸注射のトラブルで弁護士に依頼する場合のメリットは多くありますが、
特に被害者側にとってのメリットをご紹介します。
解決までの道筋が見える
弁護士に依頼すると解決までどう行動すればいいのかがよくわかります。
トラブルが起きると、冷静でいられなくなり視野が狭くなったり感情的になったりしやすいので相談を検討するといいでしょう。
例えば、弁護士はトラブル解決に向けて、費用や手間も含めた全体像をしっかり説明し、依頼者にとって最善の方法を提案します。弁護士は数々の経験から多角的な視点で解決策を提示できるので、感情に流されず冷静に判断する助けとなります。
冷静さを保つのが難しい状況だからこそ、弁護士に相談するのは最良の結果を得るために重要です。
依頼者にとって有利な解決に導いてくれる
法的なトラブルが起きた際は、弁護士に相談すると依頼者の希望をしっかり聞いた上で解決方法を一緒に考えてくれます。
法律に触れる機会のない人がほとんどのため、実際トラブルに見舞われた際に解決策や進め方が見えにくいです。
弁護士は相手との交渉や裁判の場でも、依頼者の意見を汲み取り適切な主張を行います。そのため、依頼者は最も有利な解決を得られる可能性が高まります。
法的な問題が発生したら、自分一人で悩まずに弁護士に相談しましょう。
安心して相談できる
弁護士への相談は個人情報が厳重に守られるため、安心して悩みを打ち明けられます。
弁護士には守秘義務があり、相談内容や個人情報が外部に漏れる心配はないからです。
身近な人にも相談できない不安を抱えている方も多いかもしれませんが、そんな時こそ弁護士に相談するといいでしょう。弁護士は相談者の立場に立って話を聞いてくれるので、悩みを打ち明ける場としても頼りになります。
弁護士への相談は個人情報が厳重に守られるため、小さな問題でも一度相談してみると安心感が得られるでしょう。
【被害者側】慰謝料の請求はできる基準は?
ここでは、ヒアルロン酸注射を含めた美容医療でのトラブルの際の慰謝料請求について解説します。
説明義務違反
説明義務とは、医師は医療を提供する際に患者に対して適切な説明を行い、その理解を得るよう努めなければなりません。(医療法第1条の4第2項)
医療の透明性や患者の理解を促進するために、説明は不可欠です。
この規定は努力義務であり、法的な強制力があるわけではありません。しかし、医師が患者に対する説明義務を負っていることが法律で明記されている点は重要です。
たとえば、手術や治療の際は、リスクや代替手段、期待される結果などを患者に十分に説明し、同意を得る必要があります。この過程が不十分だと、説明義務違反となりトラブルや信頼関係の崩壊につながる可能性があります。
説明義務違反の事例
平成26年(ワ)第2172号の損害賠償請求事件で、美容療法「スーパーリセリング」(患者から採取した細胞を培養し、対象部位に注入することで皮膚のしわ・たるみ等を除去・改善するというもの)を受けた患者が効果がなかったとして、説明義務違反を理由に損害賠償を請求しました。
裁判所は、患者が美容効果の不確実性について十分な説明を受けていれば、、この療法を受けた可能性は低かったと判断しました。
この裁判の争点は、以下の2点です。
- 適用検査義務違反の主張
- 説明義務違反の主張
この裁判では、適用検査義務違反の主張は認められませんでした。しかし、美容診療は緊急性が低く費用も安くないため、患者が意思決定を行う際には効果の確実性やリスクについての十分な説明が重要です。医師はその説明を怠り、説明義務違反が認められました。
そして、説明義務違反により、患者が錯誤に陥った状態の下で支払われたものであることからすると、その全額が患者の損害と認めるのが相当であり、また、スーパーリセリングの美容効果を高めるものとして購入することになった基礎化粧品の代金相当額についても、同様に患者の損害に該当するものというべきであるとして、施術費用、基礎化粧品の費用、慰謝料、弁護士費用を合わせて約203万円の損害賠償を認定しました。
参考元:公益財団法人 日弁連法研究財団「法務速報(第187号/2016年12月27日)」
医療過誤(医療ミス)
医療過誤(かご)とは、医師が人為的なミスを犯し、患者に損害が発生することです。
医療行為には高い専門性が求められますが、医師が手順や判断を誤ると手術や治療が失敗し、患者に健康被害が生じる場合があります。美容整形分野は、施術件数の増加に伴い、手術ミスやその他の医療過誤の報告が増加しています。
美容整形や美容医療におけるよくあるミスは以下のようなものが挙げられます。
- 手術後の後遺症や合併症が発生するケース
- 患者の期待通りの結果が得られないケース
医療過誤が発生した場合、患者は精神的・身体的な負担を抱えるため、法的対応を検討しましょう。
医療過誤の事例
平成14年(ワ)第21955号の損害賠償反訴請求事件で、患者が平成12年4月10日に保証期間5年の医療レーザー脱毛契約を結び、頬部、顎下部、口元下部の治療を開始しましたが、治療後に熱傷や毛膿炎が発生し、右下の口角部に色素沈着が残りました。平成14年2月23日にクリニックは患者の診療予約をキャンセルし、それ以降の治療は行われませんでした。
患者はこの一連の出来事に対して、損害賠償としてクリニックを運営する法人に949万円を請求しました。
この裁判の争点は、以下の2点です。
- 医療レーザー脱毛治療に過失があったか否か
- 治療拒否が債務不履行に該当するか否か
東京地裁は原告の主張を一部支持し、レーザー照射後の冷却処置に関して医療機関側に過失があったと判断し、慰謝料と弁護士費用合わせて15万円の損害賠償を認定しました。
参考元:過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 美容整形 東京地判平成15年11月27日判決
【クリニック側】ヒアルロン酸注射のクレームが入った場合の対応は?
美容医療は、患者の抵抗感が薄れている一方で、美容医療関連の訴訟件数も増加傾向にあります。クリニックは適切なクレーム対応と共に、悪質な要求を識別するスキルを養う必要があります。また、 問題が長引く場合や解決が難しい場合は、弁護士への相談が必要です。
ここでは、クレームが合った場合の対応方法について詳しく解説していきます。
クレームの種類は主に2種類
美容医療におけるクレームは主に2種類に分けられます。
- 苦情クレーム
- 事故クレーム
上記の違いをよく理解してどう扱うか判断が必要です。
苦情クレーム
苦情クレームとは、医療者側に過失がなくても、患者の主観によって発生するトラブルです。美容医療は自由診療であるため、クレームの対応には法的過失の有無を見極めることが重要です。
たとえば、治療後に期待通りの結果が得られなかったことを理由に、患者が医療機関に不満を訴える場合があります。しかし、医療行為自体には法的な過失がないため、患者の主観的な不満によるものであり、法的責任が発生するケースではありません。
苦情クレームは通常の医療とは異なる観点から発生する場合が多いため、医療機関は適切な対応策を持っておきましょう。
事故クレーム
事故クレームは、施術ミスや合併症など、医療行為による事故が原因で発生するクレームです。美容医療においても、一定のリスクは避けられず、軽度の施術ミスはどの医師でも起こり得るものとされています。しかし、注意義務や説明義務の不足に基づく損害賠償請求が主な問題となります。
たとえば、レーザー治療後に予想外の皮膚反応が生じた場合、事前にリスクについて十分な説明が行われていなければ、患者は損害賠償を求める可能性があるでしょう。医師には、リスクや予後の変化に関して適切に説明する義務があります。
事故クレームは、注意義務や説明義務の徹底が重要です。不十分な場合は法的責任が問われる可能性があるため、医療機関はリスク管理と情報提供の徹底が求められます。
クレームが入ったらまずは誠実な対応を
クリニックでのクレーム対応は、初期対応を正確に行うことが重要です。
クレーム対応が適切に行われると、患者の不満を軽減し医療機関への信頼を維持できるためです。
まずは話を受け止める
まず患者の不満を受け止め、話を遮らずに最後まで聞くことが重要です。その上で、要望に添えなかった部分について誠実に謝罪しましょう。例えば、「お客様の要望に応えることができず申し訳ありません」と伝えるだけで、患者の気持ちが和らぎます。
事実確認
患者に不安を抱かせた部分を明確にしましょう。
万が一すぐに改善ができない場合でも、最後まで丁寧に話を聞くだけで患者は安心感を感じられる可能性が高まります。
クリニックの方針に沿った対応
話を聞いた上で、あらかじめ決められている方針に沿ってできる最善の対応をします。
誰が対応した場合でも一貫性を持たせるために、日頃から徹底しておくのが重要です。
人によって違う対応をしてしまうと、患者からの信頼を失い二次クレームに繋がる可能性があります。
複数人での対応
必要に応じて複数人もしくは上司とともに対応しましょう。
患者も冷静でない場合があるため、一人で対応すると間違った対応をしてしまう可能性があります。複数人で対応すると、クレームを迅速かつ公平に処理できます。
記録を残す
クレーム対応は、詳細な記録を残しましょう。
事実確認・感情を整理しておくと、二次クレームに繋がるリスクの軽減ができます。
原因の共有
クレームの再発防止のため、発生したクレームの原因とその対応を院内全体で共有します。
クレームが収まらない場合はすぐに弁護士に相談する
クリニックが正当な対応を尽くしてもクレームが収まらない場合は、弁護士に相談しましょう。美容医療は個人の主観的な願望に基づくものなので、患者の満足度には幅があるためです。
美容医療のクレームは、患者が「思っていた通りの結果にならなかった」として全額返金や無料での再施術、謝罪金を求める場合があります。クリニック側ができる限りの施術やアフターケアを行ったとしても、患者の期待と結果が一致しない場合もあるでしょう。
弁護士の助言を受け、法的観点からの解決策を提案できれば、問題がスムーズに進展する可能性が高まります。裁判例でも、美容医療におけるリスク説明の重要性が強調されており、通常の医療以上の説明責任が課されているものが多いです。
訴えられる前に弁護士に相談して、法的観点からの解決策を提案をしましょう。
ヒアルロン酸注射で被害者から訴えられた時の対応と主な流れ
弁護士に法律相談
ヒアルロン酸のトラブルで訴訟された場合、医療問題に強い弁護士にすぐに弁護士に相談しましょう。
クリニック側にとって自己弁護が難しい場合が多いためです。
たとえば、医療過誤が疑われる場合、問題が発生した原因や医療行為の妥当性を判断するには、医学的な知識が必要です。経験豊富な弁護士に依頼すれば、医療行為の適切性や過失の有無を精査し、裁判に向けた有利な戦略を立ててくれるでしょう。
法的リスクを軽減するにはまずは弁護士に依頼し、問題解決に向けた効果的な対応をしましょう。
医療調査
クリニック側の場合、弁護士に相談してもすぐに法的責任の有無が明確になるわけではありません。
弁護士が行う医療調査を通じて責任の有無を判断し、その結果に応じて対応策を進めていくためです。
医療調査では主に以下の調査を行います。
- 診療記録の収集と分析
- 医学文献の調査
- 協力医の意見聴取
- 説明会の実施
カルテや診療記録を基に治療の適切性を調べ、医学文献で同様の治療基準がどのように記されているかを比較します。また、専門医の見解を取り入れて、「この施術は通常の医療水準を逸脱していなかったか」を判断し、法的責任の有無を明らかにします。
示談交渉
示談交渉は問題解決の一つの方法です。
示談が成功すれば、訴訟にかかる時間や費用を抑えられるためです。
医療過誤が疑われるケースで、病院が責任を認め損害賠償額の協議もスムーズに進んだ場合、示談によって合意が成立することがあります。一方で、責任を否定したり、損害額に大きな意見の違いがある場合には、示談交渉が難航し、法的手段を検討する必要が出てきます。
示談交渉は訴訟リスクを軽減するための有効な手段です。弁護士の助言を受けながら、示談交渉を進め、示談での解決が難しければ訴訟や調停といった法的手段を検討するのが賢明と言えるでしょう。
調停・医療ADR
裁判以外にも調停や医療ADRを活用する方法もあります。
調停とは
調停は、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。調停手続では、一般市民から選ばれた調停委員が、裁判官とともに、紛争の解決に当たっています。
引用元:裁判所 民事調停について
医療ADRとは
ADR(裁判外紛争解決手続き)は、医療紛争を裁判以外の方法で解決する手続きです。
裁判のように法的な責任だけに焦点を当てるのではなく、双方の要望に応じた解決を話し合いで目指します。第三者の専門的な意見を取り入れながら、より柔軟で迅速に対応できるのが特徴です。ADRにはさまざまな形式があり、それぞれ異なる考え方や解決方法に基づいて運用されています。問題の実情に沿った解決策を見つけやすくなるため、医療紛争の処理方法として注目されています。
参考元:医療における裁判外紛争処理(医療 ADR)
訴訟の準備が進む前に、調停を利用して双方の意見をすり合わせておくと、迅速に合意に達するケースもあります。医療ADRでは、仲裁委員が医療の専門知識を活かして、裁判に頼らずに解決策を見つけられます。
調停や医療ADRは、訴訟に比べて柔軟で迅速な紛争解決手段です。
訴訟
示談交渉や調停・医療ADR・裁判など、いずれの手続でも法的な知識に加えて医療の専門的な知識が必要となるため、弁護士の支援を受けましょう。
患者が手術のミスを主張する場合、病院側はカルテや手術記録をもとに反論し、治療が医療水準に沿って行われたことを証明します。また、専門家の意見書を裁判で提出し、医学的な背景を説明し、裁判官に対して病院側の適切さを主張できるでしょう。
示談や調停で解決できなかった場合には、裁判での対応を弁護士と共にしっかりと準備を進めるのが重要です。
【クリニック側】弁護士に依頼するメリット
ここでは、クリニック側が弁護士に依頼するメリットを解説します。
法的リスクが軽減できる
弁護士に依頼すると、医療訴訟や規制違反に対するリスクを軽減できます。
弁護士は法的問題に精通しており、医療分野の専門的な知識を持っているためです。
クリニックが訴訟や損害賠償請求されてしまった場合でも、法律に基づいた適切な対応を取ることができ、リスクを抑えることが可能です。
弁護士のサポートによって医療訴訟や法的リスクを大幅に軽減する効果が期待ができます。
代理人として示談交渉をしてくれる
弁護士に依頼すると、自分の代わりに示談交渉をしてくれます。
トラブル相手との交渉はストレスが大きいですが、弁護士であれば依頼者の側に立って交渉を進めてくれます。
弁護士が示談交渉を行うと、相手方は弁護士の存在を意識し安易に不誠実な対応を取れなくなります。また、示談が不成立となった場合の裁判のリスクも視野に入れるため、交渉の場面でより誠実に対応せざるを得ません。
弁護士に示談交渉を任せるのはストレスの軽減だけでなく、より有利な条件での解決が期待できるでしょう。
裁判や調停などの法的手続きを代行してくれる
民事訴訟は、弁護士が依頼者の代理として裁判所での手続きを進め、最良の結果を目指します。弁護士は、その場で依頼者の権利を守るために、法律の専門知識を活用して主張・立証活動を行います。
弁護士は依頼者の話や提出された証拠をもとに、裁判で認められる主張を組み立てます。相手方の主張や裁判の進行状況に応じて、戦略を修正したり新たな証拠を見つけたりし、依頼者に有利な立場を築きます。また、裁判の落としどころを見極め、適切なタイミングで和解を提案することもあります。
弁護士の支援を受けると、依頼者は訴訟の手続きを安心して進めることができ、有利な判決や解決を目指すことができます。
医療法規制や広告規制へのアドバイスがもらえる
医療広告やホームページの内容も、弁護士からアドバイスを受けられます。
医療広告に関する規制は厳しく、違反すれば罰則のリスクがあるためです。
弁護士のアドバイスによって、使用する言葉やビフォーアフター写真の掲載における適切な手法を学べます。法律違反を避け、効果的な広告を展開できるでしょう。
弁護士からの適切なアドバイスをもらうと医療広告のリスク管理を徹底し、安心して広告運用ができます。
誹謗中傷への対応
ヒアルロン酸注射のトラブルで、口コミに誹謗中傷が書かれる可能性があります。
正当な評価や批判は表現の自由として保護されるため、削除するには投稿が具体的にどのように権利を侵害しているかを示さなければいけません。
たとえば、副作用や合併症についての投稿があった場合、病院はその治療が適切で、患者に十分な説明が行われたことを証明する必要があります。しかし、個人情報をすべて公開できないため、説明が不十分だと投稿の不当性を証明するのが難しくなる場合があります。
このような難しい対応でも、弁護士は法的リスクを考慮し、投稿の問題点を具体的に説明する方法をアドバイスしてくれます。
まとめ
本記事では、鼻へのヒアルロン酸の失敗について、被害者の場合とクリニック側の場合の対応方法を詳しく解説しました。
施術を受ける側は、クリニック選びや、実際のトラブル例の確認、リスクをしっかり理解した上で施術を受けましょう。
また、万が一、トラブルが起きた場合は施術を受けたクリニックに相談後、解決しなければすぐに弁護士に相談するのが大切です。
また、クリニック側は法に基づいた運営と、施術前の説明義務をしっかり果たした上で運営を行いましょう。
トラブルに巻き込まれた際はすぐに弁護士へ相談するのが、早期解決につながります。