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第6回若手弁護士会レポート ゲスト:ベリーベスト酒井先生 業界の未来、大規模・小規模事務所の違い、など

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酒井将弁護士が語る、ベリーベスト法律事務所の成長と戦略


自己紹介と初期のキャリア

酒井将弁護士は、司法修習期55期の弁護士で、初めてのキャリアは小規模な法律事務所から始まりました。当初、勤務弁護士として3年8ヶ月の経験を積み、その後独立しました。勤務弁護士時代には、先輩の元榮太一郎弁護士と共に「弁護士ドットコム」の立ち上げに携わり、その後「オーセンス」法律事務所を設立しました。5年後には「ベリーベスト法律事務所」を設立し、「弁護士ドットコム」の株を手放し、自らの事務所の発展に注力しています。

事務所の設立と成長

2010年に設立されたベリーベスト法律事務所は、当初弁護士10名、スタッフ80名でスタートしました。その後、事務所は急成長を遂げ、現在では弁護士350名、スタッフ約1000名を擁する大規模な法律事務所となっています。設立当初から、弁護士ドットコムの経験を活かし、ウェブマーケティングを駆使して個人顧客をターゲットにした戦略を展開し、その後、法人向けの顧問契約にも注力しています。

事務所の拡張戦略

酒井弁護士は、弁護士ドットコム時代の経験から、広告戦略を活用し、同種事件を集中的に取り扱うことで業務効率を高める方針を採用しました。これにより、パラリーガルの教育と専門特化が進み、業務効率化が実現しました。債務整理から始まり、交通事故、離婚、相続など、マーケットの大きさに応じて分野を拡大してきました。

今後の展望

ベリーベスト法律事務所の今後の展望としては、さらに専門分野を増やし、地方や企業顧問先の拡充を目指しています。また、医療事故、建築紛争、学校問題など、新たな分野への参入も検討しています。人材の確保が課題であり、競争が激化する中での業界全体の広がりに対しても前向きな姿勢を見せています。

業界の未来

酒井弁護士は、弁護士業界の競争の激化と新しい切り口でのサービス展開に対して、業界全体が広がるチャンスと捉えています。新たなサービスや専門性の拡充により、ベリーベスト法律事務所の成長はさらに加速すると見込んでいます。

地方事務所の承継

地方事務所の承継については、ベリーベスト法律事務所が受け入れを希望するケースが多く、経営の悩みや地域におけるネットワーク不足の解消を求める弁護士たちが多く参加しています。引き継ぎに対する抵抗感があるものの、マーケティングや業務効率の改善を求める弁護士たちが集まっています。


酒井先生への質問集


-事務所拡大する際に気を付けること-

Q: 拡大路線において、人数を増やすと人的なトラブルが発生する可能性がありますが、その対策として気をつけるべきポイントや、どのような人を避けるべきかについて教えてください。

A (酒井先生): 人数を増やす際には、事務所のカラーを作りすぎず、どんな弁護士でも居心地が良いような組織を目指すことが重要です。個性の強い弁護士たちが協力できるようにするため、事務所としてのルールを過剰に設定せず、成果報酬の割合を増やすことでモチベーションを高めました。また、悪影響を与える弁護士がいた場合には、その人には退職を促す方向で対応することが大切です。組織マネジメントには、弁護士に自由を与えつつ、周りに悪影響を与えないようにする配慮が必要です。

-地方事務所との戦略・カルチャーの違いについて-

Q: 地方の事務所を引き取った際に、広告などで積極的に展開している事務所とカルチャーの違いがあったと思いますが、その融合はうまくいったのか、苦労した点について教えてください。

A (酒井先生): 地方の事務所から引き取った弁護士は、案件の量が全く異なり、最初は相談の量の爆増に驚き、受任力の不足も課題となりました。具体的には、ロープレを実施するなどして受任力の向上を図り、地方オフィスでのトレーニングを行いました。カルチャーの融合に関しては、当初から一人事務所であったため、事務職員も一緒に引き取ることで、仕事の環境自体は大きく変わらなかったものの、仕事量の増加には対応が必要でした。弁護士がやる気があり、どんどん吸収し改善していったため、最終的にはうまく融合しました。

-事務員の採用戦略について-

Q: 弁護士業界の人手不足が深刻化する中で、事務職員の採用やモチベーション向上に対する戦略について教えてください。

A (酒井先生): 事務職員の採用は難しく、人材紹介会社の利用により、最近では1人採用するのに約100万円のコストがかかる状況です。給料を上げることで、一般企業と同水準に近づけるよう努力しています。また、パラリーガルのスキルアップを重視し、例えば交通事故案件では損害計算まで担当するなど、実務においても成長機会を提供しています。さらに、組織内でのキャリアパスを明示し、平社員から主任、課長、部長へと昇進する機会を設けることで、年収が1000万円を超えるポジションや2000万円近くになる部長クラスの待遇をアピールしています。これにより、優秀な人材の獲得を目指しています。

-個人法務・企業法務をどのように両立させていくのか-

Q: 御所は個人法務に強いイメージがありますが、今後は大企業の顧問先を増やしたいとお考えのようです。最終的には個人法務と企業法務の両方でトップを目指すという理解でよろしいでしょうか?また、個人法務と企業法務ではお客様の対象や信頼を得る方法が異なると思いますが、その両立についてどのように考えていますか?

A (酒井先生): 個人法務と企業法務を両立させるのは難しいですが、両方に対応することは可能です。ただし、個人法務と企業法務では、弁護士の役割やタイムスケジュール、クライアントのタイプが大きく異なります。そのため、それぞれの分野に特化した対応が必要です。

弁護士業務においては、高額な報酬をいただくため、丁寧な接客を心がけています。所内においても依頼者名を呼び捨てにすることはなく、サービス業としての対応を重視しています。一方、企業法務に関しては、営業部門(事業推進部)を設け、50人規模で営業活動を強化しています。また、M&Aの仲介会社を設立するなどして、企業法務の獲得に向けた試行錯誤を行っています。

-受任力が高い弁護士と低い弁護士の違い(特徴)について-

Q: 受任力が低い弁護士の特徴は何ですか?

A(酒井先生):受任力が低い弁護士にはいくつかの共通する特徴があります。以下の点が特に重要です。

・法律の解説だけで終わる: 単に法律の解説を行い、依頼者に対して積極的に行動を促さない弁護士は受任できないことが多いです。依頼者に対して具体的なアクションプランを提案し、背中を押す姿勢が必要です。

・リスク説明が多すぎる: リスクを説明しすぎることで、依頼者が不安になりすぎる場合があります。リスクと対策をバランスよく説明することが大切です。

・法律知識が不足している: 法律の知識が不足していると、依頼者からの信頼を得るのが難しくなります。十分な知識と専門性が求められます。

・共感力の欠如: 依頼者は一緒に戦ってくれる弁護士を求めています。共感し、一緒に伴走する姿勢が欠けていると、依頼者が受任を決めるのは難しいでしょう。

-地方の事務所の採用に関して-

Q: 地方に弁護士が少ない場合、地方のオフィスをどうやって盛り立てていますか?地方での案件はどのように対応していますか?

A(酒井先生):地方で弁護士を採用するのは非常に難しいため、通常は東京で採用した若くて身軽な弁護士を派遣することが多いです。派遣の際は、大抵2年ほどの任期を設定し、その後は東京に戻る形を取っています。また、地方の案件に関しては、案件によりますが、遠隔で対応できるものは遠隔で対応しています。ただし、刑事弁護や離婚調停など、地元での対応が必要な案件もありますので、これらの案件には現地の弁護士が必要です。

-地方展開について-

Q: 地方展開について、どのレベルまで広げる予定ですか?

A(酒井先生):現在のところ、まずは本庁がある地域に展開していきたいと考えています。その後、支部などニーズがある場所にも展開できればと思っています。ただし、最近は大都市に集中する傾向が強く、地方展開が難しい状況です。

-労働集約型モデルからの脱却について-

Q: 現在の弁護士業の労働集約型モデルから脱却するために、どのようなアプローチが考えられますか?

A(酒井先生):弁護士業の労働集約型モデルから脱却するためには、業務効率を上げる手段としてAIの活用が有効です。AIの進化により、リサーチや書面の作成が効率化されることで、弁護士はより多くの案件を処理できるようになると考えています。また、AIが法律相談の定型化を進めることで、どの相談を受任すべきかをAIが判断することが可能になると予想しています。これにより、弁護士が時間に追われずに業務を進めることができるようになると思います。

-非弁行為や問題のあるユニオンに対抗する活動について-

Q: 非弁行為や問題のあるユニオンに対抗するための活動について、どのように考えていますか?

A(酒井先生):私は、非弁行為や問題のあるユニオンを単に叩くのではなく、取り込んでいくアプローチを考えています。具体的には、退職代行などの業務も、弁護士事務所が傘下に入れる形で対応する方が良いと考えています。

最近、私たちの事務所では、IT企業と提携し、クッキーに関する個人情報保護の対応を行っています。クッキーに関する法律は国によって異なり、例えばEUでは厳格な規制があり、日本では比較的緩やかですが、現在の日本でこうした法律の違いに対応できる弁護士は少数です。むしろ特定のIT企業がノウハウを有していたりします。そこで、このような専門の企業と弁護士が提携し、非弁行為を回避しながらサービスを提供しています。

このように、弁護士が専門知識を持つ企業と組むことで、非弁にならずに業務を展開できると考えています。弁護士がまだ開拓していないマーケットを取扱う専門の企業がいて、当該企業がサービスを実施すると非弁行為となるようなケースでは、弁護士がこのような専門知識を持つ企業を取り込んで、業務の改善や拡充を図る方が、単に非弁を排除するよりも効果的だと思います。


北周士弁護士が語るミニマムな運営


事務所の運営スタイル

北先生の事務所「アルシエン」は、中規模で21人の弁護士が在籍していますが、経営は完全経費共同制を採用しており、売上連動がないシステムです。代表は3人いますが、北先生は2018年から在籍し、ほぼワンオペで運営しています。

現在の運営方法

現在の運営方法として、北先生は同業者向けの経営本の執筆やセミナーの開催など、できる範囲での活動を行っています。以前はベンチャー企業の顧問業務に特化していましたが、現在は顧問先を減少させ、債権回収や経営者離婚案件に注力しています。

将来の方向性

北先生は、大規模な運営とミニマムな運営の二極化について考えています。将来的にはどちらのスタイルに進むか不透明であり、個人事務所の存在意義についても疑問を持っていますが、現状ではミニマムなスタイルでの運営を続ける意向を示しています。


北先生への質問集


-個人事務所の存在意義について-

Q:個人事務所の存在意義について、どのようにお考えですか?また、今後の見通しについて教えてください。

A(北先生): 全くなくなるわけではないと思いますが、現在、1人事務所の比率が非常に高いです。新たに設立される事務所のうち、1人事務所の割合は約66%を超えており、年間200件ほど新たに1人事務所が設立されています。全体で約18,000件の事務所のうち、約1万2千件が1人事務所となっています。

ただし、特に個人事務所がtoC(消費者向け)で存在する意味については疑問を感じています。例えば、toCの巨大事務所が複数存在する中で、選択肢が増えるときに、同じ比率で個人事務所が存在する必要があるのかは分かりません。全国展開している大手事務所が増えることで、価格帯や機動力も向上するでしょうし、その中で小規模な事務所の必要性が今と同じように維持されるかは疑問です。

弁護士にとってのメリットがクライアントにどれほど役立つのかも正直分かりません。私自身は現状のスタイルにメリットを感じていますが、それがクライアントにとっても有益かどうかははっきりしません。ですので、今後の比率が維持されるかどうかは不透明だと考えています。

-個人事務所での稼働限界に関して-

Q:北先生は個人事務所の限界についてどのようにお考えですか?件数やジャンル数について、1人で対応するにはどのような工夫をされていますか?

A(北先生): 個人事務所の運営には、件数も重要ですが、特に限界を感じるのは「できることの少なさ」です。1人か、それに近い規模では、できることが非常に限られているため、まずは「できないこと」や「やらないこと」を明確にし、それに基づいて業務を組み立てる必要があります。

私の場合、数年前にワンオペになり、できないことを省いた結果、ベンチャーに特化することになりました。例えば、長時間の電話や長距離移動が難しいため、クライアントとはチャットツールでのやり取りを重視しました。

現在は、ベンチャー分野からは撤退し、債権回収などの定型業務を行っています。債権回収の中でも、システムを使った自動化や、内容証明の定型化などで効率化を図っています。例えば、キャンセル返金のシステムや違約金関連の回収業務などです。

件数については、手が回らなくなった場合には、さらに業務を増やすのではなく、既存の業務を見直し、どれをやらないかを決めることが重要です。個人事務所の限界を感じた場合、組織化や人の増員を検討するかもしれませんが、私自身はマネジメントや教育が苦手で、他人と一緒に働くのは難しいと感じています。そのため、個人で最適化されたスタイルを維持しています。

-小規模事務所のギャップについて-

Q:小規模事務所の運営について、自由度が高いと思っていたが、実際には難しさを感じているという話を伺いました。北先生の見解をお聞かせください。

A(北先生): 小規模事務所には責任を負う相手が少ないことから、自由度が高いとは言えますが、経営資源が非常に限られているため、その分できることが非常に少ないのが現実です。自由度が高いというのは、あくまで責任を負う範囲が少ないという意味に過ぎず、選択肢が多いという意味ではありません。実際には制約が多く、特に経営資源が限られているために、業務の幅を広げるのが難しいのです。

小規模事務所の特性として、特定の分野に特化することで最適化を図ることは可能ですが、それを広げてキャリアチェンジや新たな業種に進出するのは、むしろ難しいと感じることが多いです。結局のところ、小規模な事務所はその規模に応じた最適化をするしかなく、そこから外れることは難しいというのが現実です。ですので、小規模の自由度が高いというのは、実際には制限が多く、その中で最適化を図るしかないと思います。

-小規模事務所と中規模事務所の違いについて-

Q: 北先生が小規模事務所から中規模事務所に移った理由について教えてください。

A(北先生): 1番は小規模事務所の制約です。小規模で運営する場合、できることが限られており、問い合わせがあったときに、すぐに対応できる範囲が狭いです。小規模事務所では、受けた案件を外部に振ることが多く、広範囲な案件に対応できる体制が求められます。

中規模の事務所であれば、専門分野ごとにスタッフが揃っており、特定の分野で優れた専門家を確保しやすくなります。また、案件が流れてくる際に、事務所内で専門家が対応できることも多く、その分、案件の選別がしやすくなります。

-一人事務所の強みとその活用方法-

Q: 一人事務所のクライアントに対する強みやメリットについて、どのように考えておられるでしょうか?

A(北先生): 一人事務所には、大規模事務所とは異なる独自の強みがあります。私が考える一人事務所のメリットには以下の点があります。

ニッチな市場の発見と専攻
大規模事務所では広告費が高く、広範囲なニーズに対応しようとするため、ニッチな市場や小規模な案件は見逃されがちです。一方で、一人事務所では、そうしたニッチな市場を発見し、専門的なサービスを提供することが可能です。例えば、広告費をかけてまで算入しようとは思わないが一定の需要がある特定の分野にフォーカスすることで、競争が少ない状況でクライアントを獲得できるチャンスがあります。

専門性の強化
特定の分野に特化することで、その分野における専門性を高めることができます。私自身は、例えば人材紹介の違約金に関する案件に特化し、その分野での専門家として認知されています。こうした特化は、小さな山を攻める形で成果を上げる手助けになります。

個人的な関係の構築
一人事務所では、クライアントとの個人的な関係を築くことができるため、信頼関係が強固になります。これにより、クライアントからの紹介やリピーターの獲得につながることがあります。個別対応が可能で、クライアントとの関係を深めることができる点がメリットです。

-事務所の経営方針や報酬形態について-

Q: 事務所の経営方針や報酬形態について、どのように決めているのか教えていただけますか?

A(北先生): 私の事務所では、経営方針や報酬形態についての統一的な方針は持っていません。具体的には、以下のような状況です。

経営会議の不在
私たちの事務所では、全体としての経営会議は一切行っていません。みんなで集まる機会も少なく、暑気払い忘年会くらいです。私たちの事務所には3人の代表がいますが、事務所の方針については彼らが協議をして決めています。

専門分野のバラバラさ
事務所内の弁護士は、それぞれ異なる分野に特化しており、料金体系も各弁護士で異なります。そのため、事務所内で統一的な経営方針を作ることが難しく、ホームページに掲載する情報も非常に抽象的です。


各人の業務のやり方はは非常に原始的で、各弁護士が自分のやり方で仕事を進めています。たとえば、ファックス送付状が人によって異なるなど、まだまだ原始的な部分が残っています。効率化については必要性を感じていますが、全員の意見を統合するのが難しく、進んでいないのが現状です。

個体能力の影響
現在の業界では、個々の弁護士の能力が大きな影響を持つため、効率化や統一化が遅れている部分もあります。特定の分野に強い弁護士がいれば、その分野はその弁護士に依存する形になります。これにより、専門性が高い一方で、脆弱性も抱えています。


全体質問


-弁護士業界の未来予想について-

北先生:
未来予測して当たったことって、10年前の予測を覚えていらっしゃいますか?

酒井先生:
10年前の予測は覚えていますが、実際には変わっていないんですよ。やっている仕事自体はほぼ変わらず、案件数は増えているものの、それ以外の領域には手が出せない状況です。今後10年も、仕事自体は大きく変わらないと思います。AIやDX化が進んで業務が効率化されることはあるでしょうが、情報を多く持つ組織が有利になる程度で、基本的には大きな変化はないと感じています。

北先生:
それは本当にその通りです。業務効率化のためにツールを使うことはあると思いますが、それらのツールはすべての事務所が導入することになるでしょう。私たちが弁護士になった時と今では、判例検索の方法が大きく変わりました。昔はDVDやCDで判例が送られてきて、高額でしたが、今ではオンラインで簡単に検索できるようになりました。このようにツールは全事務所に普及するので、ツールだけで他事務所を圧倒することは難しいでしょう。ツールがコモディティ化し、月数万や数千円で提供されるようになると、業界全体のレベルは上がりますが、業務自体はそれほど変わらないのではないかと思います。

酒井先生:
私もそう思います。

-都市と地方の弁護士の未来-

北先生:
酒井先生は、都市と地方を両方見ていらっしゃると思うんですが、先生が考える今の都市と地方の状況、そしてこれからどうなっていくべきかをお聞かせいただけますか?

酒井先生:
都市部は競争が激しいと思います。都市部で成功する先生は、創意工夫を凝らしたり、新しいマーケットを開拓したり、優秀であることが多いです。優劣がはっきりし、勝つ先生と仕事がうまくいかない先生が出てくると思います。一方、地方はブルーオーシャンだと思います。特に差別化をしなくても仕事は取れる可能性が高いです。

北先生:
地方で「仕事がない」とおっしゃっている先生もいますが、地方でもまだ広告が効果的だと思いますか?

酒井先生:
広告は地方でも全然刺さると思います。特に離婚や交通事故、債務整理の分野では競争が激しくなっていますが、それ以外の分野では十分にチャンスがあると思います。

北先生:
例えば、どのような外れた仕事をイメージされますか?

酒井先生:
たとえば、建築紛争や医療過誤などの分野です。離婚に関しても広告費をかければ集客できると思います。地方では弁護士が増えていないため、仕事はまだまだあるかもしれません。実際に私の事務所も広告を出せば仕事はたくさんあります。

北先生:
先生の事務所のように広告をうまく活用すれば、地方でも十分に仕事が見つかるでしょうね。地元で開業したいと考える先生がいる場合、どのような戦略で進むべきだと思いますか?

酒井先生:
地方で成功して事務所を大きくし、その後東京にも展開するというパターンもあり得ると思います。

北先生:
逆に都市部で成功するためには、どのように考えたら良いでしょうか?

酒井先生:
都市部では専門性を高めたり、強みを持つことが重要です。自分の売りがあれば仕事を取りやすいでしょう。

北先生:
クライアントが弁護士を選ぶ際、どのような基準で選んでいると思いますか?弁護士の商品価値をクライアントが把握するのは難しいと感じることがあります。

酒井先生:
クライアントが弁護士を選ぶ理由は様々ですが、広告の知名度や規模の大きさから依頼することが多いと思います。広告を出さない場合、知り合いだから頼む、仕事ぶりに満足したからリピートや紹介があるというケースもあります。結局、良い仕事をしていれば自然とクライアントが増えるというのは確かだと思います。

北先生:
誠実に仕事をこなすことが基本であることは理解しました。事務所のメンバーや弁護士がちゃんと仕事をしているかどうかをどう評価していますか?

酒井先生:
クライアントの反応が一番です。知人から紹介されて仕事を頼まれ、その後も高評価でリピートや紹介があるかどうかです。

北先生:
クライアントは弁護士のどんな点を評価していると思いますか?

酒井先生:
基本的なところ、例えばレスポンスの速さなどが重要です。仕事の質以前に、こういった基本的な点でクレームが発生することが多いです。また、弁護士としての実力や能力が高いとリピートされることが多いと思います。弁護士の能力はクライアントにも分かるもので、優秀な弁護士は当然高く評価されます。

-専門性や今後の業界でどんな領域が必要になるか?-

北先生:
すごく多くの領域が考えられると思いますが、今後の業界でどの領域に進むべきかについて、全員に当てはまる答えはありますか?

酒井先生:
中小企業の事業承継やM&Aの領域は今後進んでいくと思います。また、高齢化社会が進むことで、関連するニーズも増えるでしょう。外国人が増えているため、外国人に関わる法律問題も増えるでしょうし、技術革新が進むことで最先端技術に関する法律問題も増えていくと思います。環境問題もマーケットが拡大する分野です。さらに、共同親権が進むことで、今まで単独親権で会えなかった親子の面会の問題や、養育費の問題も増えてくるでしょう。また、事後型弁護士保険が新たに登場して、事件発生後に保険に入ることができるようになりました。これにより、保険会社が紛争案件を開拓できるようになり、保険会社(つまり非弁)が弁護士案件を取ってくることが増えるかもしれません。

北先生:
なるほど、今から入れる保険があるということですね。

酒井先生:
そうです。事後型弁護士保険に入ると、着手金を保険会社が出してくれるので、これまで弁護士に依頼しなかった層が依頼するようになるかもしれません。また、自動運転が進むことで交通事故が減るとか、ロボットによる事故なども考えられますが、オーソドックスな伝統的な仕事の方が多く残ると思います。

北先生:
酒井先生のお話を聞いて、メモや記憶をした方もいらっしゃると思いますが、この分野関しては、ベリーベストのような大規模事務所も参入してくるわけですよね。

酒井先生:
そこまでやれるとは思いませんが、もし余力があれば取り組むかもしれません。ただ、今のようにパッと聞いて思いつくことがあると、みんなが考えている可能性もあります。伝統的な仕事は絶対になくならないので、例えば離婚や相続、不動産売買などはなくならないでしょう。自分だけが発見する新しい分野はないかもしれませんが、情報が入りやすくなっている今、自分より大きな事務所がすでに考えている可能性が高いです。そこに対してどう取り組むかが重要です。

第六回若手弁護士会


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