弁護士1年目の挫折を乗り越え、弁護士が少ない地元で独立/小田恵美子弁護士(すみれ綜合法律事務所)
福岡県宗像市に生まれ、名門高校・大学・法科大学院を卒業。司法試験に一発合格し、順風満帆な弁護士キャリアのスタートを切った小田先生。ところが、就職した法律事務所で「人生初」というほど大きな挫折を味わい退職。一念発起して地元に事務所を構えたところ、自分らしさを存分に発揮でき、「暇な日は1日もなかった」というほど忙しい毎日を送ってこられたそうです。
弁護士を目指した理由とこれまでについて
これまでの経歴について教えてください。
福岡県宗像市出身で、宗像市内の公立小学校と中学校、福岡高校、九州大学法学部を卒業しました。
大阪大学法科大学院(ロースクール)進学を機に初めて福岡を離れ、ロースクール卒業後に受験した司法試験に一回で合格しました。
2014年に弁護士になり、福岡市内の法律事務所へ就職しました。
そして2016年に「すみれ綜合法律事務所」を開設し、現在にいたります。
開設以来、弁護士はずっと私一人でしたが、2024年に川上明季弁護士が加入して2名体制となりました。
弁護士になろうと思ったきっかけや時期を教えてください。
弁護士という仕事を意識するようになったのは、小学6年生のときに見た「太陽は沈まない」というドラマでした。
松雪泰子さん演じる弁護士が、周囲の声や逆境に負けず真実を追求する姿がカッコよくて弁護士に憧れるようになりました。
我が強くて、自分なりの正義感をしっかり持っていた私の性格に合っていたのかもしれませんね。
勉強も割と好きで、知らないことを知るのが好きなところもあったので、その頃から頭の片隅に弁護士という選択肢があった気がします。
その後は、ずっと弁護士を目指されていたのですか?
実はそうではなくて、高校の時はジャーナリストになりたいと思っていました。
担任の先生がジャーナリストの話をしてくれて、世界中を飛び回り、さまざまな問題を世に伝えるところが格好いいなと思ったんです。
それで社会学部のある大学も受験したのですが不合格で、九州大学法学部に進学しました。
最終的に弁護士になろうと決めたのは、ロースクールに進学するか、就活するかを決める大学3年生のときでした。
複数のロースクールに合格したのですが、その中で司法試験合格率が一番高かった大阪大学のロースクールに進学しました。
そこで初めて福岡を離れましたが、とても充実した期間を過ごすことができました。
どんな弁護士になりたいと思っていましたか?
元々弁護士に憧れたきっかけが、「困っている人の力になりたい」というところでした。
その気持ちはずっと変わらなかったので、企業側の弁護士ではなく、自分が普段から接しているような人たちのお困りごとを解決する弁護士になりたいと思っていました。
幸い私は順調に司法試験に合格できましたし、学歴や成績を見て、周囲からは東京の大手法律事務所への就職も勧められました。
大手法律事務所に入れば、誰もが知る大企業の顧問弁護士を務めたり、新聞の一面を飾るような大きな案件に関わることもできます。
もちろんそういった世界を経験してみたい気持ちはゼロではありませんでしたが、私の原点を大切にして、街の弁護士として働くことにしました。
実際弁護士になってみて、いかがでしたか?
困っている人の味方として仕事ができる充実感や喜びはありました。
他方で、一件一件の案件に対してもっと時間をかけたいという想いと、それをやると仕事が回らないという現状の板挟みで苦しみました。
最初は、とにかく働く時間を増やすことで乗り切っていましたが、その分睡眠時間が減り、心身ともに疲れ切った状態になってしまいました。
そんな状態では勤務先に迷惑をかけてしまうので、退職して、自分の事務所を構えることにしました。
当時は悔しくてたまりませんでしたし、「こんなはずじゃなかった」という想いもありました。
当時の自分自身にアドバイスするとしたら、どういう声をかけますか?
「そんなに気負わなくていいよ」と言いたいですね。
今振り返ると、「依頼者や勤務先の期待に応えなきゃいけない」と気負っていました。
弁護士だからといって、どんな結果でも出せるわけではありません。
しかも当時私は弁護士1,2年目で、初めて社会に出たわけですから、できることは限られていたはずです。
ところが、「依頼者の望みどおりの結果が出ないのは、自分の力や努力が足りないせいだ」と自分を責めていたんですね。
弁護士になるまで大きな挫折を味わったこともなく、努力でなんとかなるという感覚がありました。
ところが弁護士になって、努力ではなんともならない世界があると思い知らされ、大きな挫折を味わったような感覚でした。
勤務先の先輩弁護士は本当によくしてくださったのですが、私が不器用で未熟だったんだと思います。
勤務先を退職して独立されたということですが、他の事務所へ移籍することは考えなかったのですか?
考えなかったですね。当時は本当に自信を失くしていたので、移籍先でまた同じことになって迷惑をかけたくなかったからです。
もちろん独立すれば、自分の力で仕事をいただいて、全部自分の責任で仕事をしなければなりません。
ただ裏を返せば、自分で責任を負う以上、自分が思うようにやれるわけです。
もしそれでうまくいかなければ、最悪弁護士をやめて他の仕事をすればいいと腹をくくっていました。
宗像市に事務所を開設された理由を教えてください。
もともと、いずれは地元で仕事をしたいと思っていたんです。
生まれ育った街の皆様のお役に立ちたいという想いもありましたし、子どもを持つことを考えれば実家が近いほうがいいという理由もありました。
それに宗像市には、法律事務所がわずか2つしかなかったんです。
街の規模からすると全く足りないと思ったので、私が事務所を構えることで少しでもその状態を解消できればという想いもありました。
ちなみに、独立から8年経った現在でも、事務所の数は変わりません。
独立してから現在までを振り返って、いかがでしたか?
まさに自分がやりたかったことができているので、ここに事務所を構えてよかったと思っています。
福岡市まで相談に行くのは難しくても、「近くにあるから相談できた」という方もたくさんいらっしゃいますので、私がここにいる意味は大きいと感じています。
毎日本当に忙しいですが、それだけ地域の皆様のお役に立てているということですし、こうして長い間事務所を維持できたのは、たくさんの方のサポートのおかげです。
もちろん自分の全責任で仕事をするプレッシャーや緊張感はありますが、自分が納得いくまで一件一件に取り組めますし、依頼者からの感謝も直接感じられるので、大きなやりがいを感じています。
現在の業務について
現在、注力している分野を教えてください。
そもそも弁護士自体が少ない地域ですから、それこそありとあらゆる相談が寄せられます。
ですから特定の分野に力を入れるのではなく、できるだけ幅広く対応しています。
私は街の小さな病院のような存在でありたいと思っています。
なにか困ったことがあれば、まず相談していただいて、私が対応できることは対応します。
一方、より専門的な知識を持っている弁護士につないだほうがよければそうしますし、弁護士以外のサポートが必要であれば案内できるような存在でありたいですね。
また弁護士業界は、女性弁護士自体が少ないんです。特に離婚などは女性弁護士に依頼したいという女性も多いので、そういう意味でもお役に立てていると思います。
弁護士として、どういったことを大切にされていますか?
一番は、手を抜かないということです。
当たり前のように感じるかもしれませんが、経験を積むと、「これ以上やっても無理だろう」と諦めたり、忙しくて「これくらいでいいだろう」と思ってしまう瞬間は誰にでもあると思います。
でも私は、ダメだと思ったところから他に方法がないかさらに考えたり、もう一歩、二歩踏み込んで取り組むことを心がけています。
ただ以前と違い、なんでも全力投球するのではなく、きちんと見通しを立て、メリハリをつけられるようになりましたね。
今は法的に無理なこと、難しいことをきちんと見極め、その上で依頼者にとってベストな解決を目指して全力を尽くしています。
依頼者の気持ちに寄り添い、共感し、ともに歩むことは弁護士にとって大切なことです。
ただ一方で、法律の専門家として客観的な視点を忘れず、依頼者を解決に導くことが大切なんだと考えています。
やりがいを感じる瞬間を教えてください。
裁判所に出す書面やトラブルの相手に送る書面も、かなり時間をかけて依頼者から話を聞いて、依頼者が納得できるようなクオリティに仕上げるように心がけています。
その結果、依頼者から「私が言いたかったのはまさにそれです」「私のことをわかってくれて嬉しいです」と言っていただけたときは、とても嬉しいですね。
先生が取り組んでいるIT化について教えてください。
IT化と呼べるほど特別なことはしていませんが、依頼者とはLINEで連絡を取るようにしています。
事務所の公式LINEアカウントを作って、そこに依頼者、担当弁護士、事務局のグループを作っています。
今後の目標など
今後の目標などを教えてください。
宗像市に事務所を構えたことで、困っている方がこんなにたくさんいるんだと実感しました。
福岡県内外問わず、まだまだ弁護士が少なくて、法的サービスが行き届いていない地域はたくさんあります。
法律事務所は、弁護士法人化することで支店を出せるので、いずれは法人化して、弁護士が少ない地域に支店を展開したいですね。
相談を考えている方へ一言お願いします。
特に弁護士に初めて相談する方は、緊張されている方が多いです。
上手に話せるか心配される方も多いですが、気負わなくていいので、どういうことがあって、どうしたいのか、どう思っているのかといったことを、ありのまま話してください。
そのうえで、私がお手伝いできることを提案できればと思います。
相談したからといって必ず依頼していただく必要はありません。
相談だけで解決すればそれに越したことはありませんし、早めにご相談いただくことで問題が大きくなる前に解決できることは多いです。
なにか不安やお困りごとがありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。
弁護士情報
弁護士名:小田 恵美子
所属弁護士会:福岡県弁護士会
事務所名:すみれ綜合法律事務所
事務所HP:https://www.sumi-so.com/
事務所住所:福岡県宗像市光岡69-6光岡ビル201
経歴:
福岡高等学校卒業
九州大学法学部卒業
大阪大学大学院高等司法研究科卒業
2014年 福岡市内の法律事務所に入所
2016年 宗像市にて「すみれ綜合法律事務所」設立
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