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挫折を経験しながら導かれるように弁護士の道へ。「ちょっと変わった子ども」だった個性を武器に民事・刑事で活躍/金杉美和弁護士(京都法律事務所)

本が大好きで「ちょっと変わった子ども」だったという金杉先生。大学時代には航空部でグライダーに夢中になり、一時はパイロットを目指したものの挫折。失意の中弁護士という仕事に出会い、わずか2年で司法試験に合格。現在は民事・刑事問わず幅広く取り扱い、依頼者にとって最善の解決を目指して活動されています。

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弁護士を目指した理由とこれまでについて

これまでの経歴について教えてください。

生まれたのは京都市右京区ですが、3歳から高校卒業まで富山県で過ごしました。
その後、大阪大学文学部を卒業し、1年半のフリーター生活から一念発起して弁護士を目指し、2002年に司法試験に合格しました。
そして2004年に弁護士になってから現在まで、京都法律事務所に所属しています。

どんな子どもでしたか?

一言で言うと、「ちょっと変わった子ども」だったと思います。
黒柳徹子さんの半生を描いた「窓ぎわのトットちゃん」という作品があるのですが、まさに「トットちゃんは私のことだ」と思ったほどです。
幼い頃から、とにかく本が好きでしたね。
毎日のように学校の図書室に通い、自宅にある本は読み尽くしました。
食事中は読書ができないので、ソースなどの裏に書いてある原材料を読んでいるような子どもでした。
両親は運送会社を営んでいて家にいないことも多く、私は一人っ子だったのですが、今のようにスマホもありませんしゲームも買ってもらえませんでした。
ですから本を読んだり、小説を書いたり、絵を描いたり、必然的に一人で過ごす時間が多かったことも影響していると思います。
一方で、新しい遊びを考えて友だちを巻き込んで遊んだり、ずっと空を見ながら歌ったり、活発で自由奔放な一面もありました。
1つのことに集中すると他のことが見えなくなるところもあって、友だちの家に遊びに行っても本ばかり読んでいるので嫌がられることもありました。
人の気持ちを考えることも得意ではなかったので、悪気なく言ったことで相手を傷つけてしまったり、誤解されたり、ぶつかってしまうこともありました。
そういう経験もあって、人の心の動きや仕組みを知りたいと思い、大学では心理学を学びたいと思うようになりました。
ただ志望校に合格できず、結果的に文学部に進むことになりました。
 

大学時代はどのように過ごされましたか?

体育会航空部に入って、グライダーで日本や海外の空を夢中で飛び回っていました。
元々航空部の存在すら知らなかったのですが、入学直後に受け取った航空部のチラシに「あなたも空を飛べる」と書いてあったんです。
小さい頃から空が大好きだったので、「私も飛べるんだ!」と思って迷わず入部しました。
仕事にしようとは思っていなかったのですが、大学時代に操縦教官の国家資格も取得した際、航空局の試験官から「エアライン(航空機)のパイロットにならないですか?」と尋ねられたんです。
当時は女性パイロットは非常に少なくハードルが高かったのですが、教官の一言で一気にパイロットになりたいと思いました。
それで大学を2年留年して2回試験を受けたのですが、どちらも落ちてしまったんです。
導かれるように航空部に入り、グライダーに夢中になり、教官の一言でパイロットを目指し、すべてがピタッとハマった運命的なものを感じていました。
ところがパイロットになる夢は叶わず、人生のどん底に突き落とされたような気分でしたね。
とにかく大学を卒業したもののやりたいこともなく、とはいえ生活があるのでアルバイトを転々とし、知人に誘われてカレー屋をオープンしたもののうまくいかず、何にも心が動かない毎日を送っていました。
 

それまでの活発な姿からは想像できないですが、そんな時期もあったのですね。

そうですね。そんな中、操縦教官の資格を持っていたので、母校の大学の合宿へグライダーの指導にいったんです。
それで夜に教官同士で飲んでいたとき、弁理士の仕事をしている先輩教官から「弁護士向いてるんじゃない?」と言われたんです。
それまで弁護士になろうと思ったことは一度もなく、法律を学んだことすらありません。
ところがそのときカチッとハマって、すぐに司法試験合格を目指している友人に会って話を聞いて、飲み会から1週間後には司法試験予備校「伊藤塾」に入っていました。
 

ものすごい行動力ですが、どうしてそんなに素早く行動できたのですか?

バネですね。パイロットになれず、大学まで出してもらったのに自分はなにもできていないという葛藤やふがいなさで縮みきっていたバネが一気に開放されたんだと思います。
もちろんなにも考えず弁護士を目指したわけではなく、人と接する仕事をしたいという想いはずっとありましたし、弁護士であれば、なってからも自分を高め続けられると思ったんです。
そして予備校に入ってからは、持ち前の集中力で必死に勉強しました。
大学を卒業してから目標のない日々を送っていましたし、それまで真剣に勉強に取り組んだことがなかったので、大変でしたがとても楽しかったです。
結果的には、当時は10年かけて合格する人も珍しくない中、勉強を始めてから2年で最終合格できました。
 

先生のお話を聞いていると、「これだ」と思ったときの馬力や集中力に驚かされます。その一方で、すごく穏やかでバランスが取れた考え方や話し方をされる印象ですが、なにか意識されているのでしょうか?

それでいうと、本来的にはすごく偏った人間だと思いますよ。
ただ「パックマンの法則」と勝手に言っているんですが、パックマンのように様々な知識、スキル、経験を食べていって、結果的にバランスの取れた大きな丸になっていったんだと思います。
それも「今の自分はダメだから足りないところを埋めなきゃ」という動機ではなく、「もっと成長したい」「もっと自分を高めたい」という好奇心や向上心というポジティブな動機です。
 

現在の業務について

注力している分野を教えてください。

いわゆるマチ弁として、民事・刑事問わず幅広く取り扱っています。その中でも女性からの離婚に関する相談は非常に多いです。また刑事事件にもずっと力を入れて取り組んでいます。

弁護士として、どういったことを大切にされていますか?

たくさんありますが、結局は依頼者のために最善の解決をするということに尽きます。
もちろん、何が「最善」かというのは人それぞれ違いますから、目の前の依頼者にとっての「最善」を一緒に考えることも含めてです。
たとえば離婚でいうと、ただ離婚できれば良いという話ではなく、どういう離婚をするかによってその後の人生に大きく影響すると思うんです。
ですから離婚後のことも考え、依頼者にとって最善な解決を意識しています。
 

先生を突き動かすエネルギーはどこから湧いてくるのでしょうか?

怒りではないでしょうか。たとえば私は無実だと確信しているのに有罪判決を書く裁判官への怒り、こちらの言い分に耳を傾けない相手方などに対する怒りです。
もちろんプロとして、怒りで冷静さを失ってはいけません。
怒りを原動力にしながらも、常に頭は冷静でいられるようにコントロールしているイメージですね。
 

今後の目標など

今後の目標などを教えてください。

弁護士という仕事は、ゴールがありません。
弁護士になる前に想像していたとおり、自分を高め続けられますし、そうしなければならない仕事だと思います。
ですから今後も、一人でも多くの人に「あなたに依頼して良かった」と言っていただけるように、弁護士としての力も人間としての力もまだまだ高めていきたいですね。
仕事以外でいうと、実はグライダーで飛んでみたいと思っている国があります。
ただそもそもグライダーが無い国で、どうやって実現すれば良いのか今は分かりません。
だからこそ挑戦する価値があると思うので、いつか叶えたいですね。
 

弁護士情報

弁護士名:金杉 美和
所属弁護士会:京都弁護士会
事務所名:京都法律事務所
事務所HP:https://www.kyotolaw.jp/
事務所住所:京都市中京区御幸町通丸太町下ル 御幸町ビル5階

経歴:
1993年3月 富山県立高岡高校卒業
1993年4月 大阪大学文学部入学
1999年3月 2年留年の後、大阪大学文学部文学科を卒業
2000年11月 司法試験予備校に入校
2002年11月 司法試験合格 1年間の実務修習を京都で経験
2004年10月 京都法律事務所 入所
2022年度京都弁護士会副会長

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