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退職代行は弁護士に依頼すべきか?【労働者側、使用者側】弁護士にできること、企業側の対応は?

【この記事の法律監修】
 加藤 孔明弁護士(兵庫県弁護士会)
 神戸カトウ法律事務所

退職代行は、「会社をやめたいけどやめられない(やめづらい)」という人のために、当人に代わって退職の申し出や交渉を行ってくれるサービスです。

退職代行には、弁護士(法律事務所)が運営しているサービスと、労働組合が運営しているサービス、一般企業が運営しているサービスがあり、対応できる範囲が異なります。

多いのは一般企業が運営するサービスですが、広告やホームページなどを見ても弁護士や労働組合が運営するものとの違いがわかりにくく、どのサービスを利用すべきか迷ってしまう方が多いようです。
そうしたわかりにくさから、利用者と業者の間でトラブルになる例も少なくありません。

そこで今回は、運営主体(弁護士・労働組合・一般企業)による違いに重点を置いて、退職代行サービスの内容や選び方、利用方法、費用などをくわしく紹介します。

比較的新しいサービスであることから、「実際に従業員に退職代行を利用されたらどう対応したらよいのか」と不安に感じている人事担当者の方も多いようです。そうした方に向けて、企業側の対応方法についても最後に簡潔に解説しています。

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1.退職代行とは?

退職代行とは、当人に代わって会社に退職の意思を伝えたり、退職の日程や条件について会社と交渉してくれたりするサービスです。

のちほど解説するとおり、退職代行サービスにはいくつか種類があり、会社との交渉まで代行してもらえるサービスとそうでないサービスがあります。

また、正社員などの「無期労働契約」で退職する場合と、それ以外の「有期労働契約」で退職する場合では、退職代行の内容が変わってきます。

1-1.無期労働契約(正社員など)で退職する場合の退職代行

正社員として雇用された場合、雇用期間を「○年○月○日から×年×月×日まで」などと定めずに、定年退職や中途退職が行われるまで無期限で雇用されます。こうした雇用形態を「無期労働契約」といいます。

正社員だけでなく、「契約社員」「嘱託社員」「パート・アルバイト」なども無期労働契約で雇用される場合があります。派遣社員は派遣元の会社(派遣事業者)との契約によります。

無期労働契約の退職(解約)については、民法で以下のように定められています。

民法627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法

無期労働契約の従業員はいつでも退職を選択でき、退職届を提出して退職の意思を伝えてから2週間経てば、自動的に雇用契約は終了します。この2週間は解約の「予告期間」「退職の予告期間」と呼ばれます。

繁忙期であろうが、退職の理由が何であろうが、会社は退職の申し入れを拒むことができません。会社の就業規則に民法よりも長い予告期間(「退職の申し入れは1か月以上前に行うこと」など)が定められていても、民法の定めが優先されます。退職代行サービスでは、この民法の定めに基づいて、当人の代わりに会社に退職の申し入れをします。

それだけのことであれば自分でも簡単にできそうですが、現実には、退職の意思を会社がきちんと受け止めてくれなかったり、上司との関係などにより退職を言い出すことが難しかったりするケースが少なくありません。
そんな場合に、退職代行サービスを利用して第三者に間に入ってもらうことで、退職をスムーズに進めることができるようになります。

但し、弁護士以外がこれを行うと非弁行為という法律違反になる可能性がある為、具体的な退職日や有給休暇取得、退職金の額などについて会社と協議したい場合や、未払いの賃金を会社に請求したい場合などに、会社との交渉を代行してもらう場合は、弁護士にまずは相談しましょう。

1-2.有期労働契約で退職する場合の退職代行

有期労働契約では「○年○月○日から×年×月×日まで」と雇用期間が定められており、原則としては、この期間内に退職することができません。
ただし、法律で以下の例外が定められています。

  1. 契約期間が1年を超える場合、1年を経過した日以降は、いつでも退職できる(労働基準法附則137条)
  2. やむを得ない事由がある場合、ただちに契約を解除できる(民法628条)

2の「やむを得ない事由」としては、パワハラやセクハラの被害を受けている場合などが該当します。
退職代行では、1に基づいて会社に退職を申し入れるか、2に基づいて会社と交渉して退職を実現させます。

1-3.退職代行なら即日やめられる?

有期労働契約では、先ほど述べた場合に当てはまれば、即日退職が可能です。
無期労働契約の場合は、「2週間の予告期間」があるため、即日退職扱いにはなりませんが、以下の方法で実質的に即日退職とすることができます。

  1. 未消化の有給休暇が2週間分以上ある場合、それを消化して、予告期間の2週間は有給休暇で過ごす
  2. 2週間は欠勤する

労働基準法(39条5項)では、有給休暇は原則として労働者が希望する時期に与えなければならないとされています。希望通りに与えることで事業の正常な運営を妨げる場合には時期をずらすこともできるとされていますが、退職する以上はこの時期しか有給休暇のタイミングがないため、必ず有給休暇が消化できます。

未消化の有給休暇がなければ、欠勤するという選択肢があります。体調不良などの正当な理由がある場合は欠勤しても問題ありませんが、正当な理由のない欠勤や無断欠勤を2週間も続けると懲戒処分となり、退職金の額などに影響する恐れがあるため、注意が必要です。

退職代行で退職の意思を伝えると、会社のほうから「即日やめてよい」と言ってくるケースも少なくありません。会社との交渉の結果、即日退職となることもあります。

2.退職代行を検討したほうがよいケース

退職代行はどんなケースでも利用できますが、とくに退職代行が適しているケースとしては、以下のような場合が挙げられます。

2-1.会社のコンプライアンスに問題がある場合(ブラック企業など)

労働法などの法令や労働者の人権を尊重する意識が低い会社では、会社にとって不都合な退職は受け入れようとせず、退職の申し出をまともに聞いてくれません。

それだけでなく、退職を申し出る従業員に対して暴言を吐いたり、一方的な給料・退職金の減額を行ったり、失業給付申請や転職で必要となる離職票をなかなか発行しないなどの嫌がらせをしてきたりする例も少なくないようです。

そうしたブラック体質の会社を自力でやめるのは大変であるため、退職代行サービスに交渉を代行してもらうのがおすすめです。

2-2.上司がハラスメントを行っている場合

会社全体としてはブラック体質でなくても、直属の上司がパワハラやセクハラなどのハラスメントを行う人物だと、ブラック企業と同じような状況になりがちです。

自力で退職しようとすると、自分にパワハラの矛先が向けられる可能性があり、すでにハラスメントを受けている被害者であれば、さらに被害が悪化することもあります。
こうしたケースでは、退職代行サービスを利用して第三者に間に入ってもらったほうがよいでしょう。

2-3.上司との関係や職場の雰囲気が悪い場合

上司との関係が悪かったり、気軽なコミュニケーションがしづらい職場環境だったりすると、なかなか退職を言い出しづらいものです。

退職を申し出てから実際に退職するまでの間も、大きなストレスを感じながら過ごすことになると予想され、それを考えるとますます言い出しにくくなります。
こうしたケースでも、退職代行サービスを利用してさっぱりと退職するのがおすすめです。

2-4.すでに退職を申し出たものの、会社の都合で断られている場合

法律上は労働者が自由に退職を選べる場合でも、「いまやめられたら会社が困る」などといって取りあってくれないケースが少なくありません。

会社が法律を知りながら意図的に退職を拒否しているケース(ブラック体質の場合)もあれば、会社や上司が法律に無知で、会社都合で退職を拒否できると思い込んでいるケースもあります。
いずれにしても、自由に退職を選べる状況で会社に退職を断られたら、退職代行サービスを利用したほうがよいでしょう。

2-5.退職日程や有休消化、未払い賃金などに関する交渉を任せたい場合

自力で退職する場合、退職の日程や業務引き継ぎ、有給休暇の消化方法などについて上司や人事部担当者と交渉する必要があります。

会社・職場・上司に問題があってこういった交渉を行いにくい場合や、自分で行うのは精神的にハードルが高いと感じる場合は、交渉の代行まで行ってくれる退職代行サービスを利用するのがおすすめです。
未払いの賃金・残業代があって支払いを請求したい場合、そもそも自力で交渉するのは難しいケースが多いため、そうした問題についての交渉経験が豊富な退職代行サービスに任せるのがよいでしょう。

3.退職代行サービスの種類と費用

退職代行サービスには以下の3種類があります。

  1. 弁護士(法律事務所)が運営しているサービス
  2. 労働組合(ユニオン)が運営しているサービス
  3. 法的な資格はとくに持たない一般企業(業者)が運営しているサービス

それぞれのサービス範囲やメリット・デメリット、料金について比較しながら解説します。

3-1.弁護士(法律事務所)の退職代行サービス

弁護士は当人の代理として会社に退職の意思を伝えるだけでなく、退職日程や未払い賃金支払いなど、退職に関する一切の交渉を代行することができます。

会社側が話し合いに応じなかったり、交渉がうまくまとまらなかった場合、労働審判や民事訴訟によって問題解決を図る必要があり、そのために弁護士に代理人を依頼することになります。弁護士の退職代行サービスを利用していれば、裁判にもスムーズに移行できます。

弁護士であれば、ハラスメントに対する慰謝料請求訴訟や、ハラスメントに由来する労災の認定申請なども任せられます。
また、退職により被害を被ったとして会社が損害賠償を請求してきても、弁護士なら対応可能です。
弁護士の退職代行サービスは比較的費用が高額ですが、代行できるサービスの範囲が最も広く、希望にかなった結果が得られる可能性も最も大きいと言えます。

3-2.労働組合(ユニオン)の退職代行サービス

労働組合には憲法28条で認められた「団体交渉権」があり、組合員当人に代わって退職に関する交渉を会社と行うことができます。
退職代行サービスを運営している労働組合は合同労働組合と呼ばれる組織です。合同労働組合は地域ごとに組織される労働組合で、どの会社に所属している人でも加盟できます。合同労働組合の退職代行サービスを利用する場合、その組合に加盟する必要があります。

合同労働組合の退職代行サービスは、弁護士によるサービスと同じく、会社との交渉も代行することができます。
ただし、交渉がまとまらず裁判に移行した場合、労働組合が裁判の代理人をすることはできないため、弁護士への依頼が別途必要となります。労働組合の退職代行サービスは、弁護士に比べると会社との交渉がまとまりづらい傾向があるとも言われます。

弁護士でも労働組合でもない一般企業の退職代行サービス業者が、広告などで「労働組合運営」のように見せかけているケースが少なくないため、注意が必要です。
また、退職代行サービス業者がサービス拡大のために立ち上げたと思われるような合同労働組合も現れています。業者のサービスと「提携」している労働組合もこうしたものが多いようです。
こうした組合は団体交渉などの活動経験が乏しいメンバーで組織されていて、交渉力が低い恐れがあるため、注意してください。

3-3.一般企業(業者)の退職代行サービス

現在、退職代行サービスの大半は、弁護士でも労働組合でもない一般企業の業者が運営しています。
こうした業者の退職代行サービスでは、当人に代わって退職の意思や理由、希望条件(退職日時・有給消化など)を会社に伝えることしかできません。
当人の代わりに退職の日取りや有休消化について会社と協議したり、未払い賃金の請求・交渉などを行ったりすることができるのは、弁護士か労働組合だけです。

弁護士でも労働組合でもない一般企業がそうした行為を行うことは、「非弁行為」として弁護士法74条で禁じられています。
広告などで、会社との交渉も代行してくれるかのような表現を使っていたり、労働組合運営であるかのように見せかけていたりする業者も少なくないため、注意が必要です。

「弁護士監修」や「弁護士提携」をうたう業者もあります。「弁護士監修」は「サービス内容が法律に違反しないように弁護士にチェックしてもらっている」というだけのことで、弁護士が会社との交渉を行ってくれるわけではありません。

「弁護士提携」のサービスでは、会社との交渉が必要な場面では提携先の弁護士を紹介してもらえますが、その弁護士と別途契約しなければなりません。それならば、初めから弁護士運営の退職代行サービスを利用したほうがよいでしょう。

3-4.退職代行サービスの料金比較

退職代行サービスの料金相場は以下の通りです。

弁護士運営

労働組合運営

業者運営
相談料:無料〜5,500円
手数料:3万3,000円〜20万円
その他:事務作業費や郵便代、交通費などの実費
相談料:無料
サービス利用料:2万円〜3万円
相談料:無料
サービス利用料+組合加入費:2万4,000円〜3万円

弁護士運営の退職代行サービスでは、依頼するサービスの範囲(退職意思の伝達・条件交渉・未払い賃金請求など)によって料金が変動します。また、法律事務所によって料金体系や金額が大きく異なります。契約前によく確認してください。

4.退職代行は弁護士に依頼すべき?サービスの選び方

一般的に、弁護士の退職代行サービスが最も守備範囲が広く、希望にかなった退職が実現できる可能性が高いと言えますが、他の2つ(労働組合運営・業者運営)に比べて料金が高いというデメリットがあります。

コンプライアンス(法令遵守)を重視している会社であれば、業者運営の退職代行サービスでもすんなりと退職できる可能性があるので、費用を重視して業者のサービスを選んでもよいでしょう。

ただし、会社が退職日や有休消化、退職金などの条件に異議をとなえ、当人との交渉を求めてきたり、懲戒処分をチラつかせたりしてきた場合、業者のサービスでは対応できません。

また、業者には未払い賃金を請求する権利もありません。
したがって、以下のようなケースでは弁護士の退職代行サービスを利用したほうがよいでしょう。

  1. 会社のコンプライアンスに問題がある
  2. 退職そのものや退職条件に会社が異議をとなえてくることが予想される
  3. 未払いの賃金・残業代を請求したい
  4. 会社が応じない場合、労働審判や民事訴訟を提起するつもりがある
  5. ハラスメントに対する慰謝料請求訴訟や労災認定申請を行いたい

1〜3の場合、労働組合運営の退職代行サービスでも対応可能です。ただし、運営主体の組合の実態が不明な場合があることや、会社に対する交渉力は組合によって大きな差があることを念頭におき、慎重にサービスを選ぶ必要があります。

労働組合による交渉がうまくいかなければ、結局は弁護士のサービスを利用しなければならなくなります。
4・5のように裁判を視野に入れているのであれば、最初から弁護士のサービスを選ぶのがよいでしょう。

5.退職手続きと退職代行サービスの流れ

円満に(トラブルなしに)退職できるケースでは、自力退職と退職代行の流れは以下のようになります。

自力退職の流れ 退職代行サービスの流れ
1.上司に退職の意思を伝える
2.退職条件や業務引き継ぎについて協議
3.退職願・退職届の提出、離職票発行の申請
4.業務引き継ぎの実施と社内・取引先への挨拶
5.私物の整理、会社から貸与された物品の返却
6.最終出勤日の翌日付で退職(または有給休暇に入り、消化後に退職)
1.現在の状況や退職の日程、有給休暇、退職金、未払い賃金などについて相談
2.退職代行の契約を締結
3.退職代行サービスが会社に退職の意思・条件を伝える
4.退職代行サービスを通して退職届の提出、離職票発行依頼、私物発送依頼、貸与品返却などを行い、退職(すぐに退職するか、有給休暇を消化してから退職)

自力で円満に退職するためには、退職の申し出から退職まで相当の期間にわたって出勤し、社内外の人物と顔を合わせる必要があり、かなりのストレスが予想されます。会社が退職を拒否してきた場合、精神的にさらなるダメージが加わることになります。

退職代行サービスを利用すれば退職前の出勤期間にこうむるストレスを避けられます。弁護士・労働組合のサービスであれば、退職をめぐって会社とトラブルになっても当人は矢面にたつ必要がありません。

6.退職を伝えるタイミングと事前にやっておくべきこと

退職は基本的に自分が希望するタイミングで行うことができますが、いくつかのケースでは注意してタイミングを選んだり、事前準備が必要になったりすることがあります。

6-1.社宅・社員寮に住んでいる場合

社宅や社員寮は退職時点で退去しなければなりません。退職を伝える前に、転居先を確保し、転居の準備をしておいたほうがよいでしょう。

6-2.ボーナス支給前の場合

たいていの企業では、「ボーナスは支給日に在籍する従業員に対して支給する(支給日に在籍しない者には支給しない)」という「在籍要件」を就業規則に記載しています。

例えば、夏のボーナスが「6月末時点で在籍する従業員」に対して支給される会社の場合、6月末より前にやめてしまうと、夏のボーナスがもらえません(在籍要件がない会社ならば、1月1日から退職日まで働いた分のボーナスがもらえます)。

在籍要件がある会社を退職する場合、ボーナスをもらってから退職できるようにタイミングを調整したほうがよいでしょう。

6-3.業務の引き継ぎが必要な場合

業務の引き継ぎはどんな場合でも必ずしなければならないというわけではありません。しかし、ある程度以上の地位にあり、自分が急にやめると現場が困るという場合には、事前に引き継ぎのためのメモやマニュアルなどを作成しておいたほうがよいでしょう。

7.退職代行で起こりうる失敗・トラブルの例

退職代行を利用して失敗したと感じるのは、「期待したサービスが受けられなかった」場合がほとんどです。主な失敗例を紹介します。

7-1.希望通りに退職できなかった

法律上は希望通りに退職できるはずなのに、退職できなかったり、即日退職・有休消化・退職金などの希望条件が満たされなかったりするケースです。

こうしたケースは、業者運営サービスか交渉力の低い労働組合運営サービスを利用している場合がほとんどです。

こうしたサービスは会社とうまく交渉してくれるかのように宣伝していることが多いですが、実際には会社に退職意思を伝えることくらいしかできず、希望通りの退職が実現できない例が少なくありません。

7-2.自力での交渉が必要になった

会社との交渉も代行サービスが行ってくれると思っていたら、会社や業者から連絡がきて、自分で出向いて交渉するように求められたというケースです。退職はすぐにできたものの、離職票や私物の送付などを行ってもらえず、自分で会社に連絡しなければならなくなったというケースもあります。

これも先ほどのケースと同じで、実際には会社との交渉ができない(交渉力がほとんどない)サービスに依頼した場合に起こります。

7-3.懲戒解雇になった

急に退職を申し出たことや、退職代行サービスを利用したこと、退職前の予告期間に連続で欠勤したことなどを理由に、普通の退職ではなく懲戒解雇になってしまったというケースです。

懲戒解雇になると、退職金が減額・不支給となったり失業保険で不利な扱いをされたりすることがあります。

上記のような理由で懲戒解雇にすることは法律上は不当ですが、交渉力のない退職代行サービスを利用してしまうとそのようなことも起こりえます。

不当なので裁判で撤回することも可能ですが、交渉力のある弁護士のサービスなどを利用して、そのような不当な扱いを事前に避けるのが得策です。

8.退職代行を使われた企業の対応方法

ここまでは退職する従業員の側から退職代行について説明してきました
ここでは、退職代行を使われる企業の側が退職代行について知っておくべき知識を簡単にまとめます。

8-1.退職代行サービスから連絡がきたときの初期対応

退職代行サービスの運営主体が弁護士(法律事務所)や労働組合である場合と、一般業者である場合では、今後交渉が必要になった場合の対応方法が変わります。そのため、まずは退職代行サービスの運営主体を確認します。

また、従業員との労働契約や就業規則の内容、有給休暇消化や賃金支払いの状況などを確認し、退職代行サービスを通して伝えられた従業員の退職希望の内容が正当・適正なものかどうか判断します。

8-2.退職手続きを進める場合の対応

退職希望の内容が正当・適正と判断された場合、退職日の設定や有給休暇の消化、離職票の用意、退職金支給の準備などを粛々と進めるのが得策と言えます。

退職代行サービスを利用した従業員を引き留められたとしてもよいパフォーマンスは期待できませんし、引き留め方によっては法律違反になってしまいます。

8-3.相手方と交渉する場合の対応

退職そのものや退職条件に関して相手方と交渉が必要な場合、退職代行サービスの運営主体が弁護士か労働組合であれば、担当の弁護士・労働組合員と交渉します。

運営主体が一般企業の業者の場合、従業員当人と交渉する必要があります。従業員当人に連絡がつかない場合、業者を通して交渉の必要性を当人に伝えてもらいます。

一般企業の業者を相手に交渉しても、弁護士法により無効となります。法に反して業者が交渉を求めてきた場合、断りましょう。

交渉が難航して訴訟に発展しそうな場合や、未払い賃金やハラスメントの問題が絡んでいる場合は、早めに弁護士に相談するのが得策です。

9.まとめ

退職代行には「退職の意思を会社に伝える」サービスと「退職に関して会社と交渉する」サービスがあり、交渉のサービスができるのは弁護士か労働組合が運営する退職代行だけです。

労働組合が運営する退職代行は運営実態が不明だったり、交渉力に差があったりするため、会社との厳しい交渉が予想される場合は、弁護士運営の退職代行サービスを利用したほうがよいでしょう。

とくに、未払い賃金の支払いやハラスメントに対する補償を求める場合や、正当な理由なく会社が退職を拒否してきた場合などは、弁護士への依頼がおすすめです。

退職代行を利用される企業の側も、労働審判や民事訴訟に発展しそうなケースでは早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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