個人再生とは?自己破産との違いや流れ、家や車を残す方法は?
【この記事の法律監修】
中間 隼人弁護士(横浜弁護士会)
なかま法律事務所
「個人再生とはどのような手続きなのか」「個人再生をした場合、家や車を残せるのか」このようなお悩みを抱えている方は多いでしょう。個人再生は債務者が裁判所に申し立てを行い、債務を減額し3年から5年の分割で支払い残りの債務を免除してもらう手続きです。
本記事では、個人再生がどのようなもので、個人再生の手続きの流れなどを詳しく解説しています。
この記事を読めば、個人再生がどのようなものか理解が進み、他の債務整理との違いやメリットやデメリットを知ることができます。また、個人再生や弁護士にお願いするタイミングや、実際に個人再生を行った事例や法律を詳しく出来るので、ご自身に個人再生が適しているかどうか判断が出来ます。
1.個人再生とは?
個人再生とは、裁判所を通じて債務を大幅に減額し、残りの債務を3年から5年で分割して支払う手続きです。
個人再生の利用で、任意整理よりも大幅に負担を軽減できます。返済が完了すれば、残りの
債務は免除されます。
例えば、600万円の借金がある場合、個人再生を利用すると借金は120万円に減額され、月々3万円の返済で済みます。債務者が将来的に安定した収入を得る見込みがあれば、裁判所の認可を受けると、この方法が利用可能です。
個人再生は、借金の大幅な減額が可能なため、債務者にとって大きな救済となる手続きです。
2.個人再生は2種類ある
個人再生手続には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
この2つの手続きでは、返済する金額(最低弁済額)の決め方や、債権者の同意が必要かどうかが異なります。
以下で、詳しく解説していきます。
2−1.小規模個人再生
個人再生の基本的な手続きは「小規模個人再生」です。アルバイトや自営業者でも、要件を満たせば利用が可能です。
小規模個人再生の再生計画の条件は、債権者からの反対によって書面決議が否決されないことです。
たとえば、アルバイトや個人事業主の方でも、一定の要件を満たしていれば小規模個人再生を利用できますが、債権者が多数反対すると、再生計画が成立しない可能性があります。
小規模個人再生は、書面決議で債務者からの反対が少ないことが重要です。条件を満たせば、幅広い職業の方が利用できる手続きです。
2−2.給与所得者等再生
給与所得者再生は、将来的に安定した収入があり、収入の変動が少ないと認められるサラリーマンなどを対象とした手続きです。
給与所得者再生は、再生計画の成立にあたり、債権者の同意や不同意を確認する手続きが省略されています。しかし、可処分所得の2年分を返済する「可処分所得弁済要件」が設けられています。
給与所得者再生は、債権者の同意確認手続きを省略し、可処分所得弁済要件を満たすことが求められる手続きです。
3.個人再生ができる条件
個人再生をするにはいくつか条件があります。
以下で詳しく解説していきます。
3−1.毎月安定した収入がある
個人再生は、毎月安定した収入が条件です。
個人再生は原則3年間にわたって返済を続ける必要があるため、安定した収入がなければ返済を継続できないからです。
正社員やパートであっても、継続的な収入があれば問題なく個人再生が認められます。しかし、期間限定のアルバイトなどでは、安定収入があるとは見なされないため、個人再生を利用するのが難しくなります。また、個人事業主や年金受給者であっても、条件によっては安定収入と認められます。
安定した収入がない場合、裁判所は「再生手続開始決定」を出してくれません。(民事再生法221条1項、239条1項)
継続した収入が見込めない場合は、自己破産を検討する必要があるでしょう。
3−2.住宅ローンを除いた債務の総額が「5000万円」以下である
住宅ローンを除く債務が5,000万円以上の場合、個人再生の手続きができません。
個人再生は、債務の総額が5,000万円を超える場合には適用されず、通常の一般民事再生の対象となります。
住宅ローンを除く借金が4,800万円の場合でも、住宅を手放して担保を差し押さえた後の残債務が200万円あると、債務の総額が5,000万円を超えます。この場合は、個人再生手続きを進められません。
債務総額が5,000万円を超える場合は、個人再生ではなく一般民事再生が適用されるため、弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。
3−3.【小規模個人再生のみ】債権者の反対により書面決議が否決されない
小規模個人再生は、再生計画案が提出され、債権者による「書面決議」で同意か反対かが確認されます。債権者の意見を確認するためです。
書面決議は、反対の場合のみ意思表明を行い、無回答の場合は同意したとみなされる「消極的同意」の方法が取られます。
債権者の過半数が反対した場合、もしくは反対した債権者の債権額が総債権額の過半数を超える場合、再生手続きは廃止となります。
3−4.【給与所得者等再生のみ】過去7年以内に個人再生や破産での免責決定を受けていない
1回目に行った手続きが給与所得者等再生だった場合、7年を超えて経過していれば、どの個人再生手続きも問題なく再度申し立てることができます。しかし、7年以内であれば再度の給与所得者等再生は申立てできません。
給与所得者等再生は、債権者の同意を必要とせず、裁判所の認可によって借金の減額が認められるため、乱用を防止する目的で7年以内の再度の申立てが制限されています。(民事再生法239条5項2号)
給与所得者等再生は債権者の反対があっても減額が認められる手続きです。しかし、乱用を防ぐために7年の期間制限が設けられています。7年以内の再申立てができないのは、給与所得者等再生のみです。
4.個人再生ができないケースは?
では、個人再生ができないケースはそのような場合でしょうか?
以下で詳しく解説します。
4−1.安定した収入がない
前述した通り、個人再生の手続きを行うためには、安定的な収入が必要です。
安定した収入を得る見通しがあれば、返済計画を確実に遂行できるからです。
給与が毎月一定の金額で支払われる正社員などの職業は、安定した収入が見込まれるため、個人再生の条件を満たしやすいです。一方、収入が不規則なフリーランスやアルバイトの場合、十分な収入見込みが立たない場合があるので、個人再生の適用が難しくなります。
安定した収入を得られる見込みがない場合、個人再生の条件を満たさず、手続きを進めることは難しいでしょう。
4−2.住宅ローンを除く債務の総額が「5,000万円」以上ある
負債総額が5,000万円を超える場合や法人の借り入れがある場合は、個人再生の手続きを進められません。
個人再生の申請条件は、住宅ローンを除いた負債総額が5,000万円以内であることが必須だからです。
債務総額が5,000万円を超えている場合や、法人が借り入れを行っている場合は、個人再生は適用されません。この場合、多くの人は自己破産を選択しています。
個人再生は5,000万円以内の個人借り入れが条件となるため、それを超える負債がある場合は、自己破産が現実的な解決策となる場合が多いと言えるでしょう。
4−3.高額な財産を所有している
個人再生は財産を残しながら債務整理手続きが行えますが、所有する財産が高額な場合は適していない可能性があります。
財産が多いと債務が減額される金額も制限されるため、返済しなければならない最低額が高くなるからです。
たとえば、100万円まで借金が減額できるはずのケースでも、所有財産が150万円であれば、150万円が最低返済額となるため、これ以上減額ができなくなります。
高額な財産を所有している方は、個人再生は返済負担が大きくなる可能性があるため、適していないと言えるでしょう。
4−4.申立て費用や弁護士費用が準備できない
個人再生の手続きは、裁判所への手続費用や弁護士に依頼した場合の弁護士費用が発生します。これらの費用を用意できない場合、個人再生の手続きは進められません。
裁判所に支払う費用は以下のものが含まれ、一般的には2〜3万円ほどかかります。
- 申立て手数料
- 予納郵券
- 官報公告費
(金額は地方裁判所によって異なります。)
裁判所に支払う手続費用だけでなく、弁護士に依頼した場合はさらに弁護士費用も発生します。
手続きに必要な費用が用意できない場合、個人再生の手続きを進めることができません。
5.個人再生をするベストなタイミングは?
個人再生を検討するのにベストなタイミングは、以下の2つです。
個人再生を考えている方はぜひよく読んで参考にしてください。
5−1.債務総額が100万円以上で5,000万円になる前
個人再生をするのであれば、債務総額が100万円を超えた後かつ5,000万円を超える前にする必要があります。
個人再生を利用できるのは、債務総額が100万円以上5,000万円以下の場合だからです。
それ以上や以下の債務を抱えている場合、個人再生の利用はできません。
債務総額によって、返済するべき弁済額が以下のように変わります。
弁済額とは、個人再生をした人が最低限支払わなければいけない金額です。
1.負債総額に応じた以下の金額
債務総額 | 弁済額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1,500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円 |
3,000万円以上5,000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
2.自分の財産をすべて処分した際に得られる金額
3.自分の可処分所得額(収入総額から税金や生活費など必要な費用を控除した残額)の2年分の金額
上記3つのうちで最も高い金額以上の返済をします。(小規模個人再生手続の場合、2.3.のどちらか高い方の額)
個人再生を検討してる場合は、借金総額が100万円を超えた後かつ5,000万円を超える前に行いましょう。
5−2.自身での返済が困難と判断したとき
「自分で債務の返済をしていくのが難しい」「約定通り返済を続けると生活ができない」と感じた場合、個人再生を検討すべきです。
借金返済が困難な状況が続くと、解決は難しくなるためです。
既に返済を滞納しているにもかかわらず、解消する見込みがない場合や、今後の返済が困難な状態が続く場合は、すぐに個人再生を検討しましょう。ギャンブルやクレジットカードの現金化などで対処しようとすると、さらに借金が増え状況が悪化する可能性が高いです。
債務額が100万円を超え、これ以上返済を続けても完済できないと判断したら、その時点で弁護士に個人再生の相談をしましょう。
6.個人再生をするメリット
個人再生は、住宅や車が残せるメリットがあります。
以下で詳しく解説しますので、住宅や車を残したい方はよく読んで参考にしてください。
6−1.債務が5分の1に減額される
個人再生の最大のメリットは、借金の元本を大幅に減額できることです。
自己破産のように借金をゼロにはできませんが、元本を5分の1から10分の1まで減らせます。
個人再生では最低弁済基準額が定められており、借金総額によって最低限支払うべき金額が決まっています。そのため、借金が100万円未満の場合には個人再生の減額効果を受けられません。
たとえば、600万円の借金があった場合、個人再生で80%減額されると、480万円が減額され、残りの120万円を返済すれば済みます。大幅に借金が減ると完済の見通しが立つ方も多いでしょう。
借金の減額率は、前述している通り、借入額や資産状況によって異なります。
個人再生を利用すれば借金が大幅に減額され、完済が現実的になるケースが多くあります。
6−2.住宅資金特別条項の条件を満たせばマイホームが残せる
個人再生には住宅ローン特則(住宅資金特別条項)があり、この制度を利用するとマイホームを残したまま借金を減額できます。
法的手続きである個人再生は、すべての債権者を平等に扱う必要があります。しかし、住宅ローン特則を適用すると、住宅ローンだけは手続き中も支払いを続けられます。
住宅ローン特則が認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 本人が所有していること(共有も可)
- 建物の床面積の2分の1以上が居住用であること
- 現在本人が居住していること
これらの条件を満たせば、従来通りの返済スケジュールで住宅ローンを支払い続けられます。(上記以外にも住宅ローン特則には他にもさまざまな条件や注意点があります。)
住宅資金特別条項を活用してマイホームを残したまま個人再生を行うには、一定の条件を満たす必要があるため、弁護士に相談するとスムーズでしょう。
6−3.車を残せる場合がある
個人再生をしても、自動車ローンを完済していれば車は手元に残すことができます。
自動車ローンを完済している場合、ローン会社の所有権はなくなり、車は処分する必要がないためです。
通勤に車を使用している人は、完済している車が個人再生後も手元に残るのは大きなメリットと言えるでしょう。また、ローン支払いが途中で所有権がローン会社に留保されている場合、車は原則として引き揚げられてしまいますが、現金で再度車を購入することは可能です。
自動車ローンを返済中の場合は、車が手元に残らない可能性が高いので、個人再生をするタイミングには注意が必要です。
7.個人再生をするデメリット
個人再生にはさまざまなメリットがありますが、デメリットもいくつかあります。
デメリットも理解した上で、本当に個人再生すべきか検討しましょう。
以下で詳しく解説します。
7−1.ブラックリストに載る
個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報として登録され、5〜10年間はクレジットカードの作成や新たな借入れができなくなります。これは「ブラックリストに載る」状態と呼ばれます。
たとえば、個人再生や任意整理を行うと、5〜10年間はクレジットカードの利用や新規申し込み、ローンの審査が通らなくなります。また、スマホの分割払いができなかったり、賃貸物件の契約ができないこともあります。
個人再生や任意整理を行うと、信用情報に登録されます。その期間中は借入れやクレジットカードの利用が制限されるため、生活にさまざまな影響が出るでしょう。
7−2.個人再生したことが官報に載る
個人再生を行うと、氏名や住所などが官報に掲載されます。
官報とは国が発行する新聞のようなもので、個人再生手続の内容が掲載されるためです。
勤務先が定期的に官報をチェックしていない限り、手続きが周囲に知られることはほぼありません。しかし、官報掲載をきっかけに闇金業者からの営業が来る場合があるため、注意しましょう。
官報への掲載を避けたい場合は、個人再生ではなく任意整理を検討する必要があります。
7−3.保証人に負担がかかる場合がある
個人再生を行うと、保証人がついている借金の場合、保証人がその減額分を肩代わりしなければなりません。
保証人は債務者に代わって借金の返済をする義務を負っているため、保証人には残りの債務を一括返済する義務が生じるためです。
たとえば、500万円の借金があり、個人再生によって100万円に減額された場合、その500万円に保証人がついていると、残りの400万円を保証人が返済する必要があります。
保証人が肩代わりした額と債務者本人が返済する額を合わせて、借金全額を完済するのです。保証人に大きな負担をかけるため、事前に十分な説明と理解を得るのが重要です。
個人再生を検討する際、保証人がいる場合は、その人に負担をかける場合があることを理解しておきましょう。
8.自己破産と任意整理の違い
個人再生と自己破産・任意整理の違いは、個人再生では裁判手続きを通じて借金の元本を大幅に減額できます。自己破産では借金が全額免除される一方、任意整理では利息分のみが減額され、元金はそのまま返済する必要があります。また、自己破産は基本的に財産を処分する必要があるのに対して、任意整理や個人再生では処分を免れる場合もあります。
違いを比較すると以下の通りです。
個人再生 | 自己破産 | 任意整理 | |
債務の減額 | 借金の元本を5分の1程度に圧縮可能 | 原則すべての借金が免除になる | 利息のみカット 元金の減額は基本的に不可 |
対象業者 | すべての業者が対象 | 特定の業者のみ対象 | |
住宅を残せるか | 住宅ローン特則を利用すれば残せる | 処分される | 対象から外せば残せる |
ブラックリスト搭載期間 | 5〜10年 | 5〜10年 | 約5年 |
官報への掲載 | 掲載される | 掲載される | 掲載されない |
保証人への影響 | 影響が出る | 影響が出る | 対象外にすれば影響が出ない |
制限される職業・資格 | ある | ある | ない |
個人再生では、たとえば500万円の借金を100万円まで減らすことが可能ですが、保証人に負担がかかる場合があります。一方、自己破産は借金を全額免除してもらう手続きですが、財産を処分しなければならず、保証人にも大きな影響を与えます。
これに対して、任意整理は利息分が減額されるものの、元金は全額返済する必要があり、保証人に影響が及ばないケースも多くあります。
これらの違いを理解し、自分に最適な手続きを選びましょう。
9.実際の個人再生の流れ
個人再生の手続きは、弁護士への相談から裁判所の許可が下りるまでに半年から1年以上かかるため、時間がかかる手続きです。
任意整理と比較しても、手続きに時間がかかる点を理解しておきましょう。
個人再生は、債務の大幅な減額を伴う複雑な手続きであり、弁護士のサポートを受けて、裁判所を通じた正式な許可を得る必要があります。そのため、準備から手続き完了までに多くの時間がかかります。
以下で、詳しく説明します。
9−1.弁護士に相談・受任
個人再生を検討する際は、まずは弁護士に相談し必要書類を準備します。
弁護士は、依頼者の債務状況を詳細に把握し、個人再生が最適な解決方法かどうかを診断します。
ヒアリングの項目は、以下の通りです。
債務状況 | 借入先、借入額、返済額、借入期間など |
資産状況 | 住宅、保険、車、預貯金、退職金など |
生活状況 | 家計の収支、家族構成など |
個人再生が適していない場合は、任意整理や自己破産など他の債務整理方法も含めて、弁護士と一緒に最適な解決策を検討します。
また、個人再生を進める場合、資産状況に応じて必要書類を準備します。
以下はその一例です。
- 住民票
- 戸籍謄本
- 収入に関する資料
- 不動産に関する資料
- 保険に関する資料
- 車に関する資料
- 口座取引の資料(通帳、取引明細など)
- 退職金に関する資料
弁護士は依頼者の状況に基づいて最適な債務整理方法を提案し、個人再生が適している場合は、必要書類を集めて申立ての準備を進めます。
書類の準備が完了すれば、2〜3週間で申立てが完了します。
9−2.裁判所へ申請
弁護士は、個人再生の手続きを進めるために申立書を作成し裁判所に提出します。
個人再生の申立書は、裁判所が手続きを進める上で必須の書類です。弁護士は依頼者から提出された資料や情報をもとに申立書を作成します。
申立てから約2週間後に、個人再生の開始決定が裁判所から出され、手続きが正式に進行します。
9−3.個人再生手続開始決定
裁判所に個人再生の申立てが受け付けられると、個人再生手続の開始決定が下されます。
再生計画に基づいた返済が可能かどうかを判断するために、弁済見込額の積立てが指示されます。
裁判所は、民事再生法222条および244条に基づいて個人再生の申立てが適正であるかどうかを確認し、再生手続開始の決定を行います。
裁判所は依頼者に対し今後の返済能力を確認するために、再生計画に基づく弁済見込額の積立てを求めます。
個人再生手続の開始決定が下されると、裁判所は返済計画の実行可能性を確認するために、弁済見込額の積立てを指示します。
9−4.債務者財産の調査
個人再生手続の開始決定後に、財産目録と報告書を裁判所に提出する必要があります。
財産目録は、民事再生法124条2項に基づき、再生債務者が所有する財産を詳細に記載した書類です。また、報告書は民事再生法125条1項に基づき、再生手続に必要な情報を報告するものです。
個人再生手続を進めるには、再生債務者が財産目録と報告書を速やかに提出することが求められます。裁判所が正確に債務者の財産状況を把握し、手続きを進められます。
9−5.再生債権の届出
個人再生手続の開始決定後、4週間の債権届出期間が設けられます。この期間内に債権者は、利息や遅延損害金を含む債権額を裁判所に届け出ます。
再生債権者は、債権届出期間内に債権額を裁判所に申告すると、再生手続に正式に参加できます。この届出には、開始決定日前日までの利息や遅延損害金も含める必要があります。
債権者が再生手続に参加するためには、必ず4週間の届出期間内に債権額を裁判所に提出します。
9−6.異議申述期間
債権届出期間の終了から3日後、異議申述期間が始まります。
再生債務者や債権者は届出された債権額が正しいかどうかを確認し、異議があれば申し出ることができます。
異議申述期間は2週間あり、届出された債権額や担保不足額に対して異議を述べるための重要な期間です。再生債務者と債権者の双方に、提出された債権額が正しいかどうかを確認する権利があります。
民事再生法226条および244条に基づき、再生債務者や届出再生債権者は、書面で債権額や担保不足額に異議を述べられます。もし債権額が正しくない場合、この期間内に異議を申し立てなければなりません。
異議申述期間内に異議が出された場合、債権額や担保不足額の確認が行われます。
9−7.再生計画案の提出
異議申述期間が終了してから1週間以内に、再生計画案(返済計画)を作成し、裁判所に提出しなければなりません。
1週間の期限を過ぎると個人再生が進められなくなるため、厳守が必要です。
再生計画案は、原則として3年〜5年間で債務を返済する内容にします。また、最低弁済基準や清算価値保障原則を満たし、債権者が納得できる内容にする必要があります。
給与所得者等再生手続の場合は、さらに可処分所得2年分の額も考慮しなければいけません。
再生計画案の提出は個人再生の重要なステップであり、厳しい期限が設けられています。
債権者に納得してもらえる計画を作成し、期限内に裁判所へ提出することが不可欠です。
9−8.【小規模個人再生のみ】決議回答期間
裁判所に提出した再生計画案は各債権者に送付され、賛成か反対かの書面決議が行われます。この書面決議の回答期間は4週間です。
個人再生手続では、通常の民事再生手続と異なり、債権者が回答をしなかった場合でも再生計画案に賛成したものとみなされます。しかし、反対の意見が多数の場合、再生計画は認可されません。また、書面決議の期間中に債権者が積極的に反対した場合、多数の反対があれば再生計画は認可されない可能性があります。一方で、債権者が回答しなかった場合は、再生計画案に賛成と見なされ、手続きが進みます。
9−9.再生計画認可
裁判所は書面決議または意見聴取の結果を考慮し、再生計画の認可を決定します。
再生計画が認可されると個人再生手続は終結します。
再生計画の認可決定は官報に公告され、公告後2週間経過し確定し、個人再生手続は正式に終了です。通常、不認可事由がない限り、裁判所は再生計画を認可します。(民再法231条1項、241条1項)
再生計画が裁判所によって認可され、確定すると個人再生手続は終了します。(民再法233条、244条)
10.個人再生に関するよくある質問
ここでは、個人再生に関するよくある質問について4つ回答します。
10−1.個人再生は会社や家族にバレる?
個人再生を行っても、会社や家族に知られる可能性は低いです。
官報には載りますが、毎日確認するのは仕事上必要な人に限られます。また、個人再生によって資格や職業に制限がかかることもないため、資格団体が定期的に官報を確認することもないでしょう。
たとえば、一般の会社員であれば、官報に個人再生の情報が掲載されても、会社や家族に知られることはまずありません。官報は通常、税務署や金融機関、特定の法律事務所などが確認するものであるため、一般の人が定期的にチェックすることは極めて稀です。
一般の会社勤めの方が個人再生を行ったとしても、官報を通じて会社や家族に知られる可能性は低いと言えるでしょう。
10−2.保証人は必要?
個人再生に保証人は必要とされません。
しかし、すでにしている債務に保証人がついている場合、前述した通り保証人に影響が出る可能性があります。
小規模個人再生が認められると、債務者の借金は財産額か、総債務額の5分の1または100万円のいずれか高い金額まで減額されます。しかし、保証債務は減額されないため、債権者は保証人に対して借金の返済を求めるのが一般的です。
保証人が債務者の親族や友人である場合、個人再生手続きが進むと、債権者から保証人に返済を求める連絡が入る可能性が高いです。無用なトラブルを避けるためにも事前に説明しておきましょう。
10−3.ギャンブルで作った借金はどうなりますか?
ギャンブルによる借金は、個人再生で手続きをできる場合があります。
個人再生は、裁判所に再生計画を提出し「民事再生法174条」に定められた不認可事由に該当しなければ手続きが進められるからです。
不認可となる具体例として、再生計画が法律に違反しており修正ができない場合や、計画を実行できる見込みがない場合などがあります。また、再生計画が不正な方法で決議されたり、債権者の利益を大きく損なう場合も不認可となります。
ギャンブルによる借金でも、個人再生を利用できる可能性は十分にあると言えるでしょう。
まずは弁護士に相談してみましょう。
10−4.クレジットカードは作れますか?
個人再生手続きを行うと、利用中の借入先はすべて手続きの対象となり、今後利用できなくなります。新たな借入れやクレジットカードの申し込みもできません。
個人再生の手続きを進めると、弁護士による返済停止や手続きが信用情報機関に「事故情報」として登録されるからです。
事故情報が登録されている間は、クレジットカードの申し込みや借入れの審査に通らなくなります。個人再生を行っている間や、その後の5〜10年間は、信用情報に事故情報が残るため、審査に通るのが難しくなります。
個人再生を行うと、すべての借入先が対象となるため、その間は新たな借入れやクレジットカードの申し込みが難しくなります。
11.個人再生を弁護士に依頼するタイミング
個人再生を含む債務整理は、弁護士に法律相談をすることから始まります。
弁護士に依頼をすると、返済を止められ督促を受けなくなるため、安心して申立ての準備を進められます。
個人再生は、全額支払うべき債務を減額する手続きであり、厳格な裁判所の手続きが必要です。申立書の作成や必要書類の準備には時間がかかり、弁護士に依頼した場合でも1〜2ヶ月ほどの準備期間が必要です。
個人再生を進めるためには、まず弁護士に法律相談を行い、依頼をして手続きの準備を始めることが重要です。弁護士のサポートにより、安心して個人再生の申立てができます。
12.個人再生を弁護士に依頼するメリット
個人再生は複雑な手続きが多いため、弁護士に依頼して任せるのがおすすめです。
ここでは弁護士に依頼するメリットをご紹介します。
12−1.債権者からの取り立てが止まる
個人再生を弁護士に依頼すると、債権者からの取り立てが止まります。
弁護士が各債権者に「受任通知」を送付するためです。貸金業法は、弁護士や認定司法書士から受任通知が届いた後、債務者に対して請求や取り立てを行ってはいけないと定められています。
自分で手続きを行う場合、裁判所に申し立てて「開始決定」が出るまで取り立ては止まりません。そのため、督促の電話や通知に耐えながら準備を進める必要がありますが、弁護士に依頼すればすぐに取り立てが止まり、精神的な負担が軽減されます。
弁護士に依頼すると、取り立てが早期に止まり、督促や返済のプレッシャーから解放されます。精神的なストレスが大きく減るため、依頼を検討する価値があるでしょう。
12−2.複雑な手続き全般を任せることができる
個人再生の手続きは複雑で手間がかかりますが、弁護士に依頼すると負担を軽減できます。
個人再生は、細かなルールが法律で定められているためです。また、書類の準備や作成に不備があると手続きが認められない場合もあります。
弁護士に依頼すれば、書類の準備や作成、裁判の代理人としての対応など、全て任せることが可能です。また、債権者とのやり取りも弁護士が代行するため、精神的な負担も軽減されるでしょう。
弁護士に依頼すると、複雑な手続きをスムーズに進められるでしょう。債権者とのやり取りや裁判対応も全て任せられるため、精神的・時間的な負担の軽減ができます。
12−3.適切な解決策を提案してくれる
債務整理は、個人再生だけでなく任意整理や自己破産などの方法があり、弁護士に依頼すると最適な解決策を見つけられます。弁護士は債務整理全般に関する知識を持っているため、依頼者にとって最も効果的な方法を提案してくれるからです。
弁護士は、依頼者の状況に応じて任意整理や自己破産、小規模個人再生など、最善の解決方法を提示し、手続きをスムーズに進められるようサポートします。
弁護士に依頼すれば、依頼者の状況に最も合った債務整理の方法を提案してもらえるため、最適な解決策を見つけることが可能です。
13.個人再生の弁護士費用は?
弁護士に依頼する場合、相談料や着手金、報酬金などの費用がかかります。
費用は依頼内容や弁護士事務所によって異なるため、事前に相場を理解しておくと安心です。
一般的にかかる費用は以下の通りです。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- その他実費
- 手数料
相場 | |
相談料 (弁護士毎に異なる) |
10分2,000円、20分4,000円、30分6,000円 |
着手金 | 案件による |
報酬金 | 300万以下で約16%、3億円超の場合で約4%程度です。 依頼が解決した場合、売却額や得た利益に応じて変動する。 |
その他費用 | 交通費・郵便代、日当(半日約3万〜5万、1日約5万〜10万)など |
手数料 | 書類作成や登記の手数料など |
カケコムでは、1回あたりの相談時間10〜30分が多いです。
護士費用はさまざまな種類があるため、事前に費用の詳細を確認しましょう。
依頼内容に応じて、見積もりを取ると安心して進められます。
まとめ
個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、残りの借金を3年から5年で分割して返済する手続きです。大幅な減額が可能なため、債務者にとって大きな救済策となります。
しかし、メリットがある一方で、条件や保証人への影響などのデメリットもあるため、慎重に判断が必要です。
スムーズに手続きを進めるためには、早めに弁護士に相談し、法律に基づいたアドバイスを受けましょう。弁護士に相談することで、精神的な負担が軽減され今後の生活再建に向けた計画を立てられます。
借金問題は一人で抱え込まず、まず弁護士に相談することが解決の第一歩です。債務整理に悩んだらまずは相談から始めてみましょう。