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離婚に関する民法の全条文を解説|離婚を考えたらまずは民法を知ろう!

離婚のルールは民法に基づいてつくられているので、有利に離婚するためには離婚に関する民法のルールを知っておくことが非常に重要です。民法の離婚に関する条文はたった9つだけです。弁護士にすべて任せてしまう前に、この記事で一度、民法の条文を一気に勉強してみましょう。

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離婚に関する民法のルールを勉強しましょう! 

離婚のルールは基本的に民法に定められています。
 
民法第4編第2章第4節の離婚の条文はたったの9つです。
 
この記事を読んで民法の離婚のルールを一気に勉強しましょう!

第1款 協議上の離婚(協議離婚)

民法上の離婚には2つの種類が存在します。
 
1つ目は、協議上の離婚で、2つ目が裁判上の離婚です。
 
協議上の離婚は、離婚する両当事者による離婚届の提出による離婚です。
 
これに対して、裁判上の離婚は、裁判所の判決による離婚です。
 
ちなみに調停離婚というものも存在しますが、ひとまずは、家庭裁判所で行う「協議上の離婚」の1つと考えておきましょう。

763条 協議上の離婚

第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

日本の民法では、夫婦の話し合いだけで離婚することが認められています。
 

離婚届の提出の際には「法律上の婚姻関係を解消する意思の合致」が必要であり、かつこれで十分とされています。

つまり、一方が離婚する意思がないのに勝手にもう一方が離婚届を提出しても離婚は無効です。

逆に、離婚後に同棲や事実婚を続けているからといって、離婚が無効になるといったことはありません。

法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてなしたものであり、このような場合、両者の間に離婚の意思がないとは言い得ないから、本件協議離婚を所論理由を以つて無効となすべからざることは当然である。

最判昭和38年11月28日民集17巻11号1469頁

764条 婚姻の規定の準用

764条 第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。

764条の準用する738条の内容
成年後見人が協議上の離婚をするには、その成年後見人の同意を要しない。

764条の準用する739条の内容
協議上の離婚は、戸籍法…の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

764条の準用する747条の内容
詐欺又は強迫によって協議上の離婚をした者は、その協議上の離婚の取り消しを家庭裁判所に請求することができる。

 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

民法764条においては、婚姻に関する民法738条、739条、747条の規定が、離婚についても準用されることが定められています。
 
準用とは、ある制度のルールを他の制度に用いることをいいます。
 
この場合では、それぞれの条文の「協議上の離婚」の部分を「裁判上の離婚」に読み替える必要があります。
 
民法764条の準用する同738条は、成年被後見人(重度の精神上の障害があり、家庭裁判所に審判を受けた人)も、単独で離婚ができることを定めています。
 
民法764条の準用する同739条は、協議上の離婚の効力発生のためには離婚届が必要な旨と、離婚届の形式について定めています。

特に婚姻のときと同様に離婚のときに2人の成人の証人が必要であることが重要です。
 
民法764条の準用する同747条は、詐欺や脅迫により協議上の離婚をした人は、その離婚を取り消すことができる旨定めています。

765条 離婚の届出の受理

765条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

764条の準用する739条の内容
協議上の離婚は、戸籍法…の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

819条1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
離婚の証人の記載がない場合や、子どもがいるのに親権者欄の記載のない場合、離婚届は受理されません

もっとも、これらの不備があるにもかかわらず誤って離婚届が受理された場合にも、離婚が無効になるわけではありません

ただし、当事者に離婚意思がない場合には離婚は無効になりますし、詐欺・強迫があれば取り消すことはできるのは前述のとおりです。

つまり、本条は、離婚届の形式が離婚の効力に影響を与えないということのみを定めているのです。

766条 離婚後の子の監護に関する事項の定め等

第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。 

 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める 

 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

 前3項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

前条で定めた親権に、監護権は基本的には含まれていますが、協議によって親権者と監護権者を分けることが可能です。
 
また、子供を引き取らない父母の一方にとって子どもとの面会交流権や養育費などは重要になりますので、離婚時にしっかりと取り決める必要があります。
 
子の監護に関する事項は子供の利益を最優先して考えなければならないことも、あえて注意的・明示的にルールにされています。

監護に関する事項が定まらない場合には、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることができるという制度も整備されています。

767条 離婚による復氏等

第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

民法767条は、離婚後の両当事者の名字についての規定です。

離婚をすると、結婚により名字を変えた夫婦の一方は、婚姻前の氏(多くの場合旧姓)に戻るというのが民法の原則的なルールです。

この場合、親の戸籍に戻るか、旧姓で新しい戸籍を作るかを離婚届上で選択することができます。

また、離婚から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出すれば、離婚の際に称していた名字で新しい戸籍が作られ、名字を変えた夫婦の一方は、夫婦の戸籍を抜け、その戸籍に移ることになります。

結婚により名字を変えた夫婦の一方が親権を得たとしても、それにより子供の戸籍が親権者の戸籍に移るというルールはありません。

子どもの戸籍を移したい場合、子の氏の変更許可の申立てをし、許可を得て入籍届を提出するという手続きが必要になります。

768条 財産分与

第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
離婚時に夫婦の共有財産を分割するというのが民法のルールです。

財産分与には、清算的財産分与・慰謝料的財産分与・扶養的財産分与があるといわれていますが、メインとなるのは清算的財産分与です。
財産分与については、まずは当事者間で協議をし、それが調わない場合には、家庭裁判所が財産分与をするか否かや財産分与の額・方法を決定します。
 
妻が専業主婦で収入がない場合にも、家事等により夫の収入に貢献しているとして、結婚後に築いた財産の分与を請求できるといわれています
 
その際、専業主婦の財産形成に対する貢献度が50%とみられる傾向にあり、女性側が不利にならないよう配慮されています。

769条 離婚による復氏の際の権利の承継

第769条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
 
 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。

897条1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

家系図や仏壇や墓地などを離婚により名字を変えた夫婦の一方(夫婦の戸籍の筆頭者でない方)が承継していた場合、承継人を再度決めなおすというルールです。

第2款 裁判上の離婚 

以上で、協議上の離婚についてのルールは終わりです。ここからは、裁判上の離婚についてのルールを確認しましょう。

770条 裁判上の離婚 

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 
 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
協議離婚が成立しなかった場合で、離婚調停も成立しなかった場合には、民法770条の離婚事由があれば、離婚の訴え(離婚裁判)を提起することができます

民法770条各号は離婚事由について定めています。

民法770条1項1号から4号には具体的な離婚事由が定められており、民法770条1項5号は個別具体的な事情に対応するための包括的な離婚事由を定めています。

民法770条2項により、民法770条1項1号から4号までの離婚事由がある場合でも、裁判所の裁量で、離婚が認められないこともあることに注意が必要です。

民法770条1項各号の離婚事由があるかは、協議上の離婚をする場合にも、参考にされることが多いので、本条は非常に重要な条文といえます。

771条 協議上の離婚の規定の準用 

第771条 第766条から第769条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。

771条の準用する766条の内容
父母が裁判上の離婚をするときは、この監護をすべき者、父又は母と子との面会およびその他の交流、この監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他この監護について相当な処分を命ずることができる。
 前3項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
 
771条の準用する767条の内容
婚姻によって死を改めた夫または妻は、裁判上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
 
771条の準用する768条の内容
裁判上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過した時は、この限りでない。
 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
 
771条の準用する769条の内容
婚姻によって氏を改めた夫または妻が、第897条第1項の権利を承継した後、裁判上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
民法771条は、この記事の前半で紹介した民法766条から民法769条の規定が、裁判上の離婚においても準用されるということを定めています。

親権者、面会交流権、養育費など、子の監護に関する事項については裁判離婚でも決めなければならないというルールです。

また、苗字や財産分与、墓地等のルールも協議離婚のときと同様です。

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離婚に関する民法の全条文を解説|離婚を考えたらまずは民法を知ろう!のまとめ

 
離婚において、民法の条文は最も重要なルールを定めています。
 
特に、民法770条の離婚事由は、離婚できるか否かを判断する際の大きな基準となります。
 
また、民法770条の離婚事由以外にも、離婚の際に問題になりやすい重要な事項についてのルールが民法に定められています。
 
民法の離婚に関する9つの条文を把握しておくだけで、離婚の際の基本的な考え方が理解できます。
 
しかし、民法は法律の1つにすぎません。
 
他の法律や判例と一体となって離婚や家族のルールは作られています。
 
実際の離婚に際しては民法以外の法律や判例が重要視される場合もあります。
 
個別具体的なケースにおいて、どのルールが適用され、どんな結果になるかについては、弁護士に相談することが重要となります
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