自身の離婚経験、カウンセラー・コーチングのスキルも生かして真に寄り添える弁護士に/木葉文子弁護士(札幌緑の森法律事務所)
自分の人生を自分でデザインしたいという想いから弁護士を目指し、2008年に弁護士登録。2019年に離婚した際に弁護士に相談したことで、弁護士が寄り添うことが持つ力の可能性を身を持って知ったそうです。現在はカウンセラーやコーチングの資格も生かし、人にフォーカスして離婚や相続などに注力されています。
弁護士を目指した理由とこれまでについて
これまでの経歴について教えてください。
出身は札幌市ですが、父の仕事の関係で転勤が多く、小学校は4つ転校しました。北海道大学法学部と北海道大学法科大学院(ロースクール)を卒業して、弁護士になったのは2008年です。
弁護士になって札幌市内の法律事務所に就職した後、出産・育児のため約5年間弁護士をお休みして、2015年に太田宏樹法律事務所 (現札幌緑の森法律事務所)に入って仕事復帰しました。
弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
父は公務員で、母も元々公務員だったのですが出産を機に退職して専業主婦になりました。幼いころから両親を観察していて、女性が退職をすると、正社員への復帰がなかなか難しいこと、自身の職業を持っているかどうかが家庭内のパワーバランスに影響することを感じていました。当時はそういう家庭も珍しくなかったのですが、幼いながらに、私は自分の人生を自分でデザインしたいなと思っていました。
そして大きくなるにつれ、出産などがあっても自立して生きていくには、強い資格が必要だと思ったんです。私は文系科目のほうが得意だったので、それなら弁護士がよいんじゃないかと思ったのが弁護士を目指したきっかけです。最終的に弁護士になろうと決めたのは、就活をするか司法試験に向けて勉強するかという選択が必要になった大学3年生頃でした。
弁護士になるまでの勉強は大変でしたか?
大変でしたね。実は大学に入って初めて法律書を読んだとき、自分には向いていないと思って本気で学部を変えようと思ったほどです。結局学部は変えませんでしたが、代わりに1年間アメリカ・マサチューセッツ大学に交換留学しました。通訳になって世界中を自由に飛び回りたいと思っていた時期もあるので、海外への憧れもあったんです。
でも結局日本に戻って、法律の勉強を続けました。知らないことを学ぶこと自体は大好きなので、勉強を続けるうちに面白さも感じられるようになりました。
現在の業務について
現在力を入れている分野を教えてください。
個人・法人から幅広い分野の相談・依頼を受けていますが、特に力を入れているのは離婚、相続、不動産関係です。
実は私自身、2019年に離婚して二人の子どものシングルマザーなんです。離婚に至るまでの時期は精神的にも肉体的にもかなり負担がかかっていましたし、重大な人生の岐路にあったので、どうしたらよいのかわからず頭が真っ白になったときもあります。
そのときに、信頼できる弁護士に相談に行ったんです。もちろん私自身が弁護士ですから、法律上どうなるかについては十分わかっていました。ただいくら知識があっても、生活もある中、混乱して、頭の中がごちゃごちゃになっている状態で、一人で冷静に整理することはとても難しかったです。そんなとき、弁護士に話を聴いてもらって、寄り添ってもらって、一つずつ整理することで前に進めたんです。
そのときに、「一人で抱え込まなくてもよいんだ」「相談に乗ってもらうことで、ここまで救われるんだ」と心底思ったんですね。私も弁護士としてそれまで数多くの相談や依頼を受け、相談者や依頼者から、「おかげで前に進むことができました」「先生にお願いして本当によかったです」と言っていただけることはあったので、役に立てているとは思っていました。ただ当事者として弁護士に相談したことで、弁護士という仕事が持つ可能性の大きさを身を持って知ったんです。それで離婚に力を入れるようになりました。
離婚を経験されたことで、相談者・依頼者との関わり方も変わりましたか?
そうですね。私自身、弁護士に寄り添ってもらって、一緒に考えてもらえてすごく楽になったので、そういう対応を心がけています。ただ、もちろん人によって感じ方は違いますし、同じ言葉でもタイミングを間違えると傷つけることもあります。目の前の相手が今どういう気持ちで、なにを求めているか意識しながら対応するようにしています。
相続と不動産関係については、どういった想いから力を入れているのでしょうか?
相続は相続人同士の様々な感情がぶつかり合う分野で、弁護士の関わり方次第で依頼者の満足度は大きく変わります。その意味で離婚と共通点がありますし、大切な方が亡くなられたことから始まることも多いので、離婚も相続も「喪失」という点で共通していると思っています。ですから私自身の強みが生きる分野だと思うので、力を入れています。
不動産関係については、離婚の財産分与、相続で遺産に不動産が含まれている、不動産取引に関する契約書のリーガルチェックなど、不動産に関係する業務を取り扱うことがとても多いです。そのため、専門性を高めていくことで弁護士としてより貢献できる分野だと考えて、宅建士の資格も取得しています。私自身が事業として不動産を所有し、経営をしている一面もあるので、実際の取引の実情をふまえた助言ができるという意味では貴重だと思います。
お話を聴いているとすごく力強い印象を受けるのですが、そのパワーやモチベーションはどこから湧いてくるのでしょうか?
全然力強くないですよ。元々体力がものすごくあるというわけでもないですし、割とのんびりした性格です。ただ好奇心は人一倍強いかもしれないですね。「あぁ面白かった、もうやり残したことは一つもない」って笑いながらこの世を去るのが私の理想の人生なんですよ。知りたいこと、やりたいことは尽きないので、それが色んなことをする原動力になっていると思います。
弁護士として、どういったことを大切にされていますか?
目の前に来てくださった方を心を持った人間として尊重し、誠実に向き合うことです。弁護士から、いくら法律上はこうなっていて、解決法はこうですと言われても、心が追いつかないことだってありますよね。ですから気持ちを想像して、コミュニケーションの取り方を工夫していくようにしています。
元々コミュニケーションの取り方や人の心の動きには興味があって、離婚前に「JDAP認定メンタル心理カウンセラー」という資格も取りました。離婚後は、さらに学びを深めたいと思って「米国CTI認定プロフェッショナルコーチ」の資格も取りました。我流ではなく専門的に学ぶことで知識や技術も身につきましたし、そこに自分なりの工夫や経験を足していければと思っています。
先生がそういった関わり方をすることで、どういった反応や変化がありますか?
私は「こうしたほうがよい」「こう考えるべきだ」という風に相手を変えようとしているわけではなく、寄り添うことで、自然と相談者や依頼者が、本来生きたい人生に主体的に向き合うきっかけになっているのだと思います。
壮絶な人生を歩んできた方が、私の前では努めて冷静にお話をしてくださって、私の「今までよくがんばってこられましたね」の一言に、ふっと緊張の糸が途切れて、涙されることもあります。
人には本来、自分が生きたい人生を生きる力があると信じているんです。私はトラブルを解決したり不安を取り除くことで、そのお手伝いをしているだけなんですよね。
今後について
今後の目標などをお聞かせください。
私以外にも弁護士はたくさんいるので、私が弁護士であることの意味をもう少し出していければと思っています。「あなたに相談してよかった」と言っていただけるように、法律に関するスキルもそうですし、コミュニケーションの部分もさらに磨いていきたいですね。
最後に、相談を考えている方へ一言お願いします。
なにかトラブルに巻き込まれたり不安があるときは、頭の中がぐちゃぐちゃになるのは当然です。私が相談を受けながら一緒に整理していきますので、自分の中で整理しきった状態でご相談いただく必要はありません。頑張りすぎず、まず一度ご相談いただければ解決の糸口は見えてくるはずです。ぜひお気軽にご相談ください。
弁護士情報
弁護士名:木葉 文子
所属弁護士会:札幌弁護士会
事務所名:札幌緑の森法律事務所
事務所HP:https://denshadoori-law.com/
事務所住所:札幌市中央区南1条西9丁目15番地 札幌南1条ビル3階A
経歴:
1978年 札幌市出身
1997年 札幌南高校 卒業
2001年 北海道大学法学部 卒業
2006年 北海道大学法科大学院 卒業
2008年 弁護士登録(札幌弁護士会所属、61期)髙橋・日浦法律事務所 入所
2010年 弁護士登録一時抹消(出産・育児のため)
2015年 弁護士再登録、太田宏樹法律事務所 入所
2022年9月 事務所名を札幌緑の森法律事務所に変更
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