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任意整理の流れは?交渉期間や準備しておくべきことは?

【この記事の法律監修】  
熊本 健人弁護士(大阪弁護士会) 
磯野・熊本法律事務所

「借金の返済が厳しく、毎月の支払いに頭が痛い」「取り立ての電話が続き、精神的に限界がきている」このような借金問題を抱えている方は、問題を根本から解決しなければ、現状から抜け出すことは難しいでしょう。しかし、任意整理を行うことで、利息のカットや返済計画の見直しを図り、借金問題から抜け出すきっかけを掴むことができます。

本記事では、任意整理の手続きの流れ、一般的にかかる期間、準備すべきこと、そして弁護士への依頼方法について詳しく解説します。この記事を読むことで、借金問題に悩む方が任意整理を通じてどのように生活を立て直せるか、具体的な流れを理解することができます。

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任意整理の流れとは

任意整理は、借金問題を解決するために弁護士や司法書士が債権者と交渉し、返済条件を調整する手続きです。手続きの具体的な流れを理解しておくことで、スムーズに進められるだけでなく、精神的負担も軽減できます。

以下では、任意整理の流れについて詳しく解説していきます。

1. 受任通知の発送

任意整理を開始するために、まずは弁護士や司法書士に依頼する必要があります。
依頼を受けた弁護士は、速やかに債権者に対して「受任通知」を送付します。この通知が届いた時点で、債権者からの取り立てや返済請求が停止します。つまり、依頼後すぐに、債務者は返済の負担から一時的に解放され、生活の立て直しに専念できるようになります。

2. 利息制限法に基づく引き直し計算

次に、弁護士が各債権者から取引履歴を取り寄せ、利息制限法に基づいて利息の再計算(引き直し計算)を行います。利息制限法には借入額に応じた上限金利が定められており、これを超える利息は無効とされます。具体的には、以下のとおり利息が制限されています。

利息制限法 第一条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合年一割五分
引用:e-Gov法令検索 利息制限法(昭和二十九年法律第百号)

再計算によって、過去に払いすぎた利息が充当されることで元金が減額されたり、過払い金が発生したりするケースもあります。

3. 和解案の提示と交渉

利息の引き直し計算が完了すると、現時点での正確な債務額が算出されます。
この段階で、弁護士や司法書士は債務整理の方針について再検討し、変わらず任意整理が最適であるならば、債権者に対して和解案を提示します。

和解案には、元金の返済額や返済期間、利息のカットなど、債務者にとって無理のない返済が実現するよう配慮した上で交渉が行われ、双方が合意すれば、和解が成立します。
すべての交渉は弁護士が行うため、債務者本人は直接交渉をする必要がなく、基本的には待っているだけで手続きは進められていきます。

4. 合意書の作成

債権者との交渉が成立すると、合意内容を文書にまとめた「和解書」が作成されます。
和解書には、返済額や返済期間、その他の条件が詳細に記載されており、債権者と債務者の間で正式な合意が交わされます。和解書の内容をもとに、返済がはじまることになります。

5. 和解に基づく支払い開始

和解後の返済については、通常、毎月一定の金額を債権者に返済していくことになります。
任意整理によって月々の返済額が軽減されているため、無理なく返済を続けることができるでしょう。任意整理が本当の意味で完了するのは、債務を完済したタイミングです。

6. 完済

無事に完済すれば、借金問題から完全に解放され、再び経済的な安定を取り戻すことができます。後述するとおり、完済後は信用情報に事故情報が一定期間残るものの、期間経過により抹消され、再びクレジットカードやローンを利用できるようになります。

とはいえ、家計を見直しながら計画的に返済を続けることで、借金に頼らずに生活する術が身につくため、完済するころには借金問題は根本的に解決することでしょう。

任意整理の交渉期間と完済までの期間

任意整理を検討している方にとって、交渉にどれくらいの期間がかかるのか、そして完済までのスケジュールがどれほどのものかは気になるところです。

以下では、任意整理の交渉期間と、完済までにかかる期間について詳しく説明します。

任意整理の交渉期間

任意整理における交渉期間は、債権者との調整や和解が成立するまでの時間を指します。債権者との交渉は、以下のような流れと期間で行われます。

1.受任通知の発送から取り立て停止まで

弁護士が受任通知を発送し、債権者に到達するまでには、通常数日から1週間程度かかります。この時点で債権者からの取り立てや返済請求は停止します。

2.取引履歴の取得と引き直し計算の完了まで

弁護士が債権者から取引履歴を取得し、利息制限法に基づく引き直し計算を行う作業は、通常1か月程度を要します。ただし、債権者によっては取引履歴を出すのに1か月以上かかることもあり、多少の前後が発生することもあります。

3.和解案の提示から交渉完了まで

利息の引き直し計算が完了した後、弁護士が債権者に和解案を提示し、交渉を行います。
任意整理による交渉は、1〜3か月程度で完了することが多いですが、債権者が複数いる場合や交渉が難航した場合には、さらに期間が延びることもあります。

任意整理完了までの総期間

任意整理の交渉が始まってから和解が成立し、返済開始するまでの全体の期間は、一般的に3〜6か月程度です。債権者との交渉が順調に進めば、比較的短期間で和解に至りますが、交渉が難航するケースや債権者の対応が遅い場合は、さらに数か月かかることもあります。

任意整理後の完済までの期間

任意整理によって新たな返済計画が合意されると、実際の返済がスタートします。
返済期間は3〜5年程度が一般的です。通常は、指定された期間中に元金を全額返済し、完済を迎えることとなります。とはいえ、任意整理の手続きが完了してから返済が終わるまでの期間は長く、収入や家計の状況に応じて生活状況は変動します。

任意整理時点と状況が変わってしまった場合は、再度、弁護士や司法書士への相談を視野に入れましょう。

任意整理で債務者が準備すべきこと

任意整理をスムーズに進めるには、債務者側も準備すべきことがあります。以下にて、任意整理に取り組む際に準備しておくべきことについてまとめてみました。

1. 債務状況の把握

まず、任意整理を行う前に、自分の債務状況を正確に把握しておくことが重要です。
具体的には、以下の情報を整理しておきましょう。

  • 借入先(債権者)の名前
  • 借入額
  • 借入時期
  • 月々の返済額
  • これまでの支払履歴
  • 現在の支払い状況

上記の情報が整理されていると、弁護士や司法書士はスムーズに任意整理に着手できます。特に、複数の借入先がある場合は、債権者ごとの状況を正確に把握しておくとよいでしょう。

2. 収入・支出の見直し

任意整理を進めるには、返済計画を立てるために、現在の収入と支出を見直す必要があります。収入・支出を見直す際は、以下の点に注目しましょう。

  • 毎月の給与やその他の収入
  • 家賃や住宅ローン、生活費、保険料などの固定費
  • 日々の生活で使っているお金(食費、交通費、娯楽費など)

無理のない返済計画を立てるためには、上記の支出を見直し、あらかじめ節約できる部分がないか検討しておくのもおすすめです。

3. 必要書類の準備

弁護士や司法書士に依頼する際には、いくつかの書類を提出する必要があります。
以下は、一般的に任意整理に必要とされる書類です。

  • 借入先との契約書や借用証書
  • 債権者からの督促状や請求書
  • これまでの取引明細や支払履歴
  • 自分の収入を証明する書類(給与明細や源泉徴収票など)
  • 自分の資産を証明する書類(通帳や不動産登記簿謄本など)

上記の書類は、手続きを進める上で必要になります。取得方法がわからない場合は、弁護士が指示してくれる他、すぐに必要になるわけではないため焦って集める必要はありません。

4. 家族への相談

任意整理を行う場合、家族に知られるリスクは少ないです。しかし、返済計画が家計に影響を与える可能性があるため、事前に家族へ相談しておくことも大切です。特に、夫婦間での情報共有は、後々のトラブルを防ぐ意味でも早い段階が推奨されます。

5. 専門家への相談予約

最後に、弁護士や司法書士に相談の予約を取ることが必要です。

初回相談は無料で行っている専門家の事務所が多いので、まずは現状を可能な範囲で整理した上、相談を申し込みましょう。相談時には、債務状況や希望する債務整理手続きを伝えることで、より具体的なアドバイスを得られるでしょう。

任意整理における弁護士5つの役割

任意整理をするのであれば、基本的に弁護士のサポートは不可欠です。とはいえ、弁護士にはどのような役割があるのでしょう。
以下では、任意整理における弁護士の5つの役割について解説します。

1. 受任通知の発送と債権者との窓口

任意整理の依頼を受けた弁護士は、債権者に対して「受任通知」を送付します。
その後、弁護士がすべての債権者との窓口となってくれるため、債務者は本人に対する直接的な取り立てができなくなります。

2. 利息の引き直し計算と過払い金の確認

次に、弁護士は債権者から取り寄せた取引履歴を基に、利息制限法に基づいて利息の引き直し計算を行います。引き直し計算により、過去に法定利息を超える金利で支払っていた時期がある方は、払いすぎた利息分が「過払い金」として返還される可能性があります。

3. 和解案の作成と交渉

弁護士は、引き直し計算を終えた後、債務者にとって無理のない返済計画を立て、それを基に債権者に対して和解案を提示します。この段階では、利息の減額や月々の返済額の調整、返済期間の延長など、債務者の負担を軽減するための交渉が行われます。

交渉がうまく進めば、債権者との間で和解が成立し、新しい返済計画が決定します。和解案も含め、弁護士が代理で進めてくれるため、債権者と直接関わる必要はありません。

4. 和解書の作成

債権者との和解が成立すると、弁護士は和解内容を文書にまとめた「和解書(合意書)」を作成します。和解書には、返済額や返済期間などの条件が明記され、これに基づいて債務者は返済を開始します。和解書が作成されることで、任意整理の手続きはほぼ完了となり、債務者は新しい返済計画に沿って返済を進めていくことになります。

5. アフターフォロー

任意整理の手続きが完了した後も、弁護士は必要に応じてアフターフォローを行ってくれます。例えば、万が一、返済継続が難しくなる問題が生じた場合や、債権者から取り立てが再び行われる場合などは、弁護士が間に入って対応することもできます。

任意整理後の流れ

任意整理は、手続きが完了後も返済や信用情報に関する影響などの注意点があります。
以下では任意整理後、どのような流れで生活が進んでいくか、重要なポイントを解説します。

新しい返済計画に基づく返済の開始

任意整理後は、実際の返済がスタートします。返済額や期間は無理のない範囲で設定されているため、生活を立て直しながら計画通りに返済を進めていくことが可能です。
一般的に返済期間は、3~5年程度で設定されることが多いです。

生活再建と財産の保護

任意整理では、家や車などの大切な財産を手放す必要がないため、任意整理後も通常通りの生活を維持することが可能です。任意整理をしたからといって、生活そのものが大きく変わるわけではないため、安心して手続きを進めましょう。

個人信用情報への影響

任意整理を行うと、個人信用情報機関に事故情報が残り、いわゆる「ブラックリスト」に掲載されます。事故情報により、新たにクレジットカードを作成したり、ローンを組んだりすることが制限されます。制限される期間は、通常5年程度とされています。

そのため、生活費や大きな支出を計画的に管理し、現金やデビットカードなどを使って生活していかなければなりません。しかし、制限は一時的なものであり、一定期間を過ぎれば、再び借り入れが可能となります。制限期間を過ぎさえすれば事故情報は抹消され、再びクレジットカードの作成やローン利用が可能になるためご安心ください。

家族に知られるリスク

任意整理は、基本的に家族に知られることは少ない手続きです。
しかし、クレジットカードが使えなくなったり、ローンが組めなくなったりすることで、間接的に家族に気付かれる可能性もあります。家計に影響が出る場合は、事前に家族に相談しておくことが良いでしょう。

任意整理後に家族に知られてしまうよりは、自ら伝えたほうが角も立たないといえます。

再交渉の可能性

任意整理後に、もし返済が難しくなったり、債権者との間で問題が発生したりした場合は、再度、弁護士への相談を検討しましょう。弁護士は、債権者と再交渉を行ったり、状況に応じたアドバイスをしてくれたりします。任意整理後は、返済計画に沿って返済が続けられているかどうかを自分自身で確認し、問題があれば早めに対処することが重要です。

任意整理の手続き中にしてはいけないこと

任意整理を進める際は、いくつか注意すべきポイントがあります。
以下では、任意整理の手続き中にしてはいけない代表的な行動について解説します。

新たな借り入れを行うこと

任意整理の手続き中に最も避けるべき行動は、新たな借り入れを行うことです。

弁護士や司法書士が交渉を進めている間に、別の金融機関から借金をすることで、借金の総額が増えてしまい、返済能力に悪影響を与えるだけでなく、弁護士や司法書士からの信頼を損なう可能性があります。新たな借り入れが発覚した場合、弁護士や司法書士から手続きを辞退されてしまうおそれもあるため注意が必要です。

注意点

  • 任意整理中に新たな借り入れは行わない
  • 新しいクレジットカードの作成はしない

債権者との直接交渉を行うこと

任意整理の手続き中は、弁護士や司法書士が債権者と交渉を進めるため、債務者が直接債権者とやり取りをすることは避けましょう。

弁護士が受任通知を送付した時点で、債権者からの取り立てや返済の督促が停止しますが、もし債務者が自ら債権者と接触してしまうと、不要なトラブルに発生する可能性があります。任意整理を依頼した以上、弁護士や司法書士に一任し、交渉が円滑に進むように任せることが大切です。

注意点

  • 債権者とのやり取りはすべて弁護士に任せる
  • 取り立てがあっても無視し、弁護士に報告する

無断で財産を処分すること

任意整理の手続き中に、無断で財産を処分することも避けるべき行動の一つです。

例えば、車や不動産などの大きな資産を売却したり、譲渡したりすることで、債権者に対する返済能力に疑問が生じることがあります。

特に、任意整理による解決が難しくなり、自己破産へと方針変更した場合、財産を隠したり、不当に安い金額で売却したりした場合、「免責不許可事由」に該当するおそれがあります。免責不許可事由がある場合、借金が免除にならない可能性があるため注意しましょう。

破産法 第二百五十二条
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
引用:e-Gov法令検索 破産法(平成十六年法律第七十五号)

注意点

  • 財産の処分は弁護士に相談する
  • 勝手に大きな資産を売却・譲渡しない

弁護士に依頼する方法

任意整理を成功させるためには、弁護士に依頼することが重要です。

というのも、任意整理は債権者との交渉が必要なため、自力で行うことは難しく、法的知識と経験を持つ弁護士が介入することで、手続きが成功する可能性が高まります。

とはいえ、どのように弁護士に依頼すればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。以下では、弁護士に任意整理を依頼する方法と、簡単な流れについて解説します。

無料相談を利用する

多くの専門家の事務所では、初回相談を無料で行っているところが多くあります。

任意整理を考えている場合、まずは無料相談を利用し、自分の状況を詳しく説明しましょう。相談予約は、専門家事務所のホームページなどから電話やメールで簡単にできるため、借金の総額や現在の返済状況を整理し、相談に備えるとよいでしょう。

無料相談の準備事項

  • 借金の総額
  • 返済の現状(延滞や取り立ての有無)
  • 債権者の数や名前
  • 収入や支出の状況

弁護士との面談とアドバイス

弁護士との面談では、借金の詳細な内容や現在の経済状況を伝えた上で、任意整理が適しているかどうかのアドバイスを受けましょう。ここで重要なのは、弁護士が提示する解決方法が自分にとって無理のない返済計画となっているかを確認することです。

また、弁護士の説明を理解し、自分の状況に応じた最適な方法を見極めることが重要です。

面談時に確認すべきポイント

  • どのような返済計画が提示されるか
  • 利息や遅延損害金の減額について
  • 交渉が不成立となった場合の対応策
  • 任意整理にかかる費用と支払い方法

弁護士との契約を結ぶ

任意整理を依頼することが決まった場合、弁護士との間で契約を締結します。基本的に、契約書や委任状には、弁護士の業務範囲や手続きにかかる費用、報酬などが明記されています。契約を結ぶことで、弁護士が正式に代理人となり、債権者との交渉を進めてくれます。

契約締結時に注意すること

  • 契約書の内容を確認する
  • 契約内容に納得した上で署名する
  • 費用の支払いスケジュールを確認する

まとめ

任意整理は、借金問題を解決し、生活を立て直すための有効な手続きです。
利息や遅延損害金のカット、取り立ての停止、無理のない返済計画を立てることができる点が任意整理の大きなメリットです。また、裁判所を通さずに行えるため、手続きが比較的迅速であり、財産を守りながら進められる点も任意整理の特徴です。

ただし、任意整理には信用情報への影響や元金の減額が難しいといったデメリットもあります。自分に合った解決策を見つけるためには、専門家である弁護士に早めに相談することが大切です。弁護士に相談することで、自分の借金問題に適した解決方法を見つけることができ、精神的な負担も軽減されます。

なお、弁護士への相談は10分からでも可能です。簡単に現状をまとめて、まずは無料相談からはじめてみることをおすすめします。借金問題は放置しても解決することはありません。弁護士による適切なサポートを受け、借金に悩まされない生活を手に入れましょう。

 

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