無職でも借金を返済できる?方法や種類、弁護士に依頼するメリットは?
【この記事の法律監修】
藤田 圭介弁護士(大阪弁護士会)
弁護士法人・響 大阪オフィス
1.はじめに
借金問題は誰にでも起こり得る問題です。特に無職の場合には、収入がないことによりその返済が困難になる場合があるでしょう。しかし、無職であったとしても借金を返済する方法や支援制度を受ける方法があります。
本記事では、無職の方が借金問題を解決するための方法について解説します。
2.無職で借金があった場合にはどうすればいい?
2-1.無職でも借金返済できる?その解決方法とは?
借金を返済するために、さらに借金をして返済資金に充てることがあります。
しかし、無職の場合には、収入がないため返済能力が低いとされ金融機関等の審査を通過することが困難です。
そのため、無職の方は、原則新たに借金をすることはできません。
無職での借金返済は、収入源がないため非常に困難といえますが決して不可能ではありません。無職でも借金返済のためにできる方法として、
- 生活の見直しを行う
- 収入を得る方法を探す
- 家族や知人に相談する
- 公的支援制度を利用する
- 債務整理を検討する
などが考えられます。
2-1-1.生活の見直しを行う
生活する上でかかっている費用を見直すことで借金返済に充てるお金を作ることができます。
例えば、固定費を削減する、食費を節約する、不要なものを処分し売却資金を借金返済に充てるなどが考えられます。
ご自身が普段どのようなことにお金を使っているのか、一度見直してみましょう。
2-1-2.収入を得る方法を探す
まずはご自身の状況に合わせて、可能な範囲で収入を得る方法を探してみることをおすすめします。
最終的に債務整理を選択することになったとしても、収入を得る見込みがなければ利用できない制度があります。
収入を得る方法は正社員に限らず、パートやアルバイトでも可能です。
収入を得ることで借金返済に充てる資金を準備できますので、ご自身ができる仕事を探すことを検討してみてください。
2-1-3.家族や知人に相談する
家族や知人に相談し、一時的にお金を借りることを検討することも一つの方法です。
借りたお金で借金の返済に充てることができます。しかし、家族や知人に借りたお金もいずれ返済しなければならないため、借りる場合には相手に迷惑をかけないように返済できる金額を借りるようにしましょう。
2-1-4.公的支援制度を利用する
無職の場合でも、生活福祉資金貸付制度を利用できれば借入を行うことができます。
生活福祉資金貸付制度とは、低所得者、高齢者、障害者などが、安定した生活を送れるよう、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸付けと必要な相談や支援を行う制度のことをいいます。
生活福祉資金貸付制度の対象者の中には、必要な資金を他から借りることが困難な低所得者世帯とありますので、無職の方はこれに該当するでしょう。
生活福祉資金の種類には、
- 総合支援資金
- 福祉資金
- 教育支援資金
- 不動産担保型生活資金
などがあります。
総合支援資金は、失業などによって生活に困窮している人が、生活を立て直し、経済的な自立を図ることができるようにするために、社会福祉協議会とハローワークなどによる支援を受けながら、社会福祉協議会から、生活支援費や住宅入居費、一時生活再建費などの貸付けを受けられる貸付制度です。
総合支援資金の中には、一時生活再建費があり、債務整理に必要な費用などについて60万円までの貸付けが行われます。
総合支援資金の貸付対象者は、貸付けを行うことにより自立が見込まれるかたで、①から⑥の要件のいずれにも該当する人になります。
①低所得者世帯(市町村民税非課税程度)で、失業や収入の減少などによって生活に困窮していること
②公的な書類などで本人確認が可能であること
③現在住居のある人、または、住居確保給付金の申請を行い、住居の確保が確実に見込まれること
④法に基づく自立相談支援事業などによる支援を受けるとともに、社会福祉協議会とハローワークなど関係機関から、継続的な支援を受けることに同意していること
⑤社会福祉協議会などが貸付け及び支援を行うことにより、自立した生活を営むことが可能となり、償還を見込めること
⑥他の公的給付または公的な貸付けを受けることができず、生活費をまかなうことができないこと
引用:生活にお困りで一時的に資金が必要な方へ「生活福祉資金貸付制度」があります。 2 継続的な相談支援と生活費などの資金貸付を行う「総合支援資金」|政府広報オンライン
貸付対象者の要件を満たす場合には、検討されてみるといいでしょう。
2-1-5.債務整理を検討する
借金がどうしても返済できない場合には、最後の手段として債務整理を検討することになります。
債務整理には、個人再生、任意整理、自己破産、特定調停などがあります。
詳細につきましては後ほど解説します。
2-2.借金を滞納するとどうなる?
借金を滞納した場合には、以下のリスクが考えられます。
- 借入業者から支払いの督促がくる
- 借金の残高分について一括返済を求められる
- ブラックリストに載り、新たに借金やクレジットカードの作成ができなくなる
- 支払督促や訴状が届く
2-2.1借入業者から支払いの督促がくる
借金を支払わないまま、期日が過ぎてしまった場合、そのまま放置していると債権者である借入業者から督促の電話がかかってくる場合があります。
期日を過ぎて間もなく電話があった場合に、返済の意思がある旨を伝え、約束通りに支払えばほとんどの場合、これ以上大事になることはありません。そのため、最初の段階で誠実に対応することが重要になります。
ただ時効の債務承認との関係で、返済意思を伝えるタイミングを間違うと問題になる可能性があり、この時点での詳細な対応は弁護士に相談することをお勧めします。
しかし、借入業者からの電話を無視したり、電話で支払いの約束をしたにも関わらず返済を怠った場合には、ご自宅に督促状が届くことになります。
場合によっては、電話はかかってこず、督促状が先に届く場合もあります。
督促状には、決まった書き方があるわけではありませんが、
- 入金の確認ができていないこと
- 支払いに対する要求
- 支払いがない場合には法的措置を行う旨
などが記載されている場合があります。
そのため、督促状を受け取った場合には、早めに相手へ連絡し、対応をすることが必要になります。
どのように対応したらいいか分からない場合には、弁護士に相談するといいでしょう。
2-2.2借金の残高分について一括返済を求められる
督促状が届いても支払いをせず、その後の対応を放置していた場合には、借金の一括返済を求める請求書が内容証明郵便で届くことになります。
内容証明郵便とは、一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスで、
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度です。
引用:内容証明|郵便局
内容証明郵便を送ることで、債権者は、債務者に対して請求したということを証拠として残すことができます。内容証明郵便自体に差押えの効果はありませんが、内容証明郵便を送ることで債権者は債務者に対して返済をしてもらえるようプレッシャーを与えることができます。
2-2.3ブラックリストに載り、新たに借金やクレジットカードの作成ができなくなる
2か月以上滞納が続いた場合には、信用情報に事故情報が登録されることになります。
これを一般的にブラックリストに載るといいます。
ブラックリストに載ると、新たに借り入れができなくなったり、クレジットカードを作ることができなくなります。
2-2.4支払督促や訴状が届く
内容証明郵便で借金の督促状がきた場合、支払いができずそのまま放置していると、支払督促や訴状が届くことになります。
支払督促とは、貸したり立て替えたりしたお金や家賃、賃金などを相手方が支払わない場合に、申立人側の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる略式の手続のことをいいます。
引用:「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続きをご存知ですか? 2「支払督促」ってどんな手続?|政府広報オンライン
支払督促が届いても無視していた場合には、仮執行宣言付支払督促により相手方は強制執行を申し立てることができます。
強制執行手続には、不動産執行手続と債権執行手続があります。
債権執行手続の場合には、債権者が、債務者の勤務する会社を第三債務者として給料を差押えたり、債務者の預金のある銀行を第三債務者として銀行預金を差し押さえ、それを直接取り立てること等で債権回収を行うことができます。
支払督促ではなく、裁判所から訴状が届くケースもあります。
その際、裁判所への出廷を求める呼出状と言い分を記載するための答弁書が同封されますが、出廷もせず答弁書も提出することなく放置していると、判決が届きます。
判決が届いた後、借金を払えずそのまま放置していると、自宅や職場に債権差押命令が届き、差し押えが実行されます。
3.債務整理の種類
無職で借金の返済が難しい場合には、債務整理を検討することになります。
債務整理は、弁護士が依頼者の代理人となって借金の整理をすることをいいます。
債務整理の種類として、個人再生、任意整理、自己破産、特定調停があります。
任意整理については、司法書士(認定司法書士)でも対応することができます。
以下では、それぞれの内容、利用にあたっての条件、メリット、デメリットについて解説します。
3-1.個人再生
個人再生とは、借金などの返済ができなくなった人が、全債権者に対する返済総額を少なくし、その少なくなった後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を立て、債権者の意見を聞いたうえで裁判所が認めれば、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務(養育費・税金など一部の債務を除く)などが免除されるという手続のことをいいます。
3-1-1.条件
個人再生には、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の2種類があります。
それぞれの条件は以下のとおりです。
- 小規模個人再生手続
①借金などの総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること
②将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
- 給与所得者等再生手続
①、②に加えて
③収入が給料などで、その金額が安定していること
3-1-2.メリット
申立てにあたり再生計画を提出することになりますが、提出した再生計画が認められ分割返済を終了すれば残債務は免除されることになります。
3-1-3.デメリット
個人再生のデメリットは以下のとおりです。
- 費用がかかる
個人再生の場合、弁護士費用の他に裁判所費用がかかります。弁護士費用の場合には、依頼する法律事務所によって、分割払いや後払いに応じた対応が可能ですが、裁判所費用は一括で支払わなければなりません。
個人再生の場合、裁判所に納めなければならない手続費用などは、
代理人弁護士がいる場合:30,000円程度
代理人弁護士がない場合:215,000円程度
引用:個人再生手続利用にあたって その4(裁判所に納めなければならない手続費用などについて)|裁判所
となっています。
そのため、自分だけで手続きをおこなう場合には、より費用がかかってしまうため、事前にまとまった金額を用意できない方は利用するのが難しい制度といえます。
- ブラックリストに載り、新たに借金やクレジットカードの作成ができない
信用情報に事故情報が登録されますので、いわゆるブラックリストの状態になります。
そのため、数年間借入れや新規でのクレジットカードの作成が難しくなります。
- 継続的な収入確保が必要となる
個人再生の場合、将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあることが条件とされているため、無職の方は裁判所に申立てるまでに継続的に収入を得る見込みを確保しておくことが必要となります。
その他にも、返済期間中に返済ができなくなると、再生計画が取消となり、元の借金など全額を支払う義務が復活する場合がある点に注意が必要です。
引用:個人再生手続利用にあたって その8(手続の流れについて)|裁判所
3-2.任意整理
任意整理とは、裁判所を利用せず、弁護士が債権者と直接和解交渉を行い、支払い内容について合意形成を試みることをいいます。
3-2-1.条件
任意整理は、法律で規定されたものではないため、任意整理の条件が明確にされているわけではありません。
任意整理は債権者と直接交渉して支払い内容を決めていくことになりますので、
- 借金の額が少ない
- 一定の収入がある
- 原則3~5年以内に完済の見込みがある
のような点が考慮されることになります。
3-2-2.メリット
任意整理は、財産を失うことなく返済の負担を減らすことができます。
また、任意整理を行う費用についてですが、任意整理は裁判所を利用しないため裁判所費用がかからず、弁護士への依頼費用だけになりますので、費用が安いです。
3-2-3.デメリット
一定の収入や支払原資があることが必要になるため、収入がない場合や支払原資がない場合には任意整理は利用できません。
また、信用情報に事故情報が登録されることになり、数年間借入れや新規でのクレジットカードの作成が難しくなります。
3-3.自己破産
自己破産とは、債務者の申立てによって開始される破産手続きのことをいいます。
裁判所に対して、破産手続開始の申立てを行い、裁判所の審理の結果、破産手続の開始決定がなされます。
破産手続開始の申立てをした場合には、同時に免責許可の申立てをしたとみなされ、免責許可決定がなされた場合に、支払い義務が免除されることになります。
3-3-1.条件
自己破産を行うためには、
①債務者が支払不能であること
②免責不許可事由に該当しないこと
③債務が非免責債権でないこと
が必要です。
①債務者が支払不能であること
(破産手続開始の原因)
第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
破産法第15条により、債務者が支払不能であることが破産手続開始の要件とされています。
支払不能にあたるか否かは裁判所などの第三者からみて判断されることになります。
②免責不許可事由に該当しないこと
免責手続とは、破産手続開始当時に債務者が負っていた債務につき、法律上の責任(支払義務)を免除するかどうかを判断するための裁判所の手続のことをいいます。
免責不許可事由については、破産法第252条第1項に詳しく規定されています。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
例えば、消費やギャンブルによって負債を増やした場合や支払能力について債権者を欺いた場合には、免責不許可事由に該当します。
免責不許可事由がある場合には、免責は認められず、支払い義務は免除されません。
③債務が非免責債権でないこと
非免責債権とは、免責許可決定がなされても免除されない債権のことをいいます。
非免責債権については、破産法第253条第1項に規定されています。
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
例えば、租税等の請求権、悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権、故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権等には免責許可の効力が及びません。
したがって、これらに該当する場合には、支払義務は免除されないことになります。
3-3-2.メリット
裁判所から免責許可決定を受けると、ほとんどの借金返済の義務がなくなります。
また、債権者からの取り立てもなくなるので、借金による精神的な負担が軽減するといえるでしょう。
3-3-3.デメリット
自己破産のデメリットとしては、以下のようなことが考えられます。
- 一定の財産以外が処分される
破産手続は、債務者の財産を金銭に換えることで債権者に公平に分配することを目的とした制度です。
そのため、生活に必要となる家財道具等の一定の財産以外については処分されることになります。
- 手続きが複雑で費用がかかる
自己破産の場合、手続きが複雑で個人で対応することが難しいです。そのため、弁護士に依頼することになり、弁護士費用がかかります。
また、弁護士費用の他にも裁判所費用がかかります。
弁護士費用の場合には、依頼する法律事務所によっては、分割払いや後払いに応じた対応が可能ですが、裁判所費用は一括で支払わなければならないため、事前に資金を用意しておく必要があります。
- 破産手続が開始されると官報に掲載される
自己破産は、まず裁判所に申立てを行い、裁判所の審理を経て、破産手続の開始決定がなされます。破産手続の開始が決定すると、官報に住所・氏名が掲載されますので、ご自身が自己破産したことが周囲に知られることになります。
- 職業や資格に制限がかかる
自己破産手続を開始して終了するまでの間は、一部の職業や資格について制限がかかる場合があります。例えば、保険募集員、警備員、弁護士、税理士、後見人等にはなれません。
引用:自己破産の申立てを考えている方へ 第2 破産手続について|裁判所
- ブラックリストに載り、新たに借金やクレジットカードの作成ができない
信用情報に事故情報が登録されますので、いわゆるブラックリストの状態になります。
そのため、数年間借入れや新規でのクレジットカードの作成が難しくなります。
3-4.特定調停
特定調停とは、債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生を図るため、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を行うことを目的とする手続のことをいいます。
特定債務者とは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律第2条)のことをいいます。
3-4-1.条件
特定調停を利用するためには、
- 申立人が特定債務者に該当すること
- 原則当事者本人が裁判所へ出頭し、裁判所に最低でも2回は行くこと
- 返済が可能であること
が必要となります。
3-4-2.メリット
特定調停は、経済的に破綻するおそれのある債務者が幅広く利用できる制度です。
特定調停の合意が成立し、合意内容が調書に記載されれば、その記載内容が確定判決と同一の効力となり、債務者は合意内容に基づいた弁済だけすればよく、それ以上の取立てを受けることがなくなります。
申立ての費用については、例えば、個人が申し立てる場合、業者1社につき500円程度の安価で済みます。
また、調停は、当事者が気兼ねなく話合いを行うため非公開の席で行うことになっており、外部に知られることもありません。
3-4-3.デメリット
全く収入の見込みがない場合や収入の見込みがあっても返済期間が極端に長期に及ぶ場合には、調停の手続を進めることが難しいです。
無職の方は、裁判所に申立てるまでに収入を得る見込みが必要となります。
また、信用情報に事故情報が登録されることになり、数年間借入れや新規でのクレジットカードの作成が難しくなります。
4.無職で債務整理の費用が払えない場合は?
無職で債務整理の費用が払えない場合には、以下のような方法があります。
- 自分で手続きをする
- 法テラスを利用する
- 司法書士に依頼する
- 弁護士費用を分割で支払う
4-1.自分で手続きをする
弁護士や司法書士に債務整理を依頼した場合には、費用がかかりますが、ご自身で手続きをすべて行えば依頼する際にかかる費用は節約できます。
ただし、個人再生を弁護士なしで行った場合には、裁判所に納めなければならない手続費用が高くなる点に注意が必要です。
費用の面で悩まれている場合には、後述しますように法テラスや弁護士費用の分割払いなどの方法もありますので、まずは法律相談をした上でご自身で手続きをすすめるかどうかを判断されるといいでしょう。
4-2.法テラスを利用する
法テラスには、弁護士・司法書士費用等の立替制度があります。
この制度は弁護士や司法書士に依頼する必要があるのに、経済的に困っている方を対象としたものです。
ご利用にあたっては、
- 収入や資産が一定基準以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
という3つの条件を満たす方が利用できます。
立替えた費用は、分割での支払いとなり、利息等はありません。
まずは、弁護士・司法書士に相談の上、ご自身が法テラスの立替制度を利用できるか確認してみましょう。
4-3.司法書士に依頼する
任意整理の場合には、司法書士(認定司法書士)にも依頼することができます。
費用については、弁護士に依頼する場合よりもやや金額が少ない場合もありますが、弁護士とあまり変わらない費用を取っている司法書士事務所もあるため、依頼する際に確認することが必要です。
認定司法書士に任意整理を依頼する場合には、借金額が債権者1件につき140万円と上限が定められていますので、ご自身の借金額を確認のうえ依頼しましょう。
4-4.弁護士費用を分割で支払う
債務整理を弁護士に依頼する場合、借金で毎月の返済が苦しい方には、支払いが困難だと感じることもあるでしょう。
しかし、法律事務所によっては費用の分割払いや後払い等に対応している場合がありますので、法律相談をした場合に確認することをおすすめします。
5.弁護士と司法書士に依頼をする違いは?
任意整理で弁護士と司法書士に依頼する場合には、それぞれの役割や対応範囲に違いがあります。以下で、どのような点が異なるか解説します。
5-1.弁護士と司法書士の役割について
弁護士は、法律の多岐にわたる問題に対応できる法律の専門家です。債務整理においては法律相談、交渉、訴訟について対応することができます。
司法書士は、登記業務の専門家であり、司法書士の中でも認定司法書士は、債務整理の中の任意整理について法律相談、交渉、訴訟についても対応することができますが、その範囲に制限がある点で弁護士と異なります。
5-2.弁護士と司法書士、どちらに依頼すべき?
債権額(借金)が140万円以下の場合には、認定司法書士も法律相談、交渉、訴訟について対応することができますが、債権額が140万円を超えた場合には、弁護士だけしか対応することができません。
弁護士と司法書士のどちらに依頼するかは債権額に応じてご自身で判断することにはなりますが、債権額がはじめから140万円を超えていることが分かっている場合には弁護士に依頼することになります。
また、弁護士の場合には、債務整理について、個人再生、任意整理、自己破産、特定調停のすべてに代理人として対応できますが、認定司法書士の場合には、任意整理のみに限られ、自己破産、個人再生については申立書の作成のみ行います。
そのため幅広く債務整理について相談・依頼したい場合には、弁護士に依頼することになります。
6.債務整理を弁護士に依頼するメリットとは?
債務整理を弁護士に依頼した場合には、以下のようなメリットがあります。
- 催告、取り立てをストップできる
- 複雑な手続きを一任できる
- 最適な解決方法を提案してくれる
6-1.催告、取り立てをストップできる
ご自身で債権者と交渉する場合には、債権者から直接催告や取り立てを受けることになります。
しかし、弁護士に依頼し代理人になってもらえれば、債権者は弁護士と交渉することになるため直接の催告や取り立てを止めることができます。
また、相手方との交渉は弁護士に行ってもらえるため、債務者である本人は相手方と直接交渉するという負担から解放されます。
6-2.複雑な手続きを一任できる
債務整理の中でも個人再生、自己破産、特定調停については、裁判所へ申立書や必要資料を提出することになります。そのため、これらのものをご自身ですべて準備する場合には大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、申立てにあたっての複雑な手続きをすべて弁護士に一任できますので、事務手続きをご自身で行う必要はありません。
6-3.最適な解決方法を提案してくれる
債務整理には、個人再生、任意整理、自己破産、特定調停などの手段がありますが、弁護士にご自身の事情をお伝えいただくことで最適な解決方法を提案してもらうことができます。
また、債務整理にあたりご自身では分からなかったことも、相談することで疑問も解消し納得のいく解決方法を見つけることができるでしょう。
7.弁護士に依頼しない場合のデメリット
弁護士に債務整理を依頼しない場合には、以下のようなデメリットがあります。
- 手続きが上手くいかない場合がある
- 時間がかかる
7-1.手続きが上手くいかない場合がある
債務整理の中でも、個人再生、自己破産、特定調停は、裁判所に対して申立てをしなければなりません。
裁判所は、手続に関する一般的な説明をすることはできますが、申立てをすべきか、どのようにしたら申立てが認められるか等の法律相談に応じることはありません。
そのため、制度や法律を知らなかったことによる不利益は自己責任になります。
例えば、裁判所に対して十分な主張または証拠の提出ができなかった場合には申立てが棄却されることもありますので、ご自身だけでは手続きが上手くいかない場合があるといえます。
7-2.時間がかかる
弁護士に依頼せず債務整理を行った場合には、依頼する費用を節約できるというメリットもありますが、弁護士に依頼しなかった場合にはすべてご自身で対応しなければならないため手間と時間がかかることになります。
8.まとめ
借金問題は無職の状態でも解決する方法があります。特に弁護士に相談することで、最適な解決策を見つけることができます。借金問題に悩んでいる方は、一度弁護士に相談することを検討してみてください。