婚前契約のメリットは?婚前契約書のテンプレや作り方も弁護士が解説
婚前契約書を結ぶと、結婚をする前にお互いの価値観の確認ができたり、婚姻後の財産を守ることができる等のメリットがあります。しかし、一方で、婚姻後に気が変わっても内容を変更できない可能性があるというデメリットも。今回は、婚姻契約書を作成してから後悔してしまわないよう、婚姻契約書を作成するメリットやデメリット、書いておくと良い内容、注意点等について弁護士が解説します。無料でダウンロードできる婚前契約書のテンプレートも掲載しています。
「婚前契約書を作成したいけれど、この内容でいいのか、不安がある」という人は、弁護士へ相談することで下記のようなことを実現できる可能性があります。
・婚前契約書に書こうとしている内容が法的に有効なものであるのか、確認してくれる。
・お互いの希望をヒアリングした上で、記載した方が良い項目や内容等をアドバイスしてくれる。
・些細な疑問にも丁寧に回答してくれる。
婚前契約書は、作成した後に変更できない部分が出てくる可能性があります。
そのため、少しでも内容に不安がある場合は、そのまま作成せず、一度専門家に相談されることが非常に重要です。
少しでもお悩みのことがある場合は、下記のボタンから、ぜひお早めにご相談ください。
そもそも婚前契約とは?
婚前契約とは、これから夫婦(パートナー)になろうとする2人が、婚姻生活や財産等に関して、婚姻前に結ぶ契約のことです。
目的としては、各自の財産を守ることだったり、円満な婚姻生活を営むことだったりします。
また、財産的側面に関する婚前契約は、夫婦財産契約と呼ばれたりします。
婚前契約のメリット
それでは、婚前契約にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
婚前契約のメリット(1) お互いの価値観の確認ができる
まず、婚前契約のメリットとしては、婚姻前にお互いの価値観を知ることができるので、婚姻後に「こんなはずじゃなかった」となることを防ぐことができます。
婚前契約には、婚姻生活における様々なことを盛り込むことができ、ライフスタイルや子どものこと、親族との関わり方など、婚姻生活に関して関心のある項目を設けることができます。
最近では、婚姻生活に関する考え方も多様化していますので、その内容を決めるにあたっては、パートナー同士が、それぞれ考えていることについて協議をすることになります。その過程で、相手がどのような婚姻生活を望んでいるのか知り、また相手には自分の望む婚姻生活を知ってもらうことになります。
これにより、婚姻したあとに、ライフスタイルや子どものこと、親族との関わり方などについて、お互いの価値観を確認することができますので、相手の考え方を知らずに期待してしまい、実際には期待とは異なった言動を取られて不満を持つということを防ぐことができます。
子どもが欲しいのか、いつ欲しいのか、親族とはどのように関わるのかなどについては、婚姻した後に互いの価値観のズレが分かると、大きなストレスを抱えることになってしまう場合も多いため、婚姻前に確認することができるのは大きなメリットでしょう。
婚前契約のメリット(2) 不貞のペナルティを定めることができる
婚姻生活において多く起こる問題として不貞の問題があります。
パートナーが不貞をしてしまうことは起こり得ることですが、不貞をした場合に慰謝料としていくら支払うのか、どのような謝罪の意思の示し方が必要なのかなど、婚前契約で定めることができます。
ただし、婚前契約も一般の契約と同様、当事者の一方に著しく不利な内容は、無効になる可能性があるため、あまりにも高額な慰謝料額を定めても、全部か一部が無効となるリスクはあります。
一般的な不貞の慰謝料としては、100万円~200万円、高くても300万円程度認められることが多いため、これを大幅に超える場合には無効となる可能性があることは認識しておくべきでしょう。
例えば、1000万円という慰謝料額を定めたとしても、500万円を超える部分は高過ぎるから無効となるといった判断になる可能性があります。
一方、一般的な金額よりも高額な慰謝料額を婚前契約で合意していたという事情は、慰謝料額算定にあたって考慮されると考えられますし、パートナーに対する不貞予防の効果も一定程度あると考えられますので、婚前契約のメリットの1つとなります。
婚前契約のメリット(3) 婚姻後の財産を守ることができる
婚姻したあとに取得した財産については、夫婦の実質的共有財産とされ、離婚する際には基本的に2分の1を財産分与として分配することになります。
しかし、婚前契約で、夫婦の共有財産の範囲を限定しておけば、婚姻後に取得した財産であっても、離婚の際の財産分与の対象としないことが可能になります。
婚姻後に自分が取得する財産を守ることができるのは、婚前契約のメリットの1つです。
婚前契約のメリット(4) 離婚のトラブルを回避できる
離婚することとなった場合には、財産分与に関する争いが大きくなり、どの財産が財産分与の対象とするのか、またその財産の価額をどのように算定するのか争いとなることも多く、協議や調停、裁判に多くの時間を必要とし、精神的にも大きな負担となります。
また、法律の専門家である弁護士に依頼する必要が生じるなどして、費用がかかることも想定されます。
婚前契約で、財産分与の内容に関して一定の取り決めをしておけば、財産分与に関する問題の解決方法を明確にすることができ、紛争が長期化してしまうことや、弁護士に依頼するまでもなく解決できるという効果を期待することができます。
婚前契約のメリット(5) 日常生活のささいなトラブルを回避できる
婚前契約は、一方に著しい不利益があるなどして無効とされる可能性がありますが、基本的には、どのような内容とするか、パートナー同士が自由に決めることができます。
婚姻生活が破綻してしまったような場合を別として、多少の問題を抱えていたとしても円滑に進んでいれば、普通は、婚前契約の内容にしたがって日常生活を送ろうとするものと考えられます。
いちいち、この婚前契約の内容は自分に著しい不利益があるから無効だとか、法律に反するから無効だとか、無効だからもう守らないといった指摘をすることはあまり考えられません。
そのため、法的効力がどこまで認められるかは別として、婚姻生活における日常生活に関する事項を定めておけば、ささいなトラブルを回避することができます。
例えば、休日の過ごし方や飲酒、家事の分担など、日常生活に関する内容について定めておくことにより、基本的なルールとして共有することができ、日常生活におけるささいなトラブルを防ぐことができる効果が期待できます。
婚前契約のデメリット
一方で、婚前契約を結ぶデメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
婚前契約のデメリット(1) 婚姻を契約と捉えることへの抵抗
日本では、婚前契約が話題になることはあっても、まだまだ一般的なものとはなっていないのが現実です。
婚前契約のうち、財産的な側面に関する契約を夫婦財産契約と呼びますが、これは登記することができるところ、統計を見ても、平成23年は10件程度で、平成28年に23件と増えましたが、令和2年でも22件にとどまっています。
夫婦財産契約(婚前契約)を締結しても登記するまではしないことも多いと思いますが、登記件数が増えていないことからすれば、婚前契約がそこまで増えているものではないと思われます。
海外では比較的広まっている婚前契約ですが、日本では、婚姻を一種の契約として捉える文化ではないからでしょうか。契約ではなく、お互いの気持ちであることを重視しているのかもしれません。
そのため、パートナーになろうとする人に婚前契約の話をすると、相手のことを信用していないような印象を与えてしまうかもしれません。
場合によっては、相手から婚姻自体をやめたいと言われるかもしれません。
この点は、婚前契約のデメリットです。
ただ、婚前契約は時代とともに広まっていくものと考えられますし、婚前契約を結びたい理由や、メリットデメリットなどを説明すれば理解してくれるかもしれません。
また、婚前契約自体に対するお互いの価値観の確認もできるので、この点はデメリットだけではないでしょう。
婚前契約のデメリット(2) メリットの裏返し
婚前契約は、上記メリットの部分で記載したとおり、不貞に対するペナルティや、離婚時の財産分与に関して、通常とは異なる取り決めをすることができます。
これは、パートナーの一方にはメリットになりますが、もう一方にはデメリットになる可能性があります。
不貞の場面では、通常よりも高額の慰謝料を負担する可能性がありますし、通常では離婚時に婚姻後に取得した財産について2分の1の財産分与を得ることができたものの、婚前契約を締結したことにより、得られる財産分与が少なくなる人が出てくることになります。
このように、婚前契約は、一方には有利に、もう一方には不利に働く可能性を持っています。
もっとも、これらの点は、婚前契約時にはどちらに有利になるのか不利なのか確定しているものではありません。
あくまで、婚前契約で想定したトラブルや離婚の際に、婚前契約を締結したことで通常よりも経済的な不利益が生じる側になる可能性があるということになります。
婚前契約のデメリット(3) 婚姻後に気が変わっても変更できない可能性
婚前契約で、夫婦の財産に関する事項を定める場合、民法上は「夫婦財産契約」として扱われることになります。
夫婦財産契約の内容は、婚姻後は変更することができないとされているため(民法758条1項)、婚姻後に気が変わったとしても変えられないこととなります。
第七百五十八条一項 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
出典:民法第七百五十八条一項
例えば、婚前契約で、婚姻後に取得した財産は各自の財産であり、離婚の際の財産分与の対象としないと合意したところ、想定とは異なり夫婦の一方が大きな資産を築くなどして、不公平な実態となって、その後に離婚することとなったとしても、財産契約の内容の変更をすることはできません。
ただし、この点が争点になった裁判例が見当たらないので、事情変更があった場合でも婚前契約について一切の変更ができないのか、何らかの解釈で一定の変更が認められることがあるのかははっきりしていません。また、他方の承諾があれば、財産分与について調整できる余地はあります。
いずれにせよ、財産的側面については、契約内容を変更できないという明文の規定があるため、気が変わっても内容を柔軟に変更できない可能性が高く、この点はデメリットの1つと考えられます。
婚前契約書に書いておくと良い内容(例文あり)
それでは、婚前契約書を作成する際に、書いておくと良い内容をご紹介します。具体的な例文もあわせてご紹介していますので、参考にしてみてください。
不貞行為やDV・モラハラ等があった場合にどうするか
不貞行為やDV・モラハラ等があった場合に、どのような責任の取り方をするのか書いておくことが考えられます。
また、こういった問題に関して書く場合には、それぞれ認識している定義が異なっている可能性があり、そうすると結局は婚前契約書によって解決仕切れない可能性があります。そのため、何を不貞行為とするか、何をDVとするのか、何をモラハラとするのかについても書いておく方が良いでしょう。
もっとも、その定義を明確にするのは難しいかもしれません。
記載例
- 「不貞行為」とは、甲又は乙以外の者(性別は問わない)と、肉体関係を持つこと、肉体関係を持つのと同等の性的行為をすること指す。
- 甲及び乙は、不貞行為、DVをした場合には、他方に対し、損害の立証を要することなく慰謝料として●●万円を支払う。また、これにより離婚することになった場合には、他方に対し、同様に慰謝料として●●万円を支払う。
- 甲及び乙は、モラハラである旨を他方から指摘されたにも関わらず、それと同様のモラハラを繰り返した場合には、慰謝料として●●万円を支払う。
財産に関する内容
財産についての定めは、婚前契約を締結しようとする主な目的にもなるもので、また、離婚の際のトラブルの拡大を防ぐ意味でもとても重要な事項です。
婚前契約がない場合には民法が適用され、婚姻前の財産は各自の財産であり、婚姻後に取得した財産は基本的には2分の1ずつ分配することになります。
民法に従うとこのように処理されますが、婚前契約では、これと異なるルールを決めることができるのです。
婚姻前の財産も夫婦の共有財産とすることもできますし、婚姻後に取得する財産は全て各自のものとすることも、具体的な一部分のみを共有財産とすることもできます。
記載例
- 甲及び乙は、婚姻前の本日現在の各自の財産として、以下のとおりの財産があることを確認し、これを各自の特有財産とする。
<甲の財産>
預貯金 ●●銀行●●支店 普通●●●●●●●
不動産 ●●県●●市●●丁目●●番●●号 ●●●●
<乙の財産>
預貯金 ●●銀行●●支店 普通●●●●●●●
株式 株式会社●●●● ●●株
- 甲及び乙は、婚姻生活に関する費用の支払い及び貯蓄に充てるため、婚姻後速やかに甲名義の預金口座を開設し、双方が合意した金額を、双方が合意する方法により当該預金口座へ入金するものとする。
- 甲及び乙は、次の財産を共有財産とする。
①婚姻後に婚姻生活に関する費用の支払い及び貯蓄に充てるために開設した預貯金口座 にかかる預金債権
②共有財産とすることに双方が書面により合意した財産
- 甲及び乙は、上記共有財産を除き、婚姻後に取得した財産は、その名義で取得した者の特有財産とし、離婚の際の財産分与の対象としないことを確認する。
債務に関する内容
婚姻前にあった借金が婚姻後に発覚して関係が悪くなることもありますので、婚前契約で婚姻前にある借金を明確にしておくことができれば、それを回避できる場合もあります。また、婚姻後の借金は、婚姻生活の日常生活に必要な借金については夫婦が連帯して責任を負う可能性があります。
それ以外の借金は、各自が責任を負いますが、家計が共通になると結局は連帯して責任を負うのと同じになってしまいます。
第三者に対しては、婚前契約(夫婦財産契約)を登記することにより主張することができますが、婚前契約に定めておくことで、これとは別のルールとすることができます。
記載例
- 甲及び乙は、婚姻前の本日現在の債務として、●●万円以上の債務(保証債務を含む)がないことを確認する。
- 甲及び乙は、婚姻後、●●万円以上の債務を負担することとなる場合には、事前に他方の書面、メール、LINE等、記録が残る形式による同意を得なければならない。
- 甲及び乙は、婚姻生活のための費用に充てるために借り入れをする場合には、その債務について連帯して責任を負う。
- 甲及び乙は、上記の場合を除き、他方がその名義で負担した債務について一切責任を負わず、債務を負担した者は自らの特有財産から返済しなければならない。
子どもに関する内容
婚姻生活にとって、子どもに関する事項は、パートナー同士の関係に大きな影響を与えることが多い事項です。
子どもが欲しいのかどうかということから、いつ頃欲しいのか、どのように育てたいのかといったことについて、協議して定めることができます。ただ、いろいろ事情の変化によって要望が変わることもあるので、どこまで細かく決めるのかも含めて考えた方が良いでしょう。
記載例
- 甲と乙は、婚姻後●年間は2人での婚姻生活を楽しみ、子どもをもうけない。
- 婚姻後3年経過後、双方で協議して、子どもが欲しいかどうか、いつ頃欲しいのか等について協議する。
- 子どもを欲しているにも関わらず、●年間子どもができない場合には、相互に協力して不妊治療をする。
親族との関わり方に関する内容
パートナーの親族と積極的に関わりたい人もいますし、反対にあまり関わりたくないという人もいます。
また、親との同居や介護についてどのように考えているのか協議し、定めることができます。
記載例
- 甲と乙は、他方の両親に対して敬意を持って関係を築くよう努める。
- ただし、各自の両親について介護が必要となった場合には、各自が責任を持って行い、他方にその負担を求めない。
- 親族との関わりについては、他方の意思を尊重し、無理に積極的な関わりを求めたりしない。
婚前契約書のテンプレートを紹介
続いて、婚前契約書を実際に作成する際にご利用いただける、婚前契約書のテンプレートをご紹介します。
下記の画像の下に、PDFのテンプレートを無料でダウンロードできるリンクがございますので、必要に応じてご利用ください。
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婚前契約はいつ結ぶと良い?結婚後の作成はNG?
婚前契約は、基本的には婚姻前に作成する必要があります。
婚姻の届出前に財産について別段の契約をしなかった場合には民法の規定にしたがうものとされますし(民法755条)、財産に関する事項を含む場合には、民法上「夫婦財産契約」と呼ばれ、婚姻前に登記をすることにより第三者に主張できるようになり(民法756条)、また、婚姻後には変更することができないとされている(民法758条1項)からです。
婚前契約書の内容の協議と作成には一定の時間がかかると考えられます。
急いで作成することはあまり望ましくなく、ある程度時間をかけて協議して内容を詰めていくべきです。
婚姻届を提出する具体的な予定があるのであれば、余裕をもって、その1か月以上前には準備を始めた方が良いと思います。
ただし、これらは夫婦の財産に関する事項についての制限であり、それ以外については、時期の縛りがあるわけではありません。
夫婦の財産に関しない範囲で、不貞の慰謝料や子どもに関する事項、親族との関わり方に関する事項などについては、婚姻後でも合意することは可能です。
この際に注意が必要なのは、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」とされていることです(民法754条)。
これによれば、婚姻中に合意をしたとしても、いつでも取り消すことができ、合意する意味がないことになります。
一方、この条文は、婚姻関係が破綻した後には適用されず、もはや裁判になる程の事態になれば適用されないのではないかという考えから、事実上死文化していると指摘されることがあります。
しかし、これまで裁判例となった事案については、取消しを認めることが不合理となる結論だったことから取消しを制限したとも捉えることもできます。今後裁判となった場合には、具体的事情をもとに、取消しを認めることが良いのかどうか個別判断になる可能性もあり、必ずしも取消しが制限されるとは限りません。
そのため、婚姻後に何らかの合意をしたとしても、いつでも取り消される可能性があることは認識しておく必要があります。
婚前契約書を作成する際の注意点・ポイント
次に、婚前契約書を作成する際の注意点やポイントについて解説します。
婚前契約書は後々変更できる
婚姻前に婚前契約書を作成したとしても、実際に婚姻生活をしてみると、契約時の事情とは異なり、婚前契約書の内容を変えたいと思うこともあると思います。
上記のとおり、財産に関する事項は婚姻前に婚前契約書を作成する必要があり、婚姻後に変更はできないこととされていますが、それ以外の子どもに関する事項、親族との関わり方に関する事項、不貞の慰謝料など直接夫婦の財産に関わらない事項については婚姻後にも合意することは可能ですし、婚前契約書の内容の変更も同様です。
一方、婚姻後に婚前契約の内容を変更する合意をしたとしても、いつでもその変更の合意が取り消されるリスクがあるのは上記と同様です。
ただし、法的な効力はともかく、パートナー同士の合意を明確にしておくという趣旨であれば、柔軟に変更することは可能ですので、事情が変わった場合には、パートナー同士で協議して柔軟に変更すれば良いと考えられます。
婚前契約書を公正証書にしておくべきか
婚前契約書は、公正証書にすることができる場合があります。
公正証書は、公証人という人が関与して、第三者の立場から、本人の意思確認などをしてから作成されますので、当事者同士で作成する合意書よりも、当事者の認識としては重い意味を持つ効果が期待できます。
ただし、公証人が関わるものであることから、当事者が婚前契約書に入れたい内容を全て入れることができるかは分かりません。民法上規定されているような、財産的側面にフォーカスした夫婦財産契約であれば、比較的公正証書になじむかもしれません。
また、具体的なお金のやり取りについて定める場合にも、公正証書が作成できれば強制執行することが可能となるので、公正証書を作成するメリットになります。
しかし、それ以外の双方の気持ちや考え方を定める内容、仮定の上の内容を定める場合については、あまり公正証書になじむものとは考えられません。
どうしても公正証書にしたい場合には、パートナー同士や、弁護士などに相談した上で案を作成し、公証役場というところに相談してみる必要があります。
婚前契約書には無効となる内容を書かないように注意する
婚前契約書は、パートナー同士が自由に内容を決めることができるのが原則ですが、どんな内容でも決めておけるかというと、そうでもありません。
例えば、離婚する場合の親権者について婚前契約書で定めておいたとしても、親権については実際に離婚する時点で子どものことを1番に考えて親権者を決めることになるので、無効となると考えられます。また、不貞の慰謝料として1億円などと書いても、実際には無効となると考えられます。
無効な内容ばかりを書いた婚前契約書を作成してしまうと、契約全体の有効無効の判断に影響が出て、結局は契約全体が無効とされてしまう可能性があり、何ら意味がないことにもなりかねません。
婚前契約書や公正証書の作成は弁護士への依頼がおすすめ
婚前契約書の作成やそれを公正証書にする場合には、当事者の希望を正確に把握し、婚前契約書に反映させることが必要です。
パートナー同士が自分たちで協議し、婚前契約書を作成しても、それを理由に無効とされるわけではありませんので、自分たちで作成してみても良いと思います。
ただ、婚前契約書の内容が、法的にどのような意味を持つのか正しく把握するのは難しい場合も多いため、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
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村木弁護士からのメッセージ
婚前契約書は、これまで日本で広まっているものではありませんが、婚姻に関する価値観は多様化していますので、夫婦となっても、各自がある程度独立して生活したいという希望があったり、各自の財産について干渉しないし干渉されたくないという希望がある人が増えているように思います。
これらが理由で婚姻したくない人もいるようですので、これまでの常識的とされるような婚姻生活とは異なる婚姻生活であれば婚姻しても良いという人の場合には、婚前契約書を作成することで、婚姻しやくすなるという効果も期待できます。
また、会社の株式など、離婚で財産分与となる場合には、株価の算定に時間と費用がかかる可能性もありますし、場合によっては会社の株主構成が大きく変わる可能性すらあるので、婚前契約で財産分与の対象から外すことができれば、紛争の予防としては大きな効果が期待できます。
ただ、今の日本の状況では、婚姻前に婚姻生活についてパートナー同士が協議してお互いの価値観を確認し合えるという点が、多くの方に当てはまる最も大きなメリットだと思います。
これから婚姻しようとする際に、婚前契約について関心を持ったときは、ぜひ、婚前契約について自分で調べてみたり、弁護士に相談したりしてみてください。