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麻薬(麻薬及び向精神薬取締法)で逮捕されると?罰則や関連する法律、所持、使用で罪状などが変わるのか?

【この記事の法律監修】  
杉浦 正規弁護士(愛知県弁護士会) 
西山・下出法律事務所

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麻薬で逮捕されるとどうなるのか?

所持量が少ない場合は10日間の勾留で済む場合もありますが、薬物事件では正式な薬物分析に時間がかかることから、検察官が勾留延長を請求するケースが多くあります。

勾留延長期間は最長10日間です。つまり、逮捕・勾留の合計期間は最長23日間となります。

1種類の薬物の単純所持・使用の場合は、1回の逮捕・勾留で済む場合が多いですが、複数種類の薬物を所持・使用していた場合や、営利目的で大量の薬物を所持していたなど捜査に時間がかかる場合は、別の容疑事実で再逮捕・再勾留され、さらに最長23日間勾留されることもあります。
引用:単純所持・使用(警察庁)

ただし、逮捕されたすべてのケースで勾留されるわけではなく、また勾留決定に異議を申し立てる方法もあります。

特に、薬物の所持量が少なく、尿検体の捜索・押収が完了している場合は、隠蔽する証拠がもうないことを強調し、勾留決定前であれば裁判官に勾留請求の却下を求める意見書を提出し、勾留決定後であれば裁判所に勾留決定に対する準抗告申立てを行い、釈放を求めることも可能です。

勾留決定前に勾留請求の却下を求める意見書を提出するためには、逮捕から2~3日しかありませんので、即刻行動できる弁護士に依頼することが不可欠です。

意見書の作成に関しては、経験豊富な弁護士であれば、事件で何を主張すべきかすぐに分かりますが、一方で経験の浅い弁護士に依頼すると、何を書けばよいかすぐには決まらず、検討に時間がかかり、裁判官の勾留請求の決定に意見書の提出が間に合わない恐れがあります。

もちろん、弁護士を選ぶ時間は限られているので、多くの弁護士を訪ねてじっくり比較してどの弁護士がベストかを見極める時間はありませんが、依頼を検討している弁護士が勾留請求を却下したり、準抗告を認めたりした実績があるかどうかを、その事務所のウェブサイトで確認しておくとよいでしょう。

そのような具体的な実績が確認できなくても、少なくともその弁護士が普段から刑事弁護事件を扱っているかどうかは確認しておくとよいでしょう。

麻薬及び向精神薬取締法違反とは?

麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬の所持や使用を規制するために制定された法律です。
この法律で規制される「麻薬」は、同法の別表で「3-アセトキシ-6-ジメチルアミノ-4,4-ジフェニルヘプタン(別名アセチルメタドール)及びその塩類」などといった定義がされています。
引用:別表

そのため、一般の人が「麻薬」が具体的に何であるかを把握することは極めて困難です。「麻薬」とされる薬物の多くは、一般的にコカインやヘロインと呼ばれています。しかし、この法律は「コカイン」という薬物を規制しているのではなく、同じ成分を含む薬物を規制しています。そのため、「コカイン」という薬物を所持していても、その薬物に規制対象の成分が含まれていなければ、麻薬及び向精神薬取締法違反にはなりません。

麻薬及び向精神薬取締法の条文は?

麻薬及び向精神薬取締法の条文は、麻薬及び向精神薬の輸出入、製造、譲渡し等について必要な規制を行うとともに、麻薬中毒者に対して必要な医療を施す等の措置を講ずることにより、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉を増進することを目的として条文は作成されています。
引用:条文

麻薬及び向精神薬取締法違反の時効は?

麻薬及び向精神薬取締法違反の公訴時効が、いわゆる時効です。公訴時効とは、検察官の起訴権を消滅させる時効です。公訴時効が成立すると、検察官は起訴できなくなります。麻薬及び向精神薬所持の公訴時効は、ジアセチルモルヒネ等の所持は7年、ジアセチルモルヒネ等の以外の麻薬所持は5年、向精神薬所持は3年です。

検察官は、麻薬及び向精神薬所持事件について、事件発生後7年、5年、3年まで起訴することができます。
引用:公訴時効(刑事訴訟法250条2項3,4,5号)

麻薬及び向精神薬取締法違反の罰則は?罰金、懲役はどの程度か?

麻薬及び向精神薬の定義は、同法第2条第1項及び第6項に定められています。

すなわち、麻薬は同法別表第1に掲げるもの、向精神薬は同法別表第3に掲げるものをいいます。麻薬として規制されている薬物としては、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、コカイン、モルヒネなどがあります。同法には、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)と、ジアセチルモルヒネ以外の麻薬及び向精神薬について、別途罰則が定められています。

ジアセチルモルヒネ等は、依存性が高いため、同法において特に厳重に処罰されています。ジアセチルモルヒネ等の麻薬類の所持は10年以下の懲役、営利目的の場合は1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処せられます(第64条の2)。

また、同法は、麻薬類の施用又は受施用のみを処罰対象としており、ジアセチルモルヒネ等の施用又は譲受は10年以下の懲役、営利目的の場合は1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処せられます(第64条の3)。

ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬類の所持は7年以下の懲役に処せられます(第66条の1)。営利目的の場合は、1年以上10年以下の懲役、又は情状により1年以上10年以下の懲役と300万円以下の罰金に処せられます(第66条の2)。

第6条の4で営利目的の場合は、5年以下の懲役、又は情状により5年以下の懲役と100万円以下の罰金に処せられます。「譲渡目的」での向精神薬の所持は同条による処罰です。

麻薬及び向精神薬取締法違反に係る罪の罰則

  • ヘロイン等の麻薬の輸入、輸出、製造:1年以上の有期懲役
    [営利目的]無期若しくは3年以上の懲役、又は無期若しくは3年以上の懲役と1000万円以下の罰金の併科

  • ヘロイン等の麻薬の製剤、小分け、譲渡、譲受、引交付、所持:10年以下の懲役
    [営利目的] 1年以上の懲役、又は1年以上の懲役と500万円以下の罰金の併科

  • ヘロイン等の麻薬の施用、廃棄、施用を受けた者:10年以下の懲役
    [営利目的]1年以上の懲役、又は1年以上の懲役と500万円以下の罰金の併科

  • ヘロイン等以外の麻薬の輸入、輸出、製造、栽培:1年以上10年以下の懲役
    [営利目的] 1年以上の懲役、又は1年以上の懲役と500万円以下の罰金の併科

  • ヘロイン等以外の麻薬の製剤、小分け、譲渡、譲受、所持:7年以下の懲役
    [営利目的] 1年以上10年以下の懲役、又は1年以上10年以下の懲役と300万円以下の罰金の併科

麻薬及び向精神薬取締法違反の罰則は初犯の場合はどの程度か?執行猶予はつくのか?

法定刑が懲役10年または懲役7年であっても、初犯であれば刑罰はかなり軽いものとなるでしょう。麻薬や向精神薬の微量所持による初犯の場合、反省をしているなど、再犯のおそれが低いと認められる場合には、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年とされる傾向があります。

他方で、麻薬や向精神薬の密売人で、大量の薬物を所持していたり、薬物を輸入していたりする場合は、初犯であっても執行猶予が付かず、実刑となる可能性があります。

ところで、「執行猶予」という言葉を聞いたことがありますか?

裁判で懲役刑が言い渡されても、加害者に有利な情状が考慮され、執行猶予が与えられれば、加害者はすぐに刑務所に入るわけではありません。執行猶予が与えられれば、加害者は社会で普通の日常生活を送ることができます。しかし、執行猶予期間中に加害者が再び罪を犯した場合は、執行猶予が取り消され、刑務所に収監されます。
罪を犯した者にとって、本当に優しい制度です。

執行猶予は、懲役または禁錮3年以下、または罰金50万円以下に適用されます。法定刑自体が「懲役10年以下」など重い場合でも、最終的な懲役刑が3年以下であれば執行猶予が与えられます。麻薬及び向精神薬取締法違反で有罪となった場合でも、執行猶予がつく可能性があります。
引用:罰金 懲役

不起訴になる場合は、どういった場合か?

逮捕・勾留された事案では、検察官は、原則として10日間の勾留期間内、勾留期間が延長された場合はその勾留延長期間内に起訴するかどうか処分を決定します。検察官は、受け取った薬物所持の容疑について有罪判決が出る可能性が高いと判断した場合、起訴処分することになります。

検察官が起訴しない場合は、「嫌疑なし」、「嫌疑不十分」、「起訴猶予」などの理由で、不起訴処分とします。

前科なしで不起訴・無罪を目指す

身に覚えのない麻薬及び向精神薬取締法違反の場合、弁護士を通じて不起訴・無罪を主張します。例えば、所持容疑であれば、違法薬物の存在を知らなかった、違法薬物と認識していなかったことを主張します。

不起訴や保釈請求で早期釈放を目指す

麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕された場合、10日間の勾留が請求され、多くの場合、勾留決定が出されます。一日も早く釈放されるよう、弁護活動を通じて不起訴を獲得したり、勾留の理由や必要性がないことを主張して釈放を目指します。

麻薬及び向精神薬取締法違反の成立要件は?

麻薬及び向精神薬取締法違反は、麻薬及び向精神薬を、譲渡する場合などです。これらの薬物を合法的に取り扱うには免許が必要なので、所持したりすると、それだけで麻薬及び向精神薬取締法違反となります。

麻薬及び向精神薬取締法違反の罪の成立要件の判定方法

「罪の要件」という言葉があります。罪の要件とは、犯罪が成立するための要件です。罪の要件が満たされていれば、責任能力がない精神障害などの特別な事情がない限り、犯罪が成立します。では、麻薬及び向精神薬取締法違反の場合、罪の要件をどのように判定するのでしょうか。

麻薬及び向精神薬取締法では、研究者や医療関係者以外の者による麻薬や向精神薬の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、取得、使用を禁止しています。麻薬や向精神薬は、麻薬及び向精神薬取締法の別表第1および第3に掲げる薬物すべてと法的に定義されています。

代表的なものとしては、ヘロイン、コカイン、LSD、MDMA などがあります。ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)は、麻薬及び向精神薬取締法違反として特に重く処罰されることが定められています。麻薬及び向精神薬取締法違反と言えるかどうかは、これらの要素ごとに判断されます。

以下では、まず「麻薬及び向精神薬」の意味を理解しましょう。

①麻薬及び向精神薬取締法における「麻薬及び向精神薬」

これは、麻薬及び向精神薬取締法の別表 1 および別表 3 に記載されているすべての薬物を指します。
代表的な麻薬・向精神薬には、ヘロイン、コカイン、アヘン、MDMAなどがあります。いずれも人体に有害な作用があります。
流通形態は薬物によって異なり、粉末、ペースト、錠剤などです。

②麻薬及び向精神薬取締法における「所持」

麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬・向精神薬の輸入、輸出、所持、製造など様々な行為を禁止しています。麻薬及び向精神薬取締法違反の所持は、法的には事実上の身体支配関係とみなされます。麻薬や向精神薬を所持することが典型例ですが、それ以外にも、自宅に保管したり、車の中に隠したり、他人に預けたりすることも「所持」とみなされることがあります。

③ 麻薬及び向精神薬取締法違反における「故意」

麻薬及び向精神薬取締法違反が成立するには、故意が必要です。故意とは、簡単に言えば「わざとやった」ということです。麻薬及び向精神薬取締法違反では、「麻薬や向精神薬だと知らなかった」と主張されることがあります。しかし、これらの主張は法律上はあまり意味がありません。

「何かの違法薬物だと思ったが、麻薬や向精神薬だとは思わなかった」と主張すると、麻薬及び向精神薬取締法違反の故意があったと判断される可能性があります。また「確信はないが、麻薬や向精神薬かもしれない」と考えていた場合、法的には故意があったとみなされます。
つまり、「麻薬や向精神薬かもしれない」というレベルでは、故意があったと判断されることになります。「知らなかった」「理解できなかった」では済まないようです。

麻薬に指定されている薬物の中には、海外では合法ドラッグとして一般的に使用されています。南米ではコカ茶として消費されています。しかし、海外では合法であっても、日本では違法薬物として扱われます。海外で販売されている商品は日本では逮捕されることもあるので、海外から医薬品を持ち帰る際には注意が必要です。

指定されている種類、成分はどういったものがあるのか?

麻薬は使用目的によって2種類に分類されます。

1つは、合成または天然の薬物で、その有効性・安全性が政府によって確認・認可されており、医師が必要に応じて処方できる医療用麻薬です。医薬品の代表的なものとしては、鎮痛剤のモルヒネが挙げられます。

もう1つは、違法に取引される化学物質または薬物です。一時的な快楽のために違法に使用されることもあり、乱用や依存の危険性が高いため、医療用としては認められていません。違法麻薬の代表的なものとしては、コカイン、ヘロイン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)などがあります。

向精神薬は、乱用リスクや治療上の有用性によって、第1種向精神薬、第2種向精神薬、第3種向精神薬の3種類に分類されます。第1種 の向精神薬にはメチルフェニデートが含まれ、第2種 の向精神薬にはフルニトラゼパムとペンタゾシンが含まれ、第3種 の向精神薬にはトリアゾラムとブロチゾラムが含まれます。
引用:麻薬、向精神薬の種類

所持、使用で罪状などが変わるのか?

麻薬の所持や使用はこの法律では、麻薬の所持と使用の刑罰は同じです。違反で逮捕されると、一定期間勾留され、社会生活に大きな影響を及ぼします。

所持、使用の量は成立に関係するのか?

麻薬や向精神薬を所持している場合に成立します。通常、警察官の職務質問で発覚することが多いです。譲渡した形跡がある場合(大量の袋やはかりを所持しているなど)は、より重い営利目的所持罪に問われる可能性があります。

大麻と異なり、麻薬や向精神薬を摂取しただけでも麻薬及び向精神薬取締法違反となります。尿検査などで陽性反応が出れば現行犯逮捕されることもありますが、簡易検査の結果だけで逮捕されず、本格的な検査を待ってから逮捕されるケースもあります。

形状は成立に関係するのか?

固形、錠剤、粉末、気体、液体、原料植物などの形状は麻薬及び向精神薬取締法違反の成立に関係しません。前述のとおり、麻薬等とされる成分が含有されていれば、麻薬及び向精神薬取締法違反となりますので、呼び方や形状などは関係ありません。

  • コカイン:C(シー)、コーク、クラック、チャーリーなど
  • MDMA:エクスタシー、バツ、タマなど
  • ケタミン(液体、結晶)、粉末状があります。
  • LSD:ペーパー、タブレットなど
  • ヘロイン:ジャンク、H(エイチ)など
  • マジックマッシュルーム:ホングレシトス、キノコなど
  • あへん:ブラックスタック、タールなど(左は原料のけし)
  • 危険ドラッグ:液体状、粉末状、葉片状、亜硝酸イソブチル(ラッシュなど)、気体状(シバガスなど)

麻薬及び向精神薬取締法違反で予試験(簡易検査)の後、逮捕などの流れは?

職務質問やや捜索で麻薬や覚醒剤などの違法薬物の疑いが見つかった場合、警察官は現場で予備検査(簡易薬物検査)を実施します。流れは以下のとおりです。

  • 簡易検査の方法は被疑者に事前に説明し、被疑者の同意を得た上で被疑者の前で簡易検査を実施します。
  • 簡易検査で陽性反応が出た場合、被疑者は違法薬物の所持や使用の疑いでその場で逮捕されます。
  • 簡易検査を行うには、違法薬物の疑いの外観から違法薬物の種類を判別し、それに応じた検査キットを使用する必要があります。
    そのため、予備調査や被疑者の供述から薬物の種類を推測できない場合は、その日は帰宅させられ、後日正式な分析を行った上で逮捕されることが多いです。

麻薬及び向精神薬取締法違反と大麻取締法、覚醒剤取締役法の違いは?

覚せい剤取締法

覚せい剤は違法薬物の中でも最も悪質とされ、取引価格は0.1gあたり1~2万円とも言われる高額なものが多いです。

そのため、容易に譲渡されるとは考えにくく、また、覚せい剤を所持する場合には、覚せい剤であること、少なくとも違法薬物であることを十分承知の上で所持するケースが多いため、覚せい剤と知らずに所持していたという言い訳は基本的に通用しません(密輸の場合のように、そもそも違法薬物を所持していると認識していなかった場合は別です)。

覚せい剤は「覚せい剤」「シャブ」「アイス」などの俗語で流通しており、覚せい剤取締法第2条の「覚せい剤」の定義は「フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン及びこれらの塩類」と一般人にはわかりにくいですが、フェニルアミノプロパン等が含まれていることに気づかなかったことで揉めることは少ないと思われます。
引用:覚せい剤取締法

大麻取締法

大麻取締法も覚せい剤と同様に、どのような薬物を規制するかを定めた分かりやすい法律です。

大麻取締法第1条では「大麻」を「大麻草(Cannabis sativa L.)及びその製品」と定義しています。そのため、違法薬物とは知っていたが大麻取締法違反の薬物とは知らなかったという言い訳はあまり聞かれません。

ただし、同条には「ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)並びに大麻草の種子及びその製品は含まれない」とあります。つまり、大麻草由来であっても、法律に違反しない大麻由来製品が存在する可能性があるということです。

例えば、CBDオイルなどの製品が合法製品であるかのようにインターネット上で紹介されているのは、違法な部位を使用した製品ではないからです。

一方で、CBDオイルの中には幻覚作用があるとされるTHCを含むものもあり、実際にCBDオイルを輸入してトラブルになった事例も取り扱っています。大麻由来製品は、原則として大麻取締法に違反する可能性が高いと考えてよいでしょう。
引用:大麻取締法

麻薬及び向精神薬取締法

「麻薬」とは?

覚せい剤取締法や大麻取締法とは異なり、麻薬及び向精神薬取締法は法律名だけではどのような薬物を規制しているのか分かりません。「麻薬」とは、麻薬及び向精神薬取締法第2条第1項において「別表第1に掲げる物」と定義されています。

別表第1には、1番から76番まで様々な塩類等が列挙されており、様々な薬物が「麻薬」として指定されていることがわかります。そのため、薬物名や成分名を聞いただけでは、それが「麻薬」であるかどうかすら分かりません。

「麻薬」に分類される有名な薬物としては、「MDMA」や「コカイン」などがあります。麻薬及び向精神薬取締法では、薬物にジアセチルモルヒネ等が含まれているかどうかによっても罰則が定められています。例えば、ヘロインにはこの成分が含まれているため、より重い罰則が科せられ、輸入などの重罪も裁判員裁判の対象となります。

「向精神薬」とは?

麻薬及び向精神薬取締法第2条第6号では「向精神薬」を「別表第3に掲げる物」と定義しており、別表第3には1号から12号までに各種塩類等が列挙されています。「麻薬」に比べると列挙されている種類は少ないですが、それでも「向精神薬」であるかどうかは分かりにくいといえます。多くは睡眠薬や抗不安薬として使用されています。
引用:麻薬及び向精神薬取締法

一般的な麻薬の症状は?体にどういった影響があるのか?後遺症はあるのか?
麻薬は中枢神経刺激作用があり、健康な人がメタンフェタミン塩酸塩を1~5mg摂取すると、眠気が覚め、気分がすっきりし、疲労感がなくなります。

また、思考力や判断力が向上し、話し上手になり、多幸感を覚えます。食欲抑制効果も強く、欧米では減量薬としても使われてきました。メタンフェタミン塩酸塩を一度に大量に摂取すると(個人差はありますが、初めて使用する人の場合は20~50mgを超えることもあります)、軽症の場合は食欲不振や動悸などの症状が、重症の場合は不眠、体の震え、混乱、幻覚などの症状が現れます。さらに重症化すると、高熱、けいれん、昏睡、虚脱、最終的には脳出血を起こして死亡することもあります。致死量は0.5~1.0グラム程度と考えられています。

麻薬は心理的依存性が高いため、常用者の多くは常用します。耐性もできやすく、常用を続けると摂取量が急増し、慢性中毒に陥ります。慢性中毒の初期症状としては、多弁、落ち着きのなさ、怒り、暴力行為、注意力、集中力、記憶力の低下、意味のない単調な行動を繰り返す傾向などがあります。中毒が進行すると幻覚や妄想などの症状が現れ、暴力的または脅迫的な行動、傷害や殺人などの犯罪につながります。

麻薬の乱用開始から慢性中毒症状発現までの期間は、覚醒剤の摂取量、頻度、摂取方法などによって異なり、個人差も大きいため一概には言えませんが、メタンフェタミン塩酸塩30~100ミリグラムを2か月~1年程度継続して使用すると慢性中毒になる人が多いと言われています。

麻薬中毒の後遺症には、持続的な幻覚や妄想、不安、極端な気分変動などがあります。
薬物使用により、以下の後遺症が起こる可能性があります:

  • 精神病性障害 (幻聴や妄想)
  • 気分障害 (うつ病)
  • 不安障害
  • 睡眠障害
  • せん妄

幻覚剤は知覚障害 (フラッシュバック) を引き起こすこともあります。肝臓や腎臓の機能障害などの身体的影響も起こる可能性があります。
引用:公益財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センター

まとめ

麻薬及び向精神薬取締法違反により逮捕・勾留されると、その影響は大きく、最長で20日間の勾留、それによる解雇や退学の可能性、報道や周りへの周知などといった影響が考えられます。

前述のとおり、逮捕から勾留されるまでの時間は非常に限られており、そして、一度勾留されてしまうと、容易に釈放は認めてもらえないため、勾留前の弁護活動は非常に重要となります。
また勾留後にも、取調べへの助言や、家族や勤務先、学校への連絡、処分に関する検察官との交渉といった弁護活動が重要になります。

家族が逮捕されてしまった場合には、勾留前の弁護活動が今後の状況を大きく左右する可能性がありますので、逮捕・勾留されてしまった場合には、いち早く弁護士に相談することをお勧めします。

 

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