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交通事故を弁護士に依頼すると?メリットや増額の見込み、弁護士特約とは?

【この記事の執筆者】
岡島 賢太 弁護士(第二東京弁護士会)
秋葉原あやめ法律事務所

「交通事故では弁護士に依頼するべき?依頼したら具体的にどのようなメリットがあるの?」

交通事故の被害にあったら弁護士に依頼したほうがいいということを聞いたことがないでしょうか。

もっとも、「交通事故で弁護士」といっても、依頼すると何をしてくれるのか、どんなメリットがあるのかということが分からないと依頼に踏み切れませんよね。

交通事故で弁護士に依頼することには、「受け取れる慰謝料などの賠償金を増やせる」ことを始めとして、さまざまなメリットがあります。

この記事では、交通事故で弁護士に依頼するメリットや費用、タイミング、選び方などについて解説しています。

この記事を読むことで、なぜ交通事故では弁護士に依頼したほうがいいのかを知ることができます。

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交通事故では弁護士に依頼したほうがいい!

交通事故について詳しく知らないと、「交通事故と弁護士に何の関係があるの?」などと疑問に感じてしまいますよね。

中には、「交通事故の対応は保険会社に任せておけばそれでいいのでは?」と思っている方もいるかもしれません。

結論から言えば、「交通事故にあってしまったら、弁護士に相談・依頼したほうがいい」です。

その理由についてはここから詳しくご説明しますが、まずはこの結論だけでもしっかりと覚えてください。

交通事故で弁護士に相談・依頼するメリット

交通事故で弁護士に相談・依頼するメリットのうち、最も大きなものは、「受け取れる賠償金を増やせる」ことです。

このことも含め、交通事故で弁護士に相談・依頼するメリットについてご説明します。

賠償金を増やせる可能性が高まる

交通事故の被害者になったら慰謝料などの損害賠償金を受け取る権利があります。弁護士に依頼すれば、受け取れる賠償金の額を増やせる可能性が高まります。

弁護士に依頼した場合に賠償金の額を増やせる理由は、弁護士であれば任意保険会社の基準よりも高い、裁判所と同じ算定基準で賠償金を請求できるからです。

交通事故の賠償金の算定基準については、この後で詳しく解説します。

適切な過失割合を主張できる

「過失割合」とは、交通事故でのお互いの落ち度の割合のことです。

過失割合は、「3対7」(30%:70%)などの数字で表されます。

過失割合は、当事者同士が示談の際に話し合って決めるものです。過失割合を決めるにあたっては、過失割合について類型別に記載された専門家向けの書籍や過去の裁判例などを参考にしつつ、事故の内容など個別の事情に応じて決定します。

過失割合は、裁判にならない限りは当事者が話し合って合意で決めるものなので、相手方の保険会社が必ずしも適切な過失割合を提示してくるとは限りません。

もし弁護士に依頼せず被害者本人だけで対応していると、保険会社から不利な過失割合を提示されても気づくことができません。

交通事故トラブルに詳しい弁護士であれば、依頼者に有利な事情も丁寧に見つけ出し、より適切で被害者に有利な過失割合での示談成立を目指して主張を伝えることができます。

結果的に、当初より受け取れる賠償金の額を高くできる可能性が高まります。

適切な後遺障害等級の認定が受けられる

交通事故で後遺症が残ったら、後遺障害等級の認定を受けられることがあります。

「後遺障害」とは、後遺症のうち損害保険料算出機構により後遺障害等級が認定されたものをいい、後遺障害等級が認定されると等級に応じて後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるようになります。

等級は、後遺症の内容や重さに応じて決まります。より重い等級であれば、より多くの慰謝料等を得られることとなります。

後遺障害等級認定の申請は、被害者自身が必要な書類を集めて申請する方法(被害者請求)と、加害者側の任意保険会社を通じて申請する方法(事前認定)の2つがあります。

このうち、被害者請求であれば、事前認定と異なり、自己に有利な資料をできるだけ集めて提出したり不利な資料があればそれを補足する資料をつけて提出したりすることができます。これにより、後遺症の内容に沿って、できるだけ自己に有利な後遺障害等級の認定がなされる可能性を高めることができます。

弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定の申請にあたって必要な書類や資料の準備を、基本的に全て代わりに行ってくれます。

また、豊富な経験に基づいて、適切な後遺障害等級の認定がなされるようにしっかりと書類や資料の内容を確認し、足りないものがあれば必要なものをそろえてくれます。

さらに、適切な等級が認定されるために必要な検査や通院頻度などについてもアドバイスしてくれます。

これにより、適切な後遺障害等級の認定がなされる可能性を高めることが可能となります。

相手方保険会社とのやり取りを代わりに行ってもらえる

弁護士に依頼すれば、相手方保険会社とのやり取りを全て代わりに行ってもらえます。

ご自身で対応する場合には、分からないことがあっても自分で調べながら対応しなければなりません。

また、交通事故で負傷して治療に専念したいのに保険会社への対応までご自身でしていられないということもあるでしょう。

弁護士に依頼することで保険会社への対応の負担をなくすことができるので、治療や仕事、生活などに専念することができます。

訴訟になっても一貫して対応してもらえる

保険会社が納得のいく示談案を提示してくれず、話し合いが平行線をたどって示談が成立しないことがあります。

この場合には、最終的には訴訟を提起して裁判所の判断を仰いで解決を図ることとなります。

交通事故の訴訟をご自身で起こすことは現実的には難しいことです。

しかし、弁護士に依頼していれば、弁護士が訴訟の提起や対応を全て代わりに行ってくれます。

これにより、訴訟による解決が必要となった場合にも一貫して弁護士に対応を任せることができます。

交通事故の賠償金を算定する際の「3つの基準」とは

交通事故の賠償金がいくらになるのかを算定するにあたっては、大きく分けて3つの基準があります。

この基準の違いが、弁護士への依頼により賠償金を増額できることにつながってきます。

3つの基準とは、次のものです。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判基準)

これらは、「自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準(裁判基準)」の順で高くなっていき、弁護士基準(裁判基準)で算定すると最も賠償金の額が高くなります。

これらの3つの基準についてご説明します。

自賠責基準

「自賠責基準」とは、自賠責保険が賠償金を支払う場合に使用される賠償金の算定基準です。

自賠責基準は、被害者を保護するために最低限度の分に限って補償するためのものです。このため、この基準に基づいて算定された賠償金は、非常に低い水準にとどまります。

任意保険基準

「任意保険基準」とは、任意保険会社が賠償金を支払う場合に使用される賠償金の算定基準です。

任意保険基準は、保険会社によって異なり、非公開です。もっとも、基本的には自賠責基準を基にしてある程度上乗せした金額に設定されていることが多いです。

任意保険基準に基づく賠償金は保険会社が最初に提示してくるものですが、次にご説明する弁護士基準より大幅に少ないことも多く、安易に受け入れずに慎重に検討することが必要です。

弁護士基準(裁判基準)

「弁護士基準(裁判基準)」とは、交通事故で実際に生じた損害の全てを賠償する算定基準です。

これは、裁判になった際に裁判所が判断の基礎とする基準であるとともに、弁護士が相手方保険会社と示談交渉をする際に使用する基準でもあります。

相手方の保険会社が任意保険基準で算定した賠償金を提示してきても、弁護士に依頼すれば、弁護士基準で算定した賠償金額で交渉することができます。

弁護士が弁護士基準に基づき賠償金額を上げるように交渉した結果、当初任意保険会社が提示した金額よりも大幅に賠償金額が上がることも多くあります。このため、より高い賠償金を受け取るためには弁護士に依頼して弁護士基準での賠償金交渉をしてもらうことが重要です。

交通事故で受け取れる賠償金の種類

交通事故で受け取れる賠償金の種類には、主に次のようなものなどがあります。

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料
  • 休業損害
  • 後遺障害逸失利益
  • 死亡逸失利益
  • 治療費
  • 修理費

このほかにも、いくつかの項目があります。

例えば、交通事故でけがをしたため仕事を休んで通院し、完治して後遺症が残らなかった場合には、上記のうち、「入通院慰謝料」「休業損害」「治療費」「修理費」などが受け取れます。

このほか、後遺障害が残った場合には、「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」が追加されます。

また、事故の結果亡くなってしまった場合には、遺族の方が「死亡慰謝料」「死亡逸失利益」などを請求できます。

これらの賠償金の具体的な額は、事故や負傷の内容などに応じて異なります。また、それぞれの項目ごとに、任意保険基準や弁護士基準で算定基準が異なります。

このため、具体的な事情やどの基準に基づき算定するかによって、具体的に受け取ることのできる賠償金の額が変わってくるのです。

交通事故で弁護士に相談・依頼するタイミング

交通事故で弁護士に相談・依頼するタイミングとは、初診後から示談成立前までの間のうち、できるだけ早い時期です。

初診前は、どのような負傷なのか分からず適切なアドバイスをすることが難しいため、少し早すぎます。

また、示談成立後は、基本的にはもう成立した示談を覆してもう一度交渉し直すことはできないので、遅すぎるといえます。

初診を終えたら、できるだけ早く弁護士に相談・依頼しましょう。これにより、加害者側との対応や必要な手続きを全て任せてアドバイスを受けることができます。

また、後遺障害の認定や示談交渉が始まる前から弁護士に依頼していれば、弁護士としても事故や治療の内容や経緯などを詳しく把握したうえでより適切なサポートをすることができます。

交通事故で弁護士に依頼する際にかかる費用

交通事故で弁護士に依頼する際にかかる費用は、弁護士事務所によって異なります。

弁護士費用の内訳としては、法律相談料のほか、着手金や報酬金、実費などがあります。

「法律相談料」は、弁護士に法律相談をするために支払うお金です。相談だけで終わる場合には、法律相談料だけがかかります。

「着手金」とは、弁護士に依頼する際にはじめに支払うもので、弁護士に仕事を始めてもらうためのお金です。

基本的には、着手金を支払わなければ仕事を開始してもらえません。

「報酬金」とは、仕事が終了した後に弁護士への報酬として支払うお金のことです。

「実費」は、弁護士への報酬などとして支払うお金とは別に実際にかかった費用のことです。書類の取り寄せのために支払うお金や訴訟を提起する場合に裁判所に納める訴え提起の手数料などがあります。

基本的には、弁護士費用はこれらの項目から成りますが、弁護士事務所によっては異なる名称で費用体系を設計していることもあります。また、法律相談料が無料とされていることもあります。

具体的な費用の内訳や総額については弁護士事務所ごとに異なったり個別の事情に応じて異なったりするので、必ず弁護士に依頼する前に、具体的な弁護士費用についてしっかりと確認しておくことが大切です。

なお、弁護士費用については、この後ご説明する弁護士費用特約が利用できたり、示談成立後に受け取る賠償金から差し引く形で支払うこととされたりすることもあります。

これにより、実際にご自身で支出しなければならないお金が少なく抑えられることも多くあります。

交通事故で使える「弁護士費用特約」とは?

交通事故では、弁護士費用の支払いに「弁護士費用特約」という保険の特約を利用できることがあります。

ここからは弁護士費用特約についてご説明します。

「弁護士費用特約」とは弁護士費用をまかなう保険

「弁護士費用特約」とは、弁護士に相談・依頼する際にかかる費用を補償してくれる保険の特約(オプション)のことです。

具体的な補償内容は保険契約に応じて異なりますが、1回の事故につき約300万円までの弁護士費用(相談料や着手金・報酬金)を保険から支払ってもらえるなどの内容が多いです。

弁護士費用特約を利用すれば、ご自身で弁護士費用を負担せずに弁護士に相談・依頼できるので、特約を利用しない場合よりも弁護士に相談・依頼する経済的なハードルを下げることができます。

弁護士費用特約を利用する流れ

弁護士費用特約を利用する流れは、基本的には次のとおりです。

  • ご自身の保険などに弁護士費用特約が付帯しているかを確認する
  • 保険会社に弁護士費用特約を利用したいことを伝える
  • 弁護士に相談・依頼する
  • 弁護士が示談交渉など事件処理を行う
  • 保険会社が弁護士費用特約に基づき弁護士費用を支払う

弁護士費用特約は、加入している自動車保険に付帯しているほか、火災保険や医療保険に付帯していることがあります。

また、ご自身が加入していなくても家族や同乗者の保険に付帯する弁護士費用特約が使えることもあります。

まずは、利用できる弁護士費用特約がご自身の自動車保険などに付帯しているかどうかを確認しましょう。

利用できそうな弁護士費用特約がついていることを確認したら、保険会社に交通事故にあったので弁護士費用特約を利用したいということを連絡します。

弁護士への相談・依頼の前に保険会社に連絡をしておかなければ特約の利用が認められないこともあるので、忘れずに連絡するようにしましょう。

保険会社に連絡して弁護士費用特約が利用できることを確認したら、弁護士を探して相談・依頼します。

この際、弁護士に心当たりがなければ保険会社から案内を受けられることもあります。しかし、保険会社から弁護士を案内されたからといってその弁護士に依頼しなければならないわけではありません。ご自身で探した弁護士に依頼することもできます。

交通事故トラブルに詳しい弁護士をご自身で選ぶほうが、納得して弁護士に任せることができるでしょう。

弁護士に相談する際には、弁護士費用特約を利用することを伝えましょう。

弁護士との間で委任契約を締結すれば、弁護士が対応を開始してくれます。

弁護士が示談交渉などを行い、無事示談が成立するなどすれば、事件は終了します。

弁護士費用については、保険で補償される範囲内であれば保険会社が直接弁護士に対して支払うので、基本的にご自身で負担することはありません。

交通事故で弁護士に依頼するデメリット

「交通事故で弁護士に依頼することにデメリットはないの?」と不安に思う方もいるでしょう。

交通事故で弁護士に依頼することには、全くデメリットがないというわけではありません。しかし、基本的にはあまりデメリットを心配する必要はないといえます。

このことについてご説明します。

費用倒れの可能性がある

交通事故で弁護士に依頼する唯一のデメリットが、「費用倒れの可能性がある」ということです。

「費用倒れ」とは、弁護士に依頼して獲得できた金額が弁護士に依頼して支出した費用を下回ってしまい、結果的に「弁護士に依頼したために経済的にマイナスが発生してしまった」という状態のことです。

例えば、弁護士に依頼するのに50万円を支払ったものの、獲得できた金額が30万円だったというような場合には、差額の20万円分のマイナスが発生して費用倒れになってしまっているといえます。

交通事故で費用倒れになることは多い?避ける方法は?

このように、弁護士に依頼するデメリットとしては費用倒れのリスクがありますが、実際には費用倒れになることは多くありません。

これは、弁護士費用特約を使えば基本的には弁護士費用が保険金により補償される範囲内で収まって、自分で負担する額はないことが多いからです。

また、交通事故トラブルの取扱経験が豊富な弁護士であれば、依頼を受ける前に獲得できる賠償金の額や見込みをある程度見通してくれます。その上で、獲得できる賠償金が少なく、弁護士費用で費用倒れになる可能性が高ければ、そのことをしっかりと伝えてくれます。

このようなことから、次の点をしっかりと押さえておけば、交通事故で費用倒れになるリスクをできる限り少なくすることができます。

  • 加入している保険に弁護士費用特約をつけておく
  • 依頼前に弁護士から賠償金の見通しをしっかりと聞き、費用倒れの可能性を確認してから依頼するか判断する

交通事故で依頼する弁護士の選び方

交通事故で依頼する弁護士を選ぶにあたっては、次のような点などに着目して選ぶようにしましょう。

  • 交通事故トラブルの取扱経験が豊富にある
  • 交通事故トラブルに関する情報をたくさん発信している
  • 法律相談の際に具体的な見通しを丁寧に教えてくれたり、質問にしっかり答えてくれたりする

交通事故トラブルの取扱経験が豊富にあれば、過去の経験に基づいて的確な対応をしてくれることが期待できます。

また、事務所のウェブサイトなどで交通事故トラブルに関する情報をたくさん発信している弁護士であれば、交通事故トラブルの対応について十分な知識があり、適切に対応してくれることでしょう。

さらに、実際に法律相談をした際には、具体的な見通しを丁寧に教えてくれるか、質問にしっかり答えてくれるかなどを見極めるようにしましょう。見通しがあまりにも曖昧だったり、質問に納得できるように答えてくれなかったりすれば、実際に対応を任せても安心できない可能性があります。

たとえ知識や経験が十分にあっても、丁寧で行き届いた対応やコミュニケーションをしてくれなければ、安心して任せることができないため、このような点も確認することが大切です。

交通事故トラブルへの対応を依頼するにあたっては、これらの点に着目しつつ、交通事故トラブルに詳しく適切に対応してくれる弁護士かどうかを見極めるようにしましょう。

まとめ:交通事故で弁護士に依頼すれば受け取れる賠償金を増やせるなどのメリットがある

交通事故トラブルで弁護士に依頼すれば、さまざまなメリットがあります。

特に、交通事故にあってしまったら賠償金を受け取ることができますが、弁護士に依頼すれば賠償金を増額できる可能性が高まるという点が最も大きなメリットです。

交通事故トラブルでは、弁護士に依頼することで得られるメリットが大きく、できれば弁護士に相談・依頼するほうがよいといえます。

弁護士に依頼するには費用がかかりますが、弁護士費用特約を利用するなど適切に対応することで、負担を最小限に抑えることができます。

交通事故トラブルにあったら、ご自身だけで対応するのではなく、弁護士に相談・依頼して、よりよい結果が得られるようにしましょう。

 

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