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著作権侵害とは?【被害者・加害者・トラブルを防ぎたい方】~概要やそのリスク、対処法を解説

【この記事の法律監修】  
三輪 貴幸弁護士(埼玉弁護士会) 
樟葉法律事務所

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1. はじめに

著作権侵害は、私たちの身近で起こり得る問題です。インターネットの普及に伴い、画像、音楽、動画などのコンテンツが簡単に複製・配布できるようになった一方で、著作権に関する知識が十分でないことにより、様々なトラブルが発生しています。

本記事では、どのような場合に著作権侵害となるのか、具体的な事例を交えながら解説していきます。

本記事を通して、著作権侵害について理解を深め、対策を講じるための参考にしていただければ幸いです。

2. 著作権法について

ここでは、はじめに著作権法の制度目的を確認したうえで、

  • 著作物とはなにか
  • だれが著作権者となるか
  • 著作者の権利について
  • 著作権侵害の要件

について解説します。

2-1.著作権法の制度目的

著作権法(以下、「法」といいます)では、その制度目的について

(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

と規定しています。
つまり、著作権法は創作者の権利の保護を図りつつ、権利の制限によって公正な利用を確保しながら、文化の発展に寄与することを目的とするものといえます。

2-2.「著作物」とはなにか

著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもののことです。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

著作物の例示については、法10条第1項に規定されています。

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

具体的にどのようなものが著作物にあたるか、その該当性を判断するために著作物の例示が参考となりますが、これらはあくまでも例示であるため、著作物はこれだけに限りません。

そのため、著作物にあたるかの判断は、著作物の要件を満たしているかで判断していくことになります。

2-3.だれが「著作者」になるか

著作者とは、著作物を創作する者のことです。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

著作物を創作した時点で、著作者は何ら手続を取らなくても、 自動的に「著作権」(及び「著作者人格権」)を取得し、「著作権者」 となります。(法第17条第1項、第2項)
引用:令和5年度 著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課 12頁

2-4.著作者の権利について

著作者の権利は、著作者人格権と著作権の2つで構成されています。

著作権人格権には、

  • 公表権(法第18条)
  • 氏名表示権(法第19条)
  • 同一性保持権(法第20条)

があります。

著作権は以下のように著作物の利用形態ごとに権利が定められています。

  • 複製権(法第21条)
  • 上演権・演奏権(法第22条)
  • 上映権(法第22の2条)
  • 公衆送信権等(法第23条)
  • 口述権(法第24条)
  • 展示権(法第25条)
  • 頒布権(法第26条)
  • 譲渡権(法第26の2条)
  • 貸与権(法第26の3条)
  • 翻訳権・翻案権等(法第27条)
  • 二次的著作物の利用権に関する原著作者の権利(法第28条)

2-5.著作権侵害の要件

著作物(権)の利用行為を行う場合には、原則として著作権者から許諾を得ることが必要になります。
これに反し、他人の著作物について、権利者から許諾を得ず、公益性の高い利用等の一定の場合に著作物の利用を認めるという権利制限規定にも該当しないのに利用した場合には、著作権侵害となり得ます。

そして、著作権侵害の要件として、裁判例は、

①「後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること」(類似性)
②「既存の著作物に依拠して複製等がされたこと」(依拠性)
の両方を満たすことが必要としています。
引用:令和5年度 著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課 16頁

2-5-1.著作権侵害の要件①の類似性について

類似性があるといえるためには、他人の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」が必要となります。
引用:令和5年度 著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課 17頁

2-5-2.著作権侵害の要件②の依拠性について

「依拠」とは、「既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いること」をいいます。
既存の著作物を知らず、偶然に一致したに過ぎない、「独自創作」などの場合には、依拠性はないと考えられています。
引用:令和5年度 著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課 19頁

3. 実際の著作権侵害事例について

漫画村事件(福岡地判令和3年6月2日)
被告人が、A、B、Cと共謀し、 法定の除外事由がなく、かつ著作権者の許諾を受けないで、B方において、パーソ ナルコンピュータを使用し、インターネットを介して、Dが著作権を有する著作物である漫画の画像デー タを、インターネットに接続された氏名不詳者が管理する場所不詳に設置され たサーバコンピュータの記録装置に記録保存して、複数日にわたり、インターネットを利用する不特定多数の者に自動的に公衆送信し得る状態にして前記Dの著作権を侵害した事案。被告人には懲役3年及び罰金1,000万円と追徴金約6,200万円とする判決が下されました。

4. 著作権侵害のトレンドとリスク

インターネットの普及に伴い情報やコンテンツの流通が飛躍的に向上しましたが、それに伴い著作権侵害のリスクが高まっています。
インターネットは誰もが簡単に情報にアクセスでき共有することも可能ですが、その便利さゆえに他人の著作物を無断で利用するケースが増えてきています。

例えば、SNSで他人のコンテンツを無断で共有することや、Youtubeで著作権のある音楽や映像を使用することは、著作権侵害に該当する可能性があるといえます。

また、最近では人工知能(AI)の新たな技術が生み出されたことにより、生成AIと著作権という新たなリスクが生じています。
海外の事例ではありますが、生成AIと著作権との関係で以下の訴訟が提起されています。

・アメリカの新聞大手、ニューヨーク・タイムズが、記事が許可なくAIの学習用に使われ、著作権を侵害されたとして、生成AIのChatGPTを開発したアメリカのベンチャー企業、オープンAIと、提携するIT大手のマイクロソフトを提訴
引用:米 NYタイムズ 著作権侵害でオープンAIとマイクロソフトを提訴(NHK)

5. 知らずに著作権侵害してしまうケースとそのリスク

以下のようなケースでは、意図せず著作権侵害を犯してしまうことがあります。

  • インターネット上で見つけた画像を無断で使用する
  • 著作権のある音楽を動画のBGMとして使用する
  • 無断で二次利用を行う

著作物については、それを利用するためには著作者から許諾を得ることが原則必要です。そのため、他人の著作物を利用する場合には、許諾が必要かどうかを確認することが重要となります。

・他人の文章を許可なく引用する
引用は他人の著作物を利用するのに許諾が要らなくなる例外ですが、これについて、著作権法では以下のように規定されています。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国等の周知目的資料は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

正しく引用するためには

  • 著作物が公表されていること
  • 公正な慣行に合致するものであること
  • 引用の目的上正当な範囲内で行なわれること

の要件を満たすことが必要になります。

さらに、出所を明示することが必要となります(法第48条第1項第1号)。具体的には、著作物名や、著作者名(同条第2項)などを明示しなければなりません。

(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項、第三十七条第一項、第四十一条の二第一項、第四十二条、第四十二条の二第一項又は第四十七条第一項の規定により著作物を複製する場合
(省略)
2 前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。
引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

6. メディアごとの著作権侵害のリスク

著作権侵害のリスクは、利用するメディアにより異なります。そのため、メディアごとに著作権侵害に該当する事例から、どのような行為が著作権侵害行為にあたるか把握しておくことが重要です。

6-1.画像の場合

Xが、YがXの著作物である写真の画像データを一部改変の上、自己のプロフィール画像等としてアップロードした行為がXの著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害行為に当たると主張して、Yに対し、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求をした事案。

裁判所は、Yの行為が,Xの有する本件写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害行為に当たることを認め、 その侵害について、Yには少なくとも過失があったとして、Yは、Xに対し、民法709条に基づき、Yの行為によりXが被った損害を賠償する責任を負うとしました。

6-2.音楽の場合

「どこまでも行こう」に係る楽曲(以下「甲曲」という。)の作曲者である控訴人Aびその著作権者である控訴人金井音楽出版が、「記念樹」に係る楽曲(以下「乙曲」という。)の作曲者である被控訴人に対し、乙曲は甲曲を編曲したものであると主張して、控訴人Aおいて著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害による損害賠償を、控訴人金井音楽出版において著作権(編曲権)侵害による損害賠償をそれぞれ求め、他方、被控訴人が、控訴人Aに対し、反訴請求として、乙曲についての著作者人格権を有することの確認を求めた事案。

裁判所は、表現上の本質的な特徴の同一性について、乙曲は、その一部に甲曲にはない新たな創作的な表現を含むものではあるが、旋律の相当部分は実質的に同一といい得るものである上、旋律全体の組立てに係る構成においても酷似しており、旋律の相違部分や和声その他の諸要素を総合的に検討しても、甲曲の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しているものであって、乙曲に接する者が甲曲の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものというべきとしました。

また、依拠性について、乙曲は、既存の楽曲である甲曲に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又 は感情を創作的に表現することにより創作されたものであり、これに接する者が甲曲の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものというべきである。として、被控訴人が乙曲を作曲した行為は、甲曲を原曲とする著作権法上の編曲にほかならず、その編曲権を有する控訴人金井音楽出版の許諾のないことが明らかな本件においては、被控訴人の上記行為は、同控訴人の編曲権を侵害するものであるとしました。

また、被控訴人が控訴人Aの意に反して甲曲を改変した乙曲を作曲した行為は、同控訴人の同一性保持権を侵害するものであり、さらに、同控訴人が甲曲の公衆への提供又は提示に際しその実名を著作者名として表示していることは前示のとおりであるところ、被控訴人は、乙曲を甲曲の二次的著作物でない自らの創作に係 る作品として公表することにより、同控訴人の実名を原著作物の著作者名として表示することなく、これを公衆に提供又は提示させているものであるから(乙曲につ いて同控訴人の実名を原著作物の著作者名として表示することなく公衆への提供又 は提示がされていることは当事者間に争いがない。)、この被控訴人の行為は、同控訴人の氏名表示権を侵害するものであるとして、上記著作権及び著作者人格権の侵害について、被控訴人に故意又は過失のあったことは、これまでの認定事実に照らして明らかというべきであるから、被控訴人は、控訴人らに対する損害賠償義務を免れないとしました。

引用:事件番号:平成12(ネ)1516
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/656/011656_hanrei.pdf#page=1
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/656/011656_hanrei.pdf#page=2
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/656/011656_hanrei.pdf#page=20
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/656/011656_hanrei.pdf#page=23

6-3.動画の場合

原告らが、被告らほか 1 名は原告らの著作物である映画の著作物を編集して作成した動画をインターネット上の動画投稿サイト「YouTube」に投稿し、これによって原告らの著作権(翻案権及び公衆送信権)を侵害したと主張して、被告らに対し、民法 709 条及び 719条 1 項前段(損害額につき、著作権法114 条 3 項)に基づき、損害賠償請求をした事案。

裁判所は、被告らは、故意により、いずれも映画の著作物である本件各映画作品について原告らがそれぞれ有する著作権(翻案権及び公衆送信権)を侵害したと認めました。

6-4.ソフトウェア(プログラム)の場合

競艇の勝舟投票券(以下「舟券」という。)を自動的に購入する等の機能を有するソフトウェア(以下「原告ソフトウェア」という。)に係るプログラム(以下「原告プログラム」という。)について著作権を共有する原告らが、被告らが制作し、販売していた同様の機能を有するソフトウェア(以下「被告ソフト ウェア」という。)に係るプログラム(以下「被告プログラム」という。)は、原告プログラムを複製又は翻案したものであり、被告らは被告ソフトウェアを販売し て利益を得たと主張して,著作権法114条2項に基づき、被告ら各自に対し、著作権侵害の共同不法行為による損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案。

裁判所は、原告プログラムの著作物性を認めました。
その上で、被告プログラムは、原告プログラムを複製又は翻案したものかについては、①原告プログラムの機能をそのまま利用した部分において、被告プログラムは、原告プログラムを複製したものとしました。

また、②被告プログラムは、期待値の機能を追加した以外の部分については、原告プログラムを複製したものをそのまま利用しているとされるのであり、全体として、被告プログラムは、 原告プログラムの本質的特徴を直接感得し得るものであるから、少なくとも翻案にあたることは明らかというべきであり、被告プログラムの作成は、原告プログラムについての原告らの著作権を侵害するものとしました。

引用:事件番号:平成30(ワ)5948
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/085/090085_hanrei.pdf#page=2
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/085/090085_hanrei.pdf#page=15
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/085/090085_hanrei.pdf#page=16
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/085/090085_hanrei.pdf#page=17

7. 著作権侵害による具体的な損害額や損害賠償の相場

7-1.著作権侵害による具体的な損害額

著作権侵害による被害額は一律に定められているわけではなく、侵害の程度や規模など事案によって異なります。

著作権者により、その損害額を立証することになりますが、侵害者が分からないことも多く、その立証が困難です。そのため、著作権法では算定規定を設け(法第114条)、著作権者から侵害者への損害賠償請求を容易にしています。

ただし、侵害者が著作権を侵害したことについて故意・過失があることについては著作権者が立証する必要があります。

著作権侵害に対して損害賠償請求をする場合には、著作権者は民事訴訟を提起し、侵害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)をすることになります。
不法行為による損害賠償請求の時効は、被害者である著作権者が、著作権侵害の損害及び加害者を知った時から3年または著作権侵害の時から20年経過することで、不法行為による損害賠償ができなくなります(同第724条)。

7-2.損害賠償の相場

損害賠償の相場は、侵害された著作物の種類や侵害の程度によって異なるため、一律に決められるものではありません。
譲渡数量に基づく推定(法第114条第1項第1号)を例に、損害額の算出方法を確認してみましょう。

(損害の額の推定等)
第百十四条 著作権者等が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(以下この項において「侵害者」という。)に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、侵害者がその侵害の行為によつて作成された物(第一号において「侵害作成物」という。)を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。同号において「侵害組成公衆送信」という。)を行つたときは、次の各号に掲げる額の合計額を、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。
一 譲渡等数量(侵害者が譲渡した侵害作成物及び侵害者が行つた侵害組成公衆送信を公衆が受信して作成した著作物又は実演等の複製物(以下この号において「侵害受信複製物」という。)の数量をいう。次号において同じ。)のうち販売等相応数量(当該著作権者等が当該侵害作成物又は当該侵害受信複製物を販売するとした場合にその販売のために必要な行為を行う能力に応じた数量をいう。同号において同じ。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額
引用:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

例えば、侵害者が著作物を無断複製の上100個販売し、著作権者の単位数量あたりの利益が1,000円だった場合には、100×1,000=100,000円の損害が、著作権者に発生したと推定されることになります。そして、著作権者の販売能力が推定された損害額を下回る等の事情(例えば、著作権者には50個販売する能力しかないこと)の証明があった場合には、それに相当する金額に減額されることになります。

8. 著作権侵害を防ぐための予防策

著作権侵害を防ぐためには、まずは自分自身で著作権に関するルールを確認することが必要となりますが、自身のみで著作権侵害にあたるか否かの判断ができない場合には、事前に弁護士に相談されることをおすすめします。

著作物をSNSやYoutubeなどで公開・配信予定の方は、著作権に触れるか不安であれば事前に弁護士に相談されるといいでしょう。基本的には、他人のコンテンツを無断で借用する行為は著作権の侵害に該当します。

自分の作品を公開する際に他人の著作物(音楽・映像・画像など)を使用する予定がある場合、適切な利用方法や契約内容を弁護士が確認し、トラブルを防止することができます。
他にも、契約書の作成や他者からのクレームに対する対応など、弁護士のアドバイスで安心してコンテンツの制作・配信ができるようリスク管理についてのアドバイスをうけることもできます。

弁護士に相談することで、著作権侵害のリスクが大幅に低減し、安心して著作物を利用・公開することができるようになるため、弁護士のサポートを受けることは非常に有効です。

9. 著作権侵害発生後に必要な手続きと弁護士サポート

著作権侵害が発生した場合には、被害者または加害者は弁護士に早期に相談されることをおすすめします。

9-1.被害者の場合

著作権を侵害された場合には、被害拡大を防止したり、損害賠償請求ができる可能性があるため、弁護士に早めに相談をすることが必要です。

例えば、自分のイラストや写真が無断でウェブサイトやSNSに使われている場合、弁護士が侵害の判断を行い、削除請求や損害賠償請求のサポートを行ってもらうことができます。
他にも、著作物の盗用や無断複製に迅速に対処し、権利回復や被害軽減に向けた適切な手続きを行ってもらえます。

9-2.加害者の場合

他者の著作権を引用・利用したり、二次利用する際に著作権侵害のリスクがある場合には、トラブルを未然に防ぐために弁護士に相談することをおすすめします。
例えば、ネットで見つけた画像をブログで使いたいが著作権が不明な場合、弁護士が著作権の範囲や利用の可否を確認し、問題がないようにアドバイスを行います。
他にも、著作権のある楽曲や映像を利用してビジネスを展開する際に、ライセンス契約の内容を弁護士が 確認し、リスクのない利用ができるようサポートします。

9-3.弁護士費用について

弁護士費用については、法律相談をする場合と正式に弁護を依頼する場合とで費用が異なってきます。法律相談の場合は、1時間で5,000〜1万円のケースが多いようです。

依頼の内容や事務所ごとに料金は異なりますので、法律相談をされる際に、正式に依頼した場合には総額でいくらぐらいかかるのか事前に確認することが必要になります。

10. 著作権侵害が起きた際の民事・刑事手続きの流れ

10-1.民事手続きの流れ

著作権侵害が発生した場合には、民事手続きにより被害者である著作権者を救済することができます。日本の民事裁判では、権利者は著作権侵害行為に対し、以下の権利を主張することができます。

  • 侵害行為等の差止め請求(法第112条)
  • 損害賠償の請求(民法第709条、同第719条、法第114条)
  • 不当利得の返還請求(民法第703条、同第704条)
  • 名誉回復のための措置(法第115条)

10-2.刑事手続きの流れ

著作権侵害は犯罪にあたります。

他人の著作物を利用する行為は、客観的には「了解を得ているかどうか」が不明であり、仮に了解を得ていないとしても、権利者が黙認している場合は問題とならないため、原則として権利者による「告訴」が必要(親告罪)とされています(第123 条第1項)。 ただし、第 119 条第 1 項の著作権等侵害罪のうち一定の要件に該当する場合に限り、 著作権者等の告訴がなくとも公訴を提起することができ(非親告罪)ます(第123 条第2項)。
引用:著作権テキスト令和6年度版 99頁

親告罪にあたる場合には、被害者である著作権者が告訴することで捜査が開始され、侵害者は逮捕、起訴、裁判を経て処罰されることになります。

著作権侵害に対する罰則について、個人の場合には、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金に処する(懲役と罰金の併科も可能)とされています。

法人の場合、その業務に関して侵害行為を行ったときには、実行行為者の処罰に加えて、業務主体である法人にも罰金刑(原則として3億円以下の罰金)が科されるとする両罰規定がおかれています(法第124条)。

著作権侵害を犯した場合、一定の期間が経過すれば公訴時効により、罪に問われなくなります。
時効は、犯罪行為が終わった時から進行し(刑事訴訟法第253条第1項)、著作権侵害の時効は5年となります(同法第250条第2項第5号)。

11. まとめ

著作権侵害に直面した場合、被害者は速やかに証拠を収集し、弁護士に相談することが重要です。一方、加害者においても弁護士に相談し、適切な対応を取ることで状況を改善することができます。

弁護士への相談は、被害者と加害者、または事前にトラブルを回避したい者にとって有益であり、問題解決のための重要な手段となるでしょう。

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