債務整理とクレジットカードの関係は?継続して使える?新規に作成するには
【この記事の法律監修】
金 浩俊弁護士(第二東京弁護士会)
金法律事務所
【この記事で学べる事】
・クレジットカードの利用分の債務整理は可能か
・クレジットカードがある場合の債務整理の注意点
・債務整理をした場合のクレジットカードの利用
・債務整理後にクレジットカードの契約をする場合の注意点
生活のあらゆる面で利用することになるのがクレジットカードです。
債務整理をするにあたっては。クレジットカードの債務についての債務整理ができるのか、と債務整理をした場合のクレジットカードの利用への影響という2つの問題があります。
本記事では、債務整理とクレジットカードの関係について解説します。
1.クレジットカード利用分の債務整理は可能か
クレジットカード利用分の債務整理は可能なのでしょうか。
1-1.クレジットカード利用分の債務整理も可能
クレジットカード利用分の債務整理も可能です。
クレジットカードを持っている場合、次の2つの種類の債務を負うことになります。
1-1-1.ショッピング分の債務整理
クレジットカードで物を買ったり、サービスを受けるといった、ショッピングについては、借金ではなく立替金という分類になります。
借金とは異なるのですが、債務という点では異ならず、1回払い・分割払いなど支払い方法の違いも関係なく、債務整理が可能です。
1-1-2.キャッシング分の債務整理
キャッシング分は借金ですので、銀行の住宅ローンなどの各種ローン・消費者金融の借入れと同様に債務整理が可能です。
もっとも、キャッシング分だけを債務整理して、ショッピング分は従来通り利用するなど、キャッシングとショッピングを分けることは難しいので注意しましょう。
1-2.クレジットカードの債務整理方法・費用・かかる期間・専門家の選び方
クレジットカードなどの債務についての債務整理方法と債務整理にかかる費用や期間、専門家の選び方について見てみましょう。
1-2-1.クレジットカードの債務整理方法
債務整理には主に、貸金業者と交渉を行う任意整理・裁判所に申し立てて債務を免責してもらう自己破産・裁判所に申し立てて借金を減額して返済する個人再生があります。
任意整理をする場合には、クレジットカード会社など債権者と交渉をして、利息・遅延損害金をカットしてもらい36~60回程度の分割で支払っていくものです。
任意整理では返済できない場合には自己破産によって債務の免責をしてもらいますが、職業制限がある・住宅ローンで購入した自宅を維持したい、といった事情がある場合には個人再生を利用することもできます。
1-2-2.クレジットカードの債務整理の費用と期間
クレジットカードについて債務整理をする場合の費用と期間を確認しましょう。
まず、債務整理に関する相談料ですが30分5,000円程度が相場です。
もっとも、債務整理については支払いが難しい状況である人も多いことから、多くの事務所が相談を無料で行っています。
クレジットカードについて任意整理をする場合には、次の費用がかかります。
- 着手金:1社あたり2~5万円
- 解決報酬金:1社あたり0~2万円
- 減額報酬:減額に成功した分の10%
任意整理の場合、特殊な事情がある債権者について着手金を増額されることがあるのですが、クレジットカードの場合は、通常の借金と同様に債務整理を行うことが通常です。
また、ショッピングとキャッシング両方あっても1社と計算します。
任意整理の期間としては3~6か月程度の期間がかかります。
自己破産や個人再生の費用相場については、以下のとおりです。
自己破産
- 着手金30~50万円
- 報酬金20~30万円
個人再生
- 着手金30万円
- 報酬金20~30万円
自己破産にかかる期間は同時廃止であれば3~6ヵ月程度、管財事件であれば6ヵ月~1年程度がかかり、個人再生は6ヵ月~1年程度です。
1-2-3.クレジットカードの債務整理をする場合の専門家の選び方
クレジットカードの債務整理をする場合、専門家はどのように選べば良いのでしょうか。
債務整理の専門家選びで重要なのは、次の3つのポイントです。
- 債務整理に取り組んでいる
- 債務整理の実績がある
- 話しやすい専門家である
- 懲戒処分を受けていない
- 自己破産・個人再生をする場合には弁護士に
まず、債務整理を行える専門家としては弁護士・司法書士が該当しますが、各弁護士・司法書士にはそれぞれ注力している専門分野があります。
例えば、借金問題に特化している事務所・借金問題を中心に取り扱っている事務所・借金問題も取り扱っている事務所・債務整理は取り扱わない事務所など、事務所ごとに性格があります。
各専門家のホームページを確認して、債務整理を取り扱っているか、債務整理の実績がどの程度あるのかを確認するようにしましょう。
また、相談の際に話しやすい・相談しやすい専門家であるかどうかも重要です。。専門家の中には高圧的であったりコミュニケーションが難しい人も一定数いますので、まずは相談してみて、話しやすく相談しやすい専門家を選ぶことをおすすめします。
債務整理は3か月から長いと1年を超えることもあり、長期間にわたって専門家とコミュニケーションをとることになるので、なるべくストレスを感じにくい専門家を選ぶようにしましょう。
専門家の中には所属している弁護士会・司法書士会から懲戒処分を受けていることがありまますが、なるべく懲戒歴のない専門家に相談することをおすすめします。懲戒歴はインターネット検索で確認することができます。
なお、自己破産・個人再生を検討している場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
1-3.クレジットカードの債務整理をすると起こること
クレジットカードの債務整理をすると次の4つのことが起こります。
1-3-1.対象となるクレジットカードはすぐに使えなくなる
債務整理の対象となるクレジットカードはすぐに使えなくなります。
債務整理を専門家に依頼すると、各専門家からクレジットカード会社に受任通知を送ります。受任通知を送るとクレジットカード会社からの直接の取り立ては止まりますが、該当のクレジットカードでの決済ができなくなってしまいます。
そのため、該当のクレジットカードで支払を行っている各サービスについては、支払方法の変更が必要となります。
また、クレジットカードの利用で還元されるポイントなども利用できなくなります。
1-3-2.ブラックリスト
債務整理をすることでブラックリストに載ります。
ブラックリストとは、債務整理などの返済が期待できないような事情が発生した場合に、その情報(異動情報)が信用情報に登録されたために、信用情報に基づく審査を行う取引が難しくなることをいいます。
債務整理をすると、債務整理をしたことが信用情報に載るのでブラックリストとなり、新たな借入を行うことやクレジットカードを作ること、分割払で物品を購入することなどが非常に難しくなります。
1-3-3.ブラックリスト後も社内ブラックとしてクレジットカード等の契約はできない
上記のブラックリストは一定の期間が経過すれば情報が削除されるのですが、ブラックリストから削除された後も債務整理の対象となった会社との間でクレジットカードを作る・借金をすることが難しくなる場合があります。このような状態を、社内ブラックと呼んでいます。
この社内ブラックに関しては、ブラックリストのように明確に定められた期間があるわけではないので、ずっと契約できないままである可能性もあります。
また、クレジットカード会社の中には、金融グループ会社のうちの1社であることがあり、この場合、そのグループ会社全部と取引できなくなる可能性もあります。
1-3-4.購入した物を引き上げられることがある
購入した物を引き上げられる可能性があります。
クレジットカードで購入した物については、完済するまでの所有権をクレジットカード発行会社が所有している場合があります。
そのため、完済前に債務整理をした場合、クレジットカード会社はその物の所有権に基づいて物を引き上げることが可能です。
そして、クレジットカード会社は引き上げた物を売却し、売却代金で債務に充当します。
このような形式で債務の担保をすることを譲渡担保と呼んでおり、クレジットカードでブランド品・家電製品・貴金属などを購入した場合、債務整理で返済ができなくなると引き上げられる場合があります。
なお、最初から転売してお金に換えるつもりでブランド品・家電製品・貴金属を購入して転売した場合や、ショッピング枠現金化業者を利用した場合には、自己破産をする場合に免責不許可事由となるので注意しましょう。
1-4.クレジットカードについての債務整理のメリットは?
クレジットカードについて債務整理をするメリットとしては次のものが挙げられます。
1-4-1.生活を立て直すことができる
任意整理・個人再生によって計画的な分割払を組みなおす・自己破産によって債務を免責してもらう、といったことによって、借金・債務の問題から解放されます。
その結果、生活を立て直すことができます。
1-4-2.精神的にも落ち着くことができる
クレジットカードの支払いやほかの借金の返済が遅れている場合には、督促を受けることになります。
何度も電話や書面で督促を受けることになると、精神的にもきついと感じることがあると思います。
専門家に債務整理の依頼をすると、専門家からクレジットカード会社に通知を送ることでクレジットカード会社から本人への取立て督促がストップすることになります。
督促がなくなるため、落ち着いて生活を送りながら債務整理に取り組むことができます。
1-5.クレジットカードについての債務整理のデメリットは?
一方でクレジットカードなどの債務整理をするデメリットには次のものが挙げられます。
1-5-1.ブラックリストとなる
上述したように、債務整理をするとブラックリストに載ります。
クレジットカードの新規契約や更新ができないだけではなく、金融機関からの借金や物品を分割払で購入することが難しくなるので注意が必要です。
1-5-2.手続きで不利益を被ることがある
借金を減額してもらったり返済の全部又は一部を免除してもらうメリットはあるのですが、自己破産の場合には職業制限となったり、債務整理がきっかけで連帯保証人に請求されるなどの不利益を被ることがあります。
1-6.債務整理を避けるためのクレジットカード利用のコツ
債務整理を避けるためのクレジットカード利用のコツとしては次のものが挙げられます。
1-6-1.リボ払いは利用しない
リボ払いはなるべく利用をしないことがコツの1つ目です。
リボ払いとは、クレジット残額にかかわらず、一定の額を支払う方式の返済方法です。
毎月支払う額が一定であるので、支払いの管理がしやすく、一括払いで支払いとなっているものが払えない場合に後からでもリボ払いにできるシステムがあるなどで利用しやすいという特性があります。
その反面、設定した支払いができれば良いため、残額がいくらなのか確認しないことが多く、ついつい利用して残額を増やしてしまってあっという間に限度額まで借入を増やしてしまうことが多くあります。
そのため、債務整理を避けるためにはリボ払いは利用しないようにしましょう。
1-6-2.返済できるときに早めに繰り上げ返済する
返済できるときには早めに繰り上げ返済しましょう。
借金返済で負担となる利息は、残高に利率をかけて日ごとの利息が計算されます。
そのため、残額が少なければ少ないほど、利息の負担も少ないです。
繰り上げ返済は元金を減らす効果があり、トータルでかかる利息の軽減につながります。
ボーナス・臨時輸入などがあるようなケースでは、これらを使って早めに繰り上げ返済を行うのが望ましいでしょう。
1-7.クレジットカードの債務整理をする場合の注意点
クレジットカードの債務整理をする場合の注意点について確認しましょう。
1-7-1.複数のクレジットカードがある場合
複数のクレジットカードがある場合でも債務整理は可能です。
また、債務整理のうち、一つのクレジットカードについては任意整理をするけども、もう一つのクレジットカードについては任意整理はしない、ということも可能です。
そのため、クレジットカードを1枚は依然有効にしておくことはできます。
もっとも、後述しますが、更新期限に使えなくなる可能性があるので注意しましょう。
1-7-2.クレジットカード会社とはどのような交渉をするのか
クレジットカードは上述したように借金ではなく立替金という種類のもので、借金とは異なります。
もっとも、支払い義務がある点で債務には変わりなく、任意整理をする場合でも借金と同様の債務の一部免除や分割払の交渉をします。
例えば、借金総額を36回程度を目安に分割で支払う交渉を行います。
キャッシング残高がある場合には、キャッシング残高も合算した金額を分割で支払います。
2.債務整理をした場合のクレジットカードの利用について
債務整理をした場合にクレジットカードの利用はできるのでしょうか。
2-1.債務整理の対象となった会社のクレジットカードは利用できない
債務整理の対象となった会社のクレジットカードが利用できなくなるのは上述した通りです。
2-2.債務整理の対象となっていない会社のクレジットカードも更新時に利用できなくなる
債務整理のうち任意整理をすれば、クレジットカード会社のみ債務整理をしないことも可能です。
この場合、あらたなクレジットカードは作れませんが、利用しているクレジットカードはそのまま利用が可能です。
もっとも、クレジットカードには有効期限があり、一定期間が経過すると更新する必要があります。
この更新をする際にも信用情報に基づく審査が行われ、この時点でブラックリストとなっているため、更新できず使えなくなる可能性があります。
3.債務整理後にクレジットカードを使う方法
債務整理後にクレジットカードを使うにはどのようにすれば良いのでしょうか。
3-1.デビットカード・プリペイドカード・コンビニ払いを活用
ブラックリストとなっている間はクレジットカードを作ることができません。
しかし、クレジットカードと同じようにインターネットショッピングや各種決済に利用できるものとして、デビットカード・プリペイドカードがあります。
デビットカードとは、カードでの支払いが銀行の残高から行われるカードであり、口座を開設している銀行で作ることができます。
プリペイドカードは、事前に入金をして、その入金したお金の限度で利用できるカードで、銀行その他の会社が発行しています。
クレジットカードと同様の国際ブランドで決済ができるので、インターネットショッピングなどの利用にはほぼ問題ありません。
また、ショッピングサイトなどで買い物をする場合には、コンビニ払いという方法があるのですが、これもブラックリストとなった場合でも利用が可能です。
3-2.ブラックリストが削除された後に契約をする場合の注意点
上述したブラックリストから削除された後は、信用情報に異動が記載されていない状況です(このような状態を俗に「ホワイト」と呼びます)。
もっとも、ブラックリストではないという理由だけでクレジットカードを作れるわけではありません。
例えば25歳で任意整理を行い、28歳で完済し、33歳でブラックリストが消えたという例があるとします。
一般的な33歳の方であれば、クレジットカードの利用機会があることが多いと思います。
そのようなクレジットカードの利用履歴が信用情報には保存されており、その情報を見て審査では「めったにカードも使わず、使ったとしても少額ですぐに返済している。」という情報を得ることができます。
他方で、債務整理をした後にその情報が消えた信用情報では(何も載っていないホワイトという状態)、信用情報からは返済できる人なのかどうか判断が全くできない、という状態となり、クレジットカードの審査においてマイナスの影響がある場合があります。
3-2-1.債務整理をしたクレジットカード会社・系列の会社には申し込まない
債務整理をしたクレジットカード会社およびその系列の会社には申し込まないようにしましょう。
上述したように、一度債務整理をした会社との契約およびその系列の会社との契約は、社内ブラックという理由から審査が通りません。これが理由で審査落ちすると、審査落ちした記録が信用情報に残ってしまって、次の契約がさらに難しくなります。
以上より、債務整理をしたクレジットカード会社・その系列の会社には申し込まないようにしましょう。
3-2-2.一度の複数の会社に申し込みをしない
一度に複数の会社に申し込みをしないようにしましょう。
たくさん申し込めばどこかは審査を通してくれるかもしれないと考えた結果、一度に複数の申し込みをするケースがあります。
クレジットカードの申し込みをしたことも信用情報に登録される情報であり、一度に複数の申し込みをしていることはクレジットカード会社は認識できます。
複数の申し込みを一度に、あるいは短い期間に行うことは、お金に困っていると見られてしまい、審査が下りなくなってしまいます(このような状態を「申し込みブラック」といいます)。
3-2-3.新たに申し込む際には限度額を少なく・キャッシング枠を0に
新たに申し込む際には、利用限度額を少な目にし、かつキャッシング枠を0にして申し込みをしましょう。
上述したように、債務整理後は信用情報がホワイトという状態で、審査が通りづらい状態です。
利用限度額が少なく、キャッシング枠が0なのであれば、その分審査も通りやすいといえます。
3-2-4.債務整理をした後のお金の管理をしっかりと
クレジットカードは債務整理後はブラックリストの期間である5〜7年は使えなくなり、それまではデビットカード・プリペイドカードの利用が欠かせません。
この間は借入をしないで生活ができるように家計の管理を整え、無駄遣いをしないような習慣をつけるのが良いでしょう。
4.クレジットカードの債務整理をする場合には弁護士に相談するのがおすすめ
クレジットカードの債務整理をする場合には弁護士に相談しましょう。
債務整理を依頼できる専門家には、弁護士と司法書士がいます。
債務整理のような法律事務については弁護士法72条によって、業務として行えるのは、法律の例外がある場合を除き、弁護士に限られています。
司法書士は司法書士法の規定によって一部の業務ができることから、司法書士も債務整理を行っています。
しかし、司法書士の権限は制限されており、次のような行為を業務として行うことができません。
- 140万円を超える案件
- 裁判になって控訴された場合
- 自己破産・個人再生の書類作成以外の手続き(裁判所などへの同行など)
また、司法書士の本来の業務は不動産登記や商業登記などの登記に関する業務であり、相手との交渉や裁判所での手続きについての業務は一部権限が認められているに過ぎません。
弁護士は債務整理のみならず交渉・裁判所での手続きを常に行っているので、より有利に手続きを進めたいのであれば、弁護士に相談することをおすすめします。
5.まとめ
本記事では、債務整理とクレジットカードの関係についてお伝えしました。
クレジットカードの利用は借金ではなく立替金という扱いになりますが、借金と同様に債務整理が可能です。
また、債務整理後にクレジットカードを契約する際には、通常と異なる注意が必要なので、あらためて確認しておくようにしましょう。
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