過払い金請求するとカード使えない?条件や弁護士に依頼するメリットは?
【この記事の法律監修】
藤田 圭介弁護士(大阪弁護士会)
弁護士法人・響 大阪オフィス
借入の返済を続ける中で「もしかして過払い金が発生しているかも?」と感じたことはありませんか?過去の高金利での借り入れによって、気づかないうちに払い過ぎた利息があるかもしれません。実は、過去に払い過ぎた利息は、過払い金請求という手続きを通じて取り戻せる可能性があります。
本記事では、過払い金請求の基本的な仕組みや発生条件、そして具体的な請求の流れについてわかりやすく解説しています。過払い金が発生している可能性がある方や、請求を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
1.過払い金請求するとカードを使えない?
過払い金請求に関するよくある質問に「カードが使えなくなってしまうのではないか」というものがあります。結論から申しますと、過払い金請求をすると、確かにカードが使えなくなる可能性があります。以下のカードは使えなくなるリスクが高いため、注意しましょう。
- 過払い金返還請求の対象となるカード
- 過払い金請求をした会社が発行する別のカード
- 過払い金請求をした会社の系列(グループ)企業が発行するカード
クレジットカード会社やローン会社は、融資の可否を判断する際に信用情報機関に登録されている情報を確認します。返済中の債権者に対して過払い金請求をすると、信用情報に「事故情報(ブラックリスト)」が登録される可能性があります。
これは、過払い金請求が貸金業者との取引を見直す行為となるため、業者側からリスクが高い利用者だと判断される場合があるからです。その会社との信頼関係が損なわれるとみなされ、請求対象となったカードが利用停止となる可能性が高くなります。
また、過払い金請求を行った会社が系列に属する場合、グループ企業全体で信用情報を共有していることがあります。系列グループの別企業が発行するカードも利用制限をかけることがあり、グループ全体での取引が停止されるリスクが高まってしまうでしょう。
信用情報に事故情報が登録されると、以下のような影響を受ける可能性があります。
- 新たなクレジットカードの発行やローンの利用が難しくなる
- 住宅ローンや自動車ローンの審査が厳しくなる
- アパートの賃貸契約や携帯電話の契約に影響が出る場合がある
信用情報に事故情報が登録された場合、その情報が登録機関から削除されるまで、新規のクレジットカード発行やローンの利用が難しくなります。一般的に、事故情報は登録日から5年程度保存されます。
事故情報が削除された後でも、信用情報機関は個人の信用度を総合的に判断するため、すぐにカード発行やローンの利用ができるようになるとは限りません。
しかし、過払い金請求をしたからといって、必ずしもカードが使えなくなるわけではありません。金融機関や個人の信用状況によっては、過払い金請求後もカードの利用を継続できるケースもあります。特に、借金を完済している場合、過払い金請求が原因で他社のクレジットカードが使えなくなることは通常ありません。
自分のケースでカードが使えなくなるかどうか、過払い金請求に関して疑問がある場合は、弁護士に相談するのが安心です。弁護士はあなたの状況を確認した上で、最適な請求方法を考えて提案してくれるでしょう。
2.そもそも過払い金請求とは?
そもそも過払い金請求とは、貸金業者に払い過ぎた利息(過払い金)を取り戻すための手続きです。過去に、法律で定められた利率よりも高い金利で借入をしていた場合、その差額分が過払い金として返還されます。
利息制限法では、貸金業者が貸付金に対して請求できる利息の上限が規定されています。具体的な条文は以下の通りです。
第一条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一元本の額が十万円未満の場合年二割
二元本の額が十万円以上百万円未満の場合年一割八分
三元本の額が百万円以上の場合年一割五分
引用:e-Gov法令検索 利息制限法(昭和二十九年法律第百号)
つまり、元本が10万円未満の場合には年利20%が適用されるため、5万円を借りた場合、1年間で発生する利息は5万円の20%にあたる1万円となります。
次に、元本が10万円以上100万円未満の場合には年利18%が適用されます。50万円を借りた場合であれば、1年間で発生する利息は50万円の18%にあたる9万円となります。
また、元本が100万円以上の場合は年利15%が適用され、たとえば150万円を借りた場合には、1年間で発生する利息は150万円の15%である22万5千円です。
このように、元本の金額によって適用される法定金利が異なり、これを超える利息については無効となります。
2-1.過払い金の発生の仕組み
過払い金が発生する仕組みの一つとして、かつて「グレーゾーン金利」と呼ばれる金利が存在していた背景があります。グレーゾーン金利が存在したのは、2つの法律が利息に関して異なる基準を設けていたためです。
その2つの法律は「利息制限法」と「出資法」です。先ほど紹介した通り、利息制限法では、利息の上限が年利15〜20%と定められています。しかし、2010年6月18日までの出資法においては、年利29.2%を超えない限り、刑事罰や行政処分の対象にはなりませんでした。
そのため、利息制限法の上限を超えているが年利29.2%以内に収まる金利は、違法とも合法とも判断できない曖昧な位置づけとなり、グレーゾーン金利として扱われてきたのです。
2-2.過払い金の発生の条件・対象者
過払い金が発生する条件は以下の通りです。
- 2010年6月17日以前に借入をしていた
- 上限金利20%を超える金利で借入をしていた
- 長期間にわたり借入と返済を繰り返していた
これらの条件に当てはまる場合、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金が発生する状況や条件はさまざまです。上記のケースに該当しない方も、専門の弁護士に相談することをおすすめします。また、過払い金請求は、過去に借金をして完済した人だけでなく、現在も借入をしている人でも行うことができます。
2-3.過払い金を請求できない場合
一方、以下の条件に当てはまる方は、過払い金が返ってこない可能性があります。
- ショッピング枠での利用のみだった
- 過払い金を上回る未返済額が残っていた
- 借入先がすでに破産している
- 完済してから10年以上が経過している
過払い金はキャッシングやローンでの借入において、法律で定められた利息を超えて支払った金額が対象となります。ショッピング枠での利用は利息ではなく、リボ払いや分割手数料などの支払いが発生するため、過払い金の請求対象にはなりません。また、銀行や信用金庫のローンも過払い金の請求対象にはなりません。
過払い金の請求と同時に残りの債務が存在する場合、その金額を優先的に清算することが原則です。したがって、過払い金が発生していても、それを超える残債務がある場合は、過払い金を充当しても借金が消えるわけではありません。
また、借入先がすでに破産しているというケースでは、過払い金の請求が難しくなる可能性があります。貸金業者が倒産した場合、過払い金請求を受け付ける窓口がなくなるため、直接返還を求めることができません。このような場合、請求自体が困難になることが多いのです。
さらに、完済してから10年以上が経過している場合も、過払い金を請求できない可能性が高くなります。民法では、過払い金請求は「完済日」から10年が経過すると時効が成立し、請求できなくなります。
民法では、返還請求権の消滅時効について以下のように定められています。
第百六十六条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
引用:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
3.過払い金返還請求の流れ
過払い金返還請求の流れは、以下の手順で進めるのが一般的です。ご自身で行う場合と、弁護士や司法書士に依頼する場合で若干の違いがありますが、基本の流れは共通しています。
- 取引履歴の取り寄せ
- 利息の再計算
- 過払い金返還請求書の作成と送付
- 貸金業者との交渉
- 返還金の受け取り
各手順を解説します。
3-1.取引履歴の取り寄せ
まず、過去の取引履歴を取得するため、対象の貸金業者である消費者金融やクレジットカード会社に取引履歴の開示請求を行います。この履歴には、借入金額、返済金額、支払い日が記載されています。
貸金業者は法律に基づいてこれを提供する義務があるため、申請後数週間〜数ヶ月程度で手元に届くことが多いです。
貸金業者には、以下のように定められています。
第十九条の二
債務者等又は債務者等であつた者その他内閣府令で定める者は、貸金業者に対し、内閣府令で定めるところにより、前条の帳簿(利害関係がある部分に限る。)の閲覧又は謄写を請求することができる。この場合において、貸金業者は、当該請求が当該請求を行つた者の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き、当該請求を拒むことができない。
引用:e-Gov法令検索 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)
3-2.利息の再計算
次に、取り寄せた取引履歴を基に、実際に支払った利息と法定の上限利息を比較し、過払い金がどれくらい発生しているかを計算します。これには「引き直し計算」と呼ばれる手法を使い、利息制限法に基づく上限金利(15〜20%)で計算し直します。
ネット上にある過払い金計算ツールの中には、概算や目安を出すだけのものも少なくありません。ツールに任せるだけでは正確な金額を算出できないため、取得した取引履歴を確認し、慎重に計算することが重要です。
正しい金額を計算するには、専用の計算ソフトや知識が必要なため、弁護士や司法書士に依頼することをおすすめします。
3-3.過払い金返還請求書の作成と送付
再計算により過払い金が確認できたら、対象の貸金業者に対して「過払い金返還請求書」を送付します。
過払い金返還請求書には、主に以下の内容を記載します。
- 過払い金についての計算結果
- 過払い金返還請求の法的根拠
- 請求内容
- 回答の期限
- 依頼者情報
請求書は内容証明郵便で送るのが通常です。これにより、いつ、どのような内容で請求を行ったのかを証拠として残せます。
3-4.貸金業者との交渉
請求書を送った後、貸金業者との交渉が始まります。交渉で合意が取れれば、指定された返還金額が銀行口座に振り込まれますが、請求額よりも低い金額での和解を提案されることが多々あります。この場合、交渉を重ねて金額に合意できれば、和解を成立させて過払い金を受け取ります。
返還金額や条件で折り合いがつかない場合、民事訴訟に進むこともあります。弁護士に依頼すると、この交渉はすべて代理で行ってくれるため、手間を省けます。交渉が難航してしまった場合にも、弁護士に相談するとよいでしょう。
3-5.返還金の受け取り
交渉がまとまり、過払い金返還が決定したら、指定した銀行口座に返還金が振り込まれます。この金額が全額または合意した額であることを確認します。なお、交渉がまとまってから過払い金が実際に返還されるまで数か月程度かかることが一般的です。
以上が過払い金返還請求の一般的な流れです。
4.過払い金請求は自分でもできる?
過払い金請求は、自分自身で手続きを行うことも可能です。しかし、貸金業者との交渉や法律に関する専門知識が必要となるため、ある程度の時間と労力を要します。
自分で過払い金請求手続きを行う場合、以下の点に注意する必要があります。
- 貸金業者との交渉が難航する可能性がある
- 必要な書類を揃えるのが大変な場合がある
- 法律に関する知識がないと思わぬ不利な条件で和解してしまう可能性がある
弁護士に依頼せずに個人で過払い金請求を行うと、請求金額が低く抑えられたり、手続きがうまく進まなかったりするリスクが生じます。特に、計算ミスや書類不備が原因で過払い金の取り戻しが不十分だったり、業者との交渉で希望通りの返還が難航したりすることが多くあります。
また、個人での請求が原因で信用情報に事故情報が記録されると、クレジットやローンの利用が制限され、長期間の経済的な制約を受ける可能性も出てきます。これらの問題から、資金が十分に戻らないばかりか、将来的な生活設計や家計の負担が続き、かえってストレスや不安が増してしまう恐れがあります。
過払い金請求が難しいと感じたら、弁護士に相談することをおすすめします。
5.過払い金請求を弁護士に依頼するメリット
過払い金請求を弁護士に依頼するメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
- 取り戻せる金額が高くなる可能性がある
- 交渉や手続きを一任できる
- 周囲に知られず解決できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
5-1.取り戻せる金額が高くなる可能性がある
弁護士に過払い金請求を依頼すると、取り戻せる金額が高くなる可能性が期待できます。個人で請求する場合、過払い金の計算や交渉が正確でないと、金融機関側に有利な条件で妥協する結果となることが少なくありません。
特に金融機関や貸金業者はプロフェッショナルであり、相手が素人であると判断すると、法的知識を活かして減額交渉を進める場合もあります。
一方で、弁護士は法律の専門家であり、長年の経験から過払い金請求の成功率を高めるノウハウを持っています。弁護士が依頼者の代理人として交渉に臨むと、業者側はプロとして対応せざるを得ず、過払い金の正確な計算が求められることになります。
また、弁護士が介入することで、和解で取り戻せる金額だけでなく、法的手続きの場でも有利な結果を引き出す可能性が高まります。そのため、弁護士に依頼することで、単独では得られなかった高額な返還を期待できるのです。
5-2.交渉や手続きを一任できる
弁護士に依頼する最大のメリットの一つは、煩雑な交渉や手続きを全て一任できる点です。過払い金請求の手続きは、事務的な書類の準備や金融業者との交渉、さらには裁判所での手続きまでが含まれるため、時間や手間が大幅にかかることがあります。
個人で対応しようとすると、法的な知識や交渉経験が不足している場合、手続きに時間がかかり過ぎたり、トラブルを引き起こしてしまうリスクがあるのです。
弁護士はこうした手続きを一貫して代行でき、依頼者はただ結果を待つだけで済みます。交渉の中で発生する複雑なやりとりや期限管理、追加書類の提出も全て弁護士が行うため、依頼者は日常生活に専念しながら安心して過払い金返還を待つことができます。
また、依頼者がストレスなく問題を解決できる点も大きな魅力です。弁護士に任せることで、時間や労力を省けるだけでなく、ミスを防ぐことができるのです。
5-3.周囲に知られず解決できる
過払い金請求に際して、「誰にも知られたくない」というプライバシーの問題が懸念される方も少なくありません。個人で請求を進める場合、金融業者や関連機関との直接のやり取りや、場合によっては裁判所での手続きが発生するため、関係者以外に知られる可能性も考えられます。
しかし、弁護士に依頼することで、周囲に知られることなく問題を解決できる可能性が高まります。
弁護士は職務上の守秘義務を負っており、依頼者の情報を第三者に漏らすことはありません。また、弁護士が代理人として対応することで、金融業者とのやり取りや手続きは全て弁護士が行い、依頼者本人の関与は最小限に抑えられます。
そのため、依頼者が職場や家庭、友人に知られることなく過払い金請求を進めることが可能です。プライバシー保護が重視される現代において、弁護士のサポートにより安心して解決できる点は大きなメリットだと言えるでしょう。
6.まとめ
過払い金請求は、過去の借金を見直し、払いすぎた利息を取り戻せる権利です。自分だけで手続きを行うとリスクも伴いますが、弁護士に依頼することで、よりスムーズかつ有利に進めることができます。
弁護士に依頼するメリットは大きく、手続きにかかる時間や労力が大幅に削減され、精神的な負担も軽減されます。さらに、適切に対応してもらうことで信用情報に悪影響を及ぼすリスクも最小限に抑えられ、今後の生活設計や経済面での安心感が得られます。
結果的に、取り戻した資金を有効に活用できるため、家計に余裕が生まれ、将来への不安も軽減されるでしょう。過去の借金について不安な点があれば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。