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交通事故における休業補償【被害者側】~休業損害との違いは?~

【この記事の法律監修】  
森江 悠斗弁護士(東京弁護士会) 
森江法律事務所

「交通事故で怪我をしてしまい、仕事ができない状態になった」
「仕事を休んでいる間の給料は補償されるの?」

交通事故に遭って仕事を休むことを余儀なくされた場合、上記のような不安を抱えてしまう方が多いと思います。結論から述べると、交通事故によって怪我をしてしまい、療養によって仕事を休む際は、休業期間中に「休業補償」を受け取ることが可能です。

本記事では、交通事故に遭った際に受け取れる休業補償について、休業損害との違いに触れながら解説していきます。ぜひ最後までご覧になってください。

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1.休業補償とは

休業補償とは、労働災害に被災した労働者が、怪我・病気による療養によって働けない際に、企業が支払わなければいけない補償です。

ただし、企業が労災保険に加入している場合は、3日間の待機期間分を除き、労災保険による給付が行われるため、企業側が労働基準法上の補償責任を免れます。企業が補償する代わりに、労災保険によって補償給付を受ける形になります。

2.休業補償はどのような場合に受けられるのか

労働基準法の第七十五条、第七十六条にて、療養補償・休業補償について以下のように定められています。

労働基準法 第七十五条

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、または必要な療養の費用を負担しなければならない。

② 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める


労働基準法 第七十六条

労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない
引用:e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

条文の内容より、休業補償を受けるには以下の条件を満たす必要があります。

  • 業務災害による負傷、疾病の療養中であること
  • 負傷、疾病の療養中のため、労働できない状態であること
  • 会社から賃金が支払われていないこと

上記3つの条件を満たした場合に、休業補償が支給されます。

2-1.通勤中、勤務中の事故が対象になる条件

通勤中の事故が休業補償の対象になるためには、「通勤災害」に該当する必要があります。通勤災害とは、通勤によって労働者が被った傷病等を指します。この場合の「通勤」とは、以下の内容になります。

  1. 住居と就業場所との間の往復
  2. 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動
  3. 就業場所から他の就業場所への移動

上記の移動を合理的な経路及び方法で行うことを「通勤」としています。

通勤災害にあったことが原因で労働できない状態となり、かつ会社から賃金が支払われていない場合は、休業補償の対象となります。

なお、従業員が仕事中に負傷、疾病を負った場合は、通勤災害ではなく「業務災害」となります。

3.休業補償の支給期間の開始と終了について

休業補償の支給期間の開始は、休業から4日目です。3日目まで、つまり、待機期間分は、労災ではなく、会社が支払うこととなります。また、休業補償の支給期間の終了は、負傷または疾病が治癒(病状固定を含みます。)、または改善して労働できる状態になったタイミングです。
(労働者災害補償保険法第14条第1項)

病状固定とは、治療を続けても症状の改善が見込めずに、後遺症が残る状態を指します。病状固定が認められた場合、治療期間が終了して、それ以降の休業補償を受け取ることができません。

なお、病状固定によって休業補償が打ち切られた後、後遺症が残る場合には、障害(補償)給付が支給されます。障害補償の金額等は、後遺症の障害等級によって決まります。

その他、傷病補償年金に移行する場合も休業補償の支給は終了します。詳細は割愛しますが、傷病補償年金への移行となるのは、両目失明、両手指の喪失等の相当重い障害の残るケースに限られます。

4.休業補償の支給額の計算方法

休業補償の支給額の計算は、以下の流れで計算されます。

  1. 給付基礎日額を計算する
  2. 給付基礎日額をもとに休業補償給付を計算する

4-1.給付基礎日額を計算する

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する金額を指します。この場合の「平均賃金」とは、原則として、事故が発生した日(賃金締切日が定められている場合は、その直前の賃金締切日)の直前3か月間に支払われた総額を、その期間の歴日数で割った賃金額です。

たとえば、月20万円の賃金を受け取っていて、賃金締切日が毎月末日の場合、労働災害に該当する事故が10月に発生した際は、給付基礎日額は以下の通り計算されます。

20万円×3か月÷92日(7月・8月・9月の日数合計)≒6,521円73銭
※給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、端数を1円に切り上げます

4-2.給付基礎日額をもとに休業補償給付を計算する

休業4日目以降に労災から給付される休業補償を、給付基礎日額をもとに計算していきます。

休業補償の金額は、給付基礎日額の80%(休業補償給付(60%)+休業特別支給金(20%))です。

休業補償給付:6,522円×0.6=3,913円20銭
特別支給金:6,522円×0.2=1,304円40銭
※1円未満の端数が生じた場合は、その端数を切り捨てます

合計:3,913円+1,304円=5,217円

5.支給額の下限について

休業補償の金額計算の際に使用する給付基礎日額は、金額の下限が設定されています。金額の下限設定については、以下のとおりです。

すなわち、労災保険制度で用いる給付基礎日額については、原則として労働基準法第12条に規定する平均賃金に相当する額とされていますが、被災時の事情により給付基礎日額が極端に低い場合を是正し、補償の実効性を確保するため、その最低保証額である自動変更対象額を定めることとされています。

令和6年8月1日から適用される最低保証額は、4,090円(改定前:4,020円)です。
(令和6年7月26日厚生労働省告示第246号)

給付基礎日額を計算した結果、上記の最低保証額を下回った場合は、給付基礎日額は最低保証額の4,090円に自動変更されます。

6.休業補償を申請する際の必要書類

休業補償を申請する際は、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」または「休業給付支給請求書(様式第16号)」を労働基準監督署に提出する必要があります。

上記2種類の書類にて記入する内容は、大きな違いはありません。書類に記入する内容の例は以下のとおりですが、詳細は労働基準監督署の指示に従うようにしましょう。

  • 労働保険番号
  • 請求する労働者の住所、氏名、性別、生年月日

7.休業補償の申請手続きの流れ

休業補償の申請手続きは、以下の流れで進めていきます。

  1. 休業補償給付請求書を労働基準監督署長に提出する
  2. 労働基準監督署によって調査が行われる(関係者へのヒアリング、資料の確認など)
  3. 休業補償の支給、不支給の決定
  4. 支給が決定された場合は、指定された振込口座に支払われる

休業補償の申請手続きは、原則として被災従業員本人が行います。ただ、怪我の状態によっては、会社側が請求を代行してくれるケースもあります。

なお、休業補償の不支給が決定された際、その決定に不服がある場合は、管轄の労働局に対して審査請求を行い不服を申し立てることが可能です。

8.休業補償の支給方法について

労働災害の休業補償は、休業した日数分をまとめて一括請求するか、もしくは分割で請求するか自由に選択可能です。なお、休業期間が数か月以上となる場合、休業補償の請求は基本的に1か月ごとに行う必要があります。

9.有給休暇を取得した場合の休業補償への影響

有給休暇を取得した日は、労災の休業補償の対象外です。有給休暇を取得した場合、休暇といっても企業からは賃金が支払われます。このため、休業補償が支給されると賃金を二重に受け取ることになってしまいます。

労働基準法において、賃金を受け取っている場合は休業補償が給付されないと定められています。賃金が発生する有給休暇を取得した日は、休業補償を請求できないので注意してください。

10.傷病手当金、失業保険など他の給付金・手当との併用について

傷病手当金とは、健康保険法等を根拠に、公的医療保険の加入者が傷病の療養によって勤務できない際に支給される手当金です。休業補償と傷病手当金は併用ができません。

休業補償、傷病手当金ともに傷病のために労務に従事できず、報酬を受け取れない労働者の生活保障を図るために支給されるという点で、制度目的は同一です。このため、休業補償と傷病手当金を併用することが制度上できない形となっています。

また、休業補償と失業保険を同時に受給することもできません。休業補償は傷病による療養で労働できない場合に支給されるのに対して、失業保険は労働可能な状態が支給の要件とされています。このため、支給要件上、休業補償と失業保険を同時に受け取ることができない形です。

11.勤務先が労災保険に加入していない場合の休業補償について

労働者を1人でも雇用している企業は、基本的に労災保険に加入する義務があります。雇用している労働者が正規雇用でない場合でも、雇用している場合は労災保険への加入義務がある形です。

労災保険の加入手続きについては、会社側が責任を負います。このため、会社側が労災保険に加入義務があるにもかかわらず、労災保険に未加入の場合でも、従業員は労災保険の適用対象になります。

ただし、会社が労災保険に未加入の場合は、自身で労働基準監督署へ手続を行わねばなりません。労働基準監督署に対して休業補償の手続を行って、労災であると認定を受ければ、労災保険に加入している場合と同様に給付が行われます。

なお、事故に遭う前に会社が労災保険に未加入である状況に気づいた際は、労働基準監督署に相談することで、会社に対して保険加入を促すことが可能です。

12.労災保険が打ち切られる可能性と条件

労災保険による休業補償は、給付が途中で打ち切られる可能性があります。以下、休業補償が打ち切られる可能性があるケースです。

  • 受給開始から1年6か月が経過した場合において、怪我や病気が治っておらず、かつ障害の程度が傷病等級にあてはまる場合

  • 怪我や病気が完治した場合

  • 医師から病状固定の診断を受けた場合

症状固定とは、治療を続けても怪我や病気の症状の改善が見込めない状態です。医学的に治療を継続する合理性がなくなるため、労災の休業補償が打ち切られてしまいます。

なお、療養開始から1年6か月を経過しても傷病が治癒していない場合は、「傷病の状態等に関する届」を提出することで、休業補償の支払を継続することが可能です。

前述のとおり、病状固定によって休業補償が打ち切られた後、後遺症が残る場合には、障害(補償)給付が支給されます。障害補償の金額等は、後遺症の障害等級によって決まります。

13.休業補償が打ち切られた際の対応策、不服申し立ての方法

休業補償が打ち切られた際、まだ治療を続ける必要がある場合など、打ち切りに不服がある場合には、審査請求を行うことが可能です。休業補償の打ち切りに対する審査請求は、所轄の都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して行います。

審査請求は、労災保険給付に関する決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に実施する必要があるので注意してください。

なお、審査請求を行った後に下された審査官の決定に対して不服がある場合、また審査請求を行ってから3か月経過しても決定されない場合は、労働保険審査会に対して再申請を行うことが可能です。また、行政訴訟(処分の取消訴訟)を提起することもできます。

再審査請求は、審査官からの決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に実施する必要があります。

14.休業補償は課税対象になる?

休業補償をはじめとした、労働基準法第8章(災害補償)の規定によって受ける療養のための給付等は、非課税所得になります。このため、休業補償を受け取っても課税されません。

なお、使用者側の責に帰すべき事由によって休業した際に支給される「休業手当」(療養に関する補償である休業補償とは似て非なるものです。)については給与所得となり、課税対象になります。

15.休業補償の期間中、ボーナス・賞与はどうなる?

休業補償期間中のボーナス(賞与)の支給については、企業の就業規則や労使協定、賃金協定などによって有無が異なります。法律上では、休業補償の期間中のボーナス・賞与の支給については定めがありません。このため、休業補償期間中のボーナス・賞与の支給は、企業側に一任されている形です。

ボーナスは仕事の成果に応じて支給される性質があるため、ボーナスの査定期間中に休職した際は、企業によってはボーナスが不支給になる可能性があります。また、就業規則に「休業中の者には賞与を支給しない」という記載がある場合は、ボーナスの支給対象にならないと考えてよいでしょう。

16.ボーナス額は休業補償の計算に影響する?

ボーナス額は、休業補償の金額を構成する「特別支給金」の一部に反映されます。ボーナス・賞与などの三か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、本体給付には反映されませんが、特別支給金の一部には反映されます。

17.通勤中の交通事故では労災保険と自動車保険のどちらを使うべき?

通勤中に交通事故に遭った場合、労災保険と自動車保険の両方を使えます。ただし、通勤中の事故によって療養が必要になり、給料が会社から支払われない際、労災保険からの休業補償給付と、自動車保険からの休業損害の支払いが二重に行われることはありません。これを「支給調整」と呼びます。

二重に給付が受けられないのであれば、労災保険と自動車保険を両方使える意味がないと思われるかもしれませんが、労災保険と自動車保険の間では、重複しない補償事項もあります。重複しない補償事項の場合は、別途請求して受け取ることが可能です。

たとえば、労災保険の「休業特別支給金」は、労災保険独自の補償になります。自動車保険を使って休業損害の支払を受けた場合でも、労災保険から休業特別支給金分の金額を受け取ることができるのです。

18.正社員以外でも休業補償の対象となる条件

休業補償は正社員だけでなく、契約社員・アルバイト・パートタイマーなど全ての従業員に適用されます。企業には労災保険、雇用保険といった労働保険への加入が義務付けられています。このため、正社員のみならず、契約社員やアルバイト、パートタイマーの従業員も労働保険に加入させなければなりません。

19.休業補償について弁護士や専門家に相談した場合のメリット

休業補償の請求自体は、被災者自身で行えますが、不支給の設定がされたり、病状固定によって休業補償が打ち切られた際は、弁護士や専門家に対応を依頼するのがおすすめです。

弁護士や専門家に相談するメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 休業補償の手続や書類作成の相談をできる
  • 後遺障害等級認定の決定内容を適切に判断してもらえる
  • 後遺症が残った場合の等級認定の審査請求、裁判を任せられる

19-1.休業補償の手続きや書類作成の相談をできる

弁護士や専門家は、休業補償をはじめとした法律上の手続きに熟知しています。休業補法の手続きや書類作成で不安があったり、疑問点がある際に、弁護士・専門家に相談すれば適切なアドバイスを受けられます。

19-2.後遺障害等級認定の決定内容を適切に判断してもらえる

交通事故による後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることになります。ただ、決定された後遺障害等級認定の決定内容が適切であるかどうかは、法律に精通していないと判断が難しいところです。

後遺障害等級認定が正しく行われているかどうかは、信頼できる弁護士に依頼して判断してもらうのが安心です。

19-3.後遺症が残った場合の等級認定の審査請求、裁判を任せられる

後遺障害等級認定で正しい判断がされなかった場合は、等級認定の審査請求や裁判を行わなければなりません。審査請求、裁判では専門的な法律の知識が必要です。弁護士に依頼すれば、等級認定の審査請求、裁判まで一括して任せられます。

20.休業損害とは

休業損害とは、交通事故による怪我が原因で仕事を休んだために減った収入、減少した収入額に対する補償を指します。

休業損害の対象となる休業日数は、基本的には完治、または症状固定までの間で、治療の必要性から仕事を休んだ日数です。リハビリのために休んだ日数も、完治または症状固定までの場合は休業損害の対象となります。

休業損害の請求先は、交通事故の加害者が加入している自賠責保険、または自動車保険など任意保険です。

21.休業損害の計算方法と金額の算出基準

休業損害の金額は、以下の式にて計算されます。

休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数

上記計算式における基礎収入については、計算に用いる算定基準ごとに異なります。以下、休業損害の計算において用いられる基準です。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 裁判(弁護士)基準

各基準における休業損害の計算式について、詳しく確認していきましょう。

21-1.自賠責基準

自賠責基準では、以下の計算式を用います。

日額6100円×休業日数

自賠責基準では、休業による何らかの減収があったという事実が認められれば、その金額が少額であった場合でも、日額6100円が適用されます。また、減収の日額が6100円を超えることを証明できる場合は、最高で日額1万9000円までの金額が認められます。

21-2.任意保険基準

任意保険基準は、自動車保険などの任意保険会社が独自に設けている基準です。金額は任意保険会社によって様々ですが、おおむね自賠責基準と同等、もしくはやや高い金額基準で設定されるケースが多いです。

21-3.裁判(弁護士)基準

裁判(弁護士)基準は、交通事故が訴訟に発展した際に見込まれる賠償額の基準です。裁判(弁護士)基準の計算式は以下のとおりです。

1日当たりの基礎収入(事故直前3か月の平均収入)×休業日数

22.会社員や主婦、自営業など職業・立場ごとの休業損害の計算方法

前述した3つの基準によって休業損害の金額が決まりますが、厳密には職業別にも休業損害の計算方法が異なります。主に「給与所得者(会社員)」「自営業者」「専業主婦(夫)、兼業主婦(夫)」によって休業損害の計算方法が異なる形です。

具体的な計算方法の違いについて、職業別に確認していきましょう。

22-1.給与所得者(会社員)の場合

給与所得者の場合、休業損害の計算方法は以下の通りです。

<自賠責基準>
6,100円×休業日数
※ただし、会社側が発行した「休業損害証明書」などを提出することで、1日あたりの収入額が6,100円以上になることを証明できれば、1日あたりの休業損害額を上限1万9,000円まで引き上げることが可能

<任意保険基準(例)>
6,100円×休業日数
または
事故前3か月の給与総額÷90日×休業日数
※90日は、1か月を30日として、3か月分の日数
※給与総額は、手取り金額ではなく支給総額

例. 事故前3か月の給与支給総額が70万円の場合
70万円÷90日≒7,778円

<弁護士基準>

事故前3か月の給与総額÷稼働日数×休業日数

※稼働日数は、休日や祝日を省いた「実際に働いた日数」

稼働日数は90日よりも少ない日数となるため、1日あたりの基礎収入は弁護士基準での算出が最も高額になります。

例. 事故前3か月の給与総額が70万円、稼働日数が60日の場合
70万円÷60日≒1万1,667円

22-2.自営業者の場合

<自賠責基準>

6,100円×休業日数
※自営業者の場合も、1日あたりの収入額は6,100円を超えることを証明できれば、休業損害の金額を1日あたり1万9,000円を上限に引き上げ可能

<任意保険基準>

任意保険会社によって基準は異なりますが、自賠責基準と同等、もしくは多少金額が高くなります。

<弁護士基準>

(事故前年の確定申告所得+固定費)÷365×休業日数
※休業している際にも支出の必要がある固定費(賃料、従業員給与、損害保険料など)は基礎収入に加算可能

確定申告を未実施であったり、過少申告をしていた場合は、預金通帳や伝票など収入を証明する資料、扶養家族の人数、生活実態などを考慮して、厚生労働省が発表している賃金センサスを適用した上で、基礎収入を算定することもあります。

22-3.専業主婦(夫)、兼業主婦

<自賠責基準>
6,100円×休業日数

<任意保険基準>
任意保険会社によって基準は異なりますが、自賠責基準と同等、もしくは多少金額が高くなります。

<弁護士基準>
家事労働者の休業損害は、専業主婦(夫)か兼業主婦かによって、また兼業主婦の場合は収入が女性労働者全年齢平均賃金を超えているかによって異なってきます。

  • 専業主婦(夫)の場合
    →基礎収入(女性労働者の全年齢平均賃金÷365日)×休業日数
  • 兼業主婦で、かつ「現実の収入<女性労働者の全年齢平均賃金」の場合
    →専業主婦(夫)と同じ

  • 兼業主婦(夫)で、かつ「現実の収入>女性労働者の全年齢平均賃金」の場合
    →事故前3か月の給与総額÷稼働日数×休日日数

23.休業損害を請求する際に必要な証明書・書類の準備

休業損害を請求する際には、ケースバイケースではありますが、基本的には、以下に挙げる証明書・書類が必要になります。

  • 休業損害証明書
  • 事故に遭った前年の源泉徴収票(給与所得者の場合)
  • 賃金台帳の写し、雇用契約書、所得証明書(給与所得者で、源泉徴収票がない場合)
  • 前年の確定申告書(自営業者の場合)

休業損害証明書は勤務先が作成する書類です。

24.休業損害が支給される期間

休業損害が支給される期間は、原則として交通事故の発生日から治療終了日(病状固定日)までです。ただ、負傷の程度や個別の事情によって休業損害が支払われる具体的な期間は異なってきます。また、治療終了(病状固定)の判断は医師が客観的に行う必要があります。

25.通院・治療の日数は休業損害に影響する?

通院、並びに治療の日数は、多くの場合は休業損害に直接的に影響することはありません。通勤中の交通事故による怪我で働くことができない日は、休業日数としてカウントされます。このため、通院・治療日数は休業日数のカウントに影響しない形です。

ただし、自営業者、専業主婦(夫)、兼業主婦(夫)の方が自賠責基準で休業損害を請求する場合は、「通院日数=休業日数」としてカウントされることが多いので注意が必要です。

26.休業損害と慰謝料の違いについて

休業損害と慰謝料は、いずれも交通事故における損害賠償金の一部になりますが、補償する対象や計算方法がそれぞれ異なります。

休業損害は、交通事故による治療によって休業したい際の減収を補償するものです。一方、慰謝料は交通事故による精神的苦痛を補償するものになります。慰謝料の金額については、事故前の収入による影響はほとんどありません。

27.賞与・ボーナスは休業損害の計算に含まれる?

交通事故による休業を理由に、賞与・ボーナスが減額されたことを立証できれば、休業損害の計算に含めて請求可能です。具体的には、会社から賞与減額証明書を発行してもらい、賞与・ボーナスの減額を立証します。

28.交通事故の過失割合が休業損害に与える影響

自賠責保険においては、被害者の過失割合が7割以上の場合、2~5割の範囲で補償金額が減額されます。これを重過失減額とよびます。過失割合が7割以上となった場合は、休業損害ではなく休業補償を優先して申請するのがおすすめです。休業補償であれば、労災保険から給付されるため、交通事故の過失割合が支給金額に影響を与えません。

29.休業損害が支給されないケース

休業損害を保険会社に請求した際に、保険会社が交通事故の被害者に対して休業損害を支払わないケースがあります。該当のケースは以下の通りです。

  • 就労可能な状態であると判断された場合
  • 事故前の収入を証明する資料が不足している場合

29-1.就労可能な状態であると判断された場合

保険会社が診断書の内容を踏まえて、就労可能な状態であると判断する可能性があります。診断書を作成する医師は、客観的な立場から診断書を作成します。このため、保険会社が診断書の内容から就労に支障をきたすほどの怪我でないと判断すると、休業損害の支払いに応じない可能性が高いです。

29-2.事故前の収入を証明する資料が不足している場合

通勤中の事故の場合、基本的には所属先の会社に休業損害証明書を作成してもらいます。また、休業損害証明書に加えて、事故前年の源泉徴収票、確定申告書などの公的証明書の添付が必要です。

資料が不足すると、収入額に基づいた休業損害の請求に保険会社が応じてくれない可能性が高いです。

ただ、仮に資料が不足している場合でも、自賠責基準の日額6100円の支払を求めることは可能です。

30.交通事故の被害者に付き添う家族の休業損害請求は可能か?

交通事故の被害者に付き添う家族の休業損害については、「付添費」という形で損害賠償を請求できます。交通事故によって被害者が負った怪我の程度が重く、被害者本人のみでは身の回りのことができない場合や通院に支障が生じた場合に、付添費の請求が可能です。

以下、付添費の主な種類になります。

  • 入院付添費:入院期間中の付き添いに対する補償
  • 通院付添費:通院期間中の付き添いに対する補償
  • 自宅付添費:自宅療養中の付き添いに対する補償
  • 通学付添費:被害者の通学の付き添いに対する補償

上記の付添費については。交通事故の発生から治療終了(病状固定)までの期間における付き添いに対して補償されます。病状固定後の付添費は将来介護費として請求する形になります。

31.保険会社の休業損害提示額に納得いかない場合の手続

保険会社の休業損害の提示額に納得いかない場合は、保険会社に対して弁護士に交渉を依頼したり、主治医による意見書を保険会社に提出するなどの方法をとります。

弁護士は弁護士基準に基づいて休業損害を交渉するため、自賠責基準・任意保険基準での金額よりも増額できる可能性が高いです。

また、主治医が治療を継続する必要があると判断した場合、その旨をまとめた意見書を作成してもらえます。意見書は治療継続の必要性を証明する医学的な根拠を持った書類であるため、休業損害の金額見直しに有効です。

32.弁護士に休業損害の請求を依頼するメリットとサポート内容

休業損害の請求は、基礎収入の証明や任意保険会社への請求など、煩雑な手続きが生じます。そこでおすすめなのが、弁護士への請求代行の依頼です。弁護士に休業損害の請求を依頼するメリットとして、以下の内容が挙げられます。

  • 法的根拠に基づいた適切な休業損害を請求できる
  • 必要書類の収集を任せられる

32-1.法的根拠に基づいた適切な休業損害を請求できる

弁護士に休業損害の請求を依頼することで、法的根拠に基づいた適切な休業損害を請求できます。加害者側の任意保険会社は、自社利益を確保するために、可能な限り支払額を減らそうとするのが一般的です。

このため、交通事故の被害者本人が相手方の保険会社と直接交渉をしても、任意保険会社が独自に設定している任意保険基準を根拠にして、低い金額の休業損害を提示される可能性が高いです。

弁護士に休業損害の請求を依頼すれば、任意保険基準よりも被害者側に有利な金額を算定可能な弁護士基準をもとにして、適切な休業損害を請求してくれます。休業損害を適切に増額したい際は、弁護士に任意保険会社との交渉を依頼した方がよいでしょう。

32-2.必要書類の収集を任せられる

休業損害の適正な金額を算出するためには、交通事故の被害者の職業や収入、生活実態を根拠づけるための証拠書類を収集する必要があります。

<必要書類>
給与所得者:休業損害証明書、前年分の源泉徴収票など
自営業、個人事業主:確定申告書の控え、伝票、請求書など
家事従事者:家族全員の記載がある住民票など

弁護士に依頼することで、必要書類として用意するべきものを具体的にアドバイスしてくれます。また、被害者の状況によっては、必要書類の収集を代理で行ってもらうことも可能です。

33.まとめ

交通事故に遭って仕事を休業した際は、休業補償・休業損害を請求できます。休業補償、休業損害でそれぞれ請求手続が必要になるため、抜け漏れなく請求手続きを行う必要があります。

休業補償、休業損害の請求手続きを行う際は、法律のプロである弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談すれば、手続きの代行から資料収集、会社や保険会社との示談交渉まで一括して行ってくれます。

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