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住居侵入とは?【被害者側、加害者側】罰金や懲役、裁判例は?

【この記事の法律監修】  
名波 大樹弁護士(大阪弁護士会) 
名波法律事務所

「住居侵入って法律上ではどんな犯罪でどんな罰があるの?」「事件の後どのように動けばいいのかわからない。」「住居侵入が犯罪になる具体例を知りたい。」
住居侵入は良くない行為であることはわかるが、法律上でどのようなルールのもと処罰される犯罪であるか詳しく理解していない方は多いのではないでしょうか。
実際に住居侵入の事件に巻き込まれ、対応の方法がわからないと悩む方もいるかもしれません。

そこでこの記事では、住居侵入が犯罪として成立する要件や処罰の内容といった法律上の規律と、実際の刑事手続に関して知っておくべきポイントを解説します。
具体例を交えながら詳しく解説しているので、ぜひこの記事を参考に、住居侵入に関する刑法のルールや手続きへの理解を深めてみてください。


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住居侵入とは何か

住居侵入が違法な行為であることは理解していても、具体的に法律上でどのような犯罪行為として扱われるのか詳しくわかっていないという方は多いのではないでしょうか。
ここでは、住居侵入行為に関して法律上にどのような規定があるのかを確認しておきましょう。

住居侵入について定める法律

住居侵入とは、他人の生活圏である住居内に無断で入る行為を指します。
いわゆる「不法侵入」にあたる行為ですが、法律上に「不法侵入罪」という犯罪は存在しません。住居侵入行為は、次の条文に該当する場合、「住居侵入罪」という犯罪であると判断されます。

(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法(明治四十年法律第四十五号)

厳密には侵入した建物によって犯罪名が異なりますが、不法に侵入する行為は刑法上の犯罪行為であることに変わりありません。
住居侵入罪が成立した場合、犯人は刑法の定めに従って処罰されます。

不退去罪との違い

刑法第130条には、住居侵入罪と並んで「不退去罪」についても記述されています。不退去罪は住居侵入罪と類似した犯罪ですが、「立ち入った時点で違法性があるかどうか」が犯罪態様として大きく異なる点です。

  住居侵入罪 不退去罪
犯罪の態様 ・家主にとって不本意な侵入
・無許可の立ち入り
・住居への立ち入り自体には家主の許可があった
・故意ではなく過失によって侵入してしまった
・家主の要求に逆らって、退去せず居座った

不退去罪の具体例としては、訪問販売員の話を聞いた後に「帰って欲しい」と伝えたにも関わらずしつこく帰らなかった場合などがあげられます。
住居に立ち入ることそのものに違法性がある場合ならば、不退去罪が成立する余地はなく、住居侵入罪として扱われます。

住居侵入が犯罪と判断される要件

刑法第130条では、「正当な理由なく」、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」に「侵入する」行為が住居侵入罪であると定義されています。
では、具体的にこの文言に当てはまるのはどのような場合でしょうか。ここでは、住居侵入罪が成立する要件について解説します。

管理権者の意思に反する立ち入り

刑法第130条がいう「侵入する」行為とは、他人の住居等に管理権者の意思に反して立ち入ることを指します。これは、管理権者が住居に誰を立ち入らせるのかを決める権利を、住居侵入罪は保護していると判例上で解されているからです。
管理権者の意思に反した立ち入りとは、具体的に以下のような例があげられます。

  • 「入るな」と言っているのに押し入った
  • 「立入禁止」の張り紙をしている場所に入った
  • 気づかれないようにこっそり入った

無断での立ち入りは、基本的に管理権者の意思に反する行為といえます。
また、お店など一般客が出入り自由な場所であっても、管理権者の想定に反する目的で敷地に立ち入った場合も同様です。

  • 盗撮目的で銀行ATMに入った
  • お店を利用しないのに無断駐車した

このような行為に対しては、住居侵入罪を訴えられる可能性があります。

住居侵入の対象について

刑法第130条には、住居侵入の対象について、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」と定められています。
住居とは、「人が起臥寝食する場所」という意味があります。

つまり、刑法第130条が指す「人の住居」とは、自分以外の他人が生活を営んでいる場所です。住居には、ホテルなどの客室や、庭や屋根も含まれます。
また、住居以外の「邸宅・建造物・艦船」の定義は以下のとおりです。

邸宅 ・日常的には使用されていない住居
・空き家や閉鎖中の別荘など
建造物 ・住居と邸宅以外の、屋根を有し、壁や柱で支えられて土地に定着し、人の出入りに適した構造を持つもの
・官公署の庁舎、学校、工場、銀行、コンビニエンスストアなど
艦船 ・人が生活し得る程度の大きさの軍艦や船舶
・小型船舶は該当しない

邸宅・建造物・艦船への侵入行為が犯罪と認められるためには、当該建物が誰かの管理下にあることが求められます。これらの建物に管理者の意に反した侵入をする行為は、「建造物侵入罪」と呼ばれます。

正当な理由がない故意の立ち入り

無断の立ち入り行為が全て犯罪になるわけではなく、侵入の目的も犯罪の成立を判断する重要な要素です。
刑法第130条がいう「正当な理由がない」立ち入りとは、不法な目的を持って侵入する行為を指します。
以下のような違法行為を目的として侵入した場合、住居侵入罪と判断されやすいです。

  • 強盗・窃盗
  • 盗聴
  • 盗撮・のぞき
  • 脅迫・暴行・障害・殺人
  • 誘拐

逆に、「正当な理由」がある立ち入りとは、次のような例があげられます。

  • マンションの大家さんが、家賃滞納を続けている人の部屋に安否確認を目的として入った
  • 警察官が、裁判官が発した令状に基づいて強制捜査のために立ち入った

また、刑法では、罪を犯す意思がない行為は罰せられません(刑法38条1項)。そのため、「住宅の敷地と気付かずにうっかり敷地に入ってしまった」というような過失による侵入は、住居侵入罪には該当しないと判断されます。
つまり住居侵入が犯罪として成立するのは、違法な行為を目的とした場合など、故意に侵入行為をした場合です。

住居侵入の犯罪成立が認められる具体例

住居侵入罪や建造物侵入罪に当てはまる具体的な事例をご紹介します。
過去の裁判例と合わせて犯罪になりうるケースも列挙したので、ぜひ参考にしてください。

過去の裁判例

住居・建造物侵入に関して争われた代表的な裁判例をご紹介します。

「侵入」の意義を争った判例

労働組合が行う春闘において、組合員8名が夜間に郵便局舎に立ち入り、ビラ1000枚を局舎内の壁や窓ガラスに貼り付けた事件です。
郵便局舎の管理権者は組合員の立ち入り拒否を明示していなかったため、当該侵入行為が管理権者の意思に反するものであるかという点が争われました。

最終的な判断においては、郵便局舎の管理者にビラ貼り目的での立ち入りを受任する義務はなく、このような行為を警戒し、見つけた場合には退去を求めていることなどの事情が考慮されています。
そして、当該侵入行為は管理権者の意思に反するものであり、建造物侵入罪が成立すると結論づけられました。

盗撮目的の立ち入りを争った判例

現金自動預払機(ATM)を利用する客のカード暗証番号などを盗撮することを目的として銀行店舗への立ち入りが行われた事件です。
犯人たちの立ち入り行為は一見して他の利用客と変わらないため、銀行店舗への直接的な害を及ぼしていない立ち入りが建造物侵入罪として成立するのかが問題となりました。

盗撮目的の立ち入りは、管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであり、そのような行為を銀行が容認しているはずがありません。そのため、当該行為は建造物侵入罪にあたると判断されました。

住居侵入罪や建造物侵入罪が成立しうる具体的なケース

上記の裁判例以外にも、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性が高い具体的なケースとして、以下のような例があげられます。

  • 他人の家で空き巣をした
  • 強盗のために銀行や他人の家に入った
  • ストーカー目的で敷地に入った
  • 拒否しているのに親が子の家に上がり込んだ
  • ボールを取るために許可なく敷地に入った
  • 盗撮をするために学校に忍び込んだ
  • 店を利用しないのに無断駐車をした
  • 無銭飲食を目的にレストランに入った
  • 密航をするために船に乗り込んだ

住居侵入罪や建造物侵入罪の内容は、事例によってさまざまです。
明らかに違法な目的を持っているときはもちろんのこと、日常で起こり得る些細なことでも犯罪が成立する可能性はあります。

住居侵入罪に対する刑罰の種類と程度

住居侵入罪に対する刑罰に関して、刑法第130条に定められている内容は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。
しかし、これは住居侵入罪のみの刑罰に関する記述に過ぎません。実際には刑罰が下されない場合や他の犯罪との関係で刑罰が重くなることもあります。
ここでは、住居侵入罪を犯した場合に下される可能性がある処分について解説します。

微罪処分

住居侵入罪は他の犯罪と比較して軽微なものに分類されるため、微罪処分として事件が終わる可能性があります。
微罪処分とは、取り調べのもと比較的軽微な犯罪と判断した場合に、警察が検察官に事件を送致することなく、犯人の身柄を釈放する処分です。逮捕されたり刑事施設に拘束されたりしないこともあるため、社会的影響は少なく済みます。
取り調べ後に釈放されて事件は終了するため、法的な処罰はありません。

警察官から厳重注意を受けるという形です。
微罪処分の判断では、被疑者に前科が無いことや反省する様子がうかがえることなどさまざまな事情が考慮されます。そのため、住居侵入罪では微罪処分の可能性が高いと一概に言えるわけではないことを理解しておきましょう。

罰金刑

刑法第130条に定められる住居侵入罪の刑罰の一つは、「10万円以下の罰金」です。
特に初犯の場合は、被害者との示談が成立しなければ、罰金刑が科されることが多いと言えます。

罰金刑の場合は、略式起訴によって法廷での裁判が行われずに書面審査だけで事件が終了することが多いです。簡便な手続きで早く事件が終わるため早期の社会復帰を目指せますが、弁解の機会が失われることに注意しなければなりません。
また、略式起訴による罰金で事件が済んだとしても、前科はつくことを理解しておきましょう。

懲役刑

刑法第130条には、罰金刑と並んで「3年以上の懲役」が刑罰として定められています。罰金では済まされないほど悪質な犯罪であった場合は、懲役刑を科されるということになります。
ただし、初犯であるならば、多くの場合執行猶予付きの判決が下されます。
住居侵入罪だけであれば罰金刑となる可能性が高いですが、他の犯罪も合わせて行った牽連犯などの場合では、懲役刑の判決が下される可能性も少なくありません。

牽連犯の可能性

住居侵入罪は、他の罪と合わせて成立することが多い犯罪です。一連の犯行で2つ以上の犯罪が成立し、それぞれの犯罪が「目的と手段」または「原因と結果」という関係にある場合を「牽連犯」と言います。
住居侵入はそのものが目的となることは少なく、別の目的を達成するための手段として住居侵入罪が成立することが多いです。
住居侵入罪が成立する際に、合わせて成立することが多い犯罪には次のような例があげられます。

  • 窃盗
  • 強盗
  • 殺人
  • 強制わいせつ
  • 盗撮
  • 暴行

牽連犯の場合、成立する犯罪のうち最も重いものが刑罰として適用されます。そのため、住居侵入罪そのものは軽微な犯罪であっても、実際に下される刑罰は重くなる可能性が高いでしょう。

住居侵入が発覚した際の逮捕と刑事手続きの流れ

住居侵入事件が起こった後、逮捕や刑事手続きは次のような流れで行われることが多いです。

  1. 逮捕
  2. 検察に送致
  3. 検察官による勾留と取り調べ
  4. 起訴・不起訴の判断
  5. 刑事裁判

それぞれ詳しく解説します。

逮捕

住居侵入にあたっての逮捕には以下の2種類があります。

  • 現行犯逮捕
  • 通常逮捕

現行犯逮捕は、犯罪行為を行なっているところを発見され、その場で取り押さえられることです。目撃者や被害者が警察に通報することで、身柄を拘束されます。
また、住居侵入は現行犯ではなく後日に気づくことも多いです。窃盗などの被害から住居侵入が発覚し、被害者が被害届を提出することで捜査が始まります。
監視カメラなどを使って被疑者が特定されると、警察が逮捕状を持って自宅にやってきて、通常逮捕で身柄が拘束されます。

検察官に送致

警察に逮捕されると、身柄を拘束されて取り調べが行われます。
取り調べの結果微罪処分として釈放されることもありますが、微罪処分にならなければ、48時間以内に身柄と関係書類が検察官に引き継がれます。
この検察官への引き継ぎ手続きを「送致」と言い、一般的に「送検」と呼ばれるものです。

検察官による勾留と取り調べ

送致された事件を引き継いだ検察官は、被疑者の身柄を勾留する必要があるかどうかの判断を24時間以内に行います。勾留が必要であれば、裁判所に勾留請求を行います。
勾留請求が裁判官に認められると、検察官は被疑者の身柄を10日間拘束することが可能です。警察署の留置場で引き続き身柄が拘束され、取り調べを中心とした捜査が行われます。

勾留期限までに必要な捜査が終了しなければ、さらに10日間の勾留延長請求が可能です。
つまり、最長で20日間は勾留される可能性があります。
勾留されない場合、身柄は解放されますが、捜査自体は継続して行われます。

起訴・不起訴の判断

捜査が終了した時や勾留期間が満期になった時、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかの判断を決定しなければなりません。
起訴されれば刑事裁判が開かれるまでさらに身柄を拘束されます。ただし、保釈による一時的な身柄解放が認められる可能性もあるでしょう。
不起訴になった場合は裁判が開かれることはなく、刑罰も下されません。ただちに被疑者の身柄は解放されます。

刑事裁判

起訴された場合は、刑事裁判にて最終的な処罰を決定することになります。
有罪か無罪かが判断され、有罪の場合はどの程度の刑罰を科すべきかが決められます。

判決が確定すれば、決定した刑罰に従って刑に服しなければなりません。
罰金刑であれば罰金を支払って終了です。懲役刑の実刑判決が下されれば、一定期間は刑務所に収容されて労役を行わなければなりません。

住居侵入の処罰に関して知っておくべき注意点

住居侵入罪の刑事手続きに関して、大まかな流れとあわせて、必ず理解しておくべき法律上のルールを解説します。

住居侵入罪は非親告罪である

住居侵入罪は親告罪ではありません。
親告罪とは、被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪のことです。
住居侵入罪は非親告罪であるため、告訴がされなくても、検察官による起訴処分が可能になります。

法律に親告罪であることが明記されている犯罪では告訴期間に制限がありますが、非親告罪では特に制限はありません。ただし、時間が経てば証拠の収集が困難になり捜査が難航するため、被害届の提出は早めに行うべきです。

未遂犯も逮捕される

住居侵入罪は、未遂犯であっても逮捕され、処罰されます。
これは、刑法第132条に明記されているルールです。

(未遂罪)
第百三十二条 第百三十条の罪の未遂は、罰する。
引用:刑法(明治四十年法律第四十五号)

住居侵入罪の未遂とは、以下のような状況があげられます。

  • 塀をよじ登った
  • ベランダの手すりに足をかけた
  • 扉の鍵を壊そうとした

このような行動をしている際に住人に見つかるなどして犯行を中止した場合は、住居侵入罪の未遂犯です。現行犯逮捕されるか、後日に逮捕状が発されて通常逮捕される可能性があります。
ただし、未遂犯であれば量刑が軽くなることがあります。以下は、未遂犯の刑の減免について定めた規定です。

(未遂減免)
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
引用:刑法(明治四十年法律第四十五号)

自分の意思で犯罪を中止したならば必ず刑が減軽されますが、外部要因によって犯行を中止したならば、刑を減軽するかどうかは裁判官の判断に委ねられます。
また、未遂犯であれば微罪処分として扱われる可能性もあるでしょう。
刑が軽くなることはあるものの、もし起訴されて有罪判決が下されれば、未遂犯でも処罰が科されて前科がつくことを理解しておきましょう。

時効がある

住居侵入罪には時効があります。時効を過ぎれば、犯人が起訴されることはなくなります。
刑事訴訟法第250条2項6号によると、住居侵入罪の時効は3年です。

時効のカウントは犯罪行為の終了時にスタートするため、住居侵入罪の場合は、侵入した敷地の外に出た時点が起算点になります。
住居侵入罪と合わせて他の犯罪も成立している牽連犯の場合、時効期間はより重い犯罪のルールが適用されることに注意が必要です。

民事上の損賠賠償責任が発生する可能性もある

住居侵入の犯罪に関しては、刑事罰だけでなく民事上の損害賠償責任が問われる可能性もあります。
住居侵入にあたって請求されることの多い損害賠償の内容には、以下のような例があげられます。

  • 侵入時に壊された窓の修復費
  • 破壊されたり汚されたりした物の弁償
  • 侵入されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料

損害賠償請求権の時効は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年です(民法724条)。また、侵入が行われた時から20年が経過した場合も損害賠償請求権は消滅します。
犯行終了時を起算点とする刑法の時効と違い、被害者が損害に気づいて犯人が判明した時点から時効期間を計算することに注意が必要です。

【被害者】住居侵入をされた場合に取るべき対応方法

ここでは、住居侵入をされた被害者側の方が、事件発覚時に取るべき対応について解説します。
警察が動いてくれない場合の対処法や具体的な手続きについて詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてください。

被害届を出す

住居侵入の被害にあった場合、まずは早急に警察へ被害届を提出しましょう。被害届を出すことによって、警察に事件が発生したことが伝わり、捜査のきっかけを作ることが可能です。
被害届の目的は、どのような被害にあったかを警察に申告することであるため、警察相談専用電話である「#9110」番を利用することでも、同様の効果を得られます。

ただし、被害届や相談電話はあくまで捜査のきっかけを作るに過ぎません。警察が捜査を開始することを義務付ける効果はないため、被害届を出したからといって必ずしも警察が動いてくれるとは限らないことに注意が必要です。

告訴状を提出する

加害者への処罰をより強く求めたい場合は、被害届だけでなく告訴状を提出することが効果的です。告訴状は「犯人の処罰を求める意思表示」をする書類であり、受理した捜査機関に法律上の捜査義務が生じます。
住居侵入罪は非親告罪であるため告訴状の提出が必須というわけではありませんが、告訴状を提出した方が犯人を追及する効果は得やすいでしょう。

ただし、告訴状は強い効力を持つ反面、受理のハードルが高い点がデメリットです。
告訴状を自力で作成することも可能ですが、多くの場合は弁護士や行政書士、司法書士などの専門家に依頼をする必要があります。

被害の証拠を集める

被害を訴える主張をより強くするためには、証拠を集めることが重要です。信憑性の高い証拠であれば、刑事裁判においても有利に働きます。
刑事事件における証拠には、以下の3種類があります。

  • 物証:映像・音声・遺留物など
  • 書証:供述調書・鑑定書など
  • 人証:目撃者証言・アリバイ証言など

以下は、住居侵入において証拠となり得るものの具体例です。

  • 防犯カメラの映像
  • 犯人の遺留物(足跡・指紋・スマホ・名刺など)
  • 目撃者の証言

提出した証拠から認定できる事実のうち、何を判決の決定に使うかは裁判官が判断します。
そのため、まずはできる限りの使えそうな証拠を集めることが重要です。

弁護士に相談する

住居侵入の被害にあった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
被害届を警察に提出して後は捜査機関に任せるという手段もありますが、警察や検察が必ずしも自分が納得できる捜査を行なってくれるとは限りません。
しかし、告訴状の作成には専門的な知見が求められます。行政書士や司法書士に依頼する選択もありますが、弁護士に依頼すれば、告訴状の作成以外にもさまざまなサポートを受けられることが魅力です。

弁護士は、証拠集めなどの捜査関連の手続きや、告訴に関連する相談やアドバイスを行えます。さらに、捜査官との告訴相談への同席も可能であり、これは弁護士のみに許された業務です。
犯人側から示談交渉を持ちかけられた際にも対応を任せられるため、刑事手続の専門家である弁護士に一連のサポートを依頼するメリットはかなり大きいと言えます。
弁護士に依頼する費用の相場は事務所によってさまざまですが、初回は無料相談を実施しているところもあるため、お気軽に相談してみることをおすすめします。

【加害者】住居侵入をしてしまった場合に取るべき対応方法

ここでは、住居侵入をしてしまった加害者側が取るべき対応について解説します。
処罰をできる限り軽くするために必要な行動を詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてください。

自首する

住居侵入をしてしまった場合は、まず自首を検討することが必要です。
住居侵入罪では、現行犯逮捕をされなかったとしても、監視カメラ等の証拠から後日に逮捕される可能性があります。

逮捕されると身柄が拘束され、解雇や退学、周囲の人たちへの周知など多大な悪影響が生まれかねません。
自首を行えば、逃走したり証拠を隠滅したりするつもりはない姿勢を示すことができ、逮捕される確率が下がります。逮捕される可能性が高いと感じるならば、その後の悪い状況を少しでも軽減するために、自首することが効果的です。

反省・改善の意思を示す

処罰を少しでも軽くしてもらうためには、検察官や裁判官に反省と改善の意思を示すことが重要です。再犯に及ばない可能性が高いことなどを理解してもらえるように図りましょう。
被害者から損害賠償請求などがあれば誠実に応じることも必要です。

被害者と示談交渉を進める

住居侵入で不起訴や減刑を得るためには、被害者と示談をまとめることが重要です。
検察官による処分が決定する前に示談ができれば、不起訴にしてもらえる可能性が高まります。また、起訴されたとしても略式起訴による罰金刑で終わることが期待できます。
示談交渉は以下のような流れで行うことが一般的です。

  1. 被害者に示談条件を提示する
  2. 示談条件を交渉する
  3. 示談書を作成して締結する
  4. 示談金を支払う
  5. 示談書を裁判所等に提出する

被害者がいる刑事事件において示談がまとまっていることは、かなり大きな効果を持ちます。示談交渉を穏便かつ迅速に進めることは非常に重要な手段です。

弁護士に相談する

住居侵入をしてしまった場合は、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談をすることで、以下のようなメリットがあります。

  • 逮捕の可能性や自首のタイミングの判断がわかる
  • 身柄が拘束された際、外部への連絡や取り調べへの助言、学校や勤務先への連絡の配慮要請などを行ってくれる
  • 逮捕前に弁護士に相談すると、逮捕時に弁護士を指定して接見してもらえる
  • 被害者との示談交渉を一任できる

逮捕される前にいち早く弁護士に相談をしておくことで、その後のサポートをスムーズに受けることが可能です。
また、家族が逮捕された場合は72時間以内の刑事弁護活動がその後の状況を大きく左右するため、できる限り早く弁護士に相談することが重要です。
身柄を拘束される刑事手続において弁護士をつけないことは大きなリスクを伴います。

  • 逮捕の可能性が高まる上に身柄の釈放が遅くなる
  • 被害者と連絡が取れず示談交渉ができない
  • 刑事事件の手続きを全て自分でやらなければならない
  • 取り調べで不当な扱いを受けていてもわからない
  • 勾留中の接見に支障が出る
  • 不起訴処分を得にくい

できる限り処罰を軽くし、早期の解決を目指して社会復帰をしたいならば、弁護士のサポートをつけることは必須と言えるでしょう。

住居侵入に関するよくある質問

住居侵入に関連してよくある質問についてご説明します。

認知件数に対する検挙、逮捕数はどの程度?

令和4年度の警視庁の統計によると、「侵入窃盗」の認知件数は36,588件、検挙件数は22,139件です。検挙率は60.5%であり、刑事事件全体の検挙率が31.4%であることを踏まえれば、比較的高い数値と言えます。

罰金や慰謝料を払えない場合は?

罰金を期限までに一括納付できない場合、検察庁から支払いの督促状が届きます。
督促状が送付されても罰金が支払われない場合は強制執行で財産が差し押さえられ、差し押さえる財産が足りなければ、労役場(刑務所)に収容され、労役によって罰金を支払うことになります。
慰謝料を支払えない場合は、相手方に減額や分割払いを打診することが必要です。

引越し費用は負担される?

引越しが住居侵入に起因するものであれば、費用を請求できる可能性はあります。
示談条件に引越し費用を上乗せする手段が考えられます。

まとめ

住居侵入は、違法な目的のもと管理権者の意思に反する立ち入りを行った場合、刑法上の犯罪行為に該当します。
住居侵入罪や建造物侵入罪そのものは軽微な犯罪です。しかし、住居侵入だけを目的に犯行が行われることは少なく、他の犯罪行為と合わせた牽連犯として犯罪が成立することが多いため、重い罰金刑や懲役刑が科されることもあります。

被害者は、告訴状や証拠集めをすることで、犯人の責任をより強く追及することが可能です。加害者は、自首や示談交渉を活用して、できる限り量刑を軽くすることを図りましょう。
刑事手続では、スピード感のある対応や専門的な知見に基づく判断が必要です。裁判や一連の手続きでより納得できる結果を得るためには、早めに弁護士に相談をして、専門的なアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。

 

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