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任意整理とは?目的、メリット、手続き方法は?

【この記事の法律監修】  
熊本 健人弁護士(大阪弁護士会) 
磯野・熊本法律事務所

「借金の返済が困難になり、毎月の支払いが重荷に感じる」「きつい取り立てが続き、精神的に追い詰められている」このような借金問題を抱える方にとって、任意整理は有効な解決策の1つです。任意整理を行うことで、将来的にずっと発生し続ける利息の軽減や、返済計画の見直しが可能となり、借金問題の根本的な解決を目指すことができます。

本記事では、任意整理の手続き方法、メリット・デメリットについて解説します。

この記事を読むことで、任意整理がどのようにあなたの生活を改善できるかを理解し、弁護士への相談を通じて最適な解決策を見つけることができます。また、任意整理後の生活への影響や注意点についても触れ、今後自身がどうすべきかについても考えていきましょう。

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任意整理とは

任意整理とは、借金を抱える債務者が、弁護士や司法書士を通じて債権者(貸金業者やクレジットカード会社など)と直接交渉し、利息や返済計画の見直しを行う債務整理手続きの1つです。任意整理では、裁判所を介さず、債務者と債権者が合意に基づいて返済条件を調整するため、手続きが比較的簡単で迅速に進められます。

また、債務整理には任意整理の他に、個人再生や自己破産といった手続きがありますが、任意整理はその中でも借金を返済しながら、家や車などの財産を手放す必要がない点が大きな特徴です。また、手続きによって利息や遅延損害金が減額されるため、月々の返済負担を軽減する目的で行う方が多くいらっしゃいます。

任意整理は、主に複数の借金を抱え、毎月の支払いが難しくなっている方や、取り立てに悩まされている方に有効な手続きです。特に、収入がある程度はあるものの、返済に追われて生活が困難な方にとっては、生活再建に向けたきっかけになるでしょう。

任意整理のメリット

任意整理には、具体的に以下のようなメリットがあります。

1.利息や遅延損害金のカット

任意整理の大きなメリットの一つは、利息や遅延損害金が減額される点です。
これにより、元金返済に専念できるようになり、借金をより早く完済できる可能性が高まります。また、過去に法定金利を超える高利率で借り入れていた経験がある方は、「過払い金」が発生している可能性があるため、併せて確認するとよいでしょう(詳しくは後述)。

2.取り立ての停止

任意整理が始まると、弁護士や司法書士が「受任通知」と呼ばれる書面を債権者に送付します。受任通知を受け取った債権者は、本人に対して直接の取り立てが制限されます。

貸金業法 第二十一条
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
引用:e-Gov法令検索 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)

取り立ての停止により、債務者は精神的な負担から解放されるメリットがあります。

3.月々の返済額の軽減

任意整理では、債権者との交渉により月々の返済額を軽減することが可能です。
毎月の収支ベースで無理のない返済計画が立てられるため、生活費の中から無理なく返済が続けられるようになり、経済的な余裕を取り戻すことができます。

4.財産の保護

任意整理は、手続きの対象となる債権者を自由に選択することができます。
そのため、ローン支払い中の自動車や住宅などを対象から外すことで、財産を処分せずに借金問題を解決できます。手元に残したい財産を守りながら、返済計画を進めることができる点は、特に家族を持つ債務者にとって大きなメリットです。

5.裁判所を通さない手続き

任意整理は、裁判所を通さずに債権者と直接交渉にて解決する手続きです。これにより、手続きが迅速に進み、費用も比較的抑えられ、手軽に取り組めるというメリットがあります。

任意整理のデメリット

任意整理には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

1.信用情報への影響

任意整理を行うと、個人信用情報機関に記録が残り、5年程度は新たな借入れやクレジットカードの利用が制限されます。これにより、車や住宅ローン、クレジットカードの新規作成が困難になってしまうデメリットがあります。信用情報に傷がつくことは、今後の生活に影響を与える可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

2.大きな減額は期待できない

任意整理は、利息や遅延損害金のカットは期待できますが、元金の減額までは難しい場合がほとんどです。特に、借入金額が大きい場合は、返済計画を立てる際に現実的な返済能力がなければ任意整理は行えません。

3.債権者全員と合意できない場合がある

任意整理では、すべての債権者との間で和解が成立しない場合もあります。一部の債権者が合意してくれない場合、任意整理の効果が十分に得られない可能性もあるため、弁護士や司法書士と相談し、状況によっては別の債務整理を視野に入れていきましょう。

任意整理の一般的な流れ

任意整理の一般的な流れは、以下のとおりになります。

1.受任通知の発送

前述したとおり、弁護士や司法書士が依頼を受けた後、債権者に対して「受任通知」を送付します。この通知が届いた時点で、債権者からの取り立てや督促が停止され、債務者は一時的に返済を止めることができます。今まで返済に回していたお金を生活費に回すことができるようになる他、専門家の費用に充てたり、いずれ開始する返済のプール金を積み立てたりといったことも可能となり、精神的・経済的な余裕を取り戻すことができます。

2.利息制限法に基づく引き直し計算

次に、債権者が過去に法定利息以上で貸付を受けていた場合、取引履歴をもとに「利息制限法」にて再計算します。利息制限法では、以下のように利息を制限しています。

利息制限法 第一条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合年一割五分
引用:e-Gov法令検索 利息制限法(昭和二十九年法律第百号)

なお、利息の再計算は「引き直し計算」と言い、元金の減額や、場合によっては過払い金が発生することもあります。過払い金が発生していれば返還請求することも可能です。

3.和解案の提示と交渉

引き直し計算が完了した後、弁護士や司法書士が債権者に対して和解案を提示し、返済条件の交渉を行います。この段階では、月々の返済額や返済期間、利息のカットなど、債務者にとって無理のない返済計画を提示します。債権者との交渉は専門家によって行われるため、債務者は基本的に報告を待っているだけで手続きは進んでいきます。

4.和解書の作成

債権者との和解が成立すると、和解内容を文書にまとめた「和解書(合意書)」が作成されます。この書面には、返済額や返済期間、その他の条件が明記され、債務者と債権者の間で正式に合意が交わされます。和解書が完成すると、任意整理の手続きがほぼ完了となります。

5. 和解に基づく支払開始
和解書に基づいて、債務者は新しい返済計画に従い、返済を開始します。月々の返済額は、任意整理によって調整された額であり、無理なく返済を続けることができるようになっています。債務者は経済的な安定を取り戻し、借金問題を根本から解決させることができます。

任意整理の費用と期間

任意整理を行う際には、費用や手続きにかかる期間が気になる方も多いでしょう。以下では、任意整理にかかる費用と手続きにかかる期間について詳しく解説します。

任意整理の費用

任意整理の費用は、依頼する弁護士や司法書士によって異なりますが、一般的には以下のような費用が発生します。

相談料

昨今、初回の法律相談は無料とする事務所がほとんどですが、弁護士や司法書士によっては相談料が発生することがあります。相場としては以下のとおりです。

  • 相場は10分2,000円、20分4,000円、30分6,000円
  • 1回あたりの相談時間も10~30分がほとんど

着手金

任意整理を開始する際に支払う費用で、1件あたり2万円~5万円程度が目安となります。複数の債権者がいる場合は、その分費用が加算されることがあります。

報酬金

和解が成立した場合に発生する成功報酬で、減額された借金の額に応じて報酬が決定されます。一般的には減額額の10%~20%程度が相場です。

その他の費用

書類作成費や郵送費、交通費などの実費がかかる場合もあります。

ただし、弁護士や司法書士の事務所によって料金体系は異なるため、依頼前にしっかりと費用の内訳を確認しておくことが大切です。

任意整理の期間

任意整理の手続きには、通常3~6か月程度の期間がかかります。
以下は、任意整理の手続きにかかる一般的な期間の目安です。

受任通知の発送から取り立て停止まで

受任通知が債権者に届くまでに数日から1週間ほどかかり、それ以降は取り立てや返済が停止します。

引き直し計算の完了まで

利息制限法に基づく引き直し計算は、弁護士や司法書士が債権者から取引履歴を取り寄せて行うため、1か月程度かかることが一般的です。

和解交渉から和解成立まで

債権者との和解交渉は、1~3か月ほどで進められますが、債権者の対応によってはさらに時間がかかる場合もあります。

支払開始まで

和解が成立し、和解書が作成されると、新たな返済計画に基づいて支払いが開始されます。

任意整理の成功率

任意整理が成功するかどうかはケースによって異なります。
正確な統計はないものの、一般的には任意整理の成功率は高く、弁護士や司法書士を通じて手続きを進めることで、多くのケースで債権者との和解が成立します。

債権者との交渉

債権者が和解に応じるかどうかが成功率に大きく影響します。通常、債権者にとっても一定の返済が確保できるため、和解に応じるケースが多いです。

債務者の返済能力

債務者が提示された返済計画に基づいて返済を続けられるかどうかも、成功率を高める上で重要なポイントです。無理のない返済計画を立てることで成功率を高めましょう。

過払い金の有無

任意整理の過程で過払い金が発生する場合、債務が大きく減額され、成功率が高くなります。

任意整理における債権者との交渉

任意整理の成功には、債権者との交渉が重要な役割を果たします。債権者は、債務者が返済できない場合には、任意整理を通じて元金の一部でも回収できるため、交渉に応じることが一般的です。ただし、交渉の過程には以下のようなポイントがあります。

ポイント1 利息や遅延損害金のカット

多くのケースでは、債権者は法定利息を超える部分の利息や遅延損害金のカットに応じます。これにより、債務者が返済しやすい条件が整います。

ポイント2 返済期間の設定

月々の返済負担を軽減するために、返済期間を延ばす交渉が行われることがあります。これにより、無理のない範囲で返済を続けることが可能です。一般的には3~5年間の返済期間を設定します。

ポイント3 専門家の介入

債権者との交渉は専門的な知識と経験が必要です。特に、利息制限法に基づく引き直し計算や債権者との和解交渉は、弁護士や司法書士のサポートが不可欠です。専門家を通じて交渉を行うことで、債務者にとって有利な条件を引き出しやすくなります。

任意整理後の生活

任意整理が完了した後の生活に不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
確かに、いくつかの変化が生じますが、正しく理解し、対策を講じることで安定した生活を取り戻すことができます。以下では、任意整理後の生活について解説します。

新たな借入の制限

任意整理後、信用情報機関に任意整理の記録が残る間は、新たな借入が難しくなります。例えば、住宅ローンや自動車ローンを組むことができなくなる可能性、クレジットカードの発行などができなくなる可能性が高いです。とはいえ制限は一時的なもので、通常、5年程度の経過によって信用情報は抹消されるため、一定期間が過ぎれば信用情報は回復します。
その間、日常生活の中では、現金による支払いやデビットカードなどを有効活用しましょう。

家族に知られる可能性

任意整理は裁判所を通さずに行うため、家族に知られる可能性は低いです。しかし、任意整理後にクレジットカードやローンの利用が制限されることによって、間接的に家族に知られることがあります。事前に家族に相談しておくことで、トラブルを回避できるでしょう。

資産や財産の保護

基本的に任意整理は、自己破産のように財産を手放す必要がないため、家や車といった大切な資産を保持したまま借金問題を解決できます。ただし、完済までしっかりと返済計画に従い、返済を続けることが求められます。無理のない返済計画が立てられているため、生活に大きな支障をきたすことなく完済ができるケースが多いです。

過払い金返還の可能性

過払い金は、過去に高い金利で借り入れをしていた場合に発生する、払いすぎた利息の返金です。特に、2010年以前に消費者金融やクレジットカードのキャッシングで借り入れをしていた方には、過払い金が返還される可能性があります。
以下では、過払い金が発生する仕組みと、返還請求の条件について詳しく説明します。

過払い金が発生する仕組み

過払い金が発生する背景には、かつて存在した「グレーゾーン金利」という金利設定があります。これは、利息制限法の上限金利(多くの場合18%)を超える金利であっても、出資法の上限金利(29.2%)以内であれば違法ではないとされていたためです。多くの貸金業者は、このグレーゾーン金利の範囲内で高い利息を設定していました。
しかし、利息制限法の上限金利を超えた分の利息は、本来支払う必要がないものであり、払いすぎた分として返還請求できるのが「過払い金請求」です。
過払い金は、借入の利息を利息制限法に基づいて再計算することで、発生した差額分が元金に充当され、さらに余剰があれば返金される仕組みです。

過払い金請求の対象となる条件

過払い金請求が可能かどうかは、以下の2つの条件を満たしているかに依存します。

2010年以前に借入をしていたこと

グレーゾーン金利は2010年の法改正で廃止されました。よって、それ以前に借り入れをしていた方は、過払い金が発生している可能性があります。

完済から10年以内であること

過払い金の返還請求には時効があり、最後に取引を行った日から10年以内に請求しなければなりません。この期間を過ぎると、過払い金を請求する権利が消滅します。

過払い金が発生しないケース

一方で、過払い金が発生しない取引もあります。代表的なケースは次のとおりです。

  • 銀行のカードローンやグレーゾーン金利でない取引
  • ショッピングのリボ払い
  • 完済してから10年以上経過している場合

過払い金返還の可能性を確認するために

過払い金が発生しているかどうかを確認するためには、各債権者との取引履歴を確認し、弁護士や司法書士に相談することが重要です。任意整理では、手続きの過程で取引履歴の取得と引き直し計算を行うため、並行して過払い金の確認が可能です。
ただし、過払い金には10年という時効があるため、借入期間が長い方や、高金利での借り入れに心当たりがある方は、早めに専門家に相談しましょう。

他の債務整理との比較

債務整理には、任意整理以外にも個人再生や自己破産といった手続きがあります。
それぞれの手続きには特徴やメリット・デメリットがあり、どの方法が最適かは債務者の状況によって異なります。以下では、他の債務整理手続きと任意整理を比較してみます。

任意整理と個人再生の比較

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、残った借金を3年から5年かけて返済する手続きです。任意整理との主な違いは、個人再生の場合、借金の元金そのものが減額される点です。ただし、裁判所の手続きが必要で、手続きに時間と費用がかかる。
個人再生は、住宅ローンが残っている場合でも自宅を手放さずに済む点で、任意整理よりも有利な場合がありますが、裁判所を介する煩雑な手続きを経る必要があります。

任意整理と自己破産の比較

自己破産は、裁判所に「支払い不能状態」を認めてもらうことで、借金全額を免除してもらう手続きです。自己破産をすれば、原則として借金は返済する必要がなくなりますが、財産の一部を手放すことになります。また、信用情報に与える影響も大きく、手続きが終了するまでの期間は、資格制限や居住制限などが生じることもあります。

弁護士へ依頼する方法

任意整理は、弁護士に依頼することで手続きがスムーズに進み、個々の状況に応じて最適な解決策を講じることができます。とはいえ、弁護士にどのように依頼したらいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。以下では、弁護士へ依頼する際の流れを解説します。

1. 無料相談を利用する

多くの法律事務所では、借金問題に関する初回の相談を無料で行っています。まずは、電話やメールフォームなどで相談予約を取ることからはじめてみましょう。
相談時は弁護士に現状を伝え、自分の借金問題が任意整理に適しているかどうかを判断してもらえます。現在の借金額や収入、返済の状況を整理して伝えるとよりスムーズです。

2. 弁護士との契約を締結

相談の結果、任意整理を進めることが決まったら、弁護士と正式に契約を締結します。
契約書や委任状には、任意整理にかかる費用や、弁護士の業務範囲などが明記されており、手続きに関する詳細が記載されています。

弁護士との契約を交わすことで、正式にあなたの代理人として任意整理を進めてくれます。なお、相談したからといって必ず契約しなければならないわけではありません。自分に合った弁護士を探すためにも、複数の事務所に相談してみるのも良い方法です。

3. 必要な書類を準備する

任意整理を進めるには、借金の状況や収入に関する書類が必要になります。例えば、債権者との契約書や取引明細、収入証明書などが含まれます。基本的には弁護士から指示された書類を揃えることで、手続きは進んでいくのでご安心ください。

必要書類の取得方法がわからなければ弁護士に代理で取得してもらったり、取得方法を教えてもらえたりするため、少しでも不明点があれば積極的に質問していくとよいでしょう。
必要な書類がすべて揃えば、あとは弁護士側が債権者との交渉、和解などを行ってくれるため、基本的には待っているだけで手続きは完了します。

まとめ

任意整理は、借金問題に悩む方にとって、生活を立て直すきっかけとなる手続きです。
裁判所を介さず、利息や遅延損害金のカットを通じて無理のない返済計画を立てることができ、家や車などの大切な財産を守りながら生活を再建できます。

しかし、任意整理には信用情報への影響や、新たな借入が困難になるといったデメリットもあります。自身の状況に合った最適な解決方法を選ぶためには、早めに弁護士へ相談し、的確なアドバイスを受けることが重要です。

弁護士への相談は10分からでも可能です。相談までのハードルはそれほど高くないので、どうかご安心ください。まずは、ご自身の状況を弁護士に相談することで、借金問題を根本から解決するために何が必要かをアドバイスしてもらいましょう。

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