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威力業務妨害とは?【被害者側、加害者側】罰則や裁判例、クレームは妨害となりうるのか?

【この記事の法律監修】  
天野 広太郎弁護士(福岡県弁護士会)
福岡パシフィック法律事務所

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1.威力業務妨害とは

威力業務妨害とは刑法に定められた犯罪行為の1つで、「威力を用いて人の業務を妨害した」場合に成立します。ここでは、威力業務妨害の定義、どのような行為が該当するかについて説明します。

1-1.威力業務妨害の定義

威力業務妨害は、信用及び業務に対する罪として、刑法第234条に次のように定義されています。また、刑罰については第233条(偽計業務妨害)と同様です。

刑法
第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

引用:
刑法(明治四十年法律第四十五号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_35-At_234
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_35-At_233)


この2つの罪は「信用及び業務に対する罪」に分類されており、他人の業務を妨害する犯罪です。

1-2.威力業務妨害に該当する恐れのある行為

威力業務妨害に該当する恐れのある行為としては、執拗なクレームやSNSでの脅迫、暴力的な言動などが挙げられます。

2.威力業務妨害の構成要件、他の妨害罪との違い

威力業務妨害の構成要件は、次のとおりです。

2-1.威力とは

「威力」とは、人の意思の自由を制圧するに足る勢力の事で、物理的暴力に限らず、地位、権威を利用した威圧的行為も含まれます。威力に該当する可能性のある行為は次のような行為です。

  • 暴行や脅迫
  • 大声を発すること
  • 集団で押しかける
  • 怒号を発して暴れる

2-2.業務とは

「業務」とは、社会生活上、反復継続して行われる事務又は事業を指し、利益の有無は関係ありません。そのため、一般的な仕事だけでなく、ボランティア活動、宗教活動、政治活動、自治会やPTAも含まれます。

2-3.妨害とは

「妨害」とは、判例上、実際の業務妨害が発生する必要はなく、「業務を妨害するに足る行為」で良いとされています。

2-4.構成要件のまとめ

以上をまとめると、暴力や大声、SNSでの脅迫など、威力で業務を妨害すれば、威力業務妨害が成立します。

なお、業務妨害が実際に発生する必要が無いため、「妨害」としての要件の範囲が広いこと、未遂罪が規定されていないことも知っておきましょう。

3.威力業務妨害罪と他の妨害罪との違い

他の妨害罪(偽計業務妨害、公務執行妨害)との違いは次のとおりです。

3-1.偽計業務妨害との違い

偽計業務妨害は、他人の不知や錯誤を利用して業務を妨害する犯罪です。偽計業務妨害に該当する恐れのある行為は、次のような行為です。

  • 入学試験でカンニングをした
  • 営業中の店舗の入り口に「休業」と嘘の掲示をした
  • オンラインゲームのデータを改ざんした

3-2.公務執行妨害との違い

公務執行妨害は、暴行や脅迫を用いて公務員が行う公務の執行を妨害する行為です。業務を妨害するという点では威力業務妨害と共通していますが、公務執行妨害では妨害の対象が「公務員の公務の執行」に限られています。
ただし、公務員の指揮にしたがいその手足となりその職務の執行に密接不可分の関係において関与する補助者に対して暴行脅迫を加えた場合も、公務執行妨害罪が成立します(最高裁昭和41年3月24日第一小法廷判決)。

また、公務は警察官の交通整理・逮捕や、税務署員の調査など強制力をもつ公務(権力的公務と呼ばれます)とそれ以外の役所の住民票の発行や運転免許証の更新手続きなど強制力を有しない公務(非権力的公務)に分かれます。

非権力的公務は威力業務妨害の「業務」にも含まれるという考え方があり、警察署に繰り返しいたずら電話をかけた場合は、公務執行妨害罪と威力業務妨害の双方が成立する可能性があります。

4.威力業務妨害罪の時効、罰則等について

威力業務妨害罪の時効、罰則等については次のとおりです。

4-1.威力業務妨害罪の時効

威力業務妨害罪の時効は、犯罪行為が終わった日から数えて3年です。時効が完成すると、その犯罪行為について逮捕・起訴されなくなります。

4-2.威力業務妨害の罰則

威力業務妨害の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。初犯であっても悪質性が高い、被害が大きいような場合は執行猶予がつかず実刑判決を受ける可能性があります。

4-3.威力業務妨害は親告罪?非親告罪?

威力業務妨害罪は非親告罪のため、被害者からの告訴は不要です。そのため、被害者が告訴をしなくても警察・検察が捜査を行い、加害者が逮捕される可能性もあります。

ただし、被害者が申告して初めて捜査機関の知るところになるケースも多いため、今後の被害防止のためにも告訴は有効な手段と言えます。

5.威力業務妨害に該当する可能性のある具体例・判例

実際に威力業務妨害に該当する可能性のある具体例と過去の判例は次のとおりです。

5-1.事例1SNSを使った事例

SNSに殺人予告を投稿する、爆破予告の手紙を出す、といった手段を用いてイベントを延期・中止に追い込む

殺人予告や爆破予告がされるとイベントの主催者はイベントを延期・中止せざるを得ません。軽い気持ちで書いたとしても、被害者(イベントの主催者)側からは判断がつかないため、殺人予告という威圧によって業務が妨害されたと判断されます。

したがって、加害者の意図に関係なく威力業務妨害、場合によっては他の脅迫罪等が成立する可能性があります。

5-2.事例2飲食店でのクレームの事例

飲食店で店員や店長に土下座の強要、長時間のクレーム、退店を求められても退店せず、業務に支障をきたすような行為

限度を超えたクレームを繰り返すと「威力」に該当し、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

5-3.事例3卒業式で大声・怒号して卒業式を妨害した(判例)

平成16年3月11日に実施された都立高校の卒業式において、ある教諭が大声で「本件卒業式は異常な卒業式であって国歌斉唱のときに立って歌わなければ教職員は処分される、国歌斉唱のときにはできたら着席してほしい」と保護者たちに呼びかけ、その教諭を制止してその場から移動させようとした教頭に怒号を上げました。

大声を出す、怒号した行為が「威力」に該当し、卒業式の円滑な遂行を妨害したとして有罪判決を受けました。

6.威力業務妨害と同時に成立する可能性のある他の犯罪

威力業務妨害は、暴行や脅迫など他の犯罪行為によって行われることが多いため、他の犯罪行為も成立する可能性があります。なお、一個の行為が複数の罪に該当する場合は「観念的競合」とされ、該当する罪の中で最も重い刑罰が科せられます。

刑法
第54条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
引用:刑法(明治四十年法律第四十五号)

威力業務妨害罪と同時に成立する可能性のある犯罪と法定刑は次のとおりです。

6-1.暴行罪

暴行を行ったものの、被害者がケガをしなかった場合には暴行罪が成立します。
法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。

店員の衣服を掴んで引っ張り、店舗の業務を妨害すると、暴行罪と威力業務妨害罪の両方が成立する可能性があります。

6-2.傷害罪

暴行により、被害者がケガに至った場合は傷害罪が成立します。
法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

店員を殴ってケガをさせて、店舗の営業をできないようにした場合は、傷害罪と威力業務妨害罪の両方が成立する可能性があります。
このケースの法定刑の上限は、最も重い傷害罪の15年の懲役となります。

6-3.器物損壊罪

他人の物を壊す、若しくは使えない状態にした場合には器物損壊罪が成立します。
法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。

飲食店のテーブルや椅子を壊す、キッチンを汚損して店舗の業務を妨害した場合は、器物損壊罪と威力業務妨害罪の両方が成立する可能性があります。

6-4.脅迫罪

本人または親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して、被害者を脅迫した場合には脅迫罪が成立します。
法定刑は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

相手方に「お前の家を燃やすぞ」と脅迫して業務を滞らせた場合は、脅迫罪と威力業務妨害罪の両方が成立する可能性があります。

6-5.強要罪

本人または親族の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合には強要罪が成立します。
法定刑は3年以下の懲役です。

相手方に土下座を強要して業務を滞らせた場合は、強要罪と威力業務妨害罪の両方が成立する可能性があります。

7.【被害者】威力業務妨害を受けた後の対処法と流れ

客が店舗で暴れて従業員がケガをしたので、やむを得ず閉店した、など威力業務妨害に該当するような行為を受けた場合は、次のような対処を行いましょう。

7-1.被害届の提出

被害を受けた場合は、速やかに最寄りの警察署へ被害届を出します。

7-1-1.警察相談専用電話「#9110」でも相談できる

警察相談専用電話「#9110」は、警察への相談を受理するための総合的な窓口で、犯罪に当たるかどうか分からないものの、警察に相談したいという場合に利用できます。

目の前で威圧行為が行われているなど、緊急の場合には110番に電話しましょう。

7-1-2.被害届=捜査、ではない

被害届は、警察や検察庁などの捜査機関に被害があった事実を申告する書類で、捜査機関はその事件が管轄区域内かどうかに関わらず、受理しなければなりません。しかし、捜査機関は被害届を受理する義務がありますが、それが捜査開始の義務には直結しません。

必ず刑事事件として立件して欲しい場合には、告訴状を作成します。

7-2.告訴状の作成

告訴状の概要、作成方法等は次のとおりです。

7-2-1.告訴状とは

告訴状は、捜査機関に犯罪行為があったことと犯人の処罰を求める意思表示を伝える申告書類です。捜査機関は、被害届と同様その事件が管轄区域かどうかに関わらず、受理する義務があります。

被害届と違い、告訴状は捜査機関が受理すると、その事件について捜査に着手しなければなりません。

7-2-2.告訴状の作成は自分でもできる

告訴状の作成は弁護士に依頼せず、自分で作成することもできます。告訴状の様式は指定がないため、犯罪事実が正確に伝わっていれば受理されます。

しかし、軽微な事件などでは捜査機関が受理してくれないケースもあるため、そのような場合は刑事事件に長けた弁護士に依頼しましょう。

7-2-3.告訴状の作成は弁護士以外にも依頼できる

告訴状の作成は司法書士・行政書士にも依頼できます。ただし、捜査機関への提出については代理権限がないため、自分で提出することになります。

7-2-4.弁護士は捜査官との告訴相談の同席が可能

弁護士に依頼すると、告訴状の作成だけでなく相談、捜査機関への同席も可能です。告訴状作成以外のサポートも必要な場合は、弁護士に依頼すると良いでしょう。

7-3.民事での損害賠償は可能?

威力業務妨害の被害を受けた場合、加害者に対して民事上の責任を問うこともできます。民事事件として、賠償請求する手順は、加害者の特定、証拠収集、損害額の算定など、次のように行います。

7-3-1.①加害者の特定

損害賠償するためには加害者を特定する必要があります。

店内で暴れた場合などは、加害者から直接氏名、住所等を聞き出す方法が一番確実です。逃げていれば現場にいた目撃者の証言や防犯カメラの映像を揃えたうえで、警察に被害届を出せば、警察が加害者を特定してくれる可能性があります。
また、SNSの殺害予告などであれば、プロバイダに発信者情報開示請求を行い、加害者を特定します。

どちらの場合も、警察、裁判所を使って行う方がスムーズです。知人などであれば加害者の特定は容易ですが、名前を知らない常連、初めての客の場合には個人の力で特定することは難しいでしょう。

特に発信者情報開示請求は実務上、裁判手続き無しで開示されるケースがまれなため、基本的には裁判上の請求手続きを利用します。

7-3-2.②証拠収集

犯罪行為による被害を証明するため、壊された物品や設備などの証拠収集はとても重要です。被害物品の現物に加えて、現場写真、日時などのメモも残しておきます。

7-3-3.③損害賠償額の算定

威力業務妨害によって発生した損害を集計し、損害賠償額を算定します。損害賠償の対象となる損害の代表的なものは次のとおりです。

  • 減少した売上:営業できない期間の売上、客の減少によるもの
  • 設備の修理代・購入費用:設備や道具類が壊された場合
  • 人的被害:ケガや精神的苦痛に対する被害

7-3-4.④内容証明郵便による請求

加害者の特定、証拠収集、損害賠償額の算定が終われば、まずは内容証明郵便で加害者に損害賠償額の請求を行うことが一般的です。

内容証明郵便は郵便局が提供するサービスで、内容文書(相手方へ送達する文書)、誰から誰あてにいつ差し出されたか、ということを郵便局が証明してくれます。

加害者に内容証明郵便を送付すれば、裁判も辞さないというアピールになり、加害者にとってのプレッシャーとなります。相手方が事実を認めて損害賠償額が適正と判断すれば、この時点で解決できる場合もあります。

7-3-5.⑤示談交渉

加害者が犯罪事実を認めたうえで、損害賠償額の交渉となったり、捜査機関への告訴の取下げを要望してくる場合があります。お互いに合意ができれば、合意書又は示談書を和解の証として残しておきます。

威力業務妨害罪は非親告罪のため告訴取り下げが可能ですが、その判断には刑事事件についての知識も必要です。

7-3-6.⑥民事裁判

加害者が威力業務妨害の事実を認めない、損害賠償請求を拒否する、損害賠償額に争いがあるなど、合意に至らなければ民事裁判を提起します。

民事裁判を提起し、裁判所の判決により、損害賠償の支払い、妨害行為の差し止めを法的に強制できます。ただし、裁判所の判決は必ずしも被害者の期待通りになるとは限りません。また、民事裁判は多くの時間・費用もかかります。

そのため、民事裁判は経験と知識の豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。
次の項目では、弁護士に依頼するメリットを解説します。

7-4.弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するのは大げさで費用も高額になるため、できれば避けたいと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、威力業務妨害のような大変な事態が起こった場合には、弁護士のサポートがあるとないとでは、結果が大きく変わるでしょう。

7-4-1.刑事・民事どちらも対処してもらえる

弁護士には刑事事件・民事事件どちらも相談できます。証拠保全の方法、告訴状の作成、損害賠償額の算定、訴訟手続きなど、あらゆる手続きとそれに関わるアドバイスをもらえます。

7-4-2.示談にするべきかどうか助言をもらえる

被害者にとって示談交渉をどのようにおこなうかはとても重要です。加害者に絶対に刑事罰を受けさせたい、反省しているので損害賠償だけで良いなどの希望と、今後の裁判の見通しから方針を決めることになります。

裁判をした場合の最終的な結果を確実に予想はできないものの、経験豊富な弁護士は過去の事例などから戦略を考えてくれます。

7-4-3.事件処理を弁護士に任せて、事業の再建などに注力できる

威力業務妨害の刑事告訴・民事の損害賠償請求を自分で行うには膨大な時間と労力が必要です。もしも店舗などが被害に遭っていれば事業の再建にもエネルギーが必要なため、両方を同時に行っていたのでは、どちらも手に負えなくなるかもしれません。

刑事、民事の対応を弁護士に任せることで事件を早期解決しつつ、事業再建・信頼回復にご自身の力を注ぐことが、より良い結果につながるのではないでしょうか。

威力業務妨害の被害に遭った、被害を認識して今後の方針に悩んでいる場合には、まず弁護士に相談しましょう。

8.【加害者】威力業務妨害で逮捕された場合の流れ、リスクと対処法

ここでは威力業務妨害で逮捕された場合の流れ、リスクと対処法について詳しく解説します。

8-1.逮捕~起訴までの流れ

威力業務妨害で逮捕されてから起訴までの流れは次のとおりです。

8-1-1.逮捕から送致・勾留請求(最長72時間)

警察官が被疑者を逮捕すると、取り調べを行った上で48時間以内に検察官に事件を送致するかどうかを判断します。検察官は被疑者が送致されると、取り調べた上で、24時間以内に起訴・不起訴の判断を行います。

24時間で起訴・不起訴の判断ができない場合は、裁判所に対して引き続き身柄を拘束する勾留請求手続きを行います。

8-1-2.勾留は最長20日間

裁判官が勾留請求を認めれば、被疑者は原則10日間、延長された場合は最長20日間勾留されて、取り調べを受けます。逮捕から勾留請求までの3日間(72時間)と合わせると、最長23日間身体拘束されて取り調べを受ける恐れがあります。

弁護士に依頼していれば、裁判所に勾留の却下や取消し求めてもらうことができます。裁判官が弁護士の勾留却下や取消の申し出を認めれば、

釈放されて、在宅での調査に切り換わる可能性があります。

8-1-3.起訴・不起訴が決定する

勾留されている場合は、勾留期間満了までに検察官は、起訴・不起訴を決定します。

起訴されると身体拘束が継続し、刑事裁判を受けることになります。不起訴処分となれば、刑事裁判が開かれず、そのまま釈放されて社会生活に戻ることができます。刑事裁判が行われていないので、前科もつきません。

逮捕されて弁護士に依頼する場合は、被害者との示談交渉も依頼しましょう。被害者と示談が成立して、被害届や告訴が取下げられた場合、検察官が不起訴処分とする可能性が高いです。もし、被害届や告訴が取下げられなくても、示談して被害弁償したことをもって、不起訴処分とされるケースも多くあります。

8-2.起訴された場合の流れ

起訴されてしまうと、引き続き身柄拘束(起訴後勾留)され、刑事裁判を受けることになります。起訴後勾留の期間は最初が2ヶ月間、その後1ヶ月間ずつ更新が可能です。起訴後の流れは次のとおりです。

8-2-1.刑事裁判

公判手続が始まり、裁判所は事件の内容などを審理した上で有罪か無罪かを判断します。

8-2-2.判決を受ける

刑事裁判では最終的に、有罪か無罪かの判決が下されます。有罪であれば、量刑、執行猶予の有無も伝えられ、前科が付いてしまいます。

8-2-3.刑に服する

有罪判決が下されれば、判決内容に従って刑に服することになります。

懲役刑の場合は刑期満了まで刑務所で刑務作業を行い、罰金刑の場合は、罰金を支払って終了です。

8-2-4.罰金を支払わない、支払えない場合

罰金を納付しないと財産に対して強制執行が行われてしまいます。また、強制執行すべき財産がない場合には、労役場に留置されて作業をさせられます。

労役場の日当は1日5,000円とされており、威力業務妨害罪の罰金の上限、50万円であれば100日間の作業が必要です。

8-2-5.納得できなければ上訴する

判決内容に不服がある場合には、地方裁判所から高等裁判所(控訴)、高等裁判所から最高裁判所(上告)へと上訴できます。上訴には期限が決められており、控訴も上告も判決が告知された日の翌日から14日以内です。

この期間内に申立を行わなければ、上訴できなくなりますので、早い決断が大切です。

8-3.逮捕によるリスク

逮捕されてしまうと、次のようなリスクがあります。

8-3-1.身体的拘束

逮捕されると、勾留も含めて最大23日間拘束されてしまい、逮捕直後は弁護士と接見できるのみで、家族にすら連絡できません。学校や勤務先にも連絡が取れず、日常生活にかなりの影響が出てしまうでしょう。

8-3-2.実名で報道される

逮捕されるとテレビや新聞で報道され、インターネットにも実名が晒される恐れがあります。実名が報道されてしまうと、SNSなどから学校・勤務先・家族構成などの個人情報が流出するケースもあります。

8-3-3.解雇や退学のリスク

身体的拘束を受けてしまうと、長期間無断で会社や学校を休むことになるため、解雇や退学になるリスクがあります。また、実名報道されていると、会社や学校が逮捕の事実を知り、解雇や退学のリスクは更に高まります。

8-3-4.前科が付く

起訴されて有罪判決が出てしまうと、前科が付くことになります。前科が付くと就職活動だけでなく、一部の資格で登録できない、公務員になれないなど、生活の様々なシーンで支障の出る恐れがあります。

8-4.弁護士に依頼するメリット

逮捕された場合、弁護士に依頼すれば多くのメリットがあります。

8-4-1外部への連絡をしてくれる

逮捕から勾留決定までは弁護士しか接見できないため、弁護士から家族や勤務先・学校など外部への連絡をしてもらえます。

8-4-2.取り調べに対する対応

逮捕されると警察官から取り調べを受けますが、通常は何をどこまで言ってよいかが分からず、不利な供述をしてしまうかもしれません。しかし、弁護士に依頼すれば、取り調べに対する法的な助言をもらえます。

また、早い段階で今後の方針を相談することができるのも大きなメリットです。

8-4-3.社会生活への影響を最小限にとどめられる

逮捕・勾留されると身体拘束が最大23日間続きますが、弁護士は早期釈放に向けて必要な誓約書を作成したり、勾留請求をしないように意見書を提出したりと、早期釈放に向けた活動を行ってくれます。

勾留されなければ最大72時間(3日間)の身体的拘束で済むため、職場や学校への影響は最小限で済むでしょう。

8-4-4.示談交渉してくれる

弁護士は依頼者に代わって被害者の示談交渉も行ってくれます。被害者が謝罪を受け、被害届や告訴の取り下げにつながれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。

8-5.いつ弁護士に依頼すれば良いか

逮捕された場合は、できるだけ早期に弁護士に依頼します。弁護士の知り合いがいない場合でも、当番弁護士制度により誰でも無料で1回、弁護士を呼んで相談できるため、必ず当番弁護士への相談を行いましょう。

9.まとめ

威力業務妨害はれっきとした犯罪行為ですが、いたずらや、強めのクレームのつもりの言動が威力業務妨害につながってしまう可能性があります。

また、顧客との行き違いやSNSの投稿がきっかけで不興を買い、威力業務妨害の被害者になってしまうかもしれません。

威力業務妨害は日常のどこにでも起こりうる可能性があります。加害者、被害者、どちらになっても、自分で窮地を切り抜けるのはとても大変です。示談交渉、裁判にもとてつもないエネルギーが必要な上、以前の日常生活に戻る努力もしなければなりません。

威力業務妨害でお困りの場合、まずは気軽に弁護士へご相談ください。信頼できる弁護士であれば弁護を依頼し、自分のことにエネルギーを使い、早期解決と早期再建を実現しましょう。

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