消費者契約法とは?消費者契約法とクーリングオフの違いって何?
買い物、旅行、散髪、こんな身の回りの事柄のどれもが消費者と事業者との「契約」によって成り立っています。しかし消費者はどうしても限られた情報の中で契約を結ぶしかなく、時には不都合であったり不当な契約であったりします。こんな事態から消費者を守るために「消費者契約法」が平成12年に制定されました。本記事ではこの消費者契約法や消費者契約法とクーリングオフの違いについてご紹介します!
消費者契約法とは
店舗やオンラインショップで物を買ったり、有料のサービスを受ける場合、消費者と事業者の間で契約を結ぶことになります(消費者契約)。
しかし、この契約を結ぶ際には、消費者と事業者との間には一般的に大きな情報格差があり、消費者は知らず知らずのうちに不利な契約を結んでしまう可能性があります。
消費者契約法は、こうした様々な情報格差によって生まれる、消費者側の損害等を是正・防止するために制定された法律です。
すべての消費者契約が対象
消費者契約法は、すべての「消費者契約」が対象範囲になります。
契約の目的となるものは「商品」だけでなく、エステなどの「サービス」や施設使用に関する「権利」など、かなり広い範囲に及びます。
消費者と事業者の間に何らかの「契約」が成り立っているなら、「消費者契約法」の対象とすることができるのです。
契約の過程で生じたトラブルを解決
この法律では、消費者と事業者間で契約を結ぶ際、誤認や困惑を生むような行為があった場合、消費者はその契約を取り消すことが可能です。
ただし、契約の取り消しができるのは、消費者が誤認に気付いたり困惑した状態を脱したときから1年以内、または契約してから5年以内に限られますので、要注意です。
誤認や困惑を生むような行為としては、下記のようなものがあげられます。
「誤認」を生むような行為
- 不実告知:契約するか否かの決断に大きな影響を与える事実に関して、虚偽の告知をすること。
- 断定的判断:株価や為替などといった将来の発生が不確実なことについてを断定的な判断を述べること。
- 不利益事実の不告知:長所や利益のみを強調し、消費者にとって不利益になり得る重要な項目を言わないこと。
「困惑」を生むような行為
- 不退去:訪問販売などで「帰ってほしい」と言ってるのに帰らない。
- 退去妨害・監禁:説明会などで「帰りたい」といったのに帰してくれない。
契約条項に関わるトラブルを解決
さらにこの法律では、消費者の不利益につながるような契約条項の一部または全部を無効にすることができます。
具体的には、以下のような場合が該当します。
- 事業者の損害賠償責任を免除したり制限したりする条項
- 不当に高額な解約損料を求める条項
- 不当に高額な遅延損害金(年14.6%以上)を求める条項
消費者契約法とクーリングオフの違い
ところで消費者トラブルを解決仕組みとして「クーリングオフ」という仕組みがあります。
この仕組みと消費者契約法に基づく解決はよく似ていますが、いくつかの大きな違いがあります。
適用される販売形態
クーリングオフの対象となる販売形態は、訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法、内職商法、特定継続的役務提供の5つのみに限定されます。
これらの販売形態は、消費者契約法とは別に、特定商取引法という法律でルールが定められています。クーリングオフはこの法律で定められているルールの一つです。
そのため、通信販売や店舗販売などで商品を購入した場合、クーリングオフでは対応できません。
一方で消費者契約法は、すべての販売形態によって結ばれた契約が対象となります。
適用される契約・商品
クーリングオフが適用される契約や商品も、指定された58の商品、21種類の役務、3種類の権利に限られています。
クーリングオフが適用される58の商品には自動車は含まれておらず、その範囲の狭さが目立ちます。
一方、消費者契約法はすべての契約に適用可能ですから、この範囲の広さは圧倒的です。
取消権の行使に関して
取消権の行使の期間も、クーリングオフ制度は書面に基づいて8日以内(マルチ商法などは20日以内)と短いですが、消費者契約法は誤認・困惑から6ヶ月以内、または契約から5年以内と長くなっています。
ただし、クーリングオフは消費者契約法上の取消しとは異なり、行使に何らの理由も要りません。クーリングオフが適用される販売形態については、数日間であれば自由に解約ができ、その後は消費者契約法や特定商取引法で定められた取り消しの理由が必要になってくる、ということです。
消費者契約法による取り消し事例
消費者契約法の内容よりわかるように、具体的な事例を挙げてみましょう。
今回紹介するのは、国民生活センターに寄せられた学習教材の契約における「不実告知」の例になります。(40代女性 家事従事者)
消費者契約法の事例
相談者は「以前、A社から小学6年生の子供用に教材を購入し、その際の担当者から月に一度、勉強の進み具合を尋ねる電話がきていた。ある日A社と名乗る販売員(不実の告知)から教材のことで話をしたいので、いつがよいかという電話があった。ちょうど忙しい時期だったので断ったが、急いだほうがよいといわれ、時間を作ることにした。
来訪した販売員はB社の名刺を出したが、てっきりA社の関係と思った(誤認)。販売員は5教科で中学3年分がセットになっていることを強調し、息子が通う中学校の教科書に準拠する教材を扱っている(不利益事実の不告知)。教材の製作会社と直結しているのは当社だけなので安い。注文してから製作するので、今申し込まないと間に合わないなどと説明された。結局、5教科3年分、納品は年度末という内容で約175万円のクレジット契約を結んだ。その後A社からの定期的な電話がありB社との契約を伝えたところ、A社では新たな教材の販売は行っていないといわれた(事実の発覚)。B社に、A社ではなかったのでキャンセルしたいというと、もう発注したので取り消せない。クーリング・オフ期間を過ぎたので解約できないといわれあきらめた。その後、知人から販売会社は異なるが、同じ教材で自分が契約したものより安価でしかも教科別、学年別に購入できるという話を聞いた(事実の発覚)。」
この事例においては、①A社と名乗って電話したこと(不実告知)、②準拠版は5教科ではなく3教科であったこと(不利益事実の不告知)、③教材の製作会社と思われる会社に電話したところ、B社は製作会社と直結した会社ではなかったこと(不実告知)、といった問題点が挙げられる。このようにして相談者は誤認と困惑に陥ったのでした。この事例は国民生活センターを通じて結果的に解約と既払い金が返金されるに至った。
※参考・「」内の引用箇所:消費者契約法により取り消しが認められた学習教材
※「」内の()の箇所は、カケコム注。
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三輪弁護士からのメッセージ
消費者契約法は一見上記のような強い効力を持った法律に見えますが、難点として、不実の告知があったことや断定的判断があったことを「自分で証明できなければならない」という点があります。
ですので、うかつに契約をしない、という姿勢が重要と思われます。
トラブルが生じてしまった場合、消費者契約法、特定商取引法の適用の有無については、専門的な知識が必要になりますので、弁護士などの専門家への相談を検討してください。
まとめ
本記事を通じて「消費者契約法」という消費者の強い味方に関して理解を深めることが出来たと思います。
このような味方が居ると安心してしまいがちですが、私たちはそもそも「契約」という事柄に関してよく注意しておくことが大切です。
また契約に関しては条件などをよく確認しておき、不当に不利な状況に置かれていると感じた時にはためらうことなく弁護士に相談することが大切です。