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セクハラはどのような環境で起きやすい?セクハラの事例や対処法を現役弁護士が解説

セクハラをされたら、どのような対処をすればいいのか?その際の注意点は?弁護士に事例をまじえて解説していただきました。企業として対策しておくべきことについても触れていますので、セクハラ被害者の方はもちろん、経営者の方もご参考ください。

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今回ご解説いただく弁護士のご紹介です。

勝田亮 弁護士
 
アネスティ法律事務所 代表弁護士
平成18年10月 仙台弁護士会登録(59期)
 
バランスを大切にした誠実な対応が得意。
金融機関での数年のサラリーマン経験もあり、得意分野は多岐にわたる。
 
詳しいプロフィールはコチラ

セクハラとは

セクハラとは「セクシャルハラスメント」を省略した言葉で、相手の意に反する性的言動のことを指します。

セクハラに対する法律としては、厚生労働省が定める男女雇用機会均等法11条1項があり、下記の通り規定し、事業主にセクハラへの対応を義務付けています。

男女雇用機会均等法11条1項

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

つまり法律では、セクハラは悪いことであるとした上で、セクハラ発生の際には、事業主がきちんと被害者の相談を受けとめ、加害者の配置転換を含めた体制整備などを行って対応する義務がある、と定めているのです。

 

セクハラが起きやすい関係性

セクハラによくある典型例は、上司から部下に対して行われる逆らいづらい力関係を利用したものになります。

部下は、相手の方が会社での権力を持っている(優越的地位といいます)ために、声をあげたとしても自分の方が不利益を被るのではないかという懸念からひたすらに耐えてしまい、誰にも気づかれずにセクハラがエスカレートする、という悪循環が起こることもしばしばです。

セクハラされた場合の対策方法は、セクハラが発生した場合にて後述しておりますので、そちらを参考にしてみてください。

 

 

セクハラの厚生労働省による2分類

厚生労働省は上述した男女雇用機会均等法のなかで、職場でのセクハラを、対価型セクハラ環境型セクハラの2種類に分類しています。

 

対価型セクシュアルハラスメント

厚生労働省の説明によれば、労働者の意思に反して性的な言動が行われ、それを拒否することで労働者が不利益を被ることを対価型セクシュアルハラスメントといいます。

例えば、社内で上司が部下に対してセクハラ行為に及ぼうとして、それに対して部下が抵抗したために、その部下に不当に配置転換などの不利益を与えた場合には、対価型セクハラにあたります。

 

環境型セクシュアルハラスメント

厚生労働省によれば、労働者の意思に反して性的な言動が行われ、職場環境が不快なものとなり、就業する上で見過ごすことができず、本来の能力発揮ができなくなるようなセクハラを環境型セクシュアルハラスメントといいます。

例えば、同僚が「あいつは職場不倫をしている」といった性的な噂を社内で流し、不快に感じて仕事が手につかない状態になってしまった状況などを指します。

詳細については、下記リンクからご覧いただけます。

厚生労働省HP

 

 

セクハラの代表的な事例

代表的なセクハラ事例として、性的発言性的行動に分けることができます。その他、セクハラかどうか微妙なケースもありますので、それぞれの事例をご紹介します。

 

性的発言

「スリーサイズを聞く」「性的な経験を尋ねる」といった明らかに業務に関係のない性的な発言や、「どうせあいつも結婚したら辞めるから」といった職務上、女性や男性を差別する発言があげられます。

最近では直接発言する以外にも、ラインなどのSNSを使って身体のことを聞いたり、性的な関係を迫ったりするような事例も増えています。こうした事例では、ラインの会話履歴などは、セクハラの重要な証拠になりますので、消さずに画像として保存しておくなどしておきましょう。

 

性的行動

性的な行動の事例としては、胸や尻を触る、抱きつくなどの行為があげられます。このような明らかな接触によるセクハラ行為は、被害の程度によってはセクハラだけでなく、刑事事件(刑法176条 強制わいせつ罪)に発展する可能性があります。

このような性的な行動は、職場内だけでなく、職場外の懇親会の席や出張先の会社、宿泊先でされたというご相談をいただくこともあります。

こうした行為をされた場合は、後述のセクハラ被害者がすべき対応でも紹介していますが、まずは社内外の相談窓口に相談しましょう。もちろん弁護士に相談いただいても大丈夫です。

 

セクハラか微妙なケース

「頭をなでる」「特定の性別の社員だけをほめる」などの行為は、セクハラにあたるのか際どいところかもしれません。このようなグレーゾーンの行為は、相手との関係性によって、セクハラととられたり、とられなかったりします。

セクハラと捉えられるようなことをしないために大切なのは、相手の立場に立って考えることです。信頼関係ができていない人から急にボディタッチされたら、不快に感じる人も多いはずです。相手が不快に感じる可能性が少しでもあれば、そのような行為は避けるようにしましょう。

このような微妙なケースに遭遇した場合は、はっきりと拒否することが大切です。拒否してもそういった行為が続く、もしくは職場での関係性的に拒否がむずしい場合は、セクハラ相談窓口や労働基準監督署、弁護士に相談してみてください。

 

セクハラ加害者が問われる法的責任

民事上の責任

セクハラ行為の加害者は、民法709条に基づき、不法行為責任(損害賠償責任)が問われる可能性があります。

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

刑事上の責任

セクハラの被害者が被害届を出した場合、セクハラ加害者が刑事上の責任を問われる場合があります。

刑事事件になると、新聞に名前が出たりして、セクハラ加害者本人が会社にいられなくなることもある他、会社名が公表されることで、「セクハラが発生した会社」として、会社のイメージダウンなどの損失に繋がる恐れもあります。

セクハラが刑事責任に問われるケースとして、具体的には以下のような罪に問われる可能性があります。

①強制わいせつ罪

相手の体に触ったり、急にキスをしたりという行為は、セクハラを通り越して、刑法176条強制わいせつ罪が成立する可能性があります。

刑としては6ヵ月以上10年以下の懲役が考えられます。多くの場合は執行猶予が付きますが、極めて悪質だと判断された場合には初犯でも実刑判決になる場合もあります。

加えて、強制わいせつ罪が成立した場合、セクハラ加害者には前科がつくことになり、そのまま会社にいることが困難なだけでなく、再就職もかなり難しくなってくると思います。

 

②準強制わいせつ罪、準強制性交等罪

被害者が酔っているなど断れない状態に追い込んで、わいせつ行為や性交渉を行った場合は準強制わいせつ罪、準強制性交等罪が成立する可能性があります。

度が過ぎるほどのセクハラの場合、こういった法的責任の追求が可能な場合があります。ですが平然とそういったことが横行する会社にいると、「セクハラは当たり前」「これくらいは自分も耐えなくては」など、なにも落ち度が無いにも関わらず、自分を追い込んでしまう方も少なくありません。

当記事を読んで、ご自身の状況について疑問を持たれた方はぜひ、相談窓口を訪れてください。労基署であれば自分が受けているセクハラについて、どの機関に相談すべきかを提案してくれます。また、あまりにもセクハラがひどく、上述の法的責任を追求できる可能性があると感じた方は、この機会にお近くの弁護士事務所を訪ねていただければ幸いです。

 

 

会社が問われる法的責任

民事上の責任

セクハラ加害者個人の不法行為責任(民法709条)が認定されることを前提とし、会社には民法715条1項の使用者責任が問われる可能性があります。

民法第715条第1項

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

実際、加害者個人がセクハラで訴えられる場合、合わせて会社も使用者責任を問われるケースは非常に多いです。会社の経営陣の方は、セクハラは個人の問題ではなく、会社の問題でもあることをぜひ意識してほしいと思います。

 

 

セクハラが発生した場合

セクハラ被害者がすべき対応

証拠を集める

セクハラやパワハラは証拠がない場合、残念ながらどこへ相談しても取り合ってくれない可能性が高いです。というのも、相手や周りが「やっていない」と反論してきた場合、それ以上証明の手段が無く、会社も証拠なしで処分をすれば不当処分として責任を追求されてしまいかねないからです。

セクハラを告発したいと思ったら、まずは日頃からICレコーダーを持ち歩いて性的発言の録音を集めたり、卑猥なメール文章を保存したり、LINE等のやり取りを写真に撮るなど、証拠を準備してから相談しましょう。

 

社内外の相談窓口へ相談

証拠があることを前提として、社内の信頼できる上司や、内部相談窓口に相談しましょう。社内の内部通報システムを利用するのもひとつの手です。社内では、そもそもセクハラが存在していることが認知されていないことも少なくありませんので、証拠をもとに「こういったことがあった」「対処してほしい」ということをしっかり伝えましょう。

それでも会社が動かない場合は労働局などの行政を通じて指導をしてもらうか、加害者か会社と調停を取り持ってもらうようにしましょう。男女雇用機会均等法のもと、行政の指導にも従わない場合はその企業名が公衆の面前にさらされる、ということになりますので、動いてくれるはずです。

 

損害賠償など、相手にけじめを求める場合

セクハラに対して損害賠償請求を行い、セクハラ加害者個人やセクハラに対応しない会社にけじめを付けてもらいたい場合は、初めに弁護士へ相談しましょう。証拠が十分あるかどうか、そして伝え方などを相談することもできます。

損害賠償をしたい場合、請求先である会社の顧問弁護士が出てくることが多いと思います。そういった時に、法的知識も乏しいひとりの従業員が、日常生活を送りながら毅然と交渉をしていくのは無理があります。そのため、ここまで来たら弁護士に交渉を代理してもらうことが多いです。

また、早めに弁護士に相談しておくことで、損害賠償請求以外の最適な解決法が見つかることもあります。初回の相談は30分無料〜5000円程度とそこまで高くなく、相談してから弁護士に交渉を依頼するか決めることもできますので、まずは弁護士に相談することから始めてください。

Point

損害賠償を求めて行動する場合には、明確に会社に対決姿勢を示した、ととられる可能性が高いです。そのため、退職前提でのやり取りになることは覚悟された方が良いかと思います。ただしセクハラ、という社内の問題にうまく対処できないような会社にいてもご自身にとって利益となるような経験を積めるとは思いませんので、思い切って行動されることをおすすめいたします。

セクハラの相談先についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。

セクハラの相談先とは?準備すべき証拠の種類も併せて弁護士が解説します。

 

会社が行うべき対応

未然防止努力

セクハラに関する社内の内部規定を作りましょう。これがなければ「うちではセクハラについてこういう対策をしています」と主張することや、「規定に違反してセクハラやパワハラをしたから、その社員を処分します」とできないためです。

そこで、まずはルールやガイドラインを作成して、会社としてはどこからがセクハラなのか、そしてセクハラに対して真摯に取り組んでいる会社であることを示しましょう。内部通報制度や窓口を作り、従業員がセクハラについて相談しやすい雰囲気を作ることが先決です。
また、セクハラ防止研修などを実施するのも良いでしょう。

セクハラやパワハラなど、社内の就労環境にまつわる問題が発生した場合、優秀な人から退職していく事が多いです。したがって気づいたときには会社組織が弱体化している、といった最悪のケースも少なくありません。経営層の当たり前の義務ですが、会社のためにも社員の方々が安心して働ける環境を整備するようにしてください。

 

セクハラ相談を受けたら

まずは被害者の話に耳を傾けましょう。そのときの注意事項として、被害者に「なぜきちんと拒否しなかったのか」などと責めたりしてはいけません。

被害者の話を聞いたら、次はセクハラが本当にあったのか、事実関係の調査をします。その際には、加害者とされる人に直接話を聞くのではなく、周りの方々から間接的に話を聞くなどして調査をしましょう。話を聞く際には、周りに気付かれないような場所・方法で呼び出し、相談者が誰か特定されないよう、プライバシーを保護することが大切です。

事実関係を調査した結果、セクハラの事実が判明した場合は、懲戒処分など、会社として厳しい処分をくだし、再発防止に向けた対策を考えましょう。

 

 

セクハラについて知りたい方は合わせてこちらもお読みください

 

 

先生からひとこと

セクハラの被害に遭っている方は、まずひとりで悩まないようにしましょう。信頼できる、口の堅い友人や同僚、上司に早めに相談することが大切です。それでもなかなか問題解決に至らない場合には、専門機関(労働基準監督署など)や弁護士に相談するようにしましょう。

また、経営者の方は、セクハラの対策を怠ると使用者責任を課される可能性があります。さらに、社内にこうした問題を抱えることで、職場の雰囲気が悪くなり、優秀な人材もいなくなってしまいます。

セクハラ問題は、早期に適切な対応をとることが、会社存続においては重要ですので、しっかり対策していきましょう。

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