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債務整理で住宅ローンは?持ち家を失わないには?整理後は?

【この記事の法律監修】  
杉浦 正規弁護士(愛知県弁護士会) 
西山・下出法律事務所

「住宅ローンを返済中だけど債務整理することはできるの?」
「持ち家を手放さない方法は?」
「過去に債務整理をしたけど住宅ローンは組める?」

住宅ローンの返済が厳しくなり、借金を減らすために債務整理をしようか悩んでいる方は多いでしょう。

住宅の購入を検討していても、過去の債務整理の経験から住宅ローンの審査に通るか不安を抱える方もいるはずです。

本記事では、住宅ローンに関する債務整理について、債務整理を行う方法や住宅ローンを組む際の注意点などをわかりやすく解説します。

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住宅ローンを組んだまま債務整理はできる

住宅ローンを組んで返済を行っている場合でも、債務整理はできます。債務整理は、大きく分けて、任意整理、個人再生、自己破産の3種類がありますが、自分の状況に応じて適切な債務整理方法を選ぶ必要があります。ここでは、以下の二つの場合においての債務整理方法を紹介します。

  • 持ち家を残したいなら任意整理か個人再生
  • ペアローンを組んでいるなら任意整理

持ち家を残したいなら任意整理か個人再生

持ち家を残したい場合は、任意整理か個人再生がおすすめです。どちらの手続きも債務整理から住宅ローンを除外できるので、住宅ローンをすべて返済することが可能です。住宅ローンを完済すれば持ち家を手放さずに済みます。

それぞれの手続きの主な特徴は以下のとおりです。

  任意整理 個人再生
どんな手続きか 貸金業者と交渉し、将来利息をカットして3〜5年の長期分割払いで借金を返済する。 裁判所に申立てを行い、残りの借金を大幅に減額して減額後の金額を返済する。
持ち家を残す方法 任意整理の対象とする貸金業者を選ぶ際に、住宅ローンを組んでいる貸金業者を除外する。 民事再生法が定める「住宅資金貸付債権に関する特則」(以下住宅ローン特則)で住宅ローン以外の借金を圧縮する。
注意点 交渉次第で思うように利息カットや支払期間延長ができない可能性がある。 住宅ローン特則を利用するためには、いくつか条件がある。

参考:民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第十章 住宅資金貸付債権に関する特則

上記の注意点は、手続きを債務整理の専門家である弁護士に依頼すると対処が可能です。
住宅ローン以外の借金を減らして負担を抑えつつ住宅ローンを完済すれば、持ち家を残すことができます。。

持ち家を残したいけれど、任意整理と個人再生のどちらを選べばいいのかわからないという方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。自分の状況だとどのような手続きを行えばよいかが明確になり、安心して手続きを始められるようになります。そのまま弁護士に依頼して手続きを行ってもらうことも可能です。

ペアローンを組んでいるなら任意整理

ペアローンを組んでいる場合は、任意整理がおすすめです。任意整理は債務整理の対象から住宅ローンを外すことができるため、共同名義人への影響を避けられるからです。

ペアローンは、一つの物件に対して二人が借金をしている状態です。二人のうち一人が住宅ローンを含めた債務整理を行うと、もう一人が住宅ローンの残額全てを払うことになります。ペアローンの場合、住宅に自分の住宅ローン以外の抵当権がついている状態になるので、個人再生の「住宅資金貸付債権に関する特則」を使えません。ペアローンの住宅ローンを債務整理から外すには任意整理を選ぶ必要があります。

ペアローンを組んでいる場合の債務整理は、注意すべき点が多く、手続き等も複雑である場合が多いです。したがって、債務整理に詳しい弁護士に、共同名義人への影響が少ない方法について相談すると良いでしょう。

債務整理後は原則7〜10年で住宅ローンが組める

債務整理をした後は、原則7〜10年後には住宅ローンが組めるようになります。信用情報機関が管理している信用情報に登録されている事故情報、いわゆる「債務整理をした人」という情報が消えるためです。住宅ローンは信用情報機関を通して審査が行われるため、事故情報が残っていると審査に通りません。

事故情報が消えるまでの期間は債務整理方法や信用情報機関により異なります。ここでは、債務整理の種類によって住宅ローンはいつから組めるのかを解説します。

  • 任意整理は手続きから8~10年後に組める
  • 個人再生と自己破産は手続きから7年後に組める

任意整理は手続きから8~10年後に組める

任意整理は、手続きから8〜10年後には住宅ローンが組めるようになります。任意整理を行うと、3〜5年で残りの借金をすべて返済することになります。完済した後5年間は事故情報が残りますので、その期間中は住宅ローンを組むことはできません。
任意整理の場合、事故情報が残る期間はどの信用情報機関も完済日から5年です。手続きを行ってから換算すると8〜10年後には事故情報が消え、住宅ローンを組めるようになります。

任意整理を行う場合は、専門家に相談することでより早く手続きを行えたり、返済期間をより短く交渉したりしてくれます。手続きと返済を早く終わらせれば、より早く住宅ローンを組めるので、ぜひ一度手続きについて弁護士に相談してみましょう。

個人再生と自己破産は手続きから7年後に組める

個人再生または自己破産を行った場合は、手続きから7年後に住宅ローンが組めるようになります。個人再生と自己破産は信用情報機関ごとに事故情報が残る期間が異なります。

個人再生の場合

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC):完済日から5年
  • 株式会社日本信用情報機関(JICC):完済日から5年
  • 全国銀行個人信用情報センター:完済日から7年

自己破産の場合

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC):手続きした日から5年
  • 株式会社日本信用情報機関(JICC):手続きした日から5年
  • 全国銀行個人信用情報センター:手続きした日から7年

各信用情報機関は情報を共有しています。そのため、どこかの信用情報機関に事故情報が残っていれば、どの金融機関が信用情報を調べた際にも事故情報がわかってしまいます。

個人再生または自己破産を行うと手続きをした日から7年は住宅ローンは組めませんが、その後は組むことが可能です。

債務整理後に住宅ローンを組む方法

住宅ローンを債務整理後に組む際には、組み方を選ぶことでより審査に通りやすくなります。ここからは、債務整理後に住宅ローンを組む方法を4つ紹介します。

  • 家族名義で住宅ローンを組む
  • ペアローンを組む
  • 頭金を多く用意する
  • 連帯保証人をつける

家族名義で住宅ローンを組む

自分名義ではなく、家族名義で住宅ローンを組んでみましょう。家族名義で申請をすることで、事故情報を心配することなく審査を受けられます。

信用情報機関に登録されている事故情報は、あくまで個人としての情報であり、家族の信用情報には影響しません。債務整理を行った本人の信用情報を確認しない限りは、金融機関が債務整理の有無を把握することはないのです。住宅ローンの審査対象は契約者の信用情報のみですから、自分以外の家族名義で申請をすれば、事故情報を把握される心配は在りません。

住宅ローンの審査の際には信用情報以外も見られるので、事故情報がないからと言って必ず審査に通るとは限りません。しかし、事故情報を気にせず申請ができるので、家族名義で住宅ローンを組む方法も視野に入れてみましょう。

ペアローンを組む

夫婦や親子でペアローンを組みましょう。ローンを返済する人を二人に増やせば、審査に受かりやすくなります。

ペアローンの収入合算方式では、金融機関は二人の年収を合算した額を収入として審査します。一人で住宅ローンの申請を行う場合と比べてより高い年収で審査を受けられるため、審査に通る可能性を高めることができます。

また、ペアローンを組むと一つの物件に対して二人で借金を持つので、一人当たりの借入額が低くなります。一人当たりの返済比率(年収に占めるローンの返済額の割合)が下がるため、審査にプラスの影響を与えられます。

ペアローンを組むと夫婦や親子二人でローンを返済していくことになりますが、メリットもあるため検討してみると良いでしょう。

頭金を多く用意する

頭金を多く用意して住宅ローンを組みましょう。金融機関に対する信用度が上がり、審査に通る可能性が高くなります。

最初に支払う金額が大きいほど、住宅ローンとして組む金額は小さくなります。金融機関側が貸し出す金額が小さくなり、返済比率も下がるため、住宅ローンの審査には通りやすいです。また、十分な頭金を用意すれば、高額を用意できる程収入が安定していると金融機関に示せます。収入の安定性を証明できるので、審査に通る可能性が高くなります。

頭金をなるべく多く用意して、住宅ローンの審査に通る可能性を上げましょう。

連帯保証人をつける

連帯保証人をつけて住宅ローンの申請を行う方法もあります。

連帯保証人は住宅ローンの契約者が返済できなくなったときに、契約者の代わりに返済する義務があります。金融機関は、債務整理などで契約者から借金を回収できなかった場合に、連帯保証人に借金返済を請求できます。貸出分を回収できないリスクを避けられるので、金融機関が受けるメリットは大きいです。
連帯保証人をつけることで、金融機関が住宅ローンの審査を行う際にプラスの影響を与えることができます。

一方で、連帯保証人は一度契約すると外れるのは容易ではないため、連帯保証人を選ぶ際は慎重に選びましょう。

以上のとおり、債務整理を行った後でも、住宅ローンの審査までに十分な準備をしておけば、住宅ローンを組むことができる可能性があります。。

債務整理後で住宅ローンを組めるか心配な方は、経験豊富な弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。

債務整理後に住宅ローンを組む場合の注意点

債務整理後の住宅ローンを組む際には、審査に通る可能性を高めるためにいくつか注意点があります。続いては債務整理後に住宅ローンを組む場合に注意すべき点を紹介します。

  • 事故情報が消えているか確認する
  • 債務整理をした金融機関を避ける
  • 安定収入を証明する
  • クレジットヒストリーを積み重ねる

事故情報が消えているか確認する

住宅ローンの申請をする前に、事故情報が消えているか確認を行いましょう。事故情報が登録された状態のまま住宅ローンの申請を行っても、「債務整理をした人」として審査に通りません。

事故情報が信用情報機関に登録されているかどうかは、信用情報機関に情報開示を行えばわかります。情報開示の方法は、オンラインで行う方法と郵送で行う方法があります。信用情報機関ごとの料金・情報開示までの期間は以下の通りです。

株式会社シー・アイ・シー(CIC)の場合

  オンライン(インターネット)で申請 郵送で申請
手数料 500円 1,500円
情報開示までの期間 請求後すぐ 10日程度

株式会社日本信用情報機関(JICC)の場合

  オンライン(スマホアプリ)で申請 郵送で申請
手数料 1,000円 1,300円
情報開示までの期間 数分~数時間 5~7日程度

全国銀行個人信用情報センターの場合

  オンライン(インターネット)で申請 郵送で申請
手数料 1,000円 1,679~1,800円
情報開示までの期間 最短3~5営業日 1週間~10日程度

住宅ローンを組む前には、各信用情報機関に情報開示請求を行い、事故情報が抹消されているかを必ず確認しましょう。審査が通らない状況でないことを明確にしたうえで住宅ローンを申請できます。

債務整理をした金融機関を避ける

住宅ローンを組む金融機関として、債務整理を行った金融機関を選ぶのは避けましょう。債務整理を行った金融機関には、顧客情報として債務整理を行った履歴が残っている可能性が高いです。社内ブラックリストとして残っていると、半永久的にその金融機関では住宅ローンを組むことはできません。

また、債務整理を行った金融機関でなくても、関連会社の場合は債務整理を行った金融機関から顧客情報が共有されている可能性があります。社内ブラックリストの情報が共有されていれば、関連会社でも住宅ローンの審査が通らない可能性は高いです。

債務整理後は、債務整理を行った金融機関や関連会社ではないところで住宅ローンを組みましょう。

安定収入を証明する

住宅ローンの審査時に安定収入を示せるようにしましょう。
安定収入を証明できれば、返済能力があることが認められて審査に通りやすくなります。

住宅ローンの審査は、雇用形態・勤続年数・税金滞納の有無や安定収入、安定した生活に直結する内容などが審査されます。住宅ローンを申請するまでに、定職に就き複数年継続して働いておくと十分な収入を得ている証明になります。無駄な出費を減らして十分な貯金を貯めておくことも大事です。貯めたお金で税金を支払い、滞納しないようにしましょう。

安定収入を証明できれば、住宅ローンの審査に通る可能性は高くなります。

クレジットヒストリーを積み重ねる

住宅ローンを申請するまでにクレジットヒストリーを積み重ねておきましょう。ローンの審査の際には、信用情報としてクレジットヒストリーがみられる場合が多いです。クレジットヒストリーとは、クレジットカード等の分割払いや小さいローンを完済した履歴のことです。

少額のローンを組んで完済したり、クレジットの分割払いで滞納することなくきちんと返済すれば、「ちゃんと返済できる人」という情報が信用情報に残ります。したがって、審査の際にローンの返済能力があることを証明することが可能です。

クレジットヒストリーを積み重ねて返済能力がある者としての信頼を獲得し、住宅ローンの審査に通る可能性を高めましょう。

住宅ローンに関する債務整理でよくある質問

ここまで住宅ローンを組んでいる場合の債務整理方法や債務整理後の住宅ローンの組み方等をお伝えしてきました。最後に、住宅ローンと債務整理に関するよくある質問に回答します。

  • 住宅ローンを減額する方法はありますか?
  • 債務整理後に保証人になることは可能ですか?
  • 債務整理をしても住宅ローンの返済が厳しい場合は?

住宅ローンを減額する方法はありますか?

住宅ローンを減額するには、契約している貸金業者に相談をする必要があります。

月々の返済額が高すぎて負担になっている場合は、返済期間を伸ばすと一月当たりの返済額を下げられます。
総返済額を減らしたい場合は、返済を繰り上げて行うことで総利息を減らせます。

住宅ローンの減額を試みても完済ができない可能性が高い場合は、弁護士に相談して債務整理を考えてみましょう。

債務整理後に保証人になることは可能ですか?

債務整理してから7〜10年後には保証人になることは可能です。保証人になる場合も、信用情報が調べられるため、事故情報が登録されている間は保証人にはなれません。保証人になる場合も、債務整理を行ってから7〜10年後に情報開示により事故情報が消えているかを確認しましょう。

債務整理をしても住宅ローンの返済が厳しい場合は?

債務整理をしたけど住宅ローンの返済ができない場合は、行った債務整理が自分に合った方法ではなかった可能性があります。弁護士に相談して別の債務整理を検討してみましょう。

どうしても住宅ローンが返済できない場合は、自己破産という選択肢も視野に入れるとよいです。住宅ローンを含む全ての借金を免除できます。一方で、持ち家は手放すことになるので、自己破産をする際は弁護士とよく話し合って慎重に決めましょう。

住宅ローンが関わる債務整理をする時は弁護士に相談しよう

本記事では、住宅ローンを組んだまま債務整理を行う方法や、債務整理をした後に住宅ローンを組む際の注意点等をお伝えしました。

住宅ローンが関わる債務整理は複雑である場合が多いです。

債務整理をしようか迷っている方は、まず自分の状況で住宅ローンを組んだまま任意整理ができそうなのかを弁護士に相談しましょう。相談をするときは、自分の状況を簡単に箇条書きなどでまとめておくと良いです。

債務整理をすると決めた方も、一度弁護士に相談すると良いでしょう。
どの債務整理方法が適しているかは、借金の残額や収入状況等によって一人一人異なります。弁護士に相談すれば、自分にはどの方法が合っているのかアドバイスをもらえます。

また、債務整理後の住宅ローンの申請においては、上記の注意点に気を付けても審査に通らない場合もあります。住宅ローンを組めるか心配な方は、一度弁護士に相談して今の自分の状況を話してみると良いでしょう。

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