交通事故の対応は?【被害者側】流れ、弁護士依頼での増額の可能性
【この記事の執筆者】
岡島 賢太 弁護士(第二東京弁護士会)
秋葉原あやめ法律事務所
「交通事故にあってしまった!これからどのように対応していけばいいのだろう?」
交通事故にはできればあいたくないものですが、どんなに気をつけても巻き込まれる時は巻き込まれてしまうものです。
交通事故の被害者となってけがをしてしまったら、まずは通院をする必要があります。また、加害者に対して慰謝料などの賠償金を請求する手続きも必要となります。
この記事では、交通事故にあった際に取るべき対応について解説しています。
この記事を読むことで、交通事故にあっても適切な対応をすることができ、通院や賠償金請求の手続きをスムーズに行えるようになります。
【最初に必ず】道路交通法上の「交通事故の場合の措置」をとる
道路交通法72条1項には、「交通事故の場合の措置」として、交通事故にあった場合の最も基本的な対応方針が規定されています。
参考:道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)72条|e-Gov法令検索
同条項では、交通事故があったときは、その車両の運転者等は、ただちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、危険防止等必要な措置を講じ、最寄りの警察署等の警察官に事故の日時・場所・負傷者等を報告しなければならないとの旨が定められています。
つまり、ここでは次の事項が交通事故の場合にとるべき措置として定められています。
- 運転の停止
- 負傷者の救護
- 危険防止等の必要な措置
- 警察官への事故内容等の報告(110番通報等)
ここで定められている措置をとる義務を負うのは、加害者・被害者を問いません。たとえ被害者であってもここに定められた措置をとる義務があります。被害者だから何もしなくていいというわけではないので注意が必要です。
道路交通法72条1項前段の規定に違反したとき(いわゆる「ひき逃げ」をしたとき)は、5年以下の懲役(2025年6月1日の改正刑法施行後は、拘禁刑)または50万円以下の罰金、人の死傷がその運転者の運転に起因するときは、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることがあります(道路交通法117条1項、2項)。
参考:道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)117条|e-Gov法令検索
【事故直後】被害者として交通事故にあったらどう対応すべき?事故直後の対応の流れ
交通事故の被害者になってしまったら、適切な対応をとることが大切です。決して被害者だから何もしなくていいというわけではありません。
被害者として交通事故にあった場合にどのように対応するべきか、事故直後の対応の流れについてご説明します。
負傷者を救護する
先ほどもご説明したとおり、交通事故にあったらまずは負傷者を救護します。交通事故では必ずしも被害者だけが負傷していて加害者は負傷していないとは限りません。場合によっては加害者の負傷の程度のほうが重く被害者による救護が必要なこともあります。
交通事故で負傷者を救護するには、次のようなことをします。
- 119番通報をして救急車を呼ぶ
- 大声で周囲の人に助けを求める
- 負傷者の応急処置を行う
- 負傷者を安全な場所に移動させる
特に、119番通報することは重要です。
安易に負傷者のけがの程度が軽いと判断してしまい、119番通報をしないまま立ち去ってしまうと、後から実はけがが非常に重かったと判明して大ごとになってしまうことがあります。交通事故の当事者が少しでもけがをしているならば、迷わず119番通報して救急車を呼びましょう。
負傷者の救護を行わずに事故現場を去ってしまうと、場合によっては「ひき逃げ」として扱われて罪に問われるおそれがあります。その意味でも、負傷者の救護は特に重要です。
警察に連絡する
交通事故が発生したらすぐに110番通報をして警察に連絡しましょう。警察に連絡して交通事故が発生したと通報することは、交通事故の当事者となった運転者の義務です。
交通事故の当事者がけがをしていない様子だからといって、交通事故が発生したのに警察に連絡しないでそのまま済ませてしまうことは、道路交通法72条1項に定められた義務に違反する行為です。
また、交通事故が発生したのに警察に連絡しなければ、次のような不利益を被ることがあります。
- 「交通事故証明書」が発行されないため、保険金の請求や損害賠償請求の手続きがスムーズに進まなくなる
- 交通事故現場の実況見分調書などの捜査書類が作成されないため過失割合を明らかにする重要な証拠がなくなり、加害者側との示談交渉の場面で不利になることがある
どんな事故でも怠らずに、必ず110番通報をしましょう。
加害者の情報を確認する
負傷者の救護と警察への連絡が済んだら、被害者は、加害者の情報を確認し、メモなどに残しておきましょう。
加害者の情報を確認して記録しておくことは、後で示談交渉や損害賠償請求の手続きをスムーズに進めるために重要です。
加害者の情報としては次のようなことを確認・記録しておきましょう。
- 加害者の住所・氏名・生年月日、電話番号
- 加害者の勤務先・勤務先の電話番号
- 加害者の車両のナンバー、車の種類や色、特徴
- 加害者が加入している自賠責保険や任意保険の会社名
- 加害者の車両の所有者
交通事故の賠償金は、人身事故の場合、運転者だけでなく車両の所有者に対しても請求することができます(自動車損害賠償保障法3条)。また、交通事故の加害者が勤務中・業務中などであった場合には、加害者の雇用主に対しても賠償金を請求することができます(民法715条1項)。
参考:自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)3条|e-Gov法令検索
民法(明治二十九年法律第八十九号)715条|e-Gov法令検索
このため、加害者の車両の所有者や加害者の勤務先についても確認しておくことが大切です。
交通事故の加害者が警察の到着を待たずにその場から逃げてしまうこともあります。相手が逃げてしまって加害者が誰なのか分からなくなってしまうと、損害賠償請求などの手続きが難しくなってしまう可能性が高まります。必ず車のナンバーを撮影したり覚えておいたりして、相手を追跡できるようにしておきます。
加害者から連絡先などの情報を教えてもらう際には、加害者に対してご自身の連絡先などの情報も教えて、お互いに連絡が取れるようにします。その場で加害者にご自身の情報を教えなかったとしてもその後の手続きの中で加害者に対して被害者側の情報は伝わります。加害者と連絡がつかなくなるのが一番困ることなので、お互いに連絡先などの情報交換をしっかりと行っておきましょう。
もっとも、今後の示談交渉などにおいてご自身で加害者と直接やり取りをしなければならないということは基本的にはありません。加害者側は加害者の加入している任意保険会社が交渉を担当しますし、被害者側についても基本的にはご自身の加入している任意保険会社が交渉を担当します。また、弁護士に交渉を依頼することもできます。
事故の状況と目撃者を確認・記録する
交通事故の目撃者がいる場合には、目撃者から氏名・住所・連絡先などの情報を教えてもらい、メモしておきましょう。
そのうえで、警察の捜査に協力してもらうようお願いし、警察にも目撃者がいることを伝えましょう。
自分の保険会社に事故があったことを通知する
ご自身が自動車の任意保険に加入している場合には、ご自身の任意保険会社に事故があったことを知らせましょう。
これには、次のような理由があります。
- 被害者にも過失がある場合には保険会社が代わりに示談交渉をしてくれる
- ご自身の任意保険から保険金の支払いを受けられることがある
- 弁護士費用特約を活用して弁護士費用の負担なく弁護士に依頼できる
事故後に加害者が負う賠償金の支払いは、加害者の保険会社が行います。加害者の保険会社への事故の通知は加害者が行うものなので、加害者にも保険会社に対して事故の通知を行うように促しましょう。
医師の診察を受ける
交通事故の現場から救急車で搬送されている場合には当然に医師の診察を受けることとなりますが、自力で動けるため救急車で搬送されなかったとしても、必ずすぐに通院して医師の診察を受けましょう。
「痛みもない」「ちょっとした傷でしかない」「忙しくて通院する時間がない」などといってなかなか医師の診察を受けない人もいます。しかし、交通事故直後は特に大きなけがだとは思っていなくても、後からだんだん痛みが出てくるなどして大きなけがをしていることが発覚することもあります。
自分では負傷していないと思っていたり通院する必要がないと思っていたりしても、本当に負傷していないのかどうかを判断できるのは診察をした医師のみです。事故直後の対応がひと段落したら、必ず医師の診察を受けることが重要です。
交通事故直後に受診していないケースにおいて、交通事故が発生してからしばらく時間が経った後に初めて受診し、けがをしていると診断されることがあります。この場合には、そのけがが交通事故に起因して生じたものであるとはいえない(負傷と交通事故との間に因果関係がない=負傷は交通事故以外の原因によって生じた)と判断される可能性が高まります。
もしも負傷と交通事故との間に因果関係がないと判断されてしまえば、本来請求できたはずの交通事故の賠償金を受け取れなくなってしまうかもしれません。
交通事故の賠償金は、後遺障害の内容によっては数百万円を超えることもあります。交通事故直後に病院を受診しなかったがために数百万円もの受け取れたはずのお金を受け取れなくなってしまうことは、大きな損失です。
交通事故でけがをしたら必ずすぐに病院に行って医師の診察を受けましょう。
【事故翌日以降】交通事故翌日以降の対応の流れ
交通事故の翌日以降も対応するべきことはいくつかあります。
交通事故翌日以降の対応の流れについてご説明します。
通院を継続する
交通事故の翌日以降も必要に応じて通院を継続しましょう。
交通事故直後に受診した際に医師から「特にけがはしてないのでもう来なくていいですよ」などとはっきり言われた場合を除いて、再び通院するように医師から言われているのであれば、必ず医師の指示どおりに通院を継続することが大切です。
「忙しいから通院するのはやめておこう」「もう治っている気がするから通院はやめよう」「保険会社がそろそろ通院をやめるように連絡してきたから通院はやめよう」などといって、通院をやめてしまう人は多いです。しかし、このような自己判断は不適切です。
医師が通院をやめてよいと判断するまでは、必ず通院を継続しましょう。
後遺症があれば後遺障害等級認定を受ける
交通事故でけがをして完治せずに後遺症が残ってしまった場合には、医師が「症状固定」の診断をします。
「症状固定」とは、交通事故のけがが完治しないままそれ以上良くもならず悪化もせず、けがの状態が固定されてそれ以上治療を続けても症状が改善する見込みがないと判断されたことをいいます。
症状固定が認められたら、「後遺障害等級認定」の申請をします。
後遺障害等級認定の申請の結果、「後遺障害等級」が認定されれば、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。
後遺障害等級認定の申請方法には、次の2つがあります。
- 被害者請求
- 事前認定
「被害者請求」は、被害者自身で必要な資料を集めて加害者が加入している自賠責保険会社に提出する方法です。
被害者請求ではご自身で資料を準備できるので、自己に有利な資料を適宜追加でき、より有利な認定結果を得られる可能性が高まるというメリットがあります。一方で、自分で資料を集めて書類を作成しなければならないので、手間や時間がかかるというデメリットもあります。
「事前認定」は、加害者が加入している任意保険会社に後遺障害診断書を提出して申請を任せる方法です。
事前認定では任意保険会社に申請手続きを任せられるので、ご自身の手間や負担は軽減されるというメリットがあります。一方で、申請のための資料を自ら選ぶことができないために資料の不足などがあっても分からず、適切な認定結果を得られないおそれがあるというデメリットもあります。
後遺障害等級の認定を申請してから実際に認定されるまでにかかる期間は、おおむね1か月〜3か月が目安です。
加害者側から提示された示談案を検討する
けがが完治したり症状固定後に後遺障害等級認定がなされたりしたら、一定の段階で加害者側が交通事故の慰謝料に関して示談案を示してきます。
示談案には、示談の金額や内訳、過失割合などが記載されています。示談の金額を見ると、この額であればそのまま受け取ってもよいのではないかと思ってしまうこともよくあります。しかし、加害者側が提示してきた示談案はそのまま受け取ってよいものばかりとは限りません。示談の金額や過失割合などで交渉すれば増額を見込めることもよくあるので、丁寧に検討することが大切です。
示談金額等の内容が適正なものなのかを検討・判断するにあたっては、交通事故の賠償に関する専門的な知識が必要です。このため、まずは交通事故の賠償に詳しい弁護士に相談してみることがおすすめです。
示談交渉を進めて示談を成立させる
提示された示談案を基に、必要に応じて相手方の保険会社と示談交渉を進めていきます。
示談交渉ではこちら側の主張をしっかりと伝え、支払われるべき賠償金の額について交渉を詰めていきます。
示談交渉は、被害者本人が直接対応しても構いません。しかし、被害者以外の者が代理人となって交渉する場合には、弁護士だけしか代理人となることはできません。無資格の第三者や、行政書士、司法書士などは示談交渉の代理人となることができないため、それらの者に示談交渉の代理人を任せないようにしましょう。
交通事故後の通院で押さえておくべきポイント
交通事故でけがを負ったら、治療のために通院を継続することになります。
交通事故後の通院では、ポイントを押さえて通院を継続することが重要です。
交通事故後の通院で押さえておくべきポイントについてご説明します。
多すぎず少なすぎない適切な頻度で通院する
交通事故後の通院は、適切な頻度で行うことが大切です。多すぎても少なすぎてもいけません。
適切な通院頻度は、どのようなけがをしているか、どのような治療をしているかなどによっても異なります。適切な通院頻度を最も正確に把握しているのは主治医であるため、基本的には主治医の指示に従って通院すればそれで構いません。
もっとも、交通事故の賠償金を十分にもらうという観点から見ると、交通事故後の通院頻度はおおむね2~3日に1回を目安にするとよいでしょう。
交通事故後の通院があまりにも少なすぎると、すでにけがが治っているのではないかと加害者側の保険会社などに思われてしまうかもしれません。そうなると、もらえる慰謝料の金額が減ることもあります。
逆に、必要がないのにあまり通院頻度を多くしても受け取れる慰謝料の額が増えるわけではありません。慰謝料目的で毎日のように通院しても意味はありません。
毎日通院するなどあまりにも過剰に通院していると、治療の必要がないのに通院していると判断され、その分の治療費が自己負担になってしまう可能性もあります。
交通事故の通院は、自己判断で決めることなく、おおむね2~3日に1回を目安としつつ主治医の指示に従って決めるようにしましょう。
自己判断で通院をやめずに症状固定や完治まで通院を続ける
通院をやめるタイミングも自己判断で決めてはいけません。主治医の判断に従い、症状固定や完治まで通院を続けましょう。
通院を自己判断でやめてしまうことは、リスクの大きい行為です。
まず、完治や症状固定となっていないのに通院をやめてしまうと、けがが治りきらずにさらに悪化してしまう可能性があります。場合によっては後遺症が必要以上に重く残ってしまうかもしれません。
また、まだ治療を続けるべきであるのに通院をやめてしまうと、もらえる賠償金の額が減ってしまう可能性もあります。交通事故の賠償金の項目のうち「入通院慰謝料」という項目は、入院や通院の期間に応じてその額が決まります。本来はまだ通院する必要があったのに自己判断で通院をやめてしまうと、もらえたはずの入通院慰謝料の額が減ってしまうこともあります。
通院の終了に関して、保険会社から「通院をそろそろやめるように」との連絡が来ることもあります。しかし、保険会社からの通院をやめるようにとの連絡には従う必要がありません。
通院の終了については医学的な判断が必要であり、通院をどの段階でやめるかは最終的には主治医が決めることです。保険会社は、基本的には賠償金の都合から通院をやめるようにと連絡してきているにすぎません。
保険会社から通院をやめるようにと連絡があったら、まずは主治医にそのことを相談し、主治医の判断に従うようにしましょう。
治療費などの領収書は全て保管しておく
交通事故で負ったけがの治療費は最終的には加害者の保険会社から支払われるものですが、一時的にご自身で立て替えた場合には、必ず領収書を全て保管しておくようにしましょう。治療費としていくら支出したかを証明して請求する必要があるからです。
なお、通院の際に電車やバスのような公共交通機関を利用した場合には、通院交通費を請求できますが、その領収書は必ずしも保管しておかなくて構いません。領収書を提出する代わりに、「通院交通費明細書」という書類を作成し、通院日、通院先、往復運賃額などを記入して保険会社に提出します。ご自身で日付や運賃額を把握できていればそれで構いません。
また、入院雑費(入院中の日用雑貨品・通信の費用、新聞代など)についても、定額で1日1,500円(弁護士基準)が支払われるため、領収書を保管しておく必要はありません。
交通事故の対応で被害者が注意すべきこと
交通事故の対応で被害者が注意すべきことについてご説明します。
事故直後に加害者と交渉・示談約束をしない
事故直後に事故の現場で加害者と話す機会があるかもしれません。しかし、その場で加害者と交渉したり示談の約束をしたりしてはいけません。
例えば、加害者が事故の現場で「100万円を支払うからそれで全て許してほしい」と言ってきて、その場で「100万円ももらえるなら許す」とそれに応じてそのことをメモに残してしまうと、100万円で示談が成立したものとして扱われる可能性があります。
しかし、実際にはその後に大きな後遺症が残っていたことが判明して100万円を超える金額が請求できることが判明するかもしれません。そのような場合でも、「100万円で示談が成立した」と加害者に主張されて、賠償金の請求が難航してしまう可能性が高まってしまいます。
事故の現場で示談の約束をすることはトラブルの元です。加害者が事故の現場で示談の約束をしようと持ちかけてきても、その場ではそれに応じずに、必ず「後で正式に返事をする」などと答えて示談の約束を控えることが大切です。
けがをしたら絶対に物損事故ではなく人身事故として扱ってもらう
交通事故には、「人身事故」と「物損事故」の2種類があります。
交通事故が人身事故なのか物損事故なのかは、交通事故後に発行される公的書類である「交通事故証明書」に記載されます。
被害者が交通事故でけがをしている場合には、人身事故として扱われるべきですが、なかには被害者がけがをして治療を受けているのに物損事故として扱われていることがあります。
交通事故が物損事故として扱われると、警察にとっては作成する書類が減ったり、加害者側の任意保険会社にとっては支払う保険金が減ったりします。このため、警察などから物損事故として届けるように勧められることがあります。
しかし、本来なら人身事故だったのに物損事故として扱われることには、被害者にとってはデメリットしかありません。
まず、交通事故が物損事故として扱われると、保険会社は長期間の通院を認めずに早々に治療費の支払いを打ち切ってきます。
また、物損事故として扱われると後遺障害等級認定でも「非該当」となって後遺障害が認められない可能性が圧倒的に高く、後遺障害があることを前提とした逸失利益や慰謝料が認められなくなります。これにより、もらえる賠償金の額が100万円以上少なくなることがあります。
さらに、過失割合についても被害者に不利益な扱いがされる可能性があります。過失割合は、事故の詳しい状況に応じて判断されますが、物損事故では警察が人身事故のようには実況見分を行わずに実況見分調書が作成されないため、過失割合を判断するための資料が十分にそろいません。このため、被害者にとって有利な事情を証明するための資料がないこととなり、過失割合について被害者に不利益な扱いがなされる可能性が高まるのです。
このように、交通事故でけがをしているのに物損事故として届け出ることには被害者にデメリットしかありません。
交通事故でけがをして治療を受けているのであれば、必ず人身事故として取り扱ってもらうようにしましょう。
物損事故として扱われている場合に人身事故に切り替えてもらうには、警察に診断書を提出して人身事故に切り替える手続きを行うとともに、保険会社にその旨を連絡します。
物損事故を人身事故に切り替えることができる期限は、明確に定められてはいませんが、交通事故の発生からおおむね10日以内を目安に切り替えの手続きを行うようにしましょう。交通事故の発生から数週間以上経過すると、人身事故への切り替えができなくなることがあります。
加害者側保険会社からの提案には簡単に応じずに慎重に検討する
一定の段階で、加害者側の保険会社から賠償金(示談金)の支払いについて提案を受けることとなります。
保険会社から賠償金の支払いについて提案を受けても、すぐに応じてしまうことはあまりおすすめできません。
保険会社も営利企業であるため、できるだけ賠償金の支払いは少なくしたいと考えています。このため、保険会社が提示する賠償金が十分な額とはいえないことも多くあります。特に、被害者側に弁護士がついておらず被害者本人が保険会社とやり取りしている場合には、弁護士がついている場合よりも低い基準で算出した賠償金が提示されることが一般的です。
加害者側の保険会社から賠償金の提案があったら、すぐに受け入れずにまずは検討するためしばらく待ってほしいと答えましょう。そのうえで、その賠償金が適正な額であるのかを交通事故に詳しい弁護士に相談してみるようにしましょう。
交通事故の被害者になったら早めに弁護士に相談する
交通事故の被害者になったら、できるだけ早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
具体的には、けがの治療を開始したらなるべく早めに弁護士に相談するようにしましょう。
交通事故で弁護士に相談・依頼するメリットにはさまざまなものがありますが、もっとも大きなメリットは「自分だけで対応する場合よりもらえる賠償金の額を増やせる」という点にあります。
このほかにも交通事故で弁護士に相談・依頼するメリットにはさまざまなものがあります。このことについては、次で詳しくご説明します。
交通事故の被害者になったら弁護士に相談すべき理由
交通事故の被害者になったらご自身だけで対応するのではなく、弁護士に相談することが大切です。
交通事故の被害者になったら弁護士に相談すべき理由についてご説明します。
もらえる賠償金を増額できる可能性がある
弁護士に相談・依頼して加害者側の保険会社との示談交渉を代行してもらうと、被害者本人が示談交渉をする場合と比べて、賠償金を増額できる可能性があります。
これは、被害者に弁護士がついている場合とそうでない場合とで用いられる賠償金の基準が変わり、保険会社が提示してくる示談金の額が異なるからです。
通常は、被害者に弁護士がついているケースでの賠償金が最も高くなります。
交通事故の賠償金の「3つの基準」とは?
交通事故の賠償金には、「3つの基準」があります。
これは、交通事故の賠償金の算定で用いられる基準には次の3種類があるということです。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
「自賠責基準」とは、自賠責保険により賠償金が支払われる場合の基準です。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、全ての自動車・バイクを運転する際に必ず加入することが自動車損害賠償保障法という法律で義務付けられている強制加入の保険であり、交通事故の被害者を救済するために最低限度の補償をすることを目的としている保険です。
「任意保険基準」とは、自賠責保険の上乗せとして運転者が任意に加入する民間の保険であり、さまざまな会社により保険商品が提供されています。
任意保険基準では、保険会社ごとに独自に賠償金の算出基準が定められており、自賠責保険の基準よりは高い水準で賠償金が算定されます。もっとも、通常は弁護士基準(裁判基準)には達しません。
「弁護士基準(裁判基準)」とは、裁判になって判決が下される場合の賠償金の算定基準であり、全ての損害が賠償されることを前提とするために最も高い水準で賠償金が算定されます。
弁護士が被害者の代理人となって示談交渉をする場合にも、裁判基準を基にして賠償金を算出して交渉するため、「裁判基準」と「弁護士基準」は基本的には同じものと考えてかまいません。
ただし、弁護士が示談交渉をする場合には、被害者の意向により示談を早くに成立させるためなどの目的で戦略的に裁判基準(損害の全部の賠償)より少しだけ(満額の約1割程度など)差し引いて請求することがあります。
このような違いはありますが、弁護士基準と裁判基準は基本的には同じものと考えて差し支えありません。
弁護士が代理人につくと「弁護士基準」で賠償金を請求できる
これらの基準のうち、加害者側の保険会社は、まずはその保険会社の任意保険基準で算出した賠償金を提示してきます。
保険会社が任意保険基準で算出した賠償金を提示してくるのは、保険会社も営利企業であり少しでも支払う賠償金の額を抑えたいからということが理由です。
被害者に弁護士が代理人としてついていなければ、被害者本人はそもそも交通事故の賠償金の算定に3つの基準があるということを知らないなどの理由から、任意保険基準に基づいて提示された賠償金をそのまま受け入れることも少なくありません。
しかし、被害者に弁護士が代理人としてついていれば、弁護士は任意保険基準より高い弁護士基準で算出した賠償金を支払うように保険会社に求めることができます。
弁護士がついていれば、最終的には訴訟を起こして裁判の場で賠償金を請求することも視野に入れることができます。また、「場合によっては訴訟を起こしてでも賠償金を満額請求する」というプレッシャーを保険会社に与えることができます。
これにより、裁判の場で採用される賠償金の基準を基にした弁護士基準での賠償金請求が可能となるのです。
このようにして、弁護士が被害者の代理人として保険会社と交渉すれば、実際には訴訟を起こさなかったとしても、任意保険基準の場合よりも増額した内容の賠償金で示談を成立させることが可能となります。
示談交渉の手続きを全て任せられる
弁護士に依頼すると、示談交渉のために加害者側の保険会社と行うやり取りを基本的に全て任せることができます。
保険会社との示談交渉では、ただ請求したい金額を伝えればいいわけではなく、手続きに必要なさまざまな書類を準備したり根拠に基づいて請求する賠償金を計算したりする必要があります。また、保険会社からの連絡に対応するなどたくさんのやり取りをしなければなりません。
弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として基本的に全てのやり取りを行ってくれるため、ご自身で煩わしい書類の準備や請求額の計算、保険会社との連絡対応などを行う必要がなくなります。
これにより、ご自身でさまざまなやり取りをする負担が大幅に軽減されます。
また、交通事故トラブルを多く取り扱っている弁護士であれば手続きに慣れているため、交通事故の賠償金請求・示談交渉の一連の手続きをスムーズに進めてくれます。これにより、必要以上に長引くことなくスムーズに賠償金請求・示談交渉を進めて完了させることが可能となります。
示談が成立せず訴訟になっても引き続き任せられる
保険会社から提示された示談金の額や内訳に納得がいかず、何度やり取りを重ねても示談が成立しない場合には、最終的には訴訟を提起して賠償金の支払いを求めていくことになります。
ご自身だけで交通事故の賠償金を請求する訴訟を提起することは難しく、現実的ではありません。
しかし、交通事故トラブルを多く扱っている弁護士であれば、交通事故の訴訟についてもあなたの代理人として対応してくれます。
訴訟の際に代理人として手続きを進められるのは、法律上、弁護士だけに限られています。弁護士ではない無資格者や、行政書士・司法書士などの他の資格者は、訴訟の代理人となることはできません。
初めのうちから弁護士に依頼していれば、必要に応じて訴訟を提起することも視野に入れて手続きに対応してもらえるほか、訴訟を提起したほうがいいかどうかのアドバイスをしてもらえたり、実際に訴訟を提起することになっても引き続き同じ弁護士に訴訟対応を任せたりすることができます。
シチュエーション別|交通事故対応の注意点
シチュエーションごとに、交通事故対応の注意点をご説明します。
勤務中・通勤中に被害者として交通事故に巻き込まれた場合の対応
勤務中・通勤中に交通事故に巻き込まれて被害者となってしまった場合には、加害者の自賠責保険・任意保険から治療費などの支払いを受けられるだけでなく、「労災保険の給付も受けられる」という点が勤務外での交通事故と異なります。
「労災保険」とは、主に雇用されて勤務する人が加入している保険で、勤務中・通勤中にそれらに起因してけがを負ったり病気にかかったりした場合に、無償での治療その他の所定の給付を受けられるというものです。
労災保険の給付の代表的なものが「療養の給付」であり、労災保険を使うことで対応している病院(労災病院や指定医療機関・指定薬局)での治療を無償で受けることができます。また、病院の窓口で治療費を支払っている場合でも、「療養の費用の支給」として労災保険から後で治療費に相当する額の給付を受けられます。
労災保険にはこのほかにも、交通事故で仕事を休業したことによる損害を補償する「休業補償給付」、一定の後遺障害が残ったことによる損害を補償する「障害補償給付」などの給付が存在します。
このように、労災保険にはさまざまな給付制度が存在し、勤務中・通勤中の交通事故では任意保険・自賠責保険と労災保険のいずれをも使うことができます。
もっとも、これは両方から二重に給付を受けられるというわけではありません。例えば先に任意保険から支払いを受けたものがあるときにはその額を差し引いて後から労災保険の給付を受けられるなど、二重の支給にならないように支給調整がなされることとなっています。
任意保険・自賠責保険と労災保険の間で二重の支給は受けられませんが、労災保険だけに存在する「特別支給金」や「労災就学援護費」のような給付については、支給調整の対象とならずに任意保険からの賠償金とは別に受け取れます。このため、「特別支給金」などの給付を受けられる場合には、労災保険からその給付を受けておくことで、その分もらえる金額が増えることになります。
労災保険を使う場合には、労災申請の分の書類が別途必要になったり手続きが細かかったりして、ご自身だけではよく分からないということもあります。このため、勤務中・通勤中の交通事故で労災保険を使いたいという場合には、早めに弁護士に相談して手続きを任せることも検討するとよいでしょう。
自社の従業員が交通事故を起こした場合の対応
企業の経営者の方で、自社の従業員から「交通事故の被害者・加害者になった」と連絡を受け、何か対応で気をつけるべきことがあるだろうかとお悩みの方がいるかもしれません。
この場合の対応について、被害者・加害者に分けてご説明します。
自社の従業員が交通事故の被害者となったとき
まず、自社の従業員が交通事故の被害者となったときには、その交通事故が業務中・通勤中であれば、労災保険が適用されます。先ほどもご説明したとおり、労災保険と任意保険・自賠責保険はいずれも使うことができ、被害者が選択したほうを使えます。労災保険を使う場合には、むやみに手続きへの協力を拒否することなく、書類の作成など必要な手続きを行ってあげるようにしましょう。
また、業務外での交通事故であって労災保険の適用対象外である場合でも、けがの治療のために会社を休むなどのことがあれば健康保険の傷病手当金制度が使えることがあります。傷病手当金支給のための手続きに協力してあげましょう。
さらに、入院などのために休職が必要となったり後遺症のために復職できなかったりするような事態が生じた場合には、就業規則や労働関係法令の定めに従って適切に対応する必要があります。対応を誤って労働トラブルに発展させることのないように、休職等については労働トラブル・労務を多く取り扱う弁護士に相談するなどして、適切な対応をとることが大切です。
自社の従業員が交通事故の加害者となったとき
自社の従業員が交通事故の加害者となったときは、場合によっては会社も損害賠償責任を負うことがあります。このことは、使用者責任(民法715条1項)や運行供用者責任(自賠法3条)が根拠です。
使用者責任は、従業員が業務を行うについて第三者に損害を与えた場合に、会社も連帯して損害賠償責任を負うというものです。また、運行供用者責任は事故車両が社用車の場合に問題となるもので、自動車の所有名義人(会社)がその自動車の運行によって他人の生命・身体を害した場合に賠償責任を負うというものです(運行供用者責任の範囲に物損の賠償は含まれません)。
このように、従業員が交通事故の加害者となったときは会社も損害賠償責任を負う可能性があるので、適切な対応が必要となります。まずは詳しく事故の事情を把握し、弁護士に相談するなどして会社が賠償責任を負う可能性があるケースなのかを見極めましょう。
また、交通事故の内容によっては大きなニュースになることもあり、警察対応・報道対応などが必要になることもあります。初動を誤ると会社の評判などの面でもリスクがあるので、弁護士に相談するなどして適切に対応することが重要です。
このように、従業員が加害者になった場合には、賠償責任はもちろんそれにとどまらないリスクがあります。そもそも従業員が加害者として交通事故を起こさないことが一番であり、従業員に対して安全運転を啓発するとともに、従業員に無理な運転を強いるような業務体制が放置されていないか日頃から注意・確認するなど、従業員が加害者として交通事故を起こさない環境づくりに努めるようにすることも大切です。
ご自身が交通事故の加害者となってしまった場合の対応
交通事故の加害者となってしまった場合の対応のうち、事故直後の対応は基本的には被害者となった場合の対応と大きく異なることはありません。
負傷者を助けたり警察に連絡したりすることは、確実に行いましょう。特に、負傷者を助けずにその場から立ち去ってしまうと「ひき逃げ」として重く処罰されることもあるため、安易に軽く考えず、しっかり対応することが大切です。
事故直後の対応を終えたら、加入している任意保険会社に事故があったことについて連絡します。保険会社は、交通事故の賠償について加害者に代わって手続きを進めてくれますし、示談交渉も代わりに行ってくれます。加害者本人は、保険会社に任せてしまえば後は積極的に何かしなければならないことは少ないため、示談の結果を待つだけとなります。
示談交渉など賠償をめぐる被害者とのやり取りは、全て保険会社を通して行うため、ご自身で勝手に被害者と賠償に関して約束をするなどのことはしないようにしましょう。
もし交通事故で被害者をけがさせたことなどについて刑事事件として取り扱われるのであれば、刑事事件の部分について保険会社が関与することはありません。警察・検察の取調べや起訴後には刑事裁判への出廷など、基本的にはご自身で対応することとなります。もっとも、刑事事件については私選弁護人を選任して弁護活動を行ってもらうこともできるため、できる限り刑事弁護に詳しい弁護士に相談して弁護人として選任し、刑事事件への対応を手助けしてもらうようにするのが望ましいでしょう。
被害者側の交通事故の対応に関してよくある質問
被害者側の交通事故の対応に関して、よくある質問をご紹介します。
交通事故にあったらいつまでに病院に行くべき?
交通事故にあっても、「仕事で忙しいしけがの痛みも大したことがない」などの理由で当日中に受診せず、病院に行くのを後回しにしてしまうことがあるかもしれません。
交通事故にあったらいつまでに病院に行くべきかということに決まった答えがあるわけではありません。しかし、できる限り交通事故の当日中、遅くとも交通事故から3日以内を目安に受診するべきです。
交通事故後、このようにできる限り早く受診するべき理由には、医学的な理由と賠償金請求の観点からの理由の2つがあります。
医学的な理由は、交通事故では予想外の負傷をしていることもあり、事故直後は自覚がないことも多くあって、自覚症状にかかわらず速やかに診察して異常を発見してもらわなければ治りが遅くなったり後遺症が残りやすくなったりすることがあるからという点にあります。
また、賠償金請求の観点からの理由は、交通事故と最初の受診との間があまり開いてしまうと、けがと交通事故との因果関係が否定され、賠償金請求ができなくなるおそれがあるからという点にあります。
ご自身では交通事故で負ったけがであることに間違いないと思っていても、加害者側から「交通事故後に別の原因があってそこで負ったけがではないか」と反論されると、けがと交通事故との因果関係の立証が必要になり、場合によっては困難になってしまいます。
これらのことから、交通事故にあったらできるだけ事故当日中、遅くとも事故後3日以内に病院を受診するようにしましょう。
交通事故でかかるとよい病院とかかるべきでない病院とは?
交通事故にあった場合に最初にかかるべき病院として最も望ましいのは、「総合病院の整形外科」です。
総合病院が近くになければ、総合病院ではない病院の整形外科でもかまいません。「整形外科」を診療科として掲げている病院を受診しましょう。
「整形外科」は、骨や筋肉、関節、神経などの運動器官の病気や外傷を対象として治療を行う診療科です。交通事故にあうと、骨折や打撲、むち打ちなどのけがを負うことが多く、これらのけがに対応してくれるのが整形外科です。
総合病院が望ましいのは、整形外科領域以外のけがも同時に負っていることがあるからです。例えば、事故の衝撃で耳の神経に異常を生じた場合に耳鼻科の診療が必要となるケース、頭に衝撃を受けており脳内出血の有無や影響を精査するために脳神経外科の診療が必要となるケースなどです。
まず整形外科で診察を受け、整形外科以外の診療科で対応するべきけがや問題が生じていると判断されれば、総合病院内で適切に連携して専門的な診療を受けることができます。
もし近くに総合病院がない場合には、総合病院ではなくてもいいので整形外科を掲げている病院を受診しましょう。無理に遠くの総合病院に行く必要はありません。整形外科を受診すれば、交通事故のけがへの基本的な対応をしてもらえますし、もし必要があれば他の病院を紹介してくれることがあります。
かかるべきでない病院は、整形外科以外の病院です。
例えば、よく分からないからとりあえず内科を受診したり、頭を打ったからといっていきなり脳神経外科を受診したりしても、交通事故のけがに対して適切に対応してもらえない可能性があります。結局は整形外科に行くように紹介されてしまうこともあるでしょう。
どうしても通える範囲内に整形外科がないという緊急の場合を除いて、まずは整形外科を受診することが大切です。
また、病院ではなく「整骨院」などに最初から行くというのも差し控えるべきです。整骨院は整形外科と名前が似ていますが、別物です。整骨院などは病院ではなく医師が対応してくれるわけではないので、けがの診断と治療をすることができません。「交通事故への対応で評判がいいところがある」などと思っても、最初から整骨院などに行くことは全くおすすめできません。どうしても行きたい整骨院があるという場合などには、医師に相談してから行くようにしましょう。
子どもが交通事故にあったらどの科にかかるべき?
「子どもが交通事故にあったら、『小児科』に通えばいいのだろうか?」と迷ってしまうかもしれません。
子どもであっても、交通事故にあった場合には整形外科にかかるべきです。
小児科は、基本的には子どもを対象とした内科であり、交通事故の外傷への対応は得意でないことも多くあります。これに対して、整形外科は大人か子どもかを問わず、交通事故の外傷に対応してくれます。
子どもが交通事故にあったときは、どうしても近くに整形外科がないという緊急の場合を除いて小児科にはかからずに、まずは整形外科にかかるようにしましょう。
交通事故で整骨院に通ってもよい?「整骨院」「接骨院」「整体」の違いは?
「交通事故後の施術で評判のいい整骨院が近所にあるから通ってみたい」と考えて、整骨院を検討する方は多くいます。
そもそも、「整骨院」とは、医師が診療にあたってくれる病院・クリニックなどとは異なり、主に柔道整復師という資格者などが開いているもので、マッサージなどの手技によりけがなどの改善を目指した施術などを行ってくれるものです。ここで施術してくれる人は医師ではないため、具体的な診断を下したり診断書を書いたりすることはできません。
「整骨院」は「接骨院」と呼ばれることもありますが、基本的には同じものを指します。また、「整体」も同じものを指すことがありますが、よりマッサージによる健康状態の改善に重きを置いているものを指すこともあります。
「整骨院」「接骨院」「整体」は、正確な定義が決められているわけではありませんが、いずれも病院、医院・クリニックとは異なるものであり、医師ではない者が施術にあたるため、そのことをよく認識しておきましょう。
交通事故のけがの治療という観点からは、整骨院では診療行為を行えないことから、最初から整骨院に行くべきではありません。必ず最初に整形外科で医師の診察を受け、医師と相談したうえで整骨院に通い始めるようにするべきです。
交通事故の賠償との関係では、整骨院等に通った部分は治療のため必要がないとして治療費の支払いを受けられない可能性があるほか、整骨院にばかり通って整形外科にほとんど通わず医師の診察を受けていないと必要な治療を受けていないものとみなされて賠償金の額に影響が出るおそれがあります。さらに、整骨院では症状固定の診断書など必要な書類を書いてもらえないことから、賠償請求の手続きに支障が出る可能性も高いです。
交通事故で整骨院に一切通ってはいけないということはありません。しかし、整骨院にばかり通うことは全くおすすめできません。
交通事故で整骨院に通いたい場合には、基本的には整形外科で治療を進めるようにして、整骨院での施術は整形外科に通う合間にそれを補う程度にとどめるようにするのが最善だといえるでしょう。また、整骨院に通うことについては先に整形外科で医師に相談し、医師のアドバイスに従いつつ整骨院に通うようにしましょう。このようにすることで、治療上の影響や賠償金に関する影響を最小限に抑えることができます。
交通事故の対応で警察はどのようなことをしてくれる?警察の役割とは?
交通事故では、警察は実況見分調書などを作成し、刑事事件として捜査を行います。警察が行うのはあくまでも刑事事件としての捜査ですが、警察が作成した実況見分調書などは過失割合を決めるにあたって根拠となる資料にもなります。この意味で、警察がどのような実況見分調書等を作成するかは、賠償金にも影響して重要です。
もっとも、警察はあくまでも公の捜査機関として客観的かつ公平に捜査を進め、捜査書類を作成する役割を担っているため、基本的には何か被害者・加害者の側から働きかけることができるものではありません。
被害者・加害者としては、何より交通事故の直後に110番通報などで警察に連絡し、適切な対応をしてもらったうえで実況見分調書等を作成してもらうことが重要です。
なお、警察は、民事事件すなわち交通事故の賠償に関係する部分には関与しません。警察に仲介してもらって賠償金の示談をするということもありません。警察はあくまでも刑事事件の捜査を行う役割であるということに注意しましょう。
保険会社への対応のコツは?保険会社の対応が悪いときの対処法は?
加害者側の保険会社とのやり取りには押さえておきたいコツがあります。例えば、冷静に対応することは大切です。交通事故被害の怒りで感情的になってしまうかもしれませんが、感情的に対応しても保険会社の印象を悪くするだけです。こうなると、保険会社の対応が悪くなってしまうかもしれません。
一方で、むやみに不満を抑えて我慢していても、状況が改善されることはないため、おすすめできません。感情的にならず、かつ、不満を抑えずに、冷静にご自身の主張を伝えていくことが最も望ましいです。
また、加害者側の保険会社が提示する示談案の内容に少しでも納得できないときは、安易にそれを受け入れないようにすることも非常に重要です。納得できない示談を成立させると後から覆すことはできませんし不満がずっと残ってしまい、つらいことになってしまいます。
保険会社の対応が悪いと感じたときに最もおすすめできる解決方法は、弁護士に相談・依頼することです。弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りを全て任せることができ、ご自身で対応する必要が基本的にはなくなります。保険会社の対応が悪いことで悩む必要もなくなります。
また、弁護士に依頼すれば、どのような条件で示談を成立させるのが最も望ましいかを正確な専門知識に基づいて判断してくれるため、納得できない示談を成立させることになるリスクを減らせます。
「交通事故の被害にあったら弁護士に相談する」という選択肢を頭の中に置いておくようにしましょう。
交通事故で弁護士に相談・依頼するときの流れ
交通事故で弁護士に相談・依頼したいと思ったら、まずは交通事故トラブルに詳しい弁護士を探すところから始めましょう。
交通事故トラブルへの対応は専門的な知識が必要であり、どの弁護士でも取り扱ってくれるわけではありません。交通事故トラブルへの対応経験が豊富な弁護士を選んで相談することが重要です。
交通事故トラブルに詳しい弁護士を探す方法としては、インターネット検索で交通事故に関する情報を詳しく発信している弁護士を選ぶことや、弁護士紹介サイトに掲載されている弁護士から交通事故トラブルへの対応経験が豊富な弁護士を選ぶことなどがあります。
交通事故に関する情報を詳しく分かりやすく発信している弁護士であれば、交通事故トラブルへの対応経験が豊富で適切に対応してくれたり、疑問点を分かりやすく説明してくれたりすることが期待できます。
また、弁護士紹介サイトを活用すれば、交通事故トラブルに詳しい複数の弁護士を比較して検討することができます。
相談したい弁護士が決まったら、メールや電話で相談の予約を取り、相談に臨みましょう。
相談の結果、その弁護士に依頼したいと思えたのであれば、契約書にサインをして交通事故トラブルへの対応を委任します。その後は、依頼した弁護士としっかりやり取りをしながらトラブル解決を進めていきましょう。
まとめ:交通事故の被害者になったら弁護士に相談・依頼して対応しよう
交通事故の被害者になったら、交通事故直後の対応やその後の賠償関係の手続き・示談交渉、通院と治療など、行うことはたくさんあります。
これらには、ポイントを押さえて適切に対応することが欠かせません。
交通事故の被害者としてこれらの対応を適切に行っていくにあたっては、できるだけ早い段階から交通事故トラブルに詳しい弁護士に相談してアドバイスを受けることが重要です。
弁護士に相談・依頼することで、その都度どのようにすればいいのか適切なアドバイスを受けられるだけでなく、示談交渉を代わりに行ってくれます。また、弁護士を立てることで受け取れる賠償金を増やすこともできます。
交通事故の被害者になったら、交通事故トラブルに詳しい弁護士に相談・依頼して、適切に対応を進めていきましょう。