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交通事故の慰謝料とは?【被害者側】種類や相場、弁護士に依頼すると増額する可能性は?

【この記事の執筆者】
岡島 賢太 弁護士(第二東京弁護士会)
秋葉原あやめ法律事務所

「交通事故にあってしまった。どのような慰謝料が受け取れるの?詳しく知りたい!」

交通事故にあって被害者となってしまったら、加害者に「慰謝料」を請求することができます。

加害者に請求できるのは、狭い意味での「慰謝料」だけではありません。これに加えて、さまざまな種類の損害賠償金を請求することができます。

また、請求できる損害賠償金を増額する方法もあります。

この記事では、交通事故の慰謝料(損害賠償金)について、種類や相場などについて詳しく解説しています。

この記事を読むことで、交通事故にあったらどのような賠償金が受け取れるのか、受け取る賠償金を増額するにはどうすればいいのかなどを知ることができます。

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交通事故の「慰謝料」とは?

交通事故にあったら「慰謝料」を請求できるということは、漠然と知っている方も多いでしょう。

交通事故にあった際に請求できる「慰謝料」には、日常用語としての(広い意味での)慰謝料と専門用語としての(狭い意味での)慰謝料があります。

日常用語としての慰謝料とは、交通事故にあったことで加害者から受け取れるお金全てを指します。

これに対して、専門用語としての慰謝料とは、交通事故によって被害者に生じた苦痛その他の精神的損害を償うためのお金のことをいいます。

専門用語としての慰謝料は精神的損害に限定されるのに対して、日常用語としての慰謝料はその他の損害も含むので、より広い意味で使われるということになります。

慰謝料と「損害賠償金」の違い

交通事故では、「損害賠償金(賠償金)」という言葉も使われます。

損害賠償金とは、交通事故によって生じた損害を償うためのお金のことです。

狭い意味での慰謝料は精神的損害への償いだけを指しますが、損害賠償金は精神的損害だけでなく、消極損害、積極損害、物的損害というその他の損害への償いのお金をも含んでいます。

損害賠償金が最も広い概念であり、(狭い意味の)慰謝料は損害賠償金の一部であると考えることができます。また、(広い意味の)慰謝料は損害賠償金と基本的に同じ概念といえます。

この記事では、ここからは単に「慰謝料」というと専門用語での(狭い意味の)慰謝料を指すこととし、交通事故で生じた損害全てに対する償いのお金のことは「損害賠償金(賠償金)」ということとします。

慰謝料と「示談金」の違い

「示談金」とは、加害者側との示談が成立して実際に支払われるお金全般のことをいいます。

示談金はあくまでも示談交渉の結果として実際に支払われるお金のことなので、精神的損害を償うお金である(狭い意味での)「慰謝料」とは意味が異なります。

また、「裁判を起こせば損害賠償金として請求できる権利」とも額が少しずれることがあります。

例えば、裁判を起こせば損害賠償金として請求できる権利が1,000万円だったとしても、示談交渉の結果、すぐに一括で支払ってもらうことを優先してある程度割り引いた800万円で示談することがあります。このような場合には、示談金は損害賠償金として請求できる権利よりも少し低い額となることがあります。

交通事故賠償金の「3つの基準」とは

交通事故の賠償金は、実はひとつだけの基準に基づいて算定されるわけではありません。

交通事故の賠償金を算定するにあたっては、大きく分けて3つの基準があり、場面に応じて基準が使い分けられています。

交通事故の賠償金を算定するために用いられている3つの基準とは、次の基準です。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判基準)

これらの基準による賠償金額は「自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準(裁判基準)」という関係にあり、「弁護士基準(裁判基準)」で算定した場合が最も賠償金の額が高くなります。

ここからは、交通事故賠償金の3つの基準についてご説明します。

自賠責基準

「自賠責基準」は、自賠責保険から受け取る賠償金の額を計算する際に用いられる基準です。

「自賠責保険」(自動車損害賠償責任保険)とは、全ての自動車が強制的に加入しなければならない保険であり、交通事故の被害者に対して最低限度の補償をする目的で設けられている保険です。

被害者への最低限度の補償という趣旨から、自賠責基準で算定される賠償金の額は、通常受け取れる賠償金の相場よりも相当低い額に抑えられています。

任意保険基準

「任意保険基準」とは、交通事故の加害者が加入している任意保険会社が支払う賠償金を算定する際に用いられる基準です。

任意保険基準に基づく賠償金の額は自賠責基準の賠償金よりも多少高いですが、「被害者に生じた損害の全部を賠償するだけの金額」よりは低く抑えられています。

任意保険の会社は、あくまでも利益を追求する必要がある民間の営利企業であることから、交通事故の被害者に支払う保険金の額が高くなると利益が減って都合が悪いともいえます。このため、損害の全部を賠償するだけの金額よりも低い金額を基準として定めているのです。

任意保険基準は各保険会社が独自に設定している基準であることから、一般には公開されていません。

弁護士基準(裁判基準)

「弁護士基準(裁判基準)」とは、被害者に生じた損害の全部を賠償するに足りる金額を賠償金の基準額として設定した基準のことです。

「弁護士基準」は「裁判基準」とも呼ばれます。これは、仮に裁判になった場合には裁判所がこの基準を基礎にして賠償金の額を算定するからです。

弁護士基準と裁判基準は、基本的には同じものと考えて差し支えありません。

弁護士が任意保険会社との間で示談交渉を行う際には、任意保険基準ではなく弁護士基準を用います。

被害者に生じた損害全部を賠償する基準であることから、交通事故賠償金の3つの基準の中では、弁護士基準が最も賠償金の額が高くなります。

弁護士は、いざとなれば示談が決裂しても訴訟を提起して裁判の中で賠償金を請求していくこともできます。このため、交渉の段階から裁判で使われるような最も賠償額が高くなる基準を用いて保険会社と交渉するのです。

弁護士基準ではどれくらいの増額が見込める?

弁護士基準では、自賠責基準で算定した場合と比べると賠償金の額がおおむね2倍以上になることが多いです。

弁護士基準と任意保険基準を比べると、任意保険基準が各保険会社により異なるため一概には言えませんが、基本的には自賠責基準より少し高い程度に設定されていることが多いため、やはり相当程度の増額が見込めます。

例えば、後遺障害が残った場合で最も軽い後遺障害等級14級のケース(むち打ちで神経症状が残ったケースなど)では、自賠責基準によれば後遺障害慰謝料の額が32万円とされるのに対し、弁護士基準では110万円とされ、後遺障害慰謝料だけを見ても約3倍強にまで増額されます。

交通事故の4つの損害賠償金

交通事故の賠償金といえばまず「慰謝料」が思い浮かぶかもしれませんが、賠償金の種類は慰謝料だけではありません。

交通事故の賠償金には、大きく分けて次の4つがあります。

  • 慰謝料
  • 消極損害
  • 積極損害
  • 物的損害

また、これらの種類の中にも細かな項目がいくつもあります。

まずは、この4種類についてご説明します。

慰謝料

「慰謝料」とは、交通事故によって受けた精神的損害への償いのお金のことです。

交通事故の被害にあうと、単にけがをしたり物が壊れたりといった物理的な損害が生じるだけでなく、それらに関連して「苦しい」「つらい」という精神的な損害も生じます。

この精神的な損害に対しても、何らかの償いをする必要があります。そこで、物理的な損害への償いとは別に「慰謝料」という形で償いのお金が支払われるのです。

消極損害

「消極損害」とは、もし交通事故がなければ得られていたはずのお金のことです。これは、交通事故の被害にあってしまったことが原因で得られなくなってしまったお金と言い換えることもできます。

例えば、交通事故の被害にあってしまったために一定期間働けなくなることがあります。一定期間働けなくなると、その間の収入が得られなくなってしまいます。

このような本来得られたはずの収入は、消極損害のひとつです。

積極損害

「積極損害」とは、交通事故の被害にあってしまったために被害者が新たに支出しなければならなくなったお金のことです。

例えば、交通事故でけがを負うと、けがを治すために病院に通って治療費を支出することになります。この治療費は、交通事故の被害にあってしまったことが原因で新たに支出しなければならなくなったお金なので、積極損害のひとつです。

物的損害

「物的損害」とは、交通事故によって生じた生命や身体以外の物についての損害のことです。典型的には車に生じた損害が物的損害に含まれますが、車に限らずその他の物について損害が生じた場合でも物的損害に含まれます。

例えば、交通事故で車が壊れて修理が必要になり、修理費を支出したときは、その修理費は物的損害のひとつです。

また、例えば、交通事故の際に車に高価なパソコンを積んでおり交通事故の衝撃でそのパソコンが完全に壊れて使えなくなり買い替えが必要になった場合も、そのパソコン代金(時価相当額)は物的損害のひとつとなります。

交通事故の賠償金|慰謝料

ここからは、交通事故の4種類の賠償金について、そこに含まれる具体的な項目を詳しくご説明します。

まず、交通事故の「慰謝料」には、具体的には次の3つの項目があります。

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

これらはいずれも交通事故による精神的損害への償いのお金ですが、「交通事故によってどうなったことによる精神的損害か」が異なります。また、慰謝料額の計算方法も異なるため、それぞれを正確に分けて考えることが大切です。

入通院慰謝料


「入通院慰謝料」は、交通事故のけがで入院や通院を強いられたことによる精神的損害に対する慰謝料です。

交通事故でけがをして入院・通院をすると、そのこと自体が痛みや苦しみを伴ってつらいものです。このため、このような痛みや苦しみに対して償いのお金が支払われます。

まず、自賠責基準では、次の計算式のうちいずれか少ないほうの金額が入通院慰謝料の額となります。

  • 4,300円×実治療日数×2
  • 4,300円×総治療日数

「実治療日数」とは、実際に入院・通院した日数を日ごとに足した数のことです。

「総治療日数」とは、初診の日から治療終了の日までの総日数(期間)のことです。

例えば、交通事故のけがの治療を開始した日から終了した日までが30日間であり、その間に計10日通院したとすると、入通院慰謝料は、「4,300円×10日×2=8万6,000円」です(「実治療日数×2=20日」「総治療日数=30日」となるので、少ない「実治療日数×2」のほうで計算します)。

なお、任意保険基準は各保険会社によって異なり、また非公開であるため、具体的な例を示せませんが、自賠責基準より多少高い程度と考えておくとおおむね任意保険基準に基づき提示される額となります。

このような自賠責基準に対し、弁護士基準では、通称「赤い本」に記載された算定表に基づいて入通院慰謝料の額を算定します。

「赤い本」は、正式名称を『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)といい、一般の書店では販売されていない弁護士等の法律家向けの専門書籍です。

この本に記載されている算定基準は、過去の裁判例を基にしており、交通事故を専門に扱う部署である東京地方裁判所民事第27部(交通部)の考え方を反映したものです。

弁護士基準では、入院期間と通院期間を基に算定表を見て基準となる慰謝料の額を求めます。

算定表には、原則として適用される「別表Ⅰ」と、軽症の場合(むち打ち症で他覚症状がない場合や軽い打撲の場合等)に適用される「別表Ⅱ」があり、けがの内容・重さに応じていずれかを選んで使います。

なお、算定表の金額はあくまでもひとつの目安であり、けがの重さや治療内容などに応じて適宜算定表の金額から慰謝料が調整されることがあります。

例えば、入院期間はなく、通院期間は1か月だとすると、別表Ⅰを適用する場合には、入通院慰謝料の基準額は28万円となります。

■ 別表Ⅰ(原則として用いる表)


■ 別表Ⅱ(むち打ち症で他覚症状がない場合など軽傷の場合に用いる表)

後遺障害慰謝料

「後遺障害慰謝料」は、交通事故のけがにより後遺障害が残ってしまったことによる精神的損害に対する慰謝料です。

後遺障害慰謝料は、交通事故が原因で残ってしまった後遺症が自賠責保険で定められた後遺障害等級に該当すると認定された場合に請求できます。

何らかの後遺症が残っていれば何でもいいというわけではなく、手続きを経て後遺障害として等級を認定されなければ後遺障害慰謝料を請求することはできません。

後遺障害等級は、1級から14級までに区分されており、最も重いものが1級となります。具体的にどのような症状であればどの等級に該当するのかについては、基準が細かく定められています。また、それぞれの等級ごとに後遺障害慰謝料の基準額が定められています。

後遺障害慰謝料でも、自賠責基準と弁護士基準には違いがあり、弁護士基準に基づく基準額は、自賠責基準と比べておおむね2倍以上となっています。

例えば、最も軽い後遺障害等級14級の場合では、自賠責基準が32万円であるのに対し、弁護士基準は110万円です。

また、最も重い後遺障害等級1級(介護を要するもの)の場合では、自賠責基準が1,650万円であるのに対し、弁護士基準は2,800万円です。

 
※自賠責基準のかっこ内は介護を要する後遺障害の場合

死亡慰謝料

「死亡慰謝料」は、交通事故により被害者が死亡してしまった場合に、そのことによって本人や遺族が受けた精神的損害に対する慰謝料です。

死亡慰謝料は、亡くなった本人の分として請求権が発生するほか、亡くなった本人の遺族の分についても独自の請求権が発生します。請求権を有する遺族とは、被害者の父母、配偶者および子どもです。

例えば、交通事故で亡くなった本人の遺族として配偶者1人だけがいた場合には、次のようになります。

まず、自賠責基準では、本人の死亡慰謝料が400万円であり、遺族1人の死亡慰謝料は本人分に加えて550万円(合計950万円)です。

これに対し、弁護士基準では、「被害者が母親・配偶者である場合」に該当して2,500万円(本人分と遺族分を含んだ額)です。

■ 自賠責基準

■ 弁護士基準

この表のうち、弁護士基準の数字は遺族固有の慰謝料を含んだ金額です。

また、「被害者が一家の支柱である場合」とは、被害者が主として世帯の収入を担っており、被害者によって世帯の生計が維持されていた場合のことです。

交通事故の賠償金|消極損害

交通事故の「消極損害」には、次の3つがあります。

  • 休業損害
  • 後遺障害逸失利益
  • 死亡逸失利益

休業損害

「休業損害」とは、交通事故のけがが原因で休業した(仕事ができずに休んだ)ことが理由で減ってしまった収入のことです。休業損害が生じている場合は、収入の減少を償うためのお金を請求することができます。

休業損害の基本的な計算方法は、次のとおりです。

休業損害=休業日数×基礎収入(1日分の収入〔日額〕)

このうち、基礎収入(日額)の部分が自賠責基準と弁護士基準で異なるため、両基準で休業損害の額に差が生じます。

まず、自賠責基準では、日額は原則6,100円として計算します。

これに対し、弁護士基準では、日額は「交通事故以前の被害者の収入を日割りにした金額」を採用します。

弁護士基準での日額の具体的な計算方法は、職業によって異なります。

休業日数についても、具体的な数え方についてはルールがあり、仕事をしなかった日であれば何でも休業日数に含めることができるわけではありません。

休業日数の数え方

休業損害を計算するための休業日数は、基本的には完治・症状固定までの間に治療・リハビリのために仕事を休んだ日数です。

具体的には、次のような日が休業日数の計算の基礎となります。

  • 実際に入院・通院をしていた日
  • 医師の指示で自宅療養をしていた日

これに対して、自己判断で仕事を休み、通院等もしていなかった日などについては、休業日数の計算の基礎とすることができません。

また、完治・症状固定の日より後に仕事を休んだとしても、その分は原則として休業損害の対象外です。

後遺症が残り、症状固定後に後遺症の影響で収入が減少する場合には、その分は休業損害ではなく逸失利益として補償されます。同じ収入の減少に対する償いであっても、症状固定の前後で休業損害か逸失利益かが異なるということです。

なお、例外的に、次のような日については症状固定後であっても休業損害の対象となる可能性があります。

  • 定期的なリハビリを受けるための日
  • 手術を受けるための日

このほか、判断に迷いやすいものとして、次のような日は休業日数に含まれます。

  • 有給休暇を取得して通院した日
  • 医師の指示に従って自宅で加療した日

これに対し、次のような日は休業日数に含まれません。

  • 医師の指示に基づかず自己判断で自宅加療をした日
  • 年末年始その他の勤務先が定める休日
  • 保険会社や弁護士とのやり取りなど加療とは無関係の理由で休業した日

職業別の日額の計算方法

日額の計算方法は、職業ごとに異なります。具体的には、次のような職業に分けて計算方法を考えます。

  • 給与所得者(会社員、アルバイト・パートなど)
  • 自営業者(個人事業主など)
  • 会社役員(取締役など)
  • 家事従事者(専業主婦・兼業主婦)
  • 無職・失業者
  • 学生

「給与所得者」とは、会社員、アルバイト・パートなど、雇用されて働き、給与を得ている人のことです。

「自営業者」とは、主に個人事業主のように、雇用されずに自らの営業活動により収入を得ている人のことです。

「会社役員」とは、代表取締役、取締役、監査役など、会社の役員として収入を得ている人のことです。

「家事従事者」とは、いわゆる主婦・主夫のことです。ここには、もっぱら家事にのみ従事している専業主婦だけでなく、パートなどで働く兼業主婦も含まれます。

「無職・失業者」は、働いて収入を得ていないので基本的に休業損害が考えられないように思えますが、一定のものについては休業損害を受け取れる可能性があります。

「学生」についても、基本的には働いていないことが多いので休業損害を考えられないようにも思えますが、一定のものについては休業損害を受け取れる可能性があります。

それぞれの日額の計算方法は、ここからご説明するとおりです。

第一に、給与所得者については、「事故前3か月分の給与額÷出勤日数」が日額となります。

給与額とは、税や社会保険料などが控除される前のいわゆる「額面」のことであり、手取り額よりは多い数字となります。

第二に、自営業者については、「事故前年の確定申告書記載の所得金額÷365日」が日額となります。

自営業者が確定申告をしていない場合には、預金通帳その他の書類から所得を算出します。

第三に、会社役員については、「事故前の役員報酬のうち労働対価分の金額のみ」から日額を計算します。

会社役員が受け取る役員報酬は、働きに応じた労働対価分だけに限られず、労働の対価としてではなく利益を分け与える分も含まれることが多くあります。このような利益配当分については、休業損害の計算上除外して考えます。

第四に、家事従事者については、専業か兼業か、兼業なら収入がどの程度あるかによって計算方法が異なります。

例えば、専業主婦・主夫の場合は、「女性労働者の全年齢平均賃金額に基づいて算出した基礎収入額」を日額とします。

女性労働者の全年齢平均賃金額は、「賃金センサス」という国の統計資料に基づいて算出します。また、男女で平均賃金は異なりますが、主夫(男性)であっても公平のために女性の平均賃金に基づいて考えます。

女性労働者の全年齢平均賃金額は年によって変わりますが、近年はおおむね日額1万1,000円程度です。

第五に、無職・失業者については、休業損害を受け取れる条件として次の条件を満たさなければなりません。

  • 求職活動をしており、事故前後に就職内定を得ていた
  • 年齢や本人の意思その他の事情から見て、事故がなければ就労していた可能性が十分にある

すなわち、無職・失業中の者については、およそ働く意思がなかったり近々働く可能性が全くなかったりするような場合には休業損害の対象外ですが、近々働くことが確実だったり可能性が高かったりする場合には事故が原因で働けなくなったと考えられ、休業損害の対象となることがあります。

休業損害の対象となる場合には、「賃金センサス、内定先の給与の推定額、失業前の収入額」から日額が算出されます。

第六に、学生については、給与所得者や無職などの場合と同様に考えられます。

学生であってもアルバイトをしていれば、給与所得者として休業損害が計算されます。

また、近々就職する予定だったのに事故が原因で内定が取り消されたり留年したりして就職する時期が遅くなったのであれば、「賃金センサスや内定先の給与推定額」に基づき日額が計算されます。

後遺障害逸失利益

後遺障害(いわゆる後遺症)が残ると、それが原因で仕事が事故前と同様にできなくなったり仕事がほとんどできなくなったりすることがあります。

こうなると、交通事故が原因で後遺障害がなければ得られたはずの収入が得られなくなってしまいます。

このように、「後遺障害逸失利益」とは、後遺障害が理由となって失われた将来得られるはずの利益のことをいいます。

後遺障害逸失利益は、次の計算式により算出されます。

後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除率(ライプニッツ係数)

「労働能力喪失率」は、後遺障害で失われた労働能力を率にして表したものです。後遺障害等級の第1級から第14級までに応じて定められています。

例えば、最も軽い後遺障害等級第14級では5%、最も重い後遺障害等級第1級では100%が労働能力喪失率として定められています。


引用:労働能力喪失表|国土交通省

「中間利息控除」とは、将来にわたり少しずつもらうはずのお金を一括で現在にもらうことで得た利益を事前に控除(差し引く)ことをいいます。将来分まで現時点で一括して受け取ると、それを運用することで利息分の利益を得ることができ、その利息を差し引いて計算しないと過剰に賠償金を支払うことになるため、中間利息控除がなされます。

後遺障害逸失利益として具体的にいくら受け取れるのかは、性別、収入、年齢、後遺障害等級などに応じて大きく異なるため、個別の事情に応じて正確な計算が必要です。

概算ですが、例えば、被害者が30代だとすると、第14級(むち打ち)の後遺障害逸失利益の額は約100万円前後となることが多いです。第12級(むち打ちではないもの)あたりから1,000万円を超えてきて、労働能力喪失率が100%となる第1級〜第3級では1億円を超える可能性もあります。

死亡逸失利益

「死亡逸失利益」とは、被害者が死亡したことにより将来得られたはずの利益(給与等の収入)を失ったことによる損害のことです。

被害者が交通事故によって死亡した場合には死亡逸失利益、死亡しなかったものの後遺障害が残った場合には後遺障害逸失利益について賠償金を請求でき、後遺障害も残らなかった場合にはいずれの逸失利益も請求できないということになります。

死亡逸失利益は、次の計算式により算出されます。

死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×中間利息控除率(ライプニッツ係数)

「生活費控除率」は、被害者が亡くなることでその分将来にわたって生活費の支出がなくなり、その分を差し引くことが公平であるとの考え方から控除されるものです。

死亡逸失利益は、個別の事情に応じて大きく異なりますが、数千万円に上ることも少なくありません。

ここまでにご説明したいずれの逸失利益についても、正確な計算をご自身で行うことは難しいため、正確な数字を把握するためには交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。

交通事故の賠償金|積極損害

交通事故の「積極損害」には、次のようなものがあります。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 付添看護費
  • 入院雑費
  • 文書料
  • 器具・装具の費用

これらのうち、代表的なものについてご説明します。

治療費

交通事故でけがを負い、治療のための費用を支出した場合には、原則としてその費用の賠償を受けられます。

賠償を受けられる治療のための費用の範囲は無制限ではなく、次の条件を満たしている必要があります。

  • 交通事故と因果関係があるけがの治療のための費用であること
  • 治療開始の時から完治・症状固定の時までに支出された費用であること
  • 必要かつ相当な範囲の実費であること

まず、交通事故との因果関係がないと判断されれば、治療費の支払いは受けられません。

例えば、交通事故にあったのに多忙を理由に1か月ほど通院しておらず、その1か月の間に階段から落ちたことがあり、その後に足が痛くなってきたので初めて通院したというケースを考えてみましょう。

このケースでは、「足が痛い」というけがが交通事故によって生じたのではなく階段からの転落によって生じた可能性が排除できないかもしれません。

このような場合には、足のけがのために治療費を支出しても交通事故との因果関係が否定されてしまい、治療費の賠償を受けられない可能性があります。

また、治療費は、必要かつ相当な範囲の実費についてのみ支払いを受けられ、不必要・過剰な支出については支払いを受けられません。

例えば、医師の指示では「3日に1回程度通院すれば足りる」と言われていたのに、早く治したいという思いで毎日通院してしまうことがあるかもしれません。毎日通院すると、3日のうち2日分は医師の指示の範囲を超えており、過剰だといえます。

この場合には、この過剰である3日のうち2日分については治療費の賠償を受けられない可能性があります。

これに関連して、整骨院・接骨院に通院して施術を受けた場合の費用は、不必要なものとして支払いを受けられないことが多いです。

整骨院等の費用については、病院で主治医が整骨院・接骨院への通院が必要だと判断して通院の指示をした場合に限り、補償される可能性があります。しかし、主治医が特に何らの指示もしていなかったり必要がないと判断していたりした場合には、基本的に整骨院・接骨院にかかった費用は賠償の対象外とされます。

賠償の対象となる治療のための費用は、治療費(診察料、投薬料、検査料など)だけに限られません。治療関係費として、通院のための交通費や入院の際の日用品等の雑費などについても賠償の対象となります。

通院交通費

治療開始の時から完治・症状固定の時までの間に入院・通院をするためにかかった交通費についても、賠償を受けることができます。

賠償を受けられる交通費は、交通手段に応じて次のようになります。

  • 公共交通機関(電車・バス):実費の全額(運賃等)
  • 自家用車:実費相当額(ガソリン代、駐車場料金、高速道路料金等)
  • タクシー:特別な事情がある場合に限り、タクシー代の全額


このうち、ガソリン代は、基本的に1kmあたり15円として計算されます。

また、タクシー代の賠償が受けられる「特別な事情」とは、「けがの程度が著しく、自力での歩行が困難であること」、「公共交通機関を利用するには著しく不便であること」などです。

単に「公共交通機関を利用することもできるが、痛みがあってつらいから」などの理由ではタクシー代の請求は認められない傾向にあります。

付添費

家族などが被害者の入院・通院に付き添ったときは、その付き添いの負担を償うためのお金として、付添費の支払いを受けられることがあります。

まず、主治医が「付き添いが必要」と判断していれば、基本的には付添費が支払われます。

また、被害者が小さな子ども(12歳以下が目安)や高齢者である場合や、足腰などの重傷により明らかに単独で移動できない場合などにも、付添費が支払われることがあります。

付添費は、家族による付き添いではなく職業付添人に付き添いを依頼した場合にも支払われます。

職業付添人とは、看護師や介護福祉士などの資格を有する専門職のことです。家族による付き添いができない事情がある場合などに職業付添人を利用すれば、原則として実費相当額が賠償されます。

入院雑費

入院雑費とは、入院時に必要となった日用品(寝巻きや洗面用具など)の購入費用や通信費(電話代等)などのことです。

入院雑費は、どのようなものが必要かある程度決まっており、また細かな支出となるため、領収書なしで1日1,500円程度(弁護士基準)の定額を支払ってもらうことができます。

交通事故の賠償金|物的損害

交通事故の「物的損害」には、主に次のようなものなどがあります。

  • 車の修理費
  • 車の買い替え費用
  • 代車費用
  • 評価損
  • 車の修理費

車の修理費・買い替え費用

交通事故の被害で車が損傷したり壊れたりした場合には、それが修理できる程度であれば修理費を、修理できない程度に壊れている(全損である)場合には車の買い替え費用を賠償してもらえます。

修理費が賠償される範囲

修理費は、必ずしも実際に支出した全額を賠償してもらえるとは限りません。修理費は、必要かつ相当と認められる限度で賠償金が支払われます。

例えば、事故の衝突で青い車の塗装の一部が剥がれてしまい、その一部を塗り直す必要が生じたところ、同じ青でも全く同じ色調(色の明るさや鮮やかさ)の塗料を調達できないということがあります。

この場合には、剥がれた部分だけを塗ると色の違いで一部分を塗り直したことが分かってしまうため、車全体を新しい塗料で塗り直して事故の跡を消したいと希望することがあるかもしれません。

しかし、そのような理由でも基本的には剥がれた部分の修理費用相当額の限度でしか必要かつ相当と認められず、車全体の塗り替え費用全額は支払ってもらえないことが多いです。

「全損」の場合の賠償の範囲

交通事故で車が激しく壊れると、「全損」と評価されることがあります。

「全損」には、「物理的全損」と「経済的全損」の2種類があります。

「物理的全損」とは、車の損傷の程度がひどく、物理的・技術的に修理することが不可能になることです。

「経済的全損」とは、物理的・技術的には修理が可能なものの、修理にかかる費用が車の事故当時の時価等の額(車両価格および買替諸費用)を上回る状態のことをいいます。

全損の場合、加害者は時価等の額を賠償すれば足り、それを超える修理費等まで賠償する義務を負いません。このため、実際に加害者側から受け取れるのは時価等の額までに限られます。

例えば、事故当時の時価等の額が50万円であった車が修理のために100万円かかる状態になったときは、経済的全損の状態にあるといえます。この場合に受け取れる車両の損壊に対する賠償金の額は50万円までです。

経済的全損であれば、たとえ思い入れのある車なので高い修理費を出してでも修理してまだ乗りたくて修理したという場合でも、受け取れる賠償金は時価等の額までにとどまり、修理費全額は受け取れません。

車が全損(廃車)になったことで精神的苦痛への慰謝料は請求できる?

交通事故では、思い入れもあり大切な車が大きく壊れて廃車にせざるを得なくなることもあります。

このような場合、「とても大切な車を失ったのだから精神的な苦痛が生じており、それへの慰謝料を請求したい」と考える方もいるかもしれません。

しかし、車が廃車になったことによる精神的苦痛への慰謝料は、ほとんどの場合で支払われません。

これは、現在の交通賠償実務での基本的な考え方において、交通事故で賠償される慰謝料は生命・身体への損害によって生じた精神的な苦痛への償いに限定されているからです。

どれだけ大切で思い出の詰まった車であって精神的苦痛が大きくても、基本的には車を失ったつらさへの慰謝料は支払われないと考えておきましょう。

代車費用

通勤や業務などのために使っていた車が全損になり、やむを得ずに新たに車を買うまでの間に代車が必要となったときは、その代車費用についても賠償されます。

もっとも、通勤などに車を使っていたが2台目の車も持っていたので代車を借りる必要がなかった場合や、通勤などにその車を使うこともなく趣味で月に数回程度しか乗っていなかった場合などには、代車の必要性がないとして、代車費用の賠償が認められないことがあります。

評価損

「評価損」(格落ち損)とは、交通事故による車の損壊を修理した後に車の価格が事故前より下がってしまったことによる損害のことをいいます。

車の「事故前の価格-事故後の価格」が評価損となります。

評価損についても、賠償金を請求することができます。しかし、評価損は、なかなか保険会社が積極的には賠償してくれない項目であり、争いになることも多いです。

評価損の請求が認められる主なケースには、車の重要部分(フレームやバンパーなど)に損傷がある場合や、被害車両が高級車である場合などがあります。

もっとも、実際に評価損への賠償が認められるかは個別の事情によるところが多いです。

評価損の賠償請求のためには専門的な知識が必要となるため、評価損の賠償請求をしたいと思ったら、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

「過失割合」とは

実際に支払われる交通事故の賠償金額を決める要素としては、「過失割合」も重要です。

「過失割合」とは、交通事故での当事者の過失の程度を示す割合のことです。

交通事故が起こるにあたっては、当事者のどちらか一方だけが全て悪いわけではなく、車を動かしている以上は双方にある程度の落ち度が認められると考えられています。この双方の落ち度が過失割合です。

過失割合は、「90:10」や「7対3」などの表記がなされることが一般的です。

例えば、過失割合が「80:20」(加害者側の過失が80%)であり、計算した過失相殺前の賠償金の総額が1,000万円であれば、1,000万×80%=800万円が過失相殺後に受け取れる賠償金額となります。

過失割合に納得がいかないときは弁護士に相談しよう

ご自身の過失割合が実際の状況以上に重く評価されているなど、保険会社が提示してきた過失割合に納得がいかないことがあります。

このような場合には、弁護士に相談することがおすすめです。

過失割合はどのようにして決まる?

過失割合は、示談交渉の際に交通事故の当事者同士(任意保険に加入している場合は保険会社)が話し合って、事故がどのようなものであったのかなどを参照しながら、最終的には当事者本人の合意によって決めます。

「交通事故では事故を捜査した警察が過失割合も決めるのでは?」と思っている方もいるかもしれません。場合によっては、実況見分の際に警察官が過失割合の見通しを告げてくるかもしれません。

しかし、警察はあくまでも刑事事件として交通事故を捜査する役割に過ぎず、民事事件である損害賠償金の決定に関わる過失割合を決める立場にはありません。また、警察官が過失割合について何か述べたとしても、それは全く拘束力を有しない警察官の個人的な意見であるに過ぎません。

もっとも、警察は事故直後に事故現場の様子を記録した実況見分調書や当事者の言い分を聴いた供述調書を作成します。これらの実況見分調書等は、事故の内容を証明する証拠となり、当事者の話し合いで過失割合を決める際にも大きな影響を持ちます。

当事者の話し合いでは、実況見分調書を参照しつつ、過去の裁判例(それを基に作成された過失割合の基本的な考え方の書籍)も参考にして、過失割合が決められていきます。

この過失割合の基本的な考え方を記載した書籍とは、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]」(別冊判例タイムズ38号)というタイトルの書籍です。弁護士などの実務家はまずこの書籍を参照して過失割合を検討します。

過失割合に関して弁護士に相談・依頼するメリット

過失割合に関して納得がいかない場合に弁護士に相談・依頼することには、次のようなメリットがあります。

  • 警察が作成した刑事記録(実況見分調書等)を取り寄せてもらえる
  • 個別の事情に即してどのような過失割合が適切かを判断してもらえる
  • 根拠に基づいてより有利な過失割合となるよう保険会社と交渉してもらえる

まず、弁護士に依頼すれば、被害者の代わりに事故直後に警察が作成した刑事記録(基本的には実況見分調書)を取り寄せることができます。

特に実況見分調書は、事故直後に客観的な立場の第三者である警察官によって作成された公的書類であって、事故の状況を詳しく記録しています。このため、適正な過失割合を判断するにあたっては非常に役立つ証拠資料です。

次に、実況見分調書やその他の資料を集めた後は、弁護士は具体的な個別事情に即してどのような過失割合が最も適切かを判断します。

そして、実況見分調書その他の資料から分かった事実を基に、根拠に基づいて被害者により有利な過失割合となるように保険会社と交渉します。

通常は、いずれもご自身だけでは知識や経験が足りないためにやり遂げることが難しいものです。弁護士に依頼すれば、これらのことを任せておくだけで専門的な知識と経験に基づいて的確にこなしてくれます。

結果として、被害者側の過失割合を当初の提示より少なくするなどより適切な過失割合となるように保険会社を説得することができ、過失相殺で減額される損害賠償金を少なくする(受け取れる賠償金を増やす)ことが可能となります。

けがの種類別|通院日数と慰謝料の相場

ここからは、けがの種類別に、平均的な通院日数や慰謝料の相場をご説明します。

むち打ちの場合

「むち打ち」とは、交通事故の強い衝撃で首が鞭(むち)のように強く大きくしなり、首の神経や筋肉などの組織に損傷を与えたことによって生じるけがのことです。むち打ちは、追突事故で生じることが多くあります。

むち打ちの場合の通院期間は、平均的には3〜6か月程度となることが多いです。また、この間はおおむね週2〜3回程度の頻度で通院することが一般的です。

むち打ちで受け取れる入通院慰謝料の相場は通院期間に応じて変わり、弁護士基準によれば、基本的には次のとおりとなります。

  • 1か月(30日):重症28万円、軽症19万円
  • 3か月(90日):重症53万円、軽症73万円
  • 6か月(180日):重症116万円、軽症89万円

ここで、「軽症」とは、むち打ち症で他覚的所見のない場合(赤い本・別表Ⅱが適用される場合)のことをいいます。また、「重症」とは原則的な場合(赤い本・別表Ⅰが適用される場合)のことです。

「他覚的所見」とは、医師が検査等によって客観的に把握できる症状のことで、純粋な自覚症状(痛み、苦しみ、つらさ)だけしかない場合には他覚的所見がないということになります。むち打ちでは、自覚症状はあるのに他覚的所見がないケースも多くあります。

この相場はあくまでも弁護士基準による相場なので、個別の事情に応じて左右されることもあります。

また、弁護士を立てていない場合には、保険会社は任意保険基準に基づきより低い水準の数字を提示してきます。

あくまでも相場の目安と捉えるようにしましょう。

骨折の場合

骨折の場合の通院期間は、平均3〜6か月前後です。その間はおおむね平均月10日前後の通院日数となることが多いですが、具体的にはその時点での症状や治り具合により変わってきます。

また、入院期間は、平均1か月程度です。

骨折で受け取れる入通院慰謝料の額は、弁護士基準によれば、赤い本・別表Ⅰの表に基づいて算定します。

例えば、入院1か月、通院3か月だった場合には、弁護士基準での入通院慰謝料は115万円になります。

打撲の場合

交通事故で打撲を負っただけの場合は、入院することは基本的にはありません。

通院期間は、平均1週間〜1か月程度です。

軽い打撲の場合には、赤い本・別表Ⅱを基に算定します。

例えば、打撲で通院期間が1週間(7日)だった場合には、入通院慰謝料は「19万÷30日×10日=4万4,333円」となります。

交通事故の慰謝料でよくある質問

交通事故の慰謝料や賠償金に関してよくある質問をご紹介します。

相手方の保険会社に治療費を打ち切るので通院をやめるように言われたがやめないといけない?

通院がある程度長い期間になると、保険会社が「治療費の支払いを打ち切るので通院をやめるように」と打診してくることがあります。

治療費が打ち切られると自分で治療費を支払わなければ通院が継続できなくなるため、通院をやめるべきか悩ましいところです。

まず、通院をやめるべきかどうかを決めるのは主治医であり、主治医がまだ通院と治療が必要だと判断している限りは通院を続けたほうがよいということをしっかりと認識しておきましょう。

主治医は医学的な見地から通院の必要性をアドバイスしてくれるのであり、主治医が通院と治療が必要だと判断している限りは、通院をやめるとけがの状態がより悪いままとなってしまう危険があります。

仮に保険会社に治療費を打ち切られるとその間は自分で支払うことになりますが、少なくとも自分で支払う限りは通院が強制的に禁じられるわけではありません。

保険会社が治療費打ち切りを打診する理由には2つあり、「長引く治療に対して治療費を打ち切ることで保険会社の支払いを減らすため」と「詐病による保険金の過剰な支払いを防ぐため」というのが主な理由です。

病状を偽って保険金をだまし取る行為は決して許されませんが、必要があって長引いている治療に対して保険金支払いを減らす目的で治療費を打ち切ることは、保険会社の都合でしかありません。

治療費打ち切りを打診されたら、まずは保険会社に治療費を打ち切らずにまだもう少し治療費を支払ってもらえないか交渉しましょう。交渉により、ある程度治療費の支払期間を延ばしてもらえることがあります。

交渉の際には、医師に意見書を書いてもらい、引き続き治療が必要であるという医師の意見を保険会社に伝えることも有効です。

また、交渉にあたっては、弁護士に依頼すればより強い交渉力でスムーズに治療費打ち切りを先延ばしにしてもらえる可能性もあるため、弁護士への相談も検討してみましょう。

交通事故の慰謝料に税金はかかる?

交通事故で慰謝料などの賠償金(保険金)を受け取ると、収入が増えたかのように見えるため、その分税金を納めなければならないのではないかと疑問に思われることがあります。

交通事故の賠償金には原則として所得税等の税金はかからない

これについて、交通事故で受け取った慰謝料などの賠償金には、原則として所得税・住民税等の税金はかかりません。

これは、税法の理論上、所得税は純資産の増加(所得)に対して課税されるところ、交通事故の賠償金を受け取ったことによっては純資産が増加したとはいえず、所得が存在しないものとみなされるからです。

交通事故では、いったんさまざまな損害が発生して純資産が減少します。そして、その減少を償うために賠償金が支払われます。これは、事故によって純資産がマイナスになり、その後に償われて元のゼロに戻ったものと考えることができます。

そうだとすると、所得が生じていない(ゼロである)以上は、所得に対して課される所得税は課税されないこととなるのです。

また、住民税も所得税と同様に所得に応じて課税されるため、住民税が課されることはありません。

このことを反映して、法律上も、損害保険会社等から「心身に加えられた損害」や「突発的な事故により資産に加えられた損害」に起因して取得する保険金・損害賠償金などについては「所得税を課さない」と定められています(所得税法9条1項18号、所得税法施行令30条1号・2号)。

参照:所得税法(昭和四十年法律第三十三号)9条|e-Gov法令検索
   所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)30条|e-Gov法令検索

例外的に税金がかかるケース

これに対して、例外的に税金がかかるケースとして、交通事故で生じた損害に比べて明らかに過大な慰謝料・見舞金などを受け取った場合には、その過大な部分は一時所得であるとして所得税が課せられることがあります。

例えば、交通事故で打撲程度のけがを負ったのに対して、加害者がどうか許してほしいと1,000万円近くもの高額の慰謝料を渡してきたケースでは、明らかに過大であるとしてその過大であると認められた部分に対して所得税が課せられる可能性があります。

このように加害者が高額の慰謝料を支払うのは、被害者の赦しを得て刑事事件の面で何としても有利な処分(不起訴処分、執行猶予・減刑など)を得たいという目的を持っているからということも多くあります。交通事故の被害を受けて加害者に対して厳しい処罰感情を抱いている場合には、高額の慰謝料を受け取ってよいのかを慎重に判断することが望ましいといえます。

また、被害者側の人身傷害保険を利用して自己の過失に応じて賠償金が減額される分の保険金を受け取った場合や、被害者側の保険から死亡保険金を受け取った場合には、保険料の負担者や保険金の受取人などの関係に応じて、所得税・贈与税・相続税のいずれかが課税されます。

交通事故の慰謝料を受け取ったら確定申告をする必要がある?

交通事故の慰謝料等の賠償金は、先ほどもご説明したとおり、原則として非課税のため、それだけのために確定申告をする必要はありません。

また、自営業者などで毎年の確定申告をする場合にも、非課税である交通事故の慰謝料等の賠償金を収入として計上する必要はありません。

もっとも、過度に高額な慰謝料を受け取った場合にその過大な部分に所得税がかかるケースなど、例外的に課税がなされることがあります。このようなケースでは、必要に応じて税の申告・納税をすることが必要です。

所得税の確定申告では、損害賠償金のうち明らかに過大である部分は一時所得という分類の所得として申告をします。

もし課税対象なのに申告・納税をしておらず、後から税務調査によりそのことを指摘されると、本来の税金を納めなければならないだけでなくペナルティとしての追加の税金も課される可能性があります。

少しでも「賠償金が過大で申告・納税しなければならないのではないか」「加害者から受け取ったこのお金は本当に非課税でよいのか」などと疑問に思ったら、すぐに税理士や税に詳しい弁護士に相談し、確定申告を行うなど適切な対応をするようにしましょう。

まとめ:交通事故の賠償金にはさまざまな項目があり弁護士に依頼すれば増やせることもある

交通事故で受け取れる損害賠償金(保険金)は、単に日常用語で「慰謝料」といっても具体的にはさまざまな項目があります。

ご自身の場合にはどの項目が請求できるのかをしっかりと把握しておくことが大切です。

また、交通事故でもらえる慰謝料を始めとした賠償金には、算定のための「3つの基準」があり、任意保険会社の提示基準は弁護士や裁判所が用いる基準よりも相当低いことが一般的です。

ご自身だけで任意保険とやり取りをすれば、より低い任意保険基準での賠償しか受けられないかもしれません。しかし、弁護士に示談交渉を依頼すると、最も高い弁護士基準(裁判基準)を基にして算定した賠償金を受け取れます。

つまり、弁護士に保険会社との示談交渉を依頼すれば、受け取れる賠償金を増額できるのです。

このことを踏まえて、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することも検討してみてください。

弁護士の助けを借りて、受け取れる賠償金の額を増やし、交通事故で受けた損害をできるだけ全て賠償してもらえるようにしましょう。

 

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