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自己破産では使っていない口座の通帳も必要?WEB口座はどうする?弁護士が解説

自己破産をする場合、使っていない口座の通帳も提出する必要があります。これは、支払い不能な状態であること等、自己破産を行うことができる状態であることを証明するためです。今回は、自己破産をする際に使っていない口座の通帳を提出する際の注意点や、口座が凍結されてしまう可能性について、弁護士が分かりやすく解説します。

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自己破産をする場合は必ず通帳を提出しなければならない?

自己破産の申立では、必ず所有している通帳の提出が必要となります。預金通帳・取引明細書を裁判所へと提出しなくてはなりません。

必要となるのは自己破産の申立から遡って1~2年分の通帳です。ただし状況次第では2年分以上の提出が求められるケースもあります。各裁判所によって運用が異なります。

使っていない口座の通帳も提出しなければならないのか

自己破産では、使っていない口座も含めて自分が名義人の通帳すべてを提出しなくてはなりません。

通帳を隠したり提出しなかったりすると、財産隠しとして扱われてしまいます。

財産隠しが発覚すると「免責不許可事由」にあたり、自己破産できない可能性が高くなってしまうので注意が必要です。忘れている通帳がないかを確認しましょう。

免責不許可事由とは?

免責不許可事由とは、自己破産等を行う際に、例外的に借金の免除が認められない(つまり自己破産ができない)理由のことを言います。

これは下記の民法第二百五十二条一項に定められており、「債権者を害する目的で」財産の隠匿を行ったり、借金の原因がギャンブルであったりする場合等に、免責不許可事由となる可能性があります。

第二百五十二条一項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

出典:民法第二百五十二条一項

なぜ自己破産の際に使っていない口座の通帳も提出する必要があるのか?

ここでは、自己破産の際に使っていない口座の通帳を提出しなければならない理由について、解説します。

支払い不能であることを証明するため

自己破産の際に通帳を提出するのは、支払い不能の状態に陥っていること、すなわち支払いに足る財産が無いことを証明するためです。

裁判所から「支払い不能の状態である」と認められることによって、借金の返済が免除されるのが、自己破産です。本当に支払いができない状態だと証明しなくてはなりません。

通帳は収入や財産を把握する手段の1つとして使われています。

お金の流れを明確にするため

通帳は、お金の流れを明確にするためにも使われます。自己破産をするにあたっては、過去どのようにお金を使ってきたのか、流れを明確にしなくてはなりません。

  • 不審なお金の動きはないか
  • 資金を移動するなど財産隠しをしていないか

浪費目的で1度に多額の現金を引き出していないかなどもチェックの対象となっています。

すべての銀行口座の合算残高が20万円以下か確認するため

銀行口座の合算残高が20万円以下かを確認するためにも、自己破産では通帳の提出が必要です。

自己破産では、合計20万以下の預貯金は、自由財産の拡張が認められた場合に、手元に残すことができます。しかし、20万を越えた残高については、債権者に分配するものとして「資産目録」に記載しなくてはなりません。

そのため、自己破産の手続きではすべての通帳の提出が求められることになります。

尚、預貯金を含めない自由財産の枠では、99万円以下の現金を残すことができます。

自己破産で通帳を提出する場合の注意点

自己破産で通帳を提出する場合、いくつか注意すべき点があります。下記でご紹介しますので、ご一読ください。

記帳は申立1週間以内に行うこと

通帳は自己破産の申立日から数え1週間以内に記帳しなくてはなりません。忘れずにATMや銀行に行き記帳をしてください。

複数通帳を所持しているなら、すべて記帳が必要です。記帳するタイミングについて特に指示がないとしても、忘れないようにしましょう。

給与や賞与など前後に入金の予定がある場合等、口座の合計残高が21万円以上になってしまう可能性がある場合は、先に弁護士に相談しておきましょう。

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提出する通帳の情報は通帳の写し(コピー)でOK

裁判所に提出する通帳は写し(コピー)で構いません。ただし表紙・裏表紙などを含むすべてのページをコピーする必要があります。

法律事務所によっては「原本を法律事務所がコピーする」という対応を取ってくれるケースもありますので、提出時に確認してると良いでしょう。

通帳の数が多く写しを取るのが大変であれば、原本の提出でもOKです。

必ずすべての銀行の通帳を提出すること

自己破産にあたっては、自分が名義人となっている通帳すべてのコピーが必要です。

特に以下のような通帳は提出を忘れてしまう可能性が高いため、気を付けて確認しましょう。

  • 残高のない定期預金通帳
  • 使用していない地方銀行の通帳

地元で作ったきり存在を忘れている通帳などがないか、確認が必要です。手続きにあたり通帳を提出する前には、不足がないか改めてチェックしてください。

また、「長年使っていない口座だから」といって、ご自身の判断で通帳を破棄したり、口座を解約することは避けてください。口座を解約したい場合は、必ず一度弁護士に確認する等してください。

WEB通帳やおまとめ記帳等は取引明細書を提出すること

WEB上で残高照会・入出金照会を行う「WEB通帳」や、入出金の件数や金額を合計記帳する「おまとめ記帳」がある場合は、取引明細書を提出することになります。

この際、銀行によって取引明細書の入手方法が違う可能性がありますので、自己破産を考えているのなら、事前に取引明細書の入手方法を確認しておくと安心でしょう。

保険の払戻金が20万円以上になる場合は原則解約する必要がある

自己破産の手続きでは、保険の解約返戻金は「財産」の扱いとなります。そのため返戻金が20万円を超える場合には、解約が必要です。

契約している保険があるなら、事前に解約返戻金の有無を確認してみましょう。

解約返戻金がない掛け捨てタイプの保険や、返戻金が20万円以下の保険については、契約を継続することが可能です。

通帳の内容についても明確に説明できるようにする

通帳の写しを提出した際に、口座内のお金の動き等について詳しく聞かれることがあります。

下記のこと等を証明できるよう、口座の入出金や保険の払戻金、保有資産の総額について、しっかりと把握し、聞かれた際に説明できるようにしておきましょう。

  • 保有資産が20万円以下であること
  • 多額の入出金等、怪しいと思われるお金の動きを明確に説明できること
  • 保険を解約しているかや、保険の払戻金が20万円以上にならないこと

自己破産後は口座が凍結されてしまうのか

弁護士に依頼をし、自己破産手続きを開始すると、弁護士は債権者に受任通知を送ります。

銀行に債務がある場合は残高と相殺されてしまう上で、口座が凍結されてしまうため、注意が必要です。

凍結された口座は1~3か月程度使えなくなります。

特に気を付けたいのは以下の3つです。

  • 給与振込
  • 公共料金の支払い
  • クレジットカードの支払い

給与振り込みについては、口座が凍結されていると、エラーで入金されないケースも見られます。

自己破産をしたかどうかまでは分からないとしても、給与振り込みでエラーがあれば、会社に事情を聞かれるかもしれません。

各種振込や支払いがある口座に債務があるなら、自己破産手続きの開始前に変更しておきましょう。

自己破産について悩んでいるなら弁護士への相談がおすすめ

多額の借金を抱えて自己破産を考えているのなら、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

自己破産を検討していても、自己破産以外の債務整理(任意整理や個人再生等)が良いケースもあります。その適切な見極めには、専門的な知識が必要です。

借金問題について専門的な知識を持つ弁護士なら、債務状況を確認した上で適切なアドバイスをしてくれます。借金問題は放置すると状況が悪化してしまうおそれもあるため、早めの対策が必要です。

ぜひ弁護士への相談を検討してみてください。

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破産手続は上記がその一例ではありますが、申立ての際に、どのような資料を提出すればよいのか、写しの提出で足りるのか原本の提出が必要か、というルールが割と細かく裁判所ごとに決められています。そのため、弁護士のアドバイスさらには依頼なしで進めるのは困難と思われます。

破産をお考えになった場合にはなるべく速やかに弁護士に相談することをお勧めします。

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