DV・ハラスメントが原因で離婚を決意した方によくある悩み
離婚を決意すると、それまで見えてこなかった悩みが見えてくるものです。
ここでは、DV・ハラスメントが原因で離婚を決意した方によくあるお悩みをご紹介し、そのお悩みについてカケコムなりに解説していきます。
DV・ハラスメントが原因の場合、離婚を決めても話し合いの場を持つのがなかなか難しい場合も多く、とにかく「離婚の方法を知りたい」というお悩みを抱えている方が多いです。
離婚の方法を知りたい
離婚する時の手順とは?大きな3つのステップとポイントを弁護士が解説します。
離婚の手順、実際にするとなったらどのような手続きをすればいいのか知らない方は多いのではないでしょうか?離婚方法にはどのようなものがあり、それぞれどのような手順を踏んで進めていくのか、その詳細を弁護士の先生の解説してもらいました。離婚を考えているけど、どのような方法、手順で行うものかわからないという方はぜひ参考にしてください。
離婚を決定する方法としては、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つがあります。
離婚するまでに実際にどのような手順が必要になるのか、ここでは紹介していきます。
(審判離婚はかなり珍しい方法なので、省きます。)
◆DV・ハラスメントで離婚するなら
離婚を考えた時まず最初に行う方法は、第三者を挟まずに、当事者間で話し合いをして離婚を決める協議離婚です。ふたりの話し合いで決定できる内容であり、イメージしやすい離婚方法かと思います。
合意しなければ、協議離婚→調停離婚→裁判離婚と進むのが通例です。ただ、DV・ハラスメントの場合、最初の話し合いすら難し場合も多いです。
話し合う内容が多岐にわたる為、この段階から弁護士を入れて話し合いを進める人も少なくありませんし、相手と距離を置き、話し合いなしで離婚調停へと進む方もいらっしゃいます。
それも踏まえてご説明します。
【まずは別居・証拠収集から】
DVを理由に離婚を考えているなら、いくつかの準備をしておく必要があります。
DVで離婚するための準備(1):DVの証拠を収集する
DVが事実としてあったということを証明するためには、DVの証拠集めをしましょう。
- DVをされた時に書いた日記(1度ではなく、何度もあった場合は、すべてのDVに対する記述が望ましいです)
- DVによって怪我をしたときの写真
- DVが行われている時の様子の録音データ
- DVによって外傷を負った際の医師の診断書
これらが証拠としては有力ですが、ほかにも証拠と呼べるのかどうかわからないようなものもあるでしょう。
他に必要な証拠があるのかどうかの確認も含めて、弁護士に相談するとよいでしょう。
DVで離婚するための準備(2):別居する
一刻も早くDV配偶者の手から逃れるために、1日も早く別居しましょう。
身を隠す際の注意事項は先述した通りです。
また、別居中の生活費は婚姻費用として請求する事が可能です。
DVで離婚するための準備(3):裁判所に保護命令を申し立てる
こちらも先述しましたが、DVが理由で離婚する準備を進めていると、離婚の危機を感じ取った配偶者から更なる暴力を受ける可能性が高いでしょう。
もしさらにDVがひどくなりそう、さらには身体や生命にまで危険が及ぶ場合には、保護裁判所に保護命令の申立てすることをおすすめします。
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)10条では、以下のように定められています。
- 接近禁止命令
- 電話等禁止命令
- 子への接近禁止命令
- 親族等への接近禁止命令
- 退去命令
これに違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(29条)が課されます。
◆協議離婚
話し合いによって離婚を進める場合について解説します。
協議離婚では離婚をするかどうか以外に話し合う内容として、親権者の決定、財産分与や養育費、慰謝料、年金分割等があります。
【親権者の決定が必須】
協議離婚をする際、未成年の子供がいる場合は親権者を夫婦のどちらにするかは必ず話し合う必要があります。
後に説明するとおり、親権者については離婚届への記載が必須です。
収入が多ければ良いというような単純な話ではないので、親権者の決定は揉めることが多いです。不安な方や決定で揉める場合はこじれる前に弁護士に相談するべきです。
【財産分与は二人で決める】
任意に決めることができるもののうち、財産分与は、結婚している期間中に築いた財産を、離婚を機に分配する制度です。分配する金額や、分配の仕方は夫婦間の合意で自由に決めることができます。結婚期間中にできた財産を夫婦で半分ずつ取得するケースが多いです。
離婚する際に決まらなくても、財産分与請求は離婚から2年間は夫婦どちらからも可能です。
【養育費とは】
養育費は文字通り、子どもの養育のために親権者とならなかった親が負担する費用です。ただし、離婚し、親権者が確定しただけでは養育費の支払いの内容(金額、期間等)は確定しません。養育費の内容についても、改めて夫婦の合意によって決める必要があります。
親権者でない親の給与などの収入から現実的な費用を算定することが多いです。後で払えなくなったり、勝手に支払いをストップされるなど、揉めることが多い箇所です。不安な方は弁護士に相談し、法的に効力のある書面を作成してもらいましょう。
【慰謝料を状況に応じて請求する】
慰謝料は離婚することによって精神的な損害を受けたことに対する賠償のためのお金となります。夫婦の一方に不貞行為があったり、いわゆるDVの被害があったとき等に請求するのが典型です。
【年金分割については年金事務所での相談がおすすめ】
年金分割は会社員の方など、厚生年金に加入している場合に認められる制度で、結婚中に納付した厚生年金の保険料を公平に分割するという制度です。年金分割も離婚から2年間は請求することが可能です。
年金分割については年金事務所に届出が必要で、その方法も法律で定められているので、年金事務所で相談されることをお勧めします。
【離婚届に記載する内容やタイミング等を解説】
離婚の条件について合意ができれば、離婚届を提出することで離婚は成立します。ここでは離婚届けに記載する内容を解説していきます。
①離婚届に書く内容
離婚届を書く際の記入事項としては、住所・氏名・本籍・両親の氏名と続柄・離婚の種別(協議離婚/調停離婚/裁判離婚)・離婚後に姓を戻すかどうか・新しい戸籍を作るかどうか・親権者の指定・署名捺印・証人(成人)2名の自署があります。
本籍地は記載する場合、戸籍に書かれている正確な内容を書く必要があるので、本籍地の記載のある住民票や、戸籍謄本を取り寄せておいて、参照しながら書くことをおすすめします。
離婚後の姓は旧姓に戻さない場合は別途、役所で届出を行う必要があります。また、離婚後旧姓に戻る場合で、子どもの戸籍も移すには、家庭裁判所で子どもの姓の変更を許可する審判を受けたうえで、転籍をすることが必要となります。
新しい戸籍を作るかという点ですが、まず、離婚をすると夫婦で入籍していた戸籍から、夫婦のどちらかが抜けることとなります(通常は妻が抜けることが多いです)。抜けることとなった方は、別の戸籍に入籍することが必要となりますが、結婚するまでに入っていた戸籍に戻るか、新しく戸籍を作り、その戸籍に入るか選ぶことができるのです。自分の戸籍を新しく作る場合、本籍地は自由に決めることができます。
ただ、あくまで戸籍の移動があるのは夫婦のみで、離婚届を提出しただけでは子どもの戸籍は移動しません。戸籍から抜けた方の戸籍に子どもも移したい場合、別途転籍の手続が必要です。
親権者の指定は子供がいる場合、必ず記載してください。
署名捺印ですが、離婚届作成の際に必ず本人が書かなくてはならないのはこの一箇所のみです。ですので、それ以外の事項を夫婦のどちらかで全て記載しておき、署名だけをもらう、という方法も可能です。
証人(成人)2名の自署についてですが、基本的にどなたでも問題ありません。両親や兄弟、友人などが多いです。
ご自身で離婚届を書こうとする際はわからない部分もあるかもしれませんが、役所では解説してもらいながら書くことができますので不安な方は役所での記入をおすすめします。
②離婚届を書くタイミングは離婚条件の話し合い後が良い
離婚届に双方が署名し完成した時点で、もう離婚はいつでもできる状態になっています。
ただ、前に説明したとおり、離婚届に記載しなくてはならないもの以外にも、離婚する際に決めることが出来る条件があり、その条件は離婚後の生活や、子どもの将来にとって重要な意味をもつものばかりです。
どうしても離婚すること、それ自体がゴールと捉えられることが多いため、先に離婚が成立した後では、お互いのモチベーションが保たれず、条件の協議が停滞してしまいがちになってしまいます。
そこで、離婚届を書く場合は、離婚の条件に関する協議が全て整ったあとをお薦めします。
もし、納得のいく離婚の条件の話し合いが出来ていないのに、離婚届を作成してしまったという場合には、役所に対して「不受理届出書」という届出を行うことで、勝手に離婚届を出されることを防ぐことができます。
③離婚届は市役所/区役所で直接もらうかHPでダウンロードできる
離婚届の入手先、提出先はともに市役所/区役所になります。市役所や区役所のHPでダウンロードしたものを提出することもできます。
離婚届の提出先が夫婦の本籍地である役所であれば離婚届のみで良いのですが、それ以外の役所に提出する場合、戸籍謄本を添えて提出することが必要です。
法的に離婚の効果が発生するのは、離婚届が受理された時点となります。
◆調停離婚
調停離婚は、家庭裁判所で行われる調停という話し合いによって行う離婚の方法です。夫婦同士での直接の話し合いでは離婚が決まらなかった場合に行う方法となります。
調停を行うには、夫婦のどちらかによる家庭裁判所への申立てが必要です。調停を申立を行う裁判所は、調停を申し立てられた方(「相手方」といいます。)の住所を管轄する家庭裁判所となります。
例えば夫婦が別居しており、横浜市に住んでいる妻が東京都(23区内)にいる夫を相手方に調停をする場合、東京家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停の申立てには、調停申立書と収入印紙、資料の送付のための郵便切手、及び添付資料として戸籍謄本を提出する必要があります。申立ての書式は、各家庭裁判所で入手できますし、裁判所のHPでダウンロードすることもできます。離婚調停に必要な収入印紙は1200円分です。郵便切手については、各家庭裁判所により異なりますので、裁判所で確認してください。
【調停委員はどんな人か】
裁判所で行う調停という話し合いを取り仕切ることを任務としているのが調停委員です。
調停委員は、当事者と面談し、直接当事者から事情の聞き取りを行い、調停を担当する裁判官(調停官といいます。)にその内容を報告し、調停官と協議して調停の進め方の判断をしていきます。離婚の調停の場合、男女1名ずつの2名で担当します。
調停委員になる人の背景は様々ですが、弁護士や司法書士などの専門家もいますし、教師、公務員など幅広い職業の一般の方も任命されています。
【調停の進み方】
調停の最初に行われる夫婦同席での手続き説明とその日の協議事項の確認は、弁護士がついている場合やDV事案の場合等は例外的に同席を拒否できます。
調停での話し合いの結果、離婚について合意を得られると調停が成立します。
調停を成立させる場合、調停官、調停委員、裁判所書記官、当事者である夫婦が同席したうえで、調停官が調停で決定する内容を読み上げ、内容に間違いの無いことを確認します。この確認を経て調停が成立すると、離婚の効果が発生します。
調停の内容は、調停調書という書面にまとめられることになります。
先に説明したとおり、離婚の効果は調停成立時に発生しますが、戸籍の変更のために調停調書を添えて離婚届を提出することは別途必要となります(ただし、署名は提出する人のものだけでよく、夫婦双方がする必要はありません)し、子どもの姓の変更なども協議離婚の場合と同じように必要となります。
調停成立後の役所への届出は、成立した日から10日以内に行うことが必要となります。成立後の手続きは意外とやることが多いため、余裕をもって行動された方がよいでしょう。
【調停の期間や費用】
調停が行われる期間はケースバイケースですが、調停が原則1ヶ月〜1ヶ月半に1回のペースでしか行われないこと、離婚は親権や養育費、財産分与等協議する項目が多いことから、成立までに時間がかかってしまうことが多いです。
早くて3ヶ月程度、半年から1年以上かかることも珍しくありません。
調停離婚でかかる費用は前に説明したとおり、収入印紙1200円と郵便切手代1000~2000円となります。調停の回数が増えることによって、裁判所に対し、追加の費用が発生することはありません。調停そのものについては、あまり費用はかからないんですね。
調停の代理人として、弁護士に依頼する場合は別途費用が必要になってきます。
◆裁判離婚
調停で話がまとまらなかった場合、裁判所に夫婦が離婚するかどうかの判断を求める方法が裁判離婚です。
裁判離婚については、法は調停前置主義といって、原則調停をしてからでないと裁判の提起ができないことになっています。
【裁判離婚をするには】
調停がまとまらなかった(「不成立」といいます。)場合、それでも離婚を希望する場合の方法は、裁判離婚となりますが、調停不成立となると自動的に裁判に移行するわけではありません。
裁判離婚を行うためには改めて離婚訴訟を提起することが必要になります。
裁判の提起は「訴状」という書面を家庭裁判所に提出することで行います。訴状の作成には、法律的な知識が不可欠となりますので、弁護士に依頼することをおすすめしています。
【裁判の期間や費用】
離婚裁判は多くの場合、結論が出るまでに1年以上かかります。
これほどの期間がかかる理由は、調停の場合と同様ですが、裁判が1ヶ月〜1ヶ月半に1回のペースで行われること、裁判に至る時点でかなり夫婦の認識の齟齬が大きく、養育費や親権、財産分与等判断する項目が多くあることも、時間を要する原因となっています。
裁判をするために裁判所に納める費用は離婚のみを求める場合、収入印紙13000円分と郵便切手約6,000円ほどがかかります。
離婚そのもの以外に、財産分与や養育費、慰謝料等の判断を求める場合は、納める収入印紙が増額していきます。
◆離婚をする際に気になること
【法定離婚事由は最初から必要か】
離婚そのものは法定離婚事由がなくとも、夫婦の合意があれば可能なので、最初から必要なわけではありません。
法定離婚事由とは?
法定離婚事由とは、法律で定められた離婚の理由のことを指します。以下に該当する理由がない離婚はうまく相手を説得できることがカギとなります。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
出典:民法第770条
【離婚を切り出した方が不利なのか】
離婚を切り出したほうが不利というわけではありません。
ただ、話し合い一般に言えることですが、一方が希望をかなえるために、他方にお願いしなくてはならないという状況になると不利になってしまします。
離婚においては、夫婦の一方のみが離婚を希望しているが、法定離婚事由がないと言う場合がこれにあたります。夫婦の協議が整わなかったとしても、法定離婚事由があり、裁判で離婚出来るのであれば、相手の希望をあまり考慮する必要はありませんが、法定離婚事由がなければ相手方の了解がなければ離婚することが出来なくなってしまします。そのため、離婚条件について相手方への大幅な譲歩が必要となり、この意味で不利になってしまいます。
前の質問にも関わりますが、一方のみが離婚を強く望んでいる場合は、法定離婚事由があった方がいいと思います。
【離婚の手順、わからないことがあったら弁護士に相談を】
弁護士はどんなことをしてくれるのか。
弁護士は離婚をするための依頼では、協議の結果を書面にまとめる・協議そのものを担当する・調停/裁判の代理人を務める等をしてくれます。
弁護士相談の費用相場
<相談料>
30分5000円程度
(初回は無料の場合もあり)
<書面の作成>
10万円程度
弁護士やケースによって費用は変わってきます。また、公正証書の場合は公証人と内容の調整が必要になるので、調整の程度によって費用も変わってきます。
<交渉代理>
着手金 20~40万円
報酬金 同額+経済的利益の10~16%
全体では40~80万円+経済的利益、費用としてかかってきます。経済的利益は、財産分与や慰謝料等で得られた金額になります。協議から調停、裁判へいくにつれて、費用が上がっていくこともあります。
【こんな時は弁護士に依頼を】
夫婦2人で納得のいく話し合いができる環境があるかどうかによります。2人が納得できている場合は、弁護士はあまり必要ありません。
しかし、2人の意向がかなりかけ離れている場合や、話し合うことそのものが難しい場合(感情の対立が激しい、DVがある等)では、専門家である弁護士がいた方がいいでしょう。
【弁護士を頼むかどうかの分岐ポイント】
協議の始まりの段階/協議が終わった後、条件が適正か確認したい/書面に残すべきか相談したい/協議が決裂し、調停に移る/裁判を起こすまたは裁判になった、といった時点で弁護士に依頼するかを検討することになると思います。
カケコム的には、まだ夫婦で具体的な離婚の話が出来ていなくても、「離婚しようか。」と最初に検討した段階で一度弁護士に相談することをおすすめします。
離婚することによって生じる自身の変化について、具体的にイメージすることが出来るようになりますし、特に資料の確保という点で有利となります。離婚が現実的となる時点では、夫婦仲が悪化していることが多く、離婚の条件を決定する際に必要になる資料を手に入れることが難しくなってしまいます。
早い段階で相談することで、どのようなものが証拠になるのか、資料の保存方法等を確認することができ、その後の展開に大きな影響を与えることもすくなくありません。
最後に
いかがでしたでしょうか。
DV・ハラスメントで離婚を考えている方によくあるのお悩みを解説しました。
少しでも解決の手助けになると幸いです。
別の原因・状況での解説も知りたい方は、LINE下部のメニューにある「原因×状況別 疑問にお答え」ボタンから見ることもできます。
参考にしてみて下さい。