私的整理とは?【経営者向け】相談のタイミングや個人債務について、適用される条件は?
【この記事の法律監修】
萩原 貴彦弁護士(東京弁護士会)
萩原法律事務所
1 私的整理とは?
私的整理とは、裁判所の関与を受けずに、債権者と債務者の間で行われる債務整理の手続きです。この手続きは、法的整理(会社更生、民事再生、特別清算、破産など)とは異なり、当事者間の任意の合意に基づいて行われます。
2 私的整理とは倒産なのか?倒産しても会社は継続できるのか?
結論として、私的整理は倒産処理の一形態ですが、適切に行われれば会社を存続させながら債務を整理し、事業を再建する有効な手段となり得ます。ただし、全債権者の合意が必要なため、状況によっては法的整理への移行も検討する必要があります。
3 規定されている法律は何か?重要な条文はなにか?
私的整理については、特定の法律で直接的に規定されているわけではありません。私的整理は、債権者と債務者の間の任意の合意に基づいて行われる倒産処理の形態であり、法的な枠組みの外で行われます。
4 私的整理を相談するのに適しているタイミングはどのようなタイミングか?
私的整理の相談は、企業が「事業の継続が困難になる」前に行うことが理想的です。資金繰りに窮して債権者への弁済ができなくなる前に、一定のルールに則って債権者への弁済を一時棚上げし、事業計画や返済案を策定する機会を得ることが重要です。
5 私的整理を行うと経営者はどうなるのか?個人債務を追うのか?
私的整理では、会社の債務整理と同時に経営者が会社の債務に関して負っている個人保証債務も処理できる可能性があります。ただし、具体的な取り扱いは個々の事案や債権者との交渉結果によって異なります。経営者保証ガイドラインなどを活用し、適切な債務整理を行うことが重要です。
6 私的整理にかかる費用はいくらくらいか?
- 裁判所への費用不要
法的整理とは異なり、裁判所への申立費用や予納金が不要です。
- 専門家への報酬
弁護士や公認会計士などの専門家への報酬が主な費用となります。
- 具体的な費用の目安
具体的な金額は案件によって大きく異なりますが、一般的な目安として、
小規模な案件: 数十万円〜数百万円程度
中規模な案件: 数百万円〜1000万円程度
大規模な案件: 1000万円以上
これらの費用は、債権者の数、債務の規模、事業の複雑さなどによって変動します。
7 私的整理を行う上での注意点は?見落としがちな点は?
- 実現可能な返済計画の立案
無理のない返済計画を立てることが重要です。
- 全債権者の合意取得
私的整理には法的強制力がないため、全債権者の合意が必要です。
一部の債権者が応じない可能性があることを認識しておく必要があります。
- 透明性の確保
手続きの透明性を確保するため、「私的整理ガイドライン」「中小企業事業再生等ガイドライン」などの基準に従うことが重要です。
- 個人保証債務の処理
会社の債務だけでなく、経営者の個人保証債務も同時に整理する必要がある場合があります。「経営者保証ガイドライン」などの基準に従うことが重要です。
- 税務上の影響
債務免除益が発生した場合の税務処理を事前に検討する必要があります。
- 取引先への影響
私的整理の事実が取引先に知られた場合の影響を考慮する必要があります。
- 再建後の資金調達
私的整理後の新規融資の可能性や条件について事前に検討しておくことが重要です。
- 従業員への対応
私的整理の過程で従業員の処遇や雇用問題が発生する可能性があります。
- 時間的制約
私的整理には法的な期限がないため、長期化する可能性があります。進行管理が重要です。
- 債権者間の公平性
債権者間で不公平な取り扱いがないよう注意する必要があります。
8 私的整理の主な流れ、ステップはどういったものか?
私的整理の主な流れは以下のようなステップがあります。
- 事前準備
- 財務状況の分析
- 事業の再生可能性の検討
- 専門家(弁護士、公認会計士など)への相談
- 債権者への通知
- 私的整理の開始を債権者に通知
- 弁護士が受任通知を送付し、支払い催促の停止を要請
- 資料の作成
- 経営課題の把握と改善策の検討
- 新たな事業計画の策定
- 返済計画案の作成
- 債権者会議を経て、各債権者と合意書の締結
- 合意した返済計画に基づく返済の開始
- 事業再生計画の実行
9 私的整理を行った場合、行う前と行った後、会社・従業員視点で主に何がことなるのか?
- 会社の視点
ア 私的整理前
- 債務超過や資金繰りの悪化に直面
- 債権者からの支払い催促に追われる状況
- 事業継続の見通しが不透明
イ 私的整理後
<財務状況の改善> - 債務の一部免除や返済条件の変更により、財務体質が改善します。
- 資金繰りが安定し、事業継続の見通しが立ちやすくなります。
<事業再構築の機会> - 不採算事業の整理や経営体制の刷新など、事業の再構築が可能になります。
<信用力の回復> - 債務整理により、取引先や金融機関との関係改善が期待できます。
<経営の自由度向上> - 債務負担の軽減により、新規投資や事業拡大の検討が可能になります。
- 従業員の視点
ア 私的整理前
- 会社の経営状況に対する不安
- 給与支払いの遅延や削減の可能性
- 雇用の不安定さ
イ 私的整理後
<雇用の安定> - 会社存続により、雇用が維持される可能性が高まります。
ただし、事業再構築の一環で人員整理が行われる場合もあります。
<労働条件の変化> - 給与や福利厚生が一時的に抑制される可能性があります。
一方で、会社の再建に伴い、将来的な待遇改善の見込みが出てきます。
<職場環境の改善> - 財務状況の改善により、職場の雰囲気が好転する可能性があります。
私的整理は、会社と従業員の双方に大きな影響を与えます。成功すれば、会社の存続と雇用の維持につながりますが、過程では様々な変化や調整が必要となります。経営陣は従業員とのコミュニケーションを密に取り、理解と協力を得ながら進めることが重要です
10 私的整理を行うと借金はどうなるのか?
重要な点として、私的整理では期待していたほど借金が減らない可能性もあります。
借入金の一部免除を受ける場合もありますが、多くの場合、返済期限の猶予や利息の軽減などのなされるだけで、元本は完済する必要があります。また、債権者全員の同意が得られない場合、私的整理が成立しない可能性もあります
11 私的整理が適用される法人の条件は?適用される金額上限などはあるのか?
①法人の規模に関する制限
私的整理には法人の規模に関する明確な制限はありません。
大企業から中小企業まで、規模に関わらず私的整理を行うことが可能です。
②金額上限
私的整理に関して法定の金額上限は設定されていません。
債務の金額の大小に関わらず、私的整理を検討することができます。
③適用条件
- 自力再建が困難である場合にはスポンサーの支援を受けること
- 事業価値が存在し、債権者の支援による再建可能性があること
- 法的整理を利用すると事業価値が毀損される可能性があること
- 債権者にとって経済的合理性があること
④事業継続の見込み
重要な事業部門で営業利益を計上しているなど、事業に収益性や将来性があることが求められます。
⑤債権者の同意
対象となる全債権者の同意が必要です。一人でも反対すると利用できません。
⑥業種による制限
特定の業種を対象外とする明確な規定はありません。
⑦債務の性質
主に金融機関からの借入金が対象となることが多いですが、取引先債務なども含めることもできます。
⑧「私的整理ガイドライン」「中小企業事業再生等ガイドライン」の適用
ガイドラインに従って行う場合には、要件として、
- 過剰債務により自力再建が困難であること
- 債権者の支援により再建の可能性があること
- 法定整理の申立てが事業価値を著しく毀損し、事業再建に支障が生じるおそれがあること
- 法的整理と比べて債権者に経済合理性があること
などの要件が課されます。
私的整理は、法的な枠組みというよりも、債権者と債務者の合意に基づく柔軟な手続きです。そのため、明確な金額上限や厳格な適用条件は設定されていません。ただし、実務上は事業の継続可能性や債権者の利益を考慮して判断されます。私的整理の成否は、個々の事案における債権者との交渉結果に大きく依存します。そのため、専門家(弁護士や公認会計士など)のアドバイスを受けながら進めることが重要です。
12 私的整理のメリット・デメリットはなにか?
①メリット
事業継続が可能
私的整理は事業の継続を前提に行われるため、事業を続けたい企業にとって有利といえます。
非公開性
私的整理の事実は公開されないため、取引先や顧客に知られにくく、信用低下のリスクが低くなります。
柔軟な解決
当事者間の合意に基づいて柔軟な解決を図ることができます。債務の内容を自由に変更できる可能性があります。
時間と費用の節約
法的整理と比べて、手続きにかかる時間と費用を抑えられる可能性があります。
対象債権者の選択
手続きの対象とする債権者を選択できるため、重要な取引先との関係を維持しやすいです。
②デメリット
全債権者の同意が必要
全ての対象債権者の同意が必要なため、一部の債権者が反対すると成立しない可能性があります。
法的拘束力の欠如
私的整理には法的な拘束力がないため、合意後に債権者が約束を破る可能性があります。
透明性の欠如
非公開で行われるため、手続きの透明性が低くなる可能性があります。
再建計画の実行リスク
再建計画の実行が困難な場合、後に法的整理に移行するリスクがあります。
債権者間の公平性確保の難しさ
債権者間で公平な取り扱いを確保することが難しい場合があります。
13 私的整理ガイドラインとはなにか?
①目的と性質
法的手続を使わず、債権者と債務者の合意に基づいて債権放棄などを行うための手続規定です。
法的拘束力はありませんが、金融界・産業界・経営者間の一般的コンセンサスとして機能します。
②主な特徴
債権者が債権の無税償却ができます。税務上の損金算入が認められます。
経営者と株主の責任を明確にすることが求められます。債権放棄を受ける場合、従来の経営者は地位を失うことになります。
法的再生と同水準かそれ以上の再生を図ることを目指します。
③適用条件
- 過剰債務により自力再建が困難であること
- 債権者の支援により再建の可能性があること
- 法的整理の申立てが事業価値を著しく毀損するおそれがあること
- 法的整理と比べて債権者に経済合理性があること
④手続きの流れ
- 債務者が主要債権者にガイドライン手続を申し出ます。
- 主要債権者が条件を調査し、要件が認められれば手続が開始します。
- 主要債権者と債務者で再建計画を作成します。
- 他の債権者に対する債務の支払いを一時停止します。
- 債権者集会を開催し、再建計画について協議します。
- 他の債権者の同意が得られれば、再建計画を実行します。
⑤再建計画の内容
再建計画成立後、3年以内を目処に実質債務超過の解消と経常黒字転換が求められます。
⑥利用状況
主に規模の大きい会社や、メガバンクがメインバンクである会社で用いられています。
このガイドラインは、私的整理の透明性と公平性を高めることを目的としていますが、債権者間の調整に客観的な第三者の関与がないため、主要債権者の負担が大きくなる傾向があります。
【経営者向け:私的整理を検討されている方】
14 私的整理ガイドライン以外にどのような手続きがあるか?私的再生はどこに分類され、どの位置なのか?
倒産手続きには、私的整理以外に以下のような手続きがあります。
- 法的整理
裁判所の関与があります。
ア 再建型
- 民事再生
- 会社更生
イ 清算型 - 破産
- 特別清算(株式会社のみ)
- 準法的整理
第三者の関与があります。
中小企業再生支援協議会による再生支援
事業再生ADR
- 私的整理
当事者間の合意によるものです。
15 倒産とは?清算型とは?再生型とか?なにか
倒産とは、企業が資金繰りに窮し、事業継続が困難になる状態を指します。具体的には、債務の支払いができなくなったり、経済活動を続けることが困難になった状況を意味します。倒産処理の方法は、大きく清算型と再建型に分けられます。
①清算型倒産処理
<目的>
企業の事業を終了させ、残った財産を債権者に分配すること。
<主な手続き>
破産: 裁判所の管理下で債務者の財産を清算し、債権者に公平に分配する。
特別清算: 株式会社のみが対象で、清算手続きが困難な場合に用いられる。
②再建型倒産処理
<目的>
企業の事業を継続しながら再建を図ること。
<主な手続き>
会社更生: 大規模な株式会社を対象とし、裁判所が指名した管財人が更生計画を遂行して再建を目指す。
民事再生: 中小企業や個人も利用可能で、債務者が事業を継続しながら再生を図る。
これらの手続きは、法的整理と呼ばれ、裁判所の監督下で行われます。一方、私的整理と呼ばれる手続きもあり、これは裁判所を介さず債権者との話し合いで債務整理を行う方法です。倒産は必ずしも企業の消滅を意味するわけではなく、再建型の手続きを通じて事業を継続しながら再生を図ることも可能です。
16 会社・法人の倒産の際、取りうる手段が主に何によって変わるのか?(再建計画の策定の可否)
会社・法人の倒産の際に取りうる手段は、主に以下の要因によって変わります。
①事業の再建可能性
再建の見込みがある場合は、再建型の手続き(私的整理、民事再生、会社更生など)を選択できます。
再建が困難な場合は、清算型の手続き(破産、特別清算)を選択することになります。
②債務者の財務状況
債務超過の程度や資金繰りの状況によって、適切な手続きが異なります。
例えば、資金繰りが極めて厳しい場合は、法的整理を選択せざるを得ないことがあります。
③債権者との関係
主要債権者(特にメインバンク)との関係が良好で協力的な場合、私的整理の可能性が高まります。
債権者間の利害対立が大きい場合は、法的整理が必要になることがあります。
④会社の規模や業種
大規模な株式会社の場合、会社更生手続きが選択肢となります。
中小企業の場合、中小企業再生支援協議会による支援など、特定の手続きが利用可能です。
⑤再建計画の策定可能性
「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」を策定できる場合、私的整理や再建型の法的整理を選択できます。
計画策定が困難な場合は、清算型の手続きを選択することになります。
⑥時間的制約
迅速な対応が必要な場合は、私的整理や民事再生などの比較的短期間で進められる手続きを選択することがあります。
⑥経営者の意向
経営者が事業継続を強く望む場合は、再建型の手続きを選択する傾向があります。
⑦法的保護の必要性
債権者からの強制執行を止める必要がある場合は、法的整理を選択することになります。
17 M&A(事業譲渡)を検討することは可能なのか?行う場合どのような流れになるのか?
私的整理の代替手段として、M&A(事業譲渡)を検討することは可能です。事業譲渡を行う場合の一般的な流れは以下のようになります。
- 事業譲渡の準備
- 自社の現状分析
- 譲渡対象事業の選定と価値評価
- 譲渡計画の作成
- M&A仲介会社の選択(必要に応じて)
- 買い手企業の選定
- 候補企業のリストアップ
- 秘密保持契約の締結
- 基礎情報の開示と分析
- 基本合意書の締結
- 独占交渉権の付与
- デューデリジェンスの実施計画
- デューデリジェンス(買収監査)の実施
- 財務、法務、業務などの詳細調査
- 事業譲渡契約の交渉と締結
- 譲渡内容、価格、条件などの詳細決定
- 株主への通知
- 契約効力発生の20日前までに実施
- クロージング(譲渡完了)
- 譲渡代金の支払い
- 事業の引き渡し
- 事後処理
- 従業員への説明
- 取引先への通知
この一連の流れには通常3〜6ヶ月程度かかりますが、案件の複雑さによっては10ヶ月〜1年以上かかることもあります
18 通常清算とは何か?違いは何か?メリット・デメリットは何か?注意点は?(会社・経営者・従業員視点)
通常精算とは、会社の解散後に債務を全て完済できる見込みがある場合に行われる清算手続きです。主な特徴は以下の通りです。
①定義と特徴
- 会社に残った資産で全ての債務を支払うことが可能な場合に行われる
- 裁判所の関与なく進められる
他の清算手続きとの違い
特別清算: 債務超過の疑いがある場合に行われ、裁判所の監督下で進む
破産: 裁判所の関与により残債務を結果的に消滅させる
②メリット
- 裁判所の関与がないため、比較的迅速に進められる
- 会社の信用を維持しやすい
③デメリット
- 清算人の責任が重い(裁判所の監督なしに適切に行う必要がある)
- 全ての債務を完済する必要があるため、資金が不足する可能性がある
④注意点
- 会社視点
財産目録と貸借対照表の作成が必要
債権の回収や資産の売却を適切に行う必要がある
- 経営者視点
清算人として全ての手続きを適切に行う責任がある
個人保証がある場合、その処理も考慮する必要がある
- 従業員視点
雇用契約の解消が必要
未払い給与等がある場合、確実に支払われる可能性が高い
19 破産・特別清算とは何か?違いは何か?メリット・デメリットは何か?注意点は?(会社・経営者・従業員視点)
破産と特別清算は、いずれも会社の清算型倒産処理手続きですが、以下のような違いがあります。
①破産
定義:裁判所の管理下で債務者の財産を清算し、債権者に公平に分配する手続き
対象:全ての法人が対象
手続きの主体:裁判所が選任した破産管財人
②特別清算
定義:解散した株式会社が債務超過の疑いがある場合に行う清算手続き
対象:株式会社のみ
手続きの主体:株主総会で選任された清算人(裁判所が選任する場合もある)
③メリット・デメリット
破産
<メリット>
- 債務が免除される
- 厳格な手続きにより公平性が保たれる
<デメリット>
- 手続きが複雑で時間がかかる
- 費用が高額
特別清算
<メリット>
- 手続きが比較的簡易で迅速
- 費用が破産より安い
- 柔軟な債務整理が可能
<デメリット>
- 株式会社のみが対象
- 債権者の同意が必要
④注意点
会社視点
破産:全ての財産が管財人の管理下に置かれる
特別清算:清算人が主導して手続きを進める
経営者視点
破産:経営権を失う、個人保証がある場合は別途対応が必要
特別清算:清算人として手続きを主導できる可能性がある
従業員視点
破産:即時解雇される可能性が高い
特別清算:清算事務の範囲内で雇用継続の可能性がある(ただし、最終的には解雇)
【経営者向け:私的整理を決意された方】
20 私的整理を成功させる重要なポイントはなにか?
私的整理を成功させるための重要なポイントは以下の通りです。
①早期の対応
財務状況の悪化を早期に認識し、迅速に私的整理の検討を始めることが重要です。
②適切な事業再生計画の策定
債権者を納得させられる実現可能性の高い事業再生計画を立案することが不可欠です。
③債権者との良好な関係構築
特にメインバンクとの関係を良好に保ち、協力を得ることが重要です。
④透明性の確保
財務状況や事業の現状について、債権者に対して正確かつ詳細な情報を提供することが必要です。
⑤専門家の活用
弁護士や公認会計士などの専門家のサポートを受けることで、手続きをスムーズに進められます。
⑥柔軟な交渉姿勢
債権者との交渉において、柔軟な姿勢で臨み、互いに納得できる解決策を見出すことが重要です。
⑦全債権者の合意獲得
私的整理の成功には、対象となる全債権者の合意が必要不可欠です。
⑧適切な手法の選択
純粋私的整理か準則型私的整理かなど、状況に応じて最適な手法を選択することが重要です。
⑨時間管理
交渉が長引くと経営状況が悪化する可能性があるため、適切な時間管理が必要です。
⑩事業価値の維持
私的整理の過程で事業価値を維持し、再建の可能性があります。
21 私的整理後の経営権や経営方法・運営方法はどのように変化するのか?
私的整理の内容や債権者との合意内容によって異なります。経営の自由度は制限されますが、事業の再生と成長を目指した運営が求められます。
22 従業員や取引先に私的整理を伝えるのはどのようなタイミングが適切か?
私的整理を従業員や取引先に伝えるタイミングについては、以下のポイントを考慮する必要があります。
基本的な原則
原則として、私的整理の申立ての直前に伝えるのが適切です。
早すぎる告知は避けた方が良いと考えられます。理由としては、情報が外部に漏れると、取引先の離反や従業員の退職など、事業継続に支障をきたす可能性があるためです。
23 債権者、従業員への説明会はかならず開くのか?
債権者や従業員への説明会については、以下のポイントが重要と考えられます。
①債権者への説明会
通常、私的整理を行う場合は債権者説明会を開催します。
債権者の同意を得るために、事業再生計画や返済計画を説明する機会として重要です。
全債権者を一堂に集めて行うことが一般的ですが、個別に説明を行う場合もあります。
②従業員への説明会
従業員への説明会は必ず開く必要があります。
従業員の理解と協力を得ることが、私的整理の成功に不可欠だからです。
通常、私的整理の申立て直前または直後に全従業員を対象に説明会を開催します。
24 従業員を解雇することは可能か?
私的整理を行う際に従業員を解雇することは可能ですが、以下の点に注意が必要です。
①正当な理由の必要性
解雇には客観的に合理的な理由が必要です。
私的整理という状況だけでは、直ちに解雇の正当な理由とはなりません。
②解雇の手順
従業員への事前の説明や警告を行う必要があります。
配置転換や降格など、解雇以外の選択肢も検討すべきです。
③解雇予告
原則として30日前までに解雇予告をする必要があります。
30日前に予告できない場合は、不足日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。
④整理解雇の4要件
- 人員削減の必要性
- 解雇回避努力の実施
- 被解雇者選定の合理性
- 解雇手続きの妥当性
これらの要件を満たす必要があります。
⑤従業員との協議
可能な限り、従業員や労働組合との協議を行い、理解を得ることが重要です。
私的整理の過程で従業員を解雇する場合、単に経営難を理由とするだけでは不十分で、上記のような点に十分注意を払い、慎重に進める必要があります。また、解雇以外の方法(希望退職の募集など)も検討することが望ましいでしょう。
25 正確な資産・負債の算定はどのように行うのか?
公認会計士や税理士などの専門家の協力を得て、算定を行うことをお勧めします。
専門家の客観的な視点により、正確性と信頼性を確保できます。
26 弁護士以外にどのような専門家のフォローが必要なのか?各員に何をしてもらうのか?
- 公認会計士・税理士
- 正確な財務状況の把握と分析
- 資産・負債の適切な評価
- 税務上の影響の検討と対策
- 再建計画の財務面でのアドバイス
- 司法書士
- 不動産登記に関する手続き
- 会社登記の変更手続き
- 不動産鑑定士
保有不動産の適正な評価
状況に応じて、必要な専門家の協力を得ることが、重要となります。
27 弁護士に相談するメリット、必要性
私的整理は債権者との交渉が中心となります。弁護士は債務整理や倒産法に精通しており、法律的なリスクや問題点を事前に把握し、最適なアドバイスを提供します。特に、複数の債権者が関与する場合、弁護士が交渉に立ち会うことで、債権者の合意をスムーズに進めることが期待できます。そのため、私的整理をご検討されている方は、私的整理を成功させるために、法律の専門家である弁護士へご相談されることをおすすめします。
28 弁護士にはどのように相談すればいいか?
弁護士に相談する前に、会社の財務状況や債務額、債権者のリストを整理しておくとスムーズです。また、現在の資金繰りの状態や、どの程度の返済が可能かといった基本的な情報をまとめておくことで、弁護士が具体的な解決策を提案しやすくなります。