交通事故の加害者が知っておくべきこと【加害者側】~対応・心構えと、弁護士に相談するタイミング~
【この記事の法律監修】
名波 大樹弁護士(大阪弁護士会)
名波法律事務所
年間30万件近く発生してしまう交通事故。
もし加害者になってしまったとき、どのように対応をしていけばよいのでしょうか?
この記事では、交通事故の加害者が対応すべきことから、弁護士に相談する適切なタイミングまで詳しく説明します。
この記事を読むことで、交通事故の加害者になってしまった方は、事故現場や事故の後の示談の場合の対応方法や、刑事事件へ発展してしまった場合の流れ、自身の心のケアについて知ることができます。
流れを追いながら想定されるトラブルについて、また適切な弁護士への相談のタイミングにも触れていきます。
1.交通事故の加害者になってしまったとき、すぐに対応すべきことは?
もし交通事故を自分が起こしてしまったとき、どのような対応をすべきなのでしょうか?
交通事故が起きた直後の対応方法は以下のとおりです。
- 負傷者がいる場合は救護・救急車を呼び、警察に連絡する
- 警察の実況見分や捜査にきちんと協力する
- 事故の被害者と連絡先を交換しておく
- 任意自動車保険に入っていれば保険会社に連絡
上記の順番はできる限り守るようにしましょう。
1-1.負傷者がいる場合は救護・救急車を呼び、警察に連絡する
負傷者救護と警察への報告は道交法で義務と明記されています。
被害者が怪我をしたり、具合が悪そうにしている場合は救急車を呼んでおいた方がよいでしょう。
違反すると刑事罰を受けてしまうことになりますので、必ず行ってください。
道路交通法
(交通事故の場合の措置)
第七十二条一項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。
引用:e-Gov 法令検索 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)
1-2.警察の実況見分や捜査にきちんと協力する
現場に警察が到着したら、実況見分や捜査にきちんと協力しましょう。
かなり動揺していると思いますが、きちんと事故当時の状況を説明して「実況見分調書」の記載をしてもらってください。
この「実況見分調書」は事故後に保険会社同士で示談交渉をする際にも必要な書類です。
1-3.事故の被害者と連絡先を交換しておく
次に、事故の被害者と連絡先を交換しておくことも重要です。
被害者への謝罪やお見舞いに訪問するため、という目的もありますが、
交通事故が起きた場合、その後の過失割合や保険金額についての示談のやり取りは任意保険の自動車保険会社の担当者が行います。
スムーズに解決するためにも、被害者にできれば以下を確認しておきましょう。
- 氏名や住所、連絡先
- 怪我をした方が搬送された場合は搬送先
- 車のナンバーを書き留める
- 任意保険に加入しているかどうか
また、事故後すぐ現場で、「全額支払います」などと被害者に過失割合について話をしないように注意してください。
交通事故の過失割合というのは、簡単に判断できるものではありません。
どちらが事故の原因となったかだけでなく事故当時の交通事情なども影響します。
さらに、その場で見舞金など金銭を支払ってしまうことも避けましょう。
金銭的なことは「まずは保険会社に連絡します」などと話し、自分の責任を言い切らないように気をつけましょう。
とは言え「自分の方が明らかに過失割合が大きそうなのに、どう話せばよいか分からない」ということもあるかもしれませんね。
最近は保険会社で「事故現場で被害者と電話で代わって話す」といったサービスがある場合もあります。
状況に応じてそのようなサービスを利用してみるのもよいでしょう。
2.被害者にはどのタイミングで謝罪すべき?対応するときのマナーは?
交通事故を起こしてしまい、明らかに自分に非があるような場合は、被害者に早めに謝罪をしておいた方がよいでしょう。
なるべく早く、できれば翌日から3日以内に何らかの方法で謝罪をすることをおすすめします。
いくつか方法やマナーがありますので、説明していきます。
2-1.直接訪問して謝罪する
まず、誠心誠意謝罪の気持ちを表すには、被害者の自宅や入院中の病院へ謝罪のため直接訪問するのがよいでしょう。
気をつけておいた方がよいマナーは以下のとおりです。
- アポイントを取って訪問する
- 派手な服装でなく、できる限り質素な服装にする
- 菓子折りを持っていく(のしはつけず、5,000円程度にする)
- 事故を想起させるため自動車で行かない
- タクシーを利用する場合は被害者の自宅から見えないところで降りる
2-2.謝罪文を送る
被害者が入院していたり、訪問を断られてしまうこともあるかもしれません。
そんなときには、謝罪のために手紙を書くのもひとつの手段です。
自分の事情や言い訳ばかり並べた謝罪文になってしまうと、被害者の感情を逆撫でしてしまうおそれがあります。
謝罪文もいくつかマナーがありますので、確認しておきましょう。
- 無地の封筒や便箋を使う
- 直筆で書く
- 必ずお詫びから書き始める
- 人身事故の場合、被害者が怪我をしたという情報がなくても被害者の体調を気遣う
- 言い訳にならないように気をつけながら経緯を説明する
この中でも、お詫びの気持ちを表すことと、被害者の怪我の状態や体調を気遣うことが最も大事なことです。
2-3.電話で謝罪をする
電話だけで謝罪をすることはなるべく避けた方がよいですが、被害者から訪問を拒否されてしまった場合は、電話で謝罪をすることも考えられます。
- 電話する時間帯は日中、朝や12:00頃は避けた時間にする
- 被害者の体調や怪我の状態を気遣う連絡をする
- 長々と話しすぎない
被害者の怒りが強く、訪問を断られる場合でも、少しでも怒りを和らげられるように誠心誠意謝罪をしましょう。
2-4.謝罪や事故後の手続きについて不安なときはこのタイミングで弁護士に相談するのもあり
謝罪に行く前のタイミングで弁護士に相談するのも、よりスムーズにこの後の交渉が進んでいく可能性があります。
一部では、交通事故の後は保険会社が示談交渉を代理で行うため、謝罪は個人で行うべきではないという意見もあります。
しかし、示談交渉が決裂して裁判で争うような事態になってしまった場合はどうでしょうか?
一度も謝罪をしていないと、被害者からも裁判官からも印象が悪くなってしまう可能性があります。
謝罪のタイミングや保険会社とのやり取りで不安がある場合、事故後の比較的早いタイミングで弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
状況を確認してもらいながら、的確なアドバイスを受けることができます。
3.見舞金を渡すときの相場は?注意することはある?
見舞金は賠償金とは別に謝罪の意思を示すために渡すものですが、その見舞金には実は2つの種類があります。
- 加害者が直接被害者へ渡すもの
- 被害者の保険会社から支払われるもの
保険会社からの見舞金は、被害者が入っている任意保険から支払われるものです。
主に搭乗者傷害保険に加入していると受け取れる場合があります。
今回は加害者が渡す見舞金について見ていきましょう。
3-1.加害者が渡す見舞金の相場
加害者が渡す見舞金は、法律で決まっているものではありません。
あくまで加害者が謝罪の気持ちを示すために自主的に渡すものです。
相場は大体10〜30万円程度とされています。
3-2.見舞金を渡すときの注意点
見舞金を渡すときに注意することは、以下が挙げられます。
- 事故の後1週間以内に渡すこと
- あまりに高額な金額を渡さない(相場内に抑える)
謝罪の気持ちを表すために相場を大幅に超える金額を渡すのはやめておきましょう。
見舞金が高額すぎると、被害者が示談交渉後にもらえるはずの損害賠償額が減額されてしまうこともあるからです。
もし金銭を受け取ってもらえない場合は、お見舞い品として菓子折りを渡すのもよいですね。
4.保険会社とはどういう流れで示談交渉をするの?
交通事故の後に保険会社に連絡をすると、それからの相手との示談交渉を代行してくれます。
基本的には以下の流れで進んでいくことが多いです。
- 加害者、被害者から保険会社に交通事故があった旨連絡が入る
- 事故原因や損害状況等の調査をする
- 人身事故で治療が必要なときは、治療終了後に連絡を受ける
- 話し合いによる示談交渉を行う(双方の保険会社同士で行われることが多い)
- 保険会社から示談書が出る
- 加害者・被害者ともに署名捺印
- 支払いが行われる
この期間は2〜3ヶ月かかるのが一般的です。
4-1.保険金はどのように使われるの?
それでは、保険金はどのように被害者の元に渡るのでしょうか?
事故の種類によって使われる保険内容が異なりますので、説明していきます。
4-1-1.人身事故の場合
人身事故の場合に使用できる保険金には、以下の2種類があります。
- 自賠責保険(強制保険)
- 対人賠償保険(任意保険)
自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する際に必ず入る義務がある強制保険です。
人身事故についてはまずこの自賠責保険で保険金を支払います。
不足分については任意保険の対人賠償保険で保険金を支払います。
4-1-2.物損事故の場合
単独事故である物損事故には、強制保険はありませんので対物賠償保険という任意保険で保険金を支払います。
他人の車両や家の塀を破損した場合は一般的ですが、道路でガードレールや電柱・標識を壊してしまった場合にも賠償が必要になります。
この場合も所有者に連絡をして賠償しなければなりません。
4-1-3.示談交渉の注意点
加害者として特に注意すべきことは、相手が無過失と判断された場合です。
この場合法律上、被害者側の保険会社は示談を代行できません。
加害者側は保険会社に代行してもらうのですが、被害者は個人で保険会社と示談交渉を行います。
被害者から加害者側へ示談に関する要求や相談があるかもしれません。
自分で判断して、賠償額に関する内容などを口約束で決めないように気をつけましょう。
保険会社の示談交渉と内容が異なった場合にさらなるトラブルを生む可能性があるからです。
4-1-4.保険会社の示談交渉に納得できない場合
示談の交渉結果に疑問があったり、納得できないときは弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
相場以上の金額を支払っているとなると、次年度以降の保険金額にも影響します。
弁護士が賠償内容を確認して、代わって保険会社と話をしてくれたり、示談交渉自体を代わって対応することもできます。
5.慰謝料と賠償金の違いは?金額の相場や支払い義務・無保険時の法的責任と対応方法
慰謝料と賠償金を混同している方も多いのではないでしょうか。
その違いや金額の目安、支払い義務について見ていきます。
また、加害者が無保険だったときの対応方法も紹介します。
5-1.慰謝料と賠償金の違い、相場
慰謝料と賠償金は、全く違うわけではありません。
厳密に言うと、賠償金の一部に慰謝料が含まれるというイメージです。
5-1-1.慰謝料
被害者の精神的苦痛に対して支払われる賠償金の一種です。
加害者は人身事故で相手が怪我をしたり死亡した際に支払い義務があります。
民法
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用:e-Gov 法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
慰謝料も保険を使って支払うことができますが、被害者が受けた怪我の重症度に比例して金額も変わってきます。
相場ではありますが、以下の図を参考にしてみてください。
強制保険 | |
入通院慰謝料 | 日額4,300円 |
後遺障害慰謝料 | 32万円〜1,850万円程度 |
死亡慰謝料 | 400万円〜1,350万円程度 |
任意保険 | |
入通院慰謝料 | 25万円〜120万円0~200万円程度 |
後遺障害慰謝料 | 110万円〜2,800万円程度 |
死亡慰謝料 | 2,000万円〜2,800万円程度 |
被害者が弁護士に示談交渉を依頼した場合はさらに高額になる可能性はあります。
5-1-2.賠償金
慰謝料を含め、被害者の治療費や破損したものの修理費・休業した場合の賠償などの総称です。
相手の怪我や被害の大きさによって金額には幅があります。
軽い物損事故では数万円程度から、死亡事故では最大1億円ほどの賠償金が必要になることもあります。
5-2.加害者が無保険の場合の法的責任
それでは、加害者が無保険だった場合、どのように対応すればよいでしょうか。
どのような法的責任を負うのかも見ていきます。
5-2-1.無保険の加害者が負う法的責任
- 民事の損害賠償責任
- 刑事責任
- 行政上の責任(免許の取り消しなど)
もし強制保険である自賠責保険に加入していない場合は、刑罰が課せられます。
また、任意保険に入っていないと、示談交渉を自分で行わなければならなくなります。
損害賠償金額を支払えない場合は訴訟のリスクも高いと言えるでしょう。
5-2-2.無保険の加害者の対応
無保険の場合は弁護士に相談するのが最もよい手段です。
被害者との示談交渉はもちろん、訴訟にまで発展してしまった場合は代理人として法廷で有利になるよう主張・立証をしてもらえます。
6.仕事中や通勤途中での事故だと労災は使える?対処法や会社への報告義務とその手続き
仕事中や通勤中の怪我だと労災が使えることはよく知られています。
では交通事故を起こしたのが仕事中や通勤中であった場合はどうでしょうか。
6-1.労災保険は加害者でも利用できる
過失割合にかかわらず、加害者であっても労災保険は利用できます。
- 加害者本人の治療費
- 加害者本人の休業補償
ただし、被害者への補償や、加害者自身の車両の修理はできないので注意が必要です。
また、故意に起こした事故や通勤ルートから外れている場合は認められないこともあります。
6-2.労災保険を使う場合の会社への報告
労災保険を使う場合は必ず会社へ報告が必要です。
怪我の治療の場合は労災指定病院を受診しましょう。
一度立替払いをすることもありますが、会社へ報告して必要な手続きを行うことで、治療費は戻ってきます。
7.被害者から直接賠償金を請求された場合やコミュニケーションがうまく取れない場合どうすればよい?
被害者とのコミュニケーションがうまく取れず困ってしまった場合は、弁護士に相談してみるのもひとつの手です。
加害者が保険会社へ示談交渉をお願いしたとしても、被害者も同じように保険会社に代行してもらうとは限りません。
特に被害者側に過失がない場合は、被害者本人が示談交渉に臨みます。
被害者から直接連絡がきて過剰な要求をされたり、直接交渉を断っても何度も執拗に連絡される場合、対応方法について弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
8.被害者が死亡してしまった場合、どのような対応をすればよい?
死亡事故を起こしてしまった場合、どのような対応をするのがよいのでしょうか?
8-1.葬儀に参列する際
まずは、葬儀に参列してよいかどうか、被害者遺族に事前に確認をするようにしましょう。
ひとりで参列するのが不安であれば保険会社の担当者や弁護士など、専門家に同席してもらうのもよいかもしれません。
8-2.香典について
葬儀に参列できることになったら、必ず香典は持参しましょう。
受け取ってもらえない可能性もありますが、用意して渡すことは重要です。
また、相場は10〜20万円程度と言われています。
見舞金同様、相場より高い金額を包むのは避けた方がよいでしょう。
被害者の賠償金の減額だけでなく、その場でもう終わりにしたいという印象を与えかねません。
また、香典を受け取ってもらえない場合には後日謝罪文を書いて渡すというのも誠意をもって対応するひとつの手段です。
9.加害者が未成年の場合に必要な手続きや対応は?加害者家族へのサポートはある?
加害者が18歳以下の未成年の場合、どのような手続きがあるでしょうか?
加害者家族へのサポートもご紹介します。
9-1.加害者が未成年の場合どうなるのか?
不法行為の責任能力は、12歳頃から認められる傾向にあります。
またバイクや原付自動車の免許は16歳から取得できますので、任意保険に加入していれば成人と同様に任意保険の示談代行サービスが利用できます。
また、未成年の場合は特に自転車での事故に備えて自転車保険に入っておくのもおすすめです。
責任能力が認められない場合には、加害者家族に監督義務違反として損害賠償を請求されることもあります。
9-2.加害者家族のサポート
加害者家族が監督義務違反として損害賠償請求された場合、弁護士に相談して解決を図るのがよいでしょう。
個人で被害者側の保険会社担当者や弁護士と対応するのは難しい場合が多いです。
また、加害者家族はインターネットなどでひどいバッシングを受ける場合があります。
あまりにひどいバッシングや脅迫のようなことが行われる場合は警察へ相談しましょう。
また加害者家族をサポートするNPO法人などもいくつか存在しています。
10.刑事事件に発展してしまった場合どのような流れになるの?
交通事故を起こしてしまった場合、刑事事件に発展することもあります。
具体的にどのような案件が対象となるのか、またどのような流れで進んでいくのか見ていきましょう。
10-1.刑事事件に発展する交通事故
交通事故は何でも刑事事件になるというわけではありません。
基本的には重大な過失のある人身事故が多いですが、一部物損事故人身事故でなくても刑事事件になることがあります。
警察が捜査を行った後、検察によって起訴されることとなります。
刑事事件に発展しやすい交通事故の例はこちらです。
- ひき逃げ事故
- 死亡事故
- 飲酒運転による事故
- 大幅なスピード違反による事故
- あおり運転による事故
- 無免許運転
このうち、逮捕・取り調べを受けるのは悪質な案件です。
ひき逃げや飲酒運転、あおり運転などが該当します。
10-2.逮捕後の流れ
逮捕された場合、以下のように進んでいくこととなります。
- 逮捕
- 勾留
- 起訴
- 刑事裁判
- 判決
起訴までは最長23日警察署に逮捕拘留されることもあります。
10-3.在宅起訴の場合
逮捕、拘留されなかった場合には以下の流れで進んでいきます。
- 捜査
- 書類送検
- 在宅起訴
- 刑事裁判
- 判決
10-4.刑事罰の種類
交通事故の刑事裁判の結果有罪となってしまった場合には、以下のような刑事罰があります。
- 過失運転致死傷罪
- 過失傷害罪
- 重過失致死傷罪
有罪となると懲役・禁錮・罰金のいずれかが科されます。
11.加害者としての責任範囲と義務は?どの範囲まで負担すべき?
ここまで加害者が課される責任についてお伝えしてきました。
ここでまとめてご紹介します。
11-1.加害者が負う責任
- 民事の損害賠償責任
- 刑事責任
- 行政上の責任
11-2.民事責任の範囲
民事責任としては損害賠償を保険会社が対応してくれます。
その範囲には以下が挙げられます。
- 怪我した場合の治療費
- 慰謝料
- 車の修理費
- 代車費用
- 休業した場合の損害
- 後遺症による逸失利益
しかし、どこまでを賠償すべきかは事故の程度によって異なります。
過去の判例にもよりますので、示談交渉中に不安なことがあれば、保険会社や弁護士に確認して進めていきましょう。
12.被害者と加害者が同じ保険会社に加入している場合はどうなる?トラブル回避策は?
被害者と加害者が同じ保険会社ということはそれなりにある話ではあります。
そういった場合に起こりうるトラブルはあるでしょうか?
12-1.加害者と被害者が同じ保険会社に入っているメリット
メリットとしては、同じ保険会社なので連絡や情報共有がスムーズに行われることでしょう。
示談交渉もスピーディーに行われる可能性があります。
12-2.加害者と被害者が同じ保険会社に入っているデメリット
基本的には、同じ会社であっても示談交渉は別の担当者で行われるため、大きなデメリットはありません。
ただ、被害者の感情としては「同じ保険会社だから賠償金が少なくなっているのではないか」などと感じて、示談交渉の結果になかなか同意をしてくれない可能性も考えられます。
もし不審に思った被害者が示談に同意してくれず困った場合には、一度弁護士に相談してみるのもよいかもしれません。
13.加害者のメンタル面での負担を解消するには?
交通事故の加害者は、通常の犯罪よりもメンタル面で苦痛を受けることが多くあります。
人を傷つけようという思いがなくても、被害者に大きなダメージを与えてしまったこと、また激しい事故の経験で心にダメージを負ってしまうためです。
罪悪感やストレスから、PTSDやうつ病を発症してしまう加害者も少なくありません。
周囲の人も加害者の様子がおかしかったり、不安を感じる場合にはメンタルクリニック受診を勧めましょう。
カウンセリングや投薬治療によって、症状が和らぐこともあります。
加害者だからと自責の念からなかなか自身の治療を行わない方もいますが、加害者も責任を果たせば、心身ともに少しずつ元の生活へ戻っていってよいのです。
14.弁護士へ相談したいけどどんなことをしてくれる?弁護士費用で経済的負担を軽減する方法
上記で挙げたさまざまなトラブルから、弁護士に相談をしたいと思った方も多いでしょう。
弁護士はどのようなことをしてくれるのでしょうか。
また、どうしても弁護士に依頼すると費用が高くなるのでは?という不安もあるかと思いますので、解説していきます。
14-1.交通事故の加害者が弁護士に依頼して対応できること
弁護士に依頼できることには以下が挙げられます。
14-1-1.示談交渉までにできるサポート
- 被害者へ謝罪タイミングについての相談
- 保険会社の示談代行が上手くいかない場合の示談交渉代理
- 無保険の場合の示談交渉代理
- 被害者から直接請求されて困ったときの対応
- 保険会社や警察とのやり取りに不安があるときの代理
- 慰謝料や賠償金の減額・分割交渉
- 支払い困難な場合の解決策の提案
14-1-2.刑事事件に発展する場合のサポート
- 警察や検察の取り調べの対応方法の助言
- 早期釈放の交渉
- 不起訴、執行猶予を獲得するために動く
- 裁判での弁護や手続き面でのサポート
特に無保険の場合や刑事事件に発展した場合は、弁護士への相談は早めに行った方がよいでしょう。
被害者や保険会社とトラブルになりそうな場合にも、相談だけでも行ってみるのもよいですね。
14-2.弁護士費用の負担軽減方法
サポート内容が充実しているとは言え、弁護士に依頼すると費用が高そう、とためらってしまう人もいるでしょう。
次に弁護士費用を抑えるための方法を紹介します。
14-2-1.無料相談の活用
初回の相談であれば、無料で受け付けている弁護士も多くいます。
全体的なサポートではなく、対応方法のアドバイスに悩む場合は一度、無料相談へ行ってみるのもよいでしょう。
14-2-2.弁護士費用特約の活用
保険会社では、特約として弁護士費用を補償してくれるサービスがある場合があります。
1回の事故につき300万円程度補償されることもありますので、特約を契約していないか確認してみましょう。
ただ、弁護士費用特約は事故後〜示談成立までの間までしか使えません。
不安に思った場合は早めに保険会社に連絡して、使用する意思表示をしましょう。
14-2-3.弁護士費用の相場
弁護士に相談した場合の費用の相場は以下のとおりです。
(カケコムの予約での相談料相場)
- 相談料は弁護士毎に異なる
- 相場は10分2,000円、20分4,000円、30分6,000円
- 1回あたりの相談時間も10~30分が多い
まとめ
ここまで、交通事故の加害者になってしまった場合に知っておくべきこと・心構えや弁護士に相談するタイミングについて解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- 交通事故を起こしてしまったら、必ず被害者の救護・警察への連絡を行う
- 被害者へは早めに訪問して、誠心誠意謝罪をする
- 任意保険に加入している場合は保険会社が示談交渉を代行してくれる
- 仕事中や通勤中の事故だと加害者も労災保険を使える
- 未成年が起こした事故も責任能力があると判断される場合がある
- 被害者が死亡した場合はできる限り葬儀に参列する
- 加害者や加害者家族へのサポートも重要
- 被害者とのトラブルや刑事事件に発展する際は特に弁護士のサポートは重要
また、下記ような場合は早急に弁護士に相談した方がよいでしょう。
迅速な手続きや対応方法を紹介できます。
- 事故後の対応や手続きに不安がある場合
事故後にとるべき対応や謝罪のタイミング、保険会社とのやり取りなど、手続きの流れを示し、弁護士がアドバイスできる
- 慰謝料や賠償金の支払い義務・金額に悩んでいる場合
被害者への慰謝料や賠償金の金額、負担額に疑問がある場合や経済的な不安がある場合(保険未加入の場合も)、弁護士を通して適正な金額に調整できる可能性や、支払いの相談ができる
- 被害者との関係が難航している場合
謝罪のタイミングがわからない、被害者とのコミュニケーションが取れない、直接請求を受けているなどトラブルがある場合、弁護士が仲介し解決策を提示できる
上記のような状況の場合早急に弁護士に相談することをお勧めいたします。カケコムでは最短即日、弁護士の空き枠を選んで10分2000円からオンラインでの相談が可能です。問題が大きくなる前に相談しましょう。