交通事故の診断書【被害者・加害者側】~作成・提出・費用に関する疑問を解消~
【この記事の法律監修】
杉浦 正規弁護士(愛知県弁護士会)
西山・下出法律事務所
交通事故の診断書は、被害者の怪我の程度や治療経過を証明する重要な書類です。本記事では、診断書の作成方法、費用、提出先、期限、そして被害者や加害者の対応に至るまで、幅広く解説します。
診断書が保険金や賠償金にどのような影響があるのか、適切な対応方法、さらには弁護士への相談が必要なケースまで、診断書に関する疑問を包括的に説明します。
この記事を読むことで、被害者は適切な診断書の取得方法や提出手続きを理解し、正当な補償を受けるための準備が整います。一方、加害者は、不当な請求から自身を守ることができるでしょう。
交通事故に遭遇した際の不安や疑問を軽減し、適切な行動をとるためのガイドとして役立ててください。
1. 交通事故の診断書の重要性と役割
交通事故の診断書は、被害者が適切な補償を受けるための重要な書類です。医師が作成するこの文書には、事故による怪我の状態や治療の見通しが記載され、保険会社との交渉や裁判の証拠として使用されます。
被害者の権利を守るツールとして、怪我の程度や治療の必要性を医学的に示し、補償の根拠となります。警察への事故報告に使用され、後遺障害が残った場合は障害等級の認定にも関わるため、内容の確認は慎重に行うことが大切です。
2. 交通事故の被害者の診断書
交通事故の被害者にとって、診断書は損害賠償請求の基礎となる重要な書類です。本章では、診断書の取得方法・作成費用・記載事項・提出先・修正手続きなど、被害者が知っておくべき診断書に関する全ての情報を詳しく解説します。
また、整骨院での治療や労災絡みの事故などについても触れ、被害者が直面する可能性のあるさまざまな状況に対応できるよう、包括的な情報を提供します。
2-1 診断書の取得と作成
交通事故の被害者にとって、適切な診断書の取得と作成は、公平な補償を受けるための重要なステップです。この項では、診断書の作成方法や取得場所・費用負担・作成にかかる期間と緊急時の対応について詳しく解説します。
また、診断書の種類や目的に応じた取得方法・費用の負担者・作成期間の目安など、実践的な知識を提供し、スムーズな手続きをサポートします。診断書作成の流れや注意点を理解することで、自身の権利を守りましょう。
2-1-1 診断書の作成方法と取得場所
診断書は、怪我の治療を行った医療機関で作成されます。大きな病院には専用の窓口があることもあります。また、整形外科や脳神経外科など、専門医による診断が必要な場合は、適切な医療機関を選ぶことが重要です。
診断書の作成を依頼する際は、警察や保険会社などの提出先・症状・経過などを医師に明確に伝えることが大切です。
2-1-2 診断書作成の費用と負担者
診断書の作成費用は医療機関や診断書の内容によって異なりますが、一般的に2,000円~1万円です。
被害者が立て替える形になりますが、最終的には損害賠償の対象となり、加害者側の保険会社から補償を受けられる可能性が高いです。また、保険会社が直接医療機関に支払うケースもあるため、事前に確認しましょう。
2-1-3 診断書作成の期間と緊急時の対応
診断書の作成にかかる期間は、医療機関の状況や診断書の内容により異なります。簡単な診断書は即日または翌日、詳細な診断書は1~3週間かかることがあります。
緊急に必要な場合は、その旨を医療機関に伝え、簡易な診断書を即日発行してもらい、後日、詳細な診断書を取得しましょう。
また、救急搬送された場合も、警察や保険会社への診断書の提出は必要になりますが、重大な事故の場合、警察や保険会社が病院に出向くこともあります。
2-2 正しい診断書の書き方と記載事項
交通事故の診断書はそれぞれ目的や記載事項や形式が異なります。被害者は、自身の症状や日常生活への影響を正確に医師に伝えることが重要です。
病院によってフォーマットが異なる場合がありますが、記載内容が合致していれば問題はありません。医師には提出先を明確に伝えてください。また、診断書の記載内容に誤りがないか確認し、不明な点があれば医師に質問しましょう。
2-2-1 簡易な診断書(初期診断書)
事故直後の初期治療について書かれています。警察に提出するもので、以下の項目が記載されます。
- 事故日と初診日
- 傷病名
- 治療見込み期間
- 通院や入院の必要性
職場よっては、報告のために提出する場合もありますので、事前に確認しましょう。
2-2-2 詳細な診断書(治療経過診断書)
提出先は保険会社や職場などで、記載事項は以下です。
- 傷病名と症状
- 治療内容と経過
- 他覚症状と検査結果
- 今後の治療方針と予後の見通し
- 日常生活や仕事への影響
- 通院や入院期間など
様式が異なる場合があるため、事前に提出先に確認しましょう。
2-2-3 後遺障害認定の診断書
後遺障害認定の診断書は、後遺障害等級の認定申請に使用され、治療後に症状が固定してから使用します。以下の記載事項を確認しましょう。
- 症状固定日
- 傷病名
- 自覚症状の詳細
- 他覚症状と検査結果
- 日常生活動作(ADL)への影響
- 既往症や既存障害の有無とその影響
- 将来の回復可能性についての見解
特に後遺障害診断書は、後遺障害等級の認定、保険金額や慰謝料に大きな影響を与えるため、後遺障害を申請するにあたっては、交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
2-2-4 精神的ストレス・うつ病・PTSDなどの診断書
精神科や心療内科の専門医による診断書は、交通事故による精神的後遺症の認定や損害賠償請求(慰謝料請求)において非常に重要な証拠となります。
診断書には、次の内容を詳細かつ明確に記載する必要があります。
- 患者の基本情報
- 診断名(うつ病、PTSD、適応障害など)
- 初診日と診断日
- 事故の概要と日付
- 事故と精神症状との因果関係の説明
- 具体的な症状の詳細(睡眠障害、不安、フラッシュバックなど)
- 症状の程度と頻度
- 日常生活や仕事への影響の具体的な記述
- 治療内容(投薬、カウンセリングなど)
- 治療経過と症状の変化
- 他の原因(家庭環境、職場環境など)の有無に関する所見
- 患者の既往歴や事故前の精神状態
- 症状固定の判断(固定している場合はその日付)
- 今後の予後予測
- 客観的な評価指標の結果(精神状態評価尺度など)
- 後遺障害等級に関する医師の意見(該当する場合)
- 診断医師の氏名、専門分野、所属医療機関
この診断書は、後遺障害認定や損害賠償請求の際に重要な役割を果たします。特に症状固定後に作成され、長期的な影響が示されることが重要です。
精神科専門医の適切な診断と詳細な記載が不可欠で、交通事故直後に受診した救急科や整形外科などの医師と連携し、事故との因果関係を明確にする必要があります。
精神障害の後遺障害認定は証明が難しいため、弁護士への相談も検討しましょう。
2-3 交通事故の診断書の提出
診断書の提出は、補償を受けるための重要なプロセスです。提出先や必要な枚数を把握し、期限内に提出しましょう。
診断書は、正式書類として原本を提出しますが、提出前には必ず自分用のコピーを取ってください。提出のタイミングが補償額や交渉の進展に影響を与えることもあるため、慎重に対応しましょう。
2-3-1 診断書の提出先と必要枚数
診断書の提出先は、主に警察、保険会社、職場の3つです。通常、各提出先に1枚ずつ提出すれば十分ですが、状況によって異なるため、各提出先へ事前に確認することをおすすめします。
- 警察への提出
人身事故として事故を届け出る際に必要です。物損事故から人身事故への切り替えにも使用されます。
- 保険会社への提出
加害者側の保険会社には、治療費の補償を受けるために診断書を提出します。また、自分の人身傷害保険を利用する場合には、自身の保険会社にも診断書を提出することがあります。事前に保険会社に確認し、必要に応じて対応しましょう。
- 職場への提出
休職や傷病手当の申請に必要な場合があります。職場の規定により異なるため、あらかじめ確認が必要です。また、事故が労災に該当する場合も、職場を通じて手続きを行います。
なお、症状固定後に後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定のための「後遺障害診断書」という特別な書式の診断書が必要です。
後遺障害や労災に関する手続きは法的に複雑で、補償額が高額になる可能性があるため、弁護士に相談することが望ましいでしょう。
2-3-2 診断書の提出期限と遅れることのリスク
診断書の提出期限は提出先や状況により異なります。警察への提出は一般的に10日以内とされますが、法的基準はなく、できるだけ早く行うべきです。
保険会社への提出は、事故報告後速やかに行う必要がありますが、具体的な期限は各社で異なるため事前確認が必要です。
提出が遅れると、事故との因果関係の立証が難しくなり、補償額が受け取れなくなるリスクがあります。可能な限り早く提出しましょう。
ただし、怪我の症状が固定していない場合は、医師や保険会社と相談し適切なタイミングを見極めることも重要です。
2-4 診断書の修正と追加
診断書の内容に不備や記載漏れがある場合、修正や追加を行うことが必要です。これにより、事故による補償が正確に反映され、適切な補償を受けられる可能性が高まります。
症状の変化や新たな症状が現れた場合も、追加の診断書を取得して適切な対応を行うことが大切です。以下で詳しく解説します。
2-4-1 診断書の記載漏れや誤りの修正手続き
診断書に記載漏れや誤りに気づいたら、速やかに医療機関に連絡して修正を依頼しましょう。
診断書を作成した医師に相談し、修正の必要性を説明します。軽微な修正であれば、医師が手書きで修正し、訂正印を押すことで対応可能な場合もあります。内容に大幅な修正が必要な場合は、新たに診断書を作成し直す必要があります。
修正を依頼する際は、どの部分に問題があるのかを具体的に伝え、必要に応じて、追加の診察を受けることも検討します。
また、修正後の診断書は速やかに保険会社や関係機関に再提出し、内容の変更を報告してください。
2-4-2 診断書紛失や症状追加時の対応と再発行
診断書を紛失した場合は、医療機関にその旨を伝え、再発行してもらうことができます。紛失の場合の再発行費用は自己負担となります。
また、時間の経過とともに新たな症状が現れたり、既存の症状が悪化した場合は、追加の診断書を取得することが必要です。医師には、以前の診断書との関連性や、症状の進行についても明確に記載してもらうことが大切です。
追加の診断書を取得したら、保険会社などに速やかに提出し、状況の変化を報告します。症状が大幅に変わった場合は、新たな診断書として再発行してもらった方が良い場合もあります。適切な対応を行うことで、症状の変化に応じた補償を受けられる可能性が高まるでしょう。
2-5 特殊なケース:交通事故後の整骨院治療や労災の手続きなど
整骨院や接骨院では正式な診断書が取得できるか、労災の手続きはどうしたらよいかなど、以下では特別なケースについて詳しく説明します。
2-5-1 整骨院・接骨院の診断書は有効か?
整骨院や接骨院では医学的な診断書を発行できないため、これらの施設での治療後に正式な診断書を取得できません。
整骨院や接骨院で作成される施術証明書や治療証明書は、医師が作成した診断書と同一の扱いにはならず、保険会社や裁判所でも証明が不十分とされてしまうこともあります。。そのため、交通事故後は必ず医療機関で診察を受け、正式な診断書を取得することが重要です。
整骨院や接骨院での治療を希望する場合は、事前に医師に相談の上、医師の指示で通院し、その経過を医師と共有しましょう。
2-5-2 労災が絡む交通事故の手続き
通勤途中や業務中に交通事故が発生し、労災に該当する場合は、迅速な手続きが必要です。まず、事故発生後、速やかに雇用主への報告と警察への届出を行い、医療機関で初期診断書を取得します。
次に、被災者本人または雇用主が、労働基準監督署に必要書類を提出し、労災保険の申請手続きを開始します。労災指定医療機関での治療は窓口での支払いが不要です。
また、被災者本人が「第三者行為災害届」を労働基準監督署に提出し、併せて保険会社への事故報告も行います。
労災認定後は、必要に応じて追加申請を行いますが、すべての手続きには期限があるため、迅速な対応が重要です。手続きが複雑な場合は、弁護士のサポートを検討することも有効です。
2-5-3 医師に診断書を書いてもらえない場合の理由と対処法
診察した医師が診断書の交付を求められた場合、正当な理由がない限り拒否してはならない、とされています(医師法第19条第2項)。
にもかかわらず、医師が診断書を書いてくれない場合、以下の理由があります。対処法とともに表にまとめましたので参考にしてください。
医師が診断書を書いてくれない理由と対処法
理由 | 対処法 |
症状が固定していない | 医師の指示通り治療を続け、症状固定後に再度依頼 |
後遺障害なしと判断 | 自覚症状を具体的に伝え、現在の症状をそのまま記載してもらう。 |
整骨院のみ通院していた | 医療機関と併用して通院し、医師による経過観察を受ける。 |
転院直後で情報不足 | しばらく通院後に再度依頼または転院前の病院の協力を得る。 |
医師が争いごとを避けたい | 他の病院で診断書を書いてもらう、または弁護士に依頼する。 |
診断書の交付は医師の義務であり、粘り強く交渉することが重要です。必要に応じて弁護士や保険会社に相談することも検討しましょう。
2-6 診断書と保険金・賠償金・慰謝料
交通事故の診断書は、保険金や賠償金の算定に大きな影響を与えます。診断書は、治療費や慰謝料の基準だけでなく、後遺障害の認定にも関わるため、その作成と提出には特別な注意が必要です。
ここでは、診断書と保険金、賠償金、慰謝料について詳しく解説します。
2-6-1 診断書が与える影響
診断書の記載事項は治療費の算定基準となり、入通院期間や通院回数は保険金や慰謝料の計算に直接影響します。また、症状の程度や治療内容は休業損害の算定にも関わります。
適切な補償を受けるためには、医師と綿密にコミュニケーションを取り、正確かつ詳細な診断書の作成を依頼することが重要です。
ただし、事故直後の警察へ提出する簡易診断書の治療日数や全治期間は、必ずしも実際の治療期間を反映していない場合があります。
治療の経過に応じて最新の診断書を保険会社などに再提出することで、保険金や慰謝料の額が適切に見直される可能性があります。そのため、治療が進むにつれて新たな診断書を取得し、再提出することをおすすめします。
2-6-2 後遺障害認定における診断書の役割
「後遺症診断書」と「後遺障害診断書」は同じもので、正式名称は「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」です。
この診断書は、症状が固定された状態を診断し、後遺障害の認定や等級判定において重要な役割を果たします。診断書には、後遺症の詳細、検査結果、症状固定日などを正確に記載する必要があり、慰謝料や逸失利益の算定に大きく影響します。
後遺障害等級の認定要件は細かく規定されているため、交通事故の後遺障害に精通した専門医に依頼することが望ましいです。適切な診断書の作成は、被害者の将来の生活に大きく影響するため、慎重に進める必要があります。
また、保険会社との交渉においては、弁護士の介入が慰謝料増額につながる可能性があるため、弁護士への相談を検討することをおすすめします。
2-6-3 精神的ストレス・うつ病・PTSDの保険金や慰謝料
交通事故による精神的ストレス・うつ病・PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された場合、以下の保険金や慰謝料を受け取れる可能性があります。
- 入通院慰謝料:治療期間中の精神的苦痛に対する賠償金で治療期間が長いほど金額が高くなる傾向があります。
- 後遺障害慰謝料:PTSDなどが後遺障害として認定された場合に支払われ、認定される等級(主に9級、12級、14級)によって金額が異なります。
- 後遺障害保険金:後遺障害等級に応じて支払われる保険金です。
精神的症状の立証は難しいため、交通事故に詳しい精神科や心療内科の専門医による適切な診断と詳細な診断書の作成が重要です。
また、弁護士が関与することで、より高額の補償を受けられる可能性が高まります。たとえば、被害者に過失がなく後遺障害等級9級に認定された場合、自賠責基準は249万円ですが、弁護士の交渉で裁判基準(弁護士基準)が採用された場合、最高690万円まで高額になる可能性があります。
3. 加害者側の診断書対応
加害者が保険会社に任せっきりにしてはいけないケースもあります。保険会社から提供される診断書の内容を慎重に確認し、疑問がある場合は適切な手続きに進まなくてはなりません。ここでは、加害者が被害者の診断書に対応すべきケースについて説明します。
3-1 被害者の診断書への対応方法
加害者側が保険会社を通じて診断書の内容について説明を受けた際には、冷静にその情報を受け止めることが大切です。
まず、保険会社から伝えられた診断書の内容が、事故の状況や被害者の症状と一致しているかを確認しましょう。治療期間や症状の程度が適切かどうかも確認してください。
しかし、医学的知識がない場合、診断書の内容を正確に判断するのは難しいことがあります。このような場合は、保険会社の見解を参考にするか、必要に応じて弁護士に相談するのが賢明です。
診断書の内容に納得できた場合は、保険会社を通じて速やかに補償手続きを進めましょう。一方で、内容に疑問がある場合は、保険会社に対して詳細な説明を求め、慎重に確認作業を行いましょう。
被害者との直接のやり取りは避け、すべての対応は保険会社を通じて行ってください。
3-2 診断書の内容に疑問がある場合の手続き
診断書の内容に疑問がある場合、まずは保険会社に相談しましょう。保険会社には通常、医療アドバイザーが在籍しており、専門的な視点から診断書を評価してもらえます。必要であれば、保険会社から被害者側に追加の医療情報を求めることも可能です。
また、診断書の内容が事故の状況と大きく異なる場合、保険会社を通じて別の医師によるセカンドオピニオンを求めることも検討できます。
ただし、この手続きは慎重に進める必要があり、被害者との関係を悪化させないためにも、すべての対応は保険会社を介して行いましょう。加害者が直接被害者とやり取りすることは避けるべきです。
3-3 診断書の虚偽記載への対処法
診断書に虚偽の記載が疑われる場合は、慎重な対応が求められます。確固たる証拠がない状態で虚偽を主張することは避けるべきであり、まずは保険会社や弁護士に相談し、専門的な意見を得ることが重要です。
必要に応じて、事故の状況や被害者の行動を示す証拠(ドライブレコーダー、防犯カメラ映像、目撃者の証言など)を集めることも効果的です。
明らかな虚偽が疑われる場合には、警察に相談することも選択肢の一つです。しかし、虚偽記載を立証することは困難な場合が多いため、慎重な対応が求められます。弁護士への相談も検討しましょう。
3-4 診断書を出さない?取り下げはできるか?
加害者自身に怪我がある場合、診断書を提出することが重要です。診断書は事故の正確な記録を残す重要な証拠となり、責任割合の決定や補償の参考資料にもなります。
一度提出した診断書は、原則として取り下げることはできません。示談が成立し、当事者が処罰を望まない場合でも、警察は民事不介入の原則に従い捜査を継続します。
怪我の事実や診断書の隠蔽は加害者の信用を著しく損ね、交渉や裁判で不利な立場に立たされる可能性があるため、避けるべきです。
加害者は事実を正直に報告し、適切な責任を負うことが長期的に最善の結果をもたらします。このような対応により、被害者との信頼関係も維持され、最良の解決につながります。
4. 弁護士に依頼するメリット
弁護士に交渉を依頼することで、多くのメリットが得られます。専門知識を持つ弁護士が介入することで、慰謝料の増額や保険会社との交渉力の向上が期待できるためです。
また、通院頻度、治療費、休業損害、過失割合、後遺障害等級といった、被害者が単独で対応するのが困難な問題にも、弁護士は適切に対処します。
さらに、保険会社とのやり取りを弁護士に任せることで精神的負担が軽減され、早期解決につながります。結果として、より公平で適切な補償を受ける可能性が高まり、被害者の権利をしっかりと守ることができるでしょう。
4-1 弁護士に依頼すると保険金や慰謝料は増えるのか?
弁護士は、診断書の内容を専門的に分析し、不明確な点があれば医師に追加の説明や記載を求めることで、より有利な診断書の作成をサポートします。これにより、被害者が適切な補償を受けるための重要な証拠が強化されます。
また、弁護士に交渉を依頼することで、慰謝料の大幅な増額が期待できるのも大きなメリットです。保険会社の提示額をそのまま受け入れてしまうと、本来受け取れるはずの慰謝料が大幅に減ってしまうことがあります。
通常、保険会社は「自賠責基準」や「任意保険基準」に基づいて低額な慰謝料を提示しますが、弁護士は「裁判基準(弁護士基準)」を用いて、より適正な慰謝料を主張します。
被害者自身が増額を主張しても保険会社は応じることはありませんが、弁護士による「裁判基準(弁護士基準)」は、過去の判例に基づいた法的正当性が高く、法的根拠のある主張であるため、保険会社も無視できないのです。
4-2 被害者の診断書に疑問!加害者側がとるべき手続きと弁護士に依頼するメリット
被害者の診断書に疑問がある場合、加害者側は慎重な対応が求められます。まず、保険会社と相談し、医療の専門家による診断書の評価を依頼することが重要です。状況によっては、中立的な第三者医師による再診断を提案することも検討すべきです。
この過程において、弁護士に依頼するメリットは非常に大きいです。保険会社には提携する専門医や弁護士がいますが、自身が依頼した弁護士は、必要があれば、これらの専門家とも協議や交渉をすることがあります。
被害者の診断書に疑問を呈する場合、証拠を提示するのは非常に難しく、慎重な対応が求められます。加害者自身の主張では説得力に欠けてしまうこともありますが、弁護士が介入することで専門的な見解を提示できます。
また、弁護士は法的観点から診断書を精査し、必要に応じて追加調査を行うことで、不当に高額な賠償請求を防ぐことも可能です。全てのプロセスで、被害者の感情を考慮し、誠意ある対応を心がけることが重要です。
4-3 複雑なケースでの弁護士相談のメリット
複雑な交通事故のケースでは、弁護士に相談するメリットが一層大きくなります。例えば、複数の診断書が存在し、その内容に矛盾がある場合、弁護士は法的な観点から問題を整理し、最適な対応策を提案します。
特に、後遺障害の認定が難しいケースや、精神的ストレスと事故の関連性を証明する場面では、弁護士は過去の判例や専門家の意見をもとに、適切な等級を主張します。等級が上がることで、補償額が大幅に変わる可能性があるため、弁護士の関与は非常に有益です。
また、労災と交通事故が重複する場合、複数の法律が絡むため、弁護士のサポートが役立ちます。弁護士に依頼することで、補償額が大幅に増える可能性もあります。早期に弁護士に相談することで、迅速かつ有利な結果を得ることができるでしょう。
5. まとめ
交通事故に遭うと、警察や保険会社、関係者とのやり取りなど、日常とは異なる環境に置かれることで負担が大きくなります。怪我による通院や入院が必要な場合、保険会社との交渉がさらなるストレスとなるでしょう。
そんな時こそ、早い段階で弁護士のサポートを求めることをおすすめします。弁護士は専門知識を活かしてスムーズに交渉を進め、依頼者が望む結果を得るために尽力します。
特に、複雑なケースや高額な賠償金が見込まれる場合は、交通事故専門の弁護士が関与することで、より適正な結果を得られる可能性があります。
早期の弁護士相談によって、適切な対応と負担軽減が期待できます。不安や疑問がある場合は、迷わず弁護士への相談を検討しましょう。