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アスベスト給付金とは?【本人、ご家族向け】~金額、対象、条件、手続きなど~

【この記事の法律監修】  
中山 明智弁護士(東京弁護士会) 
名川・岡村法律事務所

「以前建設業や製造業に従事していたが、アスベスト関連疾病と診断された。」
「家族がアスベスト関連疾病と診断されていたが、亡くなってしまった。」
このような場合は、アスベスト給付金を申請するべきでしょう。

もっとも、アスベスト給付金にはさまざまな種類があり、それぞれ対象者や手続きが異なっています。自分はどの給付金を受ける権利があるか事前に確認した上で、申請を進める必要があります。

本記事では、アスベスト給付金の支給金額・支給対象・支給条件・手続きについて、詳しく解説しています。

この記事を読むことで、アスベスト関連疾病と診断された方やそのご家族は、アスベスト関連疾病による健康被害や、関連する給付金の申請までの流れについて、詳しく理解できます。

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1.アスベストの概要

1-1.アスベストとは?

アスベストとは、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、「せきめん」「いしわた」とも呼ばれています。耐熱性、防音性や絶縁性に優れているため、19世紀頃から世界各地で使用されていました。

アスベストは、建築物の断熱材や防音材、耐火材のほか、自動車のブレーキやクラッチ、ガスケットなど、工業製品の一部として用いられてきました。

日本でアスベストが積極的に使用されるようになったのは、西洋の文化や技術が取り入れられるようになった、明治時代の頃です。その後、高度成長期の1970〜1990年代頃に、アスベストの輸入量が最も増加し、年間あたり30万トン以上ものアスベストが輸入されていました。

しかし、アスベストの繊維が体内に吸い込まれることで健康被害をもたらすことが1970年代ごろから徐々に判明し、1980年代以降は世界的に使用が制限されるようになりました。そして、日本では、2006年にアスベストの使用が全面禁止になりました。

1-2.アスベストの曝露(ばくろ)の可能性が高い作業

厚生労働省は、アスベストの曝露の可能性が高い作業の例として、以下のものを挙げています。

  1. 石綿鉱山・石綿製品の製造に関わる作業
  2. 石綿や石綿含有岩綿等の吹きつけ・張りつけ等作業
  3. 石綿原綿又は石綿製品の運搬・倉庫内作業
  4. 配管・断熱・保温・ボイラー・築炉関連作業
  5. 造船所内の作業(造船所における事務職を含めた全職種)
  6. 船に乗り込んで行う作業(船員 その他)
  7. 建築現場の作業(建築現場における事務職を含めた全職種)
  8. 解体作業(建築物・構造物・石綿含有製品等)
  9. 港湾での荷役作業
  10. 発電所・変電所・その他電気設備での作業
  11. 鉄鋼所又は鉄鋼製品製造に関わる作業
  12. 耐熱(耐火)服や耐火手袋等を使用する作業
  13. 自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業
  14. 鉄道等の運行に関わる作業
  15. ガラス製品製造に関わる作業
  16. 石油精製、化学工場内の精製・製造作業や配管修理等の作業
  17. 清掃工場又は廃棄物の収集・運搬・中間処理・処分の作業
  18. 電気製品・産業用機械の製造・修理に関わる作業
  19. レンガ・陶磁器・セメント製品製造に関わる作業
  20. 吹きつけ石綿のある部屋・建物・倉庫等での作業(教員 その他)
  21. エレベーター製造又は保守に関わる作業
  22. ランドリー・クリーニングに関わる作業
  23. ガスマスクの製造に関わる作業
  24. 上下水道に関わる作業
  25. ゴム・タイヤの製造に関わる作業
  26. 道路建設・補修等に関わる作業
  27. 映画放送舞台に関わる作業
  28. 農薬・バーミキュライト等を扱う作業
  29. 酒類製造に関わる作業
  30. 消防に関わる作業
  31. 歯科技工に関わる作業
  32. 金庫の製造・解体に関わる作業
  33. その他の石綿に関連する作業
  34. タルク等石綿含有物を使用する作業

参考:石綿にばく露する業務に従事していた労働者の方へ│厚生労働省

2.アスベストによる健康被害について

2-1.アスベスト関連疾病について

アスベスト関連疾病は主に5種類あります。各疾病の特徴をまとめました。

病名

内容

自覚症状

潜伏期間

石綿肺

高濃度のアスベストを吸入することで発症するじん肺のひとつ。

咳、痰、息切れなど

15~20年

(石綿)肺がん

肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により発生する肺がん

咳や痰など

30~40年

悪性中皮腫

肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍

胸の痛み、咳、大量の胸水による呼吸困難、胸部圧迫感、原因不明の発熱、体重減少など

20~50年

良性石綿胸水

アスベストを吸入することで発症する非悪性の胸水

胸痛、呼吸困難など

多くは20~40年 

び慢性胸膜肥厚

胸膜が炎症を起こし、繊維化し、胸膜全体の4分の1 以上にびまん性の肥厚が見られる良性の疾患

反復性の胸痛、呼吸困難など

30~40年

なお、喫煙などが肺がんの発症原因ともなるため、石綿肺がんとして認定してもらうには、一定量以上の石綿を吸い込んだことの医学的根拠又は職歴を明らかにする必要があります。

2-2. アスベスト関連疾患が疑われる場合の対応

石綿による健康被害は、石綿を吸い込んでから最大で50年程度という長い潜伏期間を経て発症します。

石綿を吸い込んだ可能性のある方で呼吸困難、咳、胸痛などの症状がある方、その他特に心配な方は、近隣の労災病院のアスベスト疾患センターなどの専門医療機関に相談するのがよいでしょう。事前に他の相談機関などにあらかじめ相談しておく必要はありません。

参考:アスベスト(石綿)とは|独立行政法人 環境再生保全機構

また過去に石綿を吸い込んでしまった自覚がある人は、肺がんのリスクを減らすために、禁煙するのがおすすめです。

3.アスベスト健康被害の給付金・賠償金制度

アスベストによる健康被害にあった方を救済するための主な給付金・賠償金制度は、以下の5つです。

  • 建設アスベスト給付金
  • 労災保険給付(労災保険制度)
  • 特別遺族給付金(石綿健康被害救済制度)
  • 救済給付(石綿健康被害救済制度)
  • 工場型アスベスト訴訟による賠償金

それぞれ、以下で詳しく説明します。

3-1. 建設アスベスト給付金

石綿にさらされる建設業務に従事した労働者が、石綿を吸入することにより発生する疾病にかかり、精神上の苦痛を受けたことについて、2021年5月17日に最高裁判決で国の責任が認められました。

最高裁判決を受け、2021年6月9日に、議員立法により「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、2022年1月19日に施行されました。

支給対象者は、この法律に基づき、建設アスベスト給付金を申請することができます。

3-1-1.支給対象者

以下の①~⑤のいずれかである必要があります。

①労働者:職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者

②中小事業主:特定石綿曝露建設業務に従事していた当時、以下の常時雇用労働者を使用していた事業主

主たる事業/時期

金融業・保険業・

不動産業・小売業

サービス業

卸売業

左記以外

1965年11月1日~1973年10月14日

50人

50人

50人

300人

1973年10月15日~1999年12月2日

50人

50人

100人

300人

1999年12月3日~現在

50人

100人

100人

300人

③ 一人親方:労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする方

④ 家族従事者等:以下のいずれかに該当する方

  • 中小事業主が行う事業に従事する家族従事者等(家族従事者や、中小事業主が法人などの場合の代表者以外の役員など)
  • 一人親方が行う事業に従事する家族従事者等(家族従事者など)

⑤ (①~④の方が死亡している場合)遺族

支給順位は以下のとおりで、最上位の方のみが受給できます。

  1. 配偶者(内縁を含む)
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

3-1-2.支給要件

支給要件は、下記の(1)又は(2)の期間に、「特定石綿曝露建設業務」に従事したことにより、アスベスト関連疾患にかかったことが認められた場合です。

(1)アスベストの吹付け作業に関する建設業務

  →1972年10月1日〜1975年9月30日

(2)屋内作業場で行われた作業に関する建設業務

  →1975年10月1日〜2004年9月30日

3-1-3.支給額

3-1-3-1.原則額

給付金の原則の金額は、以下のとおりです。

疾病の種類

金額

1 石綿肺管理2で、じん肺法所定の合併症のない方

550万円

2 石綿肺管理2で、じん肺法所定の合併症のある方

700万円

3 石綿肺管理3で、じん肺法所定の合併症のない方

800万円

4 石綿肺管理3で、じん肺法所定の合併症のある方

950万円

5 中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、

石綿肺管理4、良性石綿胸水である方

1,150万円

6 上記1・3により死亡した方

1,200万円

7 上記2・4・5により死亡した方

1,300万円

なお、「じん肺法所定の合併症」とは、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気

管支拡張症、続発性気胸の5つの疾病をいいます。また、上記の項目に複数回該当した場合であっても、給付金の支払は1回に限られるので、注意が必要です。

3-1-3-2.減額・調整

もっとも、以下の①〜③に該当する事情があれば、給付金は減額されます。

①短期曝露による減額

該当する疾病にかかり、かつ特定石綿曝露建設業務に従事した期間が以下に当てはまる場合、被災者への給付金が10%減額されます。

肺がん、石綿肺

10年未満

著しい呼吸機能障害を伴う

びまん性胸膜肥厚

3年未満

中皮腫、良性石綿胸水

1年未満

②喫煙の習慣による減額(肺がんのみ)

喫煙の習慣があった肺がんの被災者は、給付金が10%減額されます。

なお、①「短期曝露による減額」、②「喫煙の習慣による減額」のいずれにも該当する場合は、給付金の19%が減額されます。

③損害賠償との調整

  • 同一の事由について、国から損害賠償等がされた場合
    → 損害賠償金額の限度で、給付金が減額されます。

  • 同一の事由について、国以外の者から損害賠償等がされた場合
    →国以外の者(建材メーカーなど)から損害賠償や見舞金などが支払われた場合は、当該金額分の給付金が減額されることがあります。

3-1-4.支給期限

給付金の支給期限は、アスベスト関連疾病にかかった旨の医師の診断があった日、又は石綿肺に係るじん肺管理区分の決定があった日(アスベスト関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年と定められています。

支給期限を過ぎた場合には、支給金を請求できなくなりますので、ご注意ください。

3-1-5. 申請手続き・必要書類

建設アスベスト給付金の申請手続きは、以下の流れで進みます。

  1. 給付金申請者による給付金の請求申請
  2. 厚生労働省による受付・審査
  3. 認定審査会による審査
  4. 認定審査会による厚生労働省へ審査結果通知
  5. 厚生労働省による認定
  6. 厚生労働省による給付金請求者へ認定結果の通知
  7. 厚生労働省による労働者健康安全機構へ認定結果の通知
  8. 労働者健康安全機構による給付金の支給

建設アスベスト給付金請求のために必要となる書類は、以下のとおりです。

書類番号

提出の必要性

書類

必須

請求書

①-2

原則不要

※本人以外が①の書類を記載する場合

委任状又は成年後見人等であることを証明する書類等

必須

住民票の写し等(請求者の氏名・生年月日・住所を確認できる書類)

必須

※請求者が被災者の遺族である場合

戸籍謄本等

原則必要

※請求者が被災者の遺族である場合

死亡届の記載事項証明書(死亡の事実や原因が確認できる書類)

原則不要

※請求者が被災者の遺族である場合

事実婚の場合はそれを証明する書類

任意

※被災者の方に労災保険給付・石綿救済法の特別遺族給付金の支給・不支給決定、石綿救済法の救済給付の認定・不認定又はじん肺管理区分決定がある場合

支給決定等を受けた事実がわかる資料

必須

被災者の就業歴・アスベストばく露作業歴のわかる資料

原則必要

アスベスト関連疾病への罹患が分かる資料

⑧-2〜-5

原則必要

診断の根拠となる資料

原則不要

※企業等から損害賠償金や和解金などを受け取っている場合

企業等からの受領金額等のわかる資料

必須

振込を希望する金融口座の通帳又はキャッシュカードの写し

原則不要

資料の日本語訳

上記書類の書式については、厚生労働省のホームページよりダウンロードできます。

引用元:建設アスベスト給付金請求書等の様式集|厚生労働省

給付金の請求を申請してから支給までの期間は、特に決められていません。もっとも、労災認定の標準処理期間が1ヵ月〜8ヵ月のため、建設アスベスト給付金も同程度の期間を要するでしょう。

また、建設アスベスト給付金制度は2022年4年1月に開始されたばかりの制度なので、現段階では請求が殺到していると予想されます。したがって、給付金を受け取るまでには少々時間を要するでしょう。

3-2.労災保険給付

労災保険制度は、仕事が原因で生じた負傷・疾病・障害を被った労働者や、労働者のご遺族に対して保険給付などがなされる制度です。

3-2-1.対象者・支給要件

労災保険の対象者は、中皮腫、肺がんなどを発症し、それが労働者として「石綿(アスベスト)曝露作業」に従事していたことが原因である(業務上疾病)と認められた方、又はその遺族の方です。

石綿曝露作業とは、厚生労働省によって以下に挙げるような作業内容であると定義されています。

①  石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業

② 倉庫内などにおける石綿原料などの袋詰め又は運搬作業

③ 石綿製品の製造工程における作業

④ 石綿の吹付け作業

⑤ 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱もしくは保温のための被覆又はその補修作業

⑥ 石綿製品の切断などの加工作業

⑦ 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設などの補修又は解体作業

⑧ 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業

⑨ 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)など)などの取り扱い作業

※上記作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業や、上記作業の周辺などにおいて、間接的なばく露を受ける作業も該当します。

参考:石綿による疾病の労災認定|厚生労働省/都道府県労働局/労働基準監督署

3-2-2.申請方法

労災保険給付の申請方法は以下のとおりです。

  1. 労働保険給付の請求書を作成する
    希望する保険給付の請求書をダウンロードして印刷し、必要事項を記入します。請求書は、最寄りの労働基準監督署でも受け取れます。
    参考:主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省

  2. 診断書などの資料を入手する
    医師の診断書、CT・MRI・X線写真などの画像、その他の検査結果の提出が必要になる場合があります。主治医に依頼して用意してもらいましょう。

  3. 労働基準監督署に提出する
    必要書類が揃ったら、アスベスト曝露作業に従事していた事業所の管轄となる労働基準監督署に提出します。

3-2-3.労災保険で受け取れる給付金

労災保険で受け取れる保険給付は、以下のとおりです。

受け取れる保険給付

給付内容

療養補償給付

疾病の治療に必要な治療費を支給

休業補償給付

休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%を支給

傷病補償年金

休業補償給付を受けていた方が、1年6ヵ月経過後に傷病等級に該当したときに年金を支給

障害補償給付

疾病が治ったあとに身体に障害が残ったとき年金又は一時金を支給

介護補償給付

障害が残り介護が必要となった方に、介護費用を支給

遺族給付・葬祭料

亡くなった労働者の方のご遺族に、遺族補償年金又は一時金・葬祭料を支給

なお、仕事が原因で病気になったら労災による給付を受け取ることができることは、法律で決められた社会のルールです。「長年働いた会社に迷惑がかかる…。」と考え、申請を躊躇するのはやめましょう。

3-3.特別遺族給付金

特別遺族給付金は、石綿による疾病で死亡した労働者のご遺族が、仕事で石綿を吸い込んだことに長く気付かなかったなどの事情から、労災保険の遺族補償給付を請求できる権利が時効で失われた場合に利用できる制度です。

3-3-1.申請方法

特別遺族給付金を受けるには、最寄りの労働基準監督署に請求書を提出することが必要です。

提出された請求書の内容を元に、労働基準監督署が当時の作業時期や作業内容などを調査し、「石綿による疾病の認定基準」にあてはめて、業務上疾病に該当するかどうかを判断します。

なお、特別遺族給付金の請求期限は2032年3月27日まで、支給対象は2026年3月26日までに亡くなった労働者となっておりますので、ご注意ください。

3-3-2.受け取れる給付金

対象者へは、年金又は一時金が支給されます。

  • 特別遺族年金 原則240万円/年(遺族1人の場合)
  • 特別遺族一時金 1,200万円

3-4.救済給付

救済給付は、石綿による健康被害を受けられた方及びそのご遺族の方で、労災保険給付の対象とならない方に対して、給付を行う制度です。

3-4-1.対象者

対象者は、石綿による健康被害を受けられた方及びそのご遺族の方で、労災保険給付の対象とならない方です。

労災保険給付と異なり、石綿を吸い込む仕事をしていたかどうかは問いません。たとえば、労働者の作業服に付着した石綿を吸い込み石綿関連疾患を発症した配偶者」なども、対象者に含まれます。

3-4-2.要件

  • 日本国内においてアスベストを吸入することにより指定疾病にかかった旨の認定を「独立行政法人 環境再生保全機構(以下、「保全機構」とする)」から受けたこと
  • 指定疾病でお亡くなりになった方のご遺族である旨の認定を保全機構から受けること

3-4-3.申請方法

  1. 申請窓口へ所定の申請書と必要な添付資料と合わせて、保全機構へ提出
  2. 医学的判定を要する事項について、保全機構から環境大臣に判定の申し出
  3. 環境大臣が判定を行い、保全機構に対してその結果を通知
  4. 保全機構が認定して、給付を開始する

参考:アスベスト(石綿)健康被害救済給付の概要|独立行政法人 環境再生保全機構

3-4-4.受け取れる給付金

石綿健康被害救済制度に認定された場合に受け取れる給付金は、以下のとおりです。

受け取れる給付

給付内容

医療費

医療費の自己負担分の給付

療養手当

治療に伴う医療費以外の費用負担に対する給付

葬祭料

指定疾病が原因で亡くなった認定患者の葬祭に伴う費用負担に対する給付

特別遺族弔慰金・

特別葬祭料

指定疾病が原因で亡くなった方の遺族や葬祭に伴う費用負担に対する給付

救済給付調整金

指定疾病に認定された方が亡くなるまでに給付を受けた医療費と療養手当の合計が特別遺族弔慰金の額に満たない場合に、遺族に支給される給付

3-4.工場型アスベスト訴訟による賠償金

アスベスト給付金以外に、国は「泉南アスベスト訴訟判決」に基づく賠償金制度を提供しています。

大阪泉南地域はアスベスト産業の中心地で、長年にわたる石綿紡織業の影響で多くの健康被害が発生しました。同地域の元労働者や遺族は、国が適切な安全対策を講じなかったとして、損害賠償を求める訴訟を提起した結果、2014年に最高裁で国側敗訴が確定しました。

この判決により、一定の条件を満たす元労働者や遺族は、国に対する賠償請求訴訟を提起し、和解により賠償金を受け取ることが可能となっています。

3-5-1.要件

賠償金(和解金)を受け取るためには、以下の3つの裁判上の和解要件を満たす必要があります。

  • 1958年5月26日~1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと
  • その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと
  • 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること

3-5-2.受け取れる給付内容

賠償金は、建設アスベスト給付金で請求できる金額と同じです。詳細は、「3-1-3-1.」の項目をご確認ください。

なお、賠償金の場合には、減額制度は特に定められておりません。

4.アスベスト給付金については、弁護士に相談しよう

以上見てきた通り、アスベスト給付金の種類はさまざまあり、自分がどの給付金の支給対象となるか、検討する必要があります。また、各給付金申請の手続きも複雑で、必要書類も非常に多いです。

そこで、アスベスト給付金に関しては、弁護士に相談するのがよいでしょう。以下、弁護士に相談するメリットを相談者の立場別に記載します。

4-1.本人・ご家族(診断前)

自分が給付金の対象かどうか、給付金を受け取ることができるか分からず、病院へ行くか悩んでいる方は、まずは自分が支給金の支給対象となるかどうかを確認しておくことが重要です。

当記事の内容だけでは理解が難しく、弁護士に相談したい場合は、ぜひ当サイト(カケコム)をご利用ください。10分2,000円〜で、オンラインや電話で弁護士が相談を受け付けています。自分の状況を具体的に相談してみるのがよいでしょう。

4-2.本人・ご家族(診断後)

病院での診断後、アスベスト関連疾患が判明した場合、給付金申請の手続きを進めていくべきでしょう。もっとも、手続きが複雑で、一人で行うのが難しいと感じている方は、弁護士による給付申請の代行や相談をすることも検討してみてください。専門家に一任することで、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。

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4-3.ご遺族

ご親族がアスベスト関連疾患で亡くなってしまっている場合、遺族による給付金申請の手続きを進めていくべきでしょう。もっとも、手続きが複雑で、一人で行うのが難しいと感じている方は、弁護士による給付申請の代行や相談をすることも検討してみてください。専門家に一任することで、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。

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