時効援用通知書の書き方や費用、注意点について弁護士が解説【無料テンプレート有り】
時効援用通知書とは、時効が完成(成立)したのでその時効の利益を得ますという意思表示が記載された通知をいいます。この記事では、時効援用通知書の書き方や例文、作成や送付にかかる費用、時効の援用をする際の注意点について、弁護士が分かりやすく解説します。
「時効の援用をして、借金の消滅時効を成立させたい」という方は、一度弁護士にご相談ください。
早期に弁護士にご相談いただくことで、さまざまなメリットがあります。
弁護士に相談・依頼するメリット
・時効の援用がそもそもできるのか法的な観点から判断してくれる
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時効援用通知書とは?何ができる?
時効援用通知書とは、時効が完成(成立)したのでその時効の利益を得ますという意思表示が記載された通知をいいます。
この時効の利益を得ますというのは「時効の援用」といいます。
時効の援用とは?
時効の援用とは、「時効の利益を受けようとする意思表示」のことです。
時効の援用についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をチェックしてみてください。
時効の援用の概要についてや、知っておいた方が良い注意点を解説しています。
消滅時効とは?
消滅時効とは、「消滅時効とは、主に債権などについて一定期間権利を行使しない状態が続いた場合、権利を消滅させる制度のことをいいます(民法166条1項)」(カケコム「消滅時効とは?借金の消滅時効の期間や手続きの方法について徹底解説!」より)。
民法166条1項
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
例えば、借金に関する消滅時効の期間が経過した場合には、時効の援用を行うことで、借金(貸金債権)が消滅し、返済しないことが可能になります。
時効援用通知書の書き方・作り方のルール
時効援用通知書を作成する場合に、最低限おさえておくべきことについて下記に記載します。
時効援用通知書に書くべき内容
まず、書くべき内容です。
対象となる債権を書く
時効援用の対象となる債権をしっかり書くことが何より大切です。
例えば、貸金債権であれば、債権者名、借りた金額、借入日、返済予定日、最終返済日を記載します。
消費者金融からの借り入れであれば、会員番号で管理している消費者金融も多いので、会員番号を記載しておいたほうがよいでしょう。
また、不法行為に基づく損害賠償請求権であれば、原因となった不法行為があった年月日やだいたいの出来事(交通事故、医療事故等)を記載します。
時効の完成時期を書く
次に、時効がいつ完成したかを記載します。
例えば、「令和3年8月31日をもって5年が経過しました」というように、具体的な日付を記載することもよいでしょう。
時効の援用をする意思を書く
そして、最も重要な時効を援用するという「意思表示」もしっかり記載します。
「消滅時効を援用します」と記載すれば十分かと思います。
時効援用通知書の発送方法
次に、発送方法についてです。
時効援用通知の発送は、内容証明郵便を利用するのが一番です。
内容証明郵便は、発送した日時と、発送した内容を証明してくれるものであるため、重要な意思表示の書類を発送するときには、必ず利用する郵送方法です。
内容証明郵便の場合、用紙はなんでもかまいませんが、記載形式が決められています。
縦書きの場合は、1行20字以内、1枚26行以内
横書きの場合は・1行20字以内、1枚26行以内
・1行13字以内、1枚40行以内
・1行26字以内、1枚20行以内
パソコンで文書を作成するときは、Word等の文書作成ソフトで、行、列、文字数を指定して作成することで対応できます。
また、書店では内容証明用の原稿用紙を売っていますので、そちらを購入して作成するという方法もあります。
最後に、内容証明郵便の場合は、相手方に送る書類に加えて、郵便局に保管するものと、自分で保管するものが必要なので、同じ文書を3通作成するということも忘れないでください。
また、発送時に押印が必要です。認め印でいいので、印鑑を持参することを忘れないでください。
時効援用通知書の例・テンプレート【無料ダウンロード可】
次に、時効援用通知書の例をご紹介します。下記がその例文です。ぜひ参考にしてみてください。
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時効援用通知書の作成や送付にかかる費用
次に、時効援用通知書の作成や送付にかかる費用をご紹介します。
自分で作成する場合
ご自分で時効援用通知書を作成する場合は、作成費用は0円(あるとすれば先ほど述べた内容証明用の原稿用紙代)で、内容証明郵便の発送費用がおよそ1500円前後かかります。
※内容証明の発送費用は、文字数や枚数により変わりますので、おおよその金額です。
弁護士に作成を依頼する場合
弁護士に依頼した場合、弁護士名を出さない場合は1万円から5万円程度、弁護士名を出す場合は5万円から10万円程度かかると思います。
また、債務整理の一環として時効援用通知書の発送を弁護士に依頼する場合は、1件あたり2万円から5万円程度かかると思います。
そもそも時効の援用ができないケースがあることにも注意
時効が完成したと思っても、そもそも時効の援用ができないケースもあります。それは、下記のような場合です。
(1)時効完成後に「返済します」「払います」と言ってしまった場合や、一部でも実際に払ってしまった場合
この場合は、民法が定める「債務の承認」(民法152条)に該当するので、そのときから再び時効が始まります。
ですので、再度時効が完成するまでは、時効の援用はできません。
(2)判決や支払督促が確定している場合(同法147条2項)
この場合も、判決等が確定した後から再び時効が始まりますので、再度時効が完成するまでは援用できません。
(3)強制執行や担保権が実行されている場合(同法148条2項)
この場合も実行後から再び時効が始まりますので、再度時効が完成するまでは援用できません。
ちなみに、上記は、旧民法が時効の中断・停止事由として記載し、現在の民法(新法)が時効の完成猶予又は時効の更新として規程している例に該当する場合です。
そして、新法は2020年4月1日から施行されました。
ですので、新法の施行前(2020年4月1日より前)に、時効の中断事由があった場合は旧法が、新法の施行後に時効の完成猶予又は更新にあたる事由があった場合は新法が適用されます。
なお、これ以外にも、仮差押えや催告等の、6ヶ月間は時効の完成が猶予される制度があります。
時効援用通知書を送付する前に確認・注意すべき点
時効援用通知書を送付する前に、改めて宛先が間違っていないか、内容が間違っていないかを確認してください。
注意すべき点としては、万が一時効が完成していない場合に、この通知が支払いの承認になるような文言は記載しないことです。例えば「完成していなければ支払います」というような記載です。
時効の援用や借金の返済で分からないことがあれば弁護士への相談がおすすめ
時効については、時効がいつから始まるのかという時効の起算点の問題や、時効の完成猶予事由に該当するのかがわからない等の法的な問題もあります。
また、いつが最後の支払いなのか分からない、引っ越しばかりで訴訟が提起されていたかもわからない等、過去にあった事実が不明確な場合もあります。
法的な解釈については弁護士が解説しますし、過去の事実については、相手に問い合わせる等の方法で弁護士が明らかにすることもできます。
分からない場合は弁護士に相談してみてください。
伊奈弁護士からのメッセージ
時効が完成していると思ったら完成していなかった等、実は時効の援用にはうっかり思い違っている場合もあります。
逆に、時効が完成していないと思ったけど、調べてみると完成していたという場合もあります。
借金等の債務整理に関する相談であれば、無料で相談を受け付けている弁護士も多くいます。
「あれ」と思ったら、お気軽に弁護士にご相談ください。