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会社更生とは?【経営者向け】相談のタイミングや個人債務について、適用される条件は?

【この記事の法律監修】  
中間 隼人弁護士(横浜弁護士会) 
なかま法律事務所

事業を行う以上、業績が悪化して経営状態が危機的な状況になることはいつでもありえます。そうした中でも事業を継続しながら企業の再建を目指すための方法が、会社更生です。

会社更生は会社を再建させるための非常に強力な手段ですが、その分、手続きも複雑で、法律の専門家の手助けが必要です。

この記事では会社更生とは何か、会社更生によって企業を再建させるための法的な手段、また弁護士に相談するための方法などについて解説します。

この記事を読むことによって、弁護士の協力を仰ぎながら会社を再建させるための方法についての理解が深まることを願っています。

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1.会社更生とは?

会社更生は、経営破綻した企業の再建を目的とした裁判手続です。そのため、会社更生の手順や対象となる会社なども、法律によって規定されています。

1-1.会社更生法による会社更生の目的と定義

会社更生に関する規定をまとめたのが、会社更生法です。

会社更生法では、会社更生の目的と定義が次のように記されています。

第一条(目的):この法律は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

第二条(定義):この法律において「更生手続」とは、株式会社について、この法律の定めるところにより、更生計画を定め、更生計画が定められた場合にこれを遂行する手続(更生手続開始の申立てについて更生手続開始の決定をするかどうかに関する審理及び裁判をする手続を含む。)をいう。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

つまり会社更生の目的は、債権者や株主などの利害を調整しながら、経営危機に陥っている企業の事業を継続させることです。
そして第二条によると、会社更生とは会社を再建させるための再生計画を策定し、それを実行するための手続きのことを言います。

1-2.会社更生の対象となる企業と条件

会社更生法では、会社更生の対象となる企業も定められています。

第十七条(更生手続開始の申立て):株式会社は、当該株式会社に更生手続開始の原因となる事実(次の各号に掲げる場合のいずれかに該当する事実をいう。)があるときは、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

企業には様々な形態がありますが、会社更生の対象となるのは株式会社だけです。

さらに第17条の後段には、会社更生が適用される条件も記されています。

1.破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがある場合
2.弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

「破産手続開始の原因」となるものには、「支払不能」や「債務超過」などが挙げられます。そのため企業が債務を弁済できない状態のとき、また会社の負債総額が資産総額を超えていて負債を返済できないような場合には、会社更生の申し立てを行えます。

また支払能力があり、債務超過に陥っていない場合でも、「その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合」、つまり安定的に事業を継続できないような状態の場合でも、会社更生の申し立てが行えるとされています。

1-3.会社更生と倒産の違い

裁判所に申し立てて行う倒産のことを「法的倒産」と言いますが、法的倒産も「清算型」と「再建型」の2つに大きく分けられます。

  1. 清算型:企業の財産を処分して債権者に配当した後、会社の法人格を消滅させる倒産手続きのこと。
  2. 再建型:会社の法人格を存続させながら事業を継続し、再建を目指す倒産手続きのこと。

一般的に思い描く倒産は「清算型」かもしれません。経営状態が悪化するなどして、会社そのものが無くなるかたちの倒産です。
会社更生は「再建型」の倒産手続きとなります。会社が一度倒産することには変わりありませんが、企業の再建を目指して、法人格を残しながら事業を継続させていきます。

1-4.会社更生と民事再生の違い

再建型の倒産手続には、会社更生のほかに「民事再生」という手続きも存在します。会社更生も民事再生もともに、会社の再建を目指しながら事業を継続させるという点では同じですが、対象となる企業に大きな違いがあります。

会社更生の対象となるのは株式会社だけですが、民事再生は中小企業や個人事業主でも利用できる制度です。
ほかにも経営陣の交代の有無や、担保権の行使といった点に違いがあります。

<会社更生と民事再生の主な違い>

  会社更生 民事再生
対象 株式会社のみ 中小企業・個人事業主も対象
経営者の地位 原則、経営陣は交代する 現経営陣の継続が可能
担保権の行使 担保権のある債権も整理の対象 別除権として実行可能
時間と費用 手続きには時間も費用もかかる 会社更生と比べると簡易で迅速

株式会社でも、民事再生の申請手続きを行うことは可能です。

そのため、自社の再建のために会社更生と民事再生のどちらが適してるかは、弁護士などに相談しながら決定されると良いでしょう。

2.会社更生のメリット・デメリット

会社更生にも、メリット・デメリットが存在します。会社更生によって企業の再建を目指す際には、そのメリットとデメリットを良く見極めながら検討する必要があるでしょう。

2-1.会社更生のメリット

会社更生のメリットは、以下のような点が挙げられます。

  • 会社を存続させたまま、事業を継続できる。
  • 債権の回収に制限をかけられる。
  • 組織や事業の再編がしやすくなる。

会社更生の一番のメリットは、会社を存続させながら事業を継続できることです。清算型の倒産とは違って会社そのものは無くならないため、長年培ってきた企業としてのブランドやノウハウを活かしながら、再建を目指せます。

会社更生では担保権などの優先権を有している強力な債権であっても、その回収に制限をかけられます。そのため、巨額の債務超過に陥っている企業であっても、再建の可能性があります。

また会社更生の手続きを申請すると、会社法の特則が適用され、合併・増資・定款などの変更が行いやすくなります。そのため、会社の組織や事業の再編を柔軟に行いながら、企業としての再建を目指せることになります。

2-2.会社更生のデメリット

一方で会社更生には、以下のようなデメリットも存在します。

  • 経営陣の変更が必要。
  • 費用が高額になる。
  • 手続きに時間がかかる。
  • 社会的な信用が低下する。

会社更生の最大のデメリットが、経営陣の交代でしょう。会社更生を申請すると原則として現経営陣は退いて、外部から管財人が選任されます。この管財人に会社の経営権や財産の処分権が与えられ、新たな経営陣となります。

また会社更生は非常に大掛かりで強力な企業再建手法であるため、費用と時間もかなり必要になる傾向があります。

また再建を目指していても倒産には変わりありませんから、会社更生を申請すると企業の社会的信用が低下することも避けられないでしょう。

3.会社更生のタイミング

では、会社がどのような状況のときに会社更生を申請すると良いのでしょうか?

ここでは会社更生を検討できるタイミングや、適切な相談時期などについて考えます。

3-1.会社更生を検討できる状況

会社の経営状況が悪化し、これ以上の事業継続が難しいとなると、清算型の破産手続きか、再建型の会社更生を申請するかを検討することになるでしょう。

清算型の破産手続きを選択するか、会社更生を申請して再建を目指すかは、企業の経営状況や資産・負債の量、債権者の協力を得られるかなど、様々な要因によって異なります。

そのため、専門的な知識を持つ弁護士の助けを借りながら、会社にとって適切な手段を選択することが大切です。

破産手続を開始した後でも、会社更生に移行することは可能です。しかしその分だけ余計に時間もコストもかかりますから、最初の段階での慎重な判断と決定が経営陣には求められます。

3-2.弁護士に相談するタイミング

会社更生を検討し始めたら、なるべく早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。清算型の破産手続きか、再建型の会社更生を申請すべきかの判断に関しても、適切な助言を期待できるからです。

また会社更生を申請するにも、必要な書類の準備・作成、金融機関や債権者・従業員などへの対応、再建計画の作成など、弁護士の助けが不可欠となるでしょう。

実際に会社更生の申請は複雑で作業量も膨大になるため、弁護士の協力無しでは非常に難しいものとなるはずです。まだ会社更生を決断していなくても、可能な限り早いタイミングで弁護士に相談することが、会社再建への一番の近道となるはずです。

弁護士への相談は10分から可能なので、自社の状況を箇条書きなどで簡単にまとめた上で、まずは弁護士に相談なさってください。

4.会社更生による経営者の責任

会社更生を申請すると、経営者はどのような責任を負うでしょうか?組織としての責任と、個人としての責任について考えてみましょう。

4-1.組織としての責任

先ほども取り上げましたが、会社更生を申請すると、基本的に経営陣は交代しなければなりません。

「基本的に」というのは、主要取引金融機関の反応や決済状況などの要因によって、旧経営陣が管財人に指定されて、そのまま経営を引き継ぐこともあるからです。

しかし会社更生を申し立てると多くの場合において、裁判所が専任する管財人が旧経営陣に代わって企業の再建を目指すことになります。

4-2.個人としての責任

中小企業において経営者個人が会社の連帯保証人となる経営者保証の場合、経営者個人にも返済が求められます。そのため、会社更生を申請した場合に経営者個人にも責任が及ぶのかと心配されるかもしれません。

法人格を持つ会社は個人とは独立しているため、会社更生を申請しても経営者が個人として責任を負うことはありません。

また会社更生では、債権者の担保権は行使できないのが原則となっています。そのため、債権者であっても自由に債権を回収することはできません。

とはいえ、会社更生を申請した際に経営者が個人としての責任を問われるかどうかは、個別具体的に異なりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

5.会社更生に必要な費用

会社更生に必要な費用の内訳は、大まかに以下のようになっています。

  • 実費:印紙代など
  • 予納金:裁判所に支払う手続費用
  • 弁護士費用:着手金ならびに報酬金

5-1.実費

会社更生を申請するために必要な印紙代・官報公告予納金・予納郵券・債権者宛封筒などは、全て合わせても数万円程度となっています。

5-2.予納金

民事再生の場合、予納金の標準額は負債総額によって決められています。しかし会社更生の場合は事業内容や負債者数、財務状況などを考慮して決められます。

会社更生のための予納金の額は裁判所によっても異なりますが、最低でも2,000万〜3,000万円程度は必要とされています。

5-3.弁護士費用

弁護士に支払う報酬は、事務所によっても異なります。しかし目安としては着手金が200万円以上、それに報酬金が上乗せされます。

会社更生は法律で手続きが詳細に定められており、強力な拘束力を併せ持っています。そのためどうしても費用は高額になりますので、その点についてもあらかじめ弁護士に相談なさってください。

6.会社更生の流れとステップ

会社更生の全体的な流れは、以下のようになっています。

  1. 更生手続開始の申立て
  2. 保全管理人の認定・保全措置
  3. 会社更生手続開始の決定
  4. 債権の届出・調査・確定
  5. 会社財産の評定
  6. 更生計画案の提出・決議・認可
  7. 更生計画の遂行
  8. 更生手続の終結

それぞれの内容と、各ステップにおける注意点について解説します。

6-1.更生手続開始の申立て

会社更生の最初のステップは、裁判所へ更生手続開始の申し立てです。申し立てができるのは、対象となる株式会社・議決権の10分の1以上を保有する株主・資本金の10分の1以上にあたる債権を持つ債権者と定められています。

第十七条 2項(更生手続開始の申立て):株式会社に前項第一号に掲げる場合に該当する事実があるときは、次に掲げる者も、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
一 当該株式会社の資本金の額の十分の一以上に当たる債権を有する債権者
二 当該株式会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

会社更生の手続き開始の申し立ては、管轄する裁判所に書類で行う事になっています。

第五条(更生事件の管轄):更生事件は、株式会社の主たる営業所の所在地(外国に主たる営業所がある場合にあっては、日本における主たる営業所の所在地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

6-2.保全管理人の認定・保全措置

更生手続の申し立てから手続き開始までの間、会社の所有する財産を保全しなければなりません。それを行うのが、裁判所が選任した保全管理人です。

手続きはすぐに始まるわけではないため、保全管理人が行う会社財産の認定・保全措置も会社更生には不可欠なステップです。

6-3.会社更生手続開始の決定

申し立てが以下の要件を満たしていれば、会社更生手続の開始決定が裁判所によってなされます。

第四十一条(更生手続開始の決定):裁判所は、第十七条の規定による更生手続開始の申立てがあった場合において、同条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、更生手続開始の決定をする。
一:更生手続きの費用の予納がないとき。
二:裁判所に破産手続、再生手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
三:事業の継続を内容とする更生計画案の作成若しくは可決の見込み又は事業の継続を内容とする更生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
四:不当な目的で更生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

更生手続が開始されると、会社の経営権や財産の管理処分権が裁判所の専任した管財人に移行されます。

6-4.債権の届出・調査・確定

会社更生の手続きが始まると、債権者は一定期間内にその債権を裁判所に届け出る必要があります。

第百三十八条(更生債権等の届出):更生手続に参加しようとする更生債権者は、債権届出期間(第四十二条第一項の規定により定められた更生債権等の届出をすべき期間をいう。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
一:各更生債権の内容及び原因
二:一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるときは、その旨
三:各更生債権についての議決権の額
四:前三号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

提出された債権や担保権は管財人によって内容が調査され、認否書が作成されます。その内容に基づいて、債権額が確定されます。届け出がされなかった債権は、原則として失権することになっています。

債権の提出は、会社更生がスムーズに進むための重要なステップの一つです。

6-5.会社財産の評定

更生手続開始決定後、更生管財人は会社が所有する全ての財産を手続開始時点の時価で評価し、その結果をもとに、貸借対照表や財産目録を作成して裁判所に提出します。

この評価が正確に行われることで、会社の財産がどれくらいの価値を持っているかを把握し、再建計画を立てるための基礎資料の作成に役立ちます。

6-6. 更生計画案の提出・決議・認可

更生管財人は会社財産に関する調査や債権者の意見などに基づいて、更生計画案を作成して裁判所に提出します。

第百八十四条(更生計画案の提出時期):条管財人は、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、更生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

更生計画案は、債権者や株主などの利害関係者が確認し、賛否を表明するための重要な資料です。債権者や株主がこの再生計画案に賛成できない場合は、独自に再生計画案を作成して裁判所に提出することも可能です(会社更生法第184条第2項)。

更生計画案の提出が遅れると、会社の再建が遅れたり関係者の不利益にもつながるため、あらかじめ期間が定められています。

提出された更生計画案は、債権者・株主によって議決されます。決議に必要な賛成の割合は、以下のように定められています。

第百九十六条 5項(更生計画案の可決の要件):更生計画案を可決するには、第一項に規定する種類の権利ごとに、当該権利についての次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者の同意がなければならない。
一:更生債権議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者
二:更生担保権次のイからハまでに掲げる区分に応じ、当該イからハまでに定める者
イ:更生担保権の期限の猶予の定めをする更生計画案議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の三分の二以上に当たる議決権を有する者
ロ:更生担保権の減免の定めその他期限の猶予以外の方法により更生担保権者の権利に影響を及ぼす定めをする更生計画案議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の四分の三以上に当たる議決権を有する者
ハ:更生会社の事業の全部の廃止を内容とする更生計画案議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の十分の九以上に当たる議決権を有する者
三:株式議決権を行使することができる株主の議決権の総数の過半数に当たる議決権を有する者
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

6-7.更生計画の遂行

決議された更生計画に従って、管財人が主導しながら会社再建に向けた取り組みが遂行されます。その中には、債権・株主権の変更、債務の弁済なども含まれます。

管財人の強い権限に基づいて会社再建がなされていくのが、会社更生の大きな特徴とメリットです。

6-8.更生手続の終結

更生計画に基づいた債務の弁済が終了したとき、もしくは3分の2以上の額の弁済が終了していて、今後も更生計画が滞りなく行われると認められた場合に、裁判所によって更生手続終結の決定がなされます。

第二百三十九条(更生手続終結の決定):次に掲げる場合には、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、更生手続終結の決定をしなければならない。
一:更生計画が遂行された場合
二:更生計画の定めによって認められた金銭債権の総額の三分の二以上の額の弁済がされた時において、当該更生計画に不履行が生じていない場合。ただし、裁判所が、当該更生計画が遂行されないおそれがあると認めたときは、この限りでない。
三:更生計画が遂行されることが確実であると認められる場合(前号に該当する場合を除く。)
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

これによって、一連の会社更生の手続きが終了となります。

7.会社更生による従業員への影響と変化

会社更生によって、企業は再建へと取り組みますが、その会社で働く従業員にはどのような影響があるのでしょうか。

7-1.給与・退職金

会社更生の手続きが開始されても、従業員への給与は優先的に支払われます。

第百三十条(使用人の給料等):株式会社について更生手続開始の決定があった場合において、更生手続開始前六月間の当該株式会社の使用人の給料の請求権及び更生手続開始前の原因に基づいて生じた当該株式会社の使用人の身元保証金の返還請求権は、共益債権とする。
2:前項に規定する場合において、更生計画認可の決定前に退職した当該株式会社の使用人の退職手当の請求権は、退職前六月間の給料の総額に相当する額又はその退職手当の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額を共益債権とする。
3:前項の退職手当の請求権で定期金債権であるものは、同項の規定にかかわらず、各期における定期金につき、その額の三分の一に相当する額を共益債権とする。
引用:会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)

この法律の規定によって、給与の未払いがあった場合は、優先的に支払われます(第2項)。また会社に退職金に関する規定があれば、それも同様に支払われます(第3項)。

7-2.労働条件の変更

再建のために、会社が労働条件を変更したいと思うかもしれません。その場合、従業員に不利になるような給料の引き下げ・ボーナスのカット・退職金の廃止・福利厚生や手当の廃止といった「不利益変更」については、基本的に従業員一人一人から同意を得る必要があります。

ただし状況によっては、就業規則の変更によって従業員の同意なしに、不利益変更が認められることもあります。

7-3.解雇

従業員の解雇には、正当な理由が必要です。

第十六条(解雇):解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)

会社の経営状況を理由とした解雇は「整理解雇」となりますが、裁判所は整理解雇のために必要な要件として、以下の4つを挙げています。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力
  3. 人選の合理性
  4. 手続の妥当性

そのため、会社更生を理由として会社は自由に社員を解雇できるわけではありません。早期退職者の募集や関連会社への転籍、従業員との話し合いなどの必要な措置を講じたうえで、解雇が必要かどうか判断されることになるでしょう。

8.弁護士への相談方法

会社更生によって企業を再建させるには、資金繰り・負債・債権者などの状況をしっかりと確認した上で、再建が可能かを判断する必要があります。

さらに会社更生は強力な再建手法であるがゆえに、手続きも非常に複雑で法律の専門家のサポートが不可欠です。

会社更生に詳しい弁護士に相談すれば、会社更生が本当に自社にとってベストな方法なのか、必要な費用や時間、手続きの進め方などについて細やかなアドバイスがもらえるでしょう。

なるべく早いタイミングで弁護士に相談することが、会社更生によって自社を再建させるための近道です。

相談は10分からでも可能ですので、自社の状況を簡単にまとめた上で、まずは弁護士にご相談なさってください。

9.会社更生に関するよくある質問

会社更生に関して、よくある質問を解説します。

9-1.会社更生以外にどんな倒産手続きがある?

まず会社の倒産は、「私的倒産」と「法的倒産」の2つに大きく分けられます。

  • 私的倒産:法的な手続きを経ずに、債権者と債務者の話し合いで行う倒産手続き。
  • 法的倒産:法的手続きに従って、裁判所の管轄下で行われる倒産手続き。

そして法的倒産には会社を消滅させる「清算型」と企業の再建を目指す「再建型」があり、それぞれのタイプにも法的手段によって合計4つの手続きがあります。

  • 清算型:破産手続・特別清算手続
  • 再建型:会社更生・民事再生

会社更生と民事再生については、説明した通りです。破産手続が最も一般的な倒産手続で、会社自体が消滅します。特別清算手続も結果は破産手続と同様ですが、株主や債権者の同意が必要という点で、破産よりもハードルが高い手続きです。

9-2.会社更生すると、借金はどうなる?

会社更生は再建型の倒産手続きですので、再建のために必要な借金(債務)の一部は免除されますが、それ以外の債務は返済する必要があります。

具体的には、管財人が行った財務調査をもとにした再建計画を裁判所に提出し、それをもとに債務を返済しながら企業再建を目指します。

そのため、事業継続に必要と判断された財産以外は売却するなどして、積極的に債務を返済しなければなりません。

9-3.M&A(事業譲渡)の検討は可能?

はい、M&Aを検討することも可能です。企業債権を目的として行うM&Aのことを「再生型M&A」と呼びます。

一般的なM&Aでは買い手企業・売り手企業・M&A企業の3社によって行われますが、再生型M&Aでは債権者との交渉も必要になります。

またM&Aだけではなく、採算事業だけを切り離して新しい会社を設立し、不採算事業だけを残して会社更生の手続きを行うことも可能です。

いずれにしても、自社にとってどの方法がベストなのか、弁護士と相談されると良いでしょう。

10.まとめ

  • 会社更生は事業を継続しながら企業の再建を目指す、再建型の倒産手続きのこと。強力な再建手法であるゆえに、手続きも複雑。なるべく早いタイミングで弁護士に相談することが大切。

倒産の危機に陥った企業を再建させるための手段の一つが、会社更生です。事業を継続しながら再建を目指せるため、企業にとっては非常にありがたい制度でしょう。

会社更生には経営陣の交代や高額な費用、社会的信用の低下といったデメリットもありますが、会社の存続と事業再建を目指す強力な手段として、多くの企業にとって有効な選択肢となり得ます。

しかしその反面、手続きは非常に複雑で、時間もお金もかかるため、なるべく早いタイミングで弁護士に相談して助けを請うことが大切です。

企業の状況に応じた最適な再建方法を選択するためにも、ぜひ専門家の助言を受けながら判断なさってください。

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