別居すると子供に会えない?別居する際に子供と会えるようにする方法を弁護士が解説
別居中の子供に会えない状態は、親としてとても辛い状況でしょう。別居している状態で、子供に合法的に会う方法や、調停が成立したのに子供に会えない時の対処法についてご紹介します。
別居すると子供に会えなくなる?
離婚を前提として、もしくは「一時期距離を置く」という目的のために別居しているという方は、配偶者と会えない苦しみよりも子どもと会えない苦しみの方がはるかに強い、という人も少なくないのではないでしょうか?
別居中は、居住地が子どもと異なるため、戸籍上は親子であるにもかかわらず、自由に子どもと会えないという問題が起こります。
そんな状況の中で子どもと会う場合、方法によっては犯罪になってしまう可能性があるのです。
では別居中に子供に会う正しい方法とは何なのか?詳しく解説していきます!
別居中こんな風に子供と会うのは犯罪になるかも?
実の親であっても、別居中に以下のような方法で子供と会うことは、犯罪になる可能性があります。
子供が暮らす家(別居宅)に勝手に入る
妻(夫)が子供と一緒に出て行ってしまって長いこと会えていない、そんな状況で別居中の子供のいる家に入った場合、刑法130条前段の住居侵入罪が成立する可能性があります。
別居中であるとしても夫婦は夫婦、そんなことで住居侵入罪になるの?と思うかもしれませんが、あえて住む場所を別々にしているわけですから、たとえ夫婦だとしても問題があります。
もしも住居侵入罪が成立すれば、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金を課される場合があります。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
一方的に子供を連れて行く
もしもあなたが別居中、子供を連れ去ってしまった場合、刑法224条の未成年者拐取罪に当たる可能性があります。
実は、この犯罪は子供の実の親にも成立する場合があります。
自分の子供だから自由に連れて行っていいというわけではありません。
もっとも、別居先で子供が虐待を受けていたなどの特別な事情があれば、違法性がないと判断される場合もあります。
刑法第224条未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
別居中に子供に会う正しい方法は”面会交流”
では、合法的に別居中の子供と会うためにはどうすればいいのでしょうか?
子供と親には”面会交流権”がある
離婚の前・後に関係なく、子どもと別れて暮らす非監護親には、子供と会う面会交流権があります。
しかし、基本的には子供が両親に会うための権利であり、子供の利益を最優先に考える必要があるのです。
子供に虐待をしていたりDV(家庭内暴力)があった、子供に強いストレスを与えるなど、子供の成長に悪影響を及ぼす恐れがある時は面会交流権は認められない可能性が高いので、注意が必要です。
民法第766条1項
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
別居中に子供に会う方法(1) 父母間で話し合う
別居中の子供との面会交流を取り決めるにはまず夫婦で協議(話し合い)することから始まります。
- 面会場所がどこか
- どうやって移動するか
- 面会時間はどれくらいか
- 頻度はどれくらいか
- 当日どのように連絡を取るか
などを綿密に打ち合わせて、面会交流を取り決めましょう。ここまで綿密に決める理由は、相手を安心させ、スムーズに子供と会えるようにするためです。
相手との関係性が冷え切っている中で「子供が連れ去られるんじゃないか」などの不安を相手に与えてしまうと、今後子供と会えなくなる可能性すら出てきます。
しっかりと打ち合わせを行うことで、相手と子供に安心感を与えるようにしましょう。
別居中の問題点として、夫婦間の話し合いがまとまらなかったり、面会交流を拒否される可能性が高いことが挙げられます。
面会交流権を適切に行使するには、信頼できる第三者を介して行う、面会の方法を書面にまとめるなどの工夫が必要です。
面会交流を取り決める際は離婚前であっても離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
特に面会交流は今後の親子関係を左右する大切なことなので、冷静な判断が必要です。
取り決めをまとめる際に書面に残しておく場合にも、法的にきちんとしたものを作成しなければ後でトラブルになってしまいます。
また、公正証書の作成も検討しましょう。
どうしても面会交流についての合意が難しい場合には裁判所による以下のような手続きを利用することになります。
別居中に子供に会う方法(2) 家庭裁判所で調停を申し立てる
調停とは、当事者の合意を持って、紛争解決を図る手段のことです。
具体的な方法としては、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てるという手続きが必要です。
裁判所を通しての話し合いとはいえ、通常一回の調停で話がまとまることは想定できません。
一人で調停に臨むのは労力がかかります。
何を主張していくかを明確にするためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。
別居中に子供に会う方法(3) 家庭裁判所の審判
調停を行っても夫婦間で面会交流についての折り合いがつかない場合、裁判所が主張や状況に基づいて面会交流についての判断を下します(民法766条2項)。
これを審判といいます。
様々な要素を考慮して決定されるので必ずしも面会交流を認める審判が出ないこともあります。
注意:面会交流が難しくなってしまう要因
基本的に面会交流は拒否できない正当な権利なのですが、以下の要因があると面会が難しくなる可能性があります。
- 子供との同居者に新しい家庭が生まれている
- 過去に暴力が原因で離婚している(子供に暴力を振るう恐れがある)
- 子供を連れ去る恐れがある
- 子供に精神的な負担を与えてしまう
- 同居者と子供の関係性を悪化させてしまうような言動を取る
このようなケースを主張された場合、面会が困難になることを覚えておきましょう。
調停が成立したのに子供に会えないときは?
正規の手続きを踏んで調停が成立したにもかかわらず、まだ子供と会えないなら、以下のような行動を起こしましょう。
調停成立後に子供に会えない時の対処法(1) もう一度調停をする
調停が成立したのに、子供に会えないという場合、その「会えない理由」が重要です。
子供に会えない理由が「生活環境が変わった」など、相手方の事情による者であれば、面会の時間・場所・方法などを変えて提示し、改めて家庭裁判所で調停を行う必要があるでしょう。
調停成立後に子供に会えない時の対処法(2) 履行勧告をする
調停が成立しても子供に会えなければ、裁判所に面会を実現するように直接連絡(履行勧告)してもらいましょう。
履行勧告を申し込むには調停を行った裁判所へ行き、「履行勧告をしたい」と受付で伝えることで可能です。特に手続き書類などを用意する必要はありません。
しかし、裁判所の勧告に強制力はありません。
そのため、裁判所からの勧告があっても、相手がそれを無視してしまえば、それ以上裁判所が動くことはできません。
こうなると、以下の手続きに進む必要があります。
調停成立後に子供に会えない時の対処法(3) 強制執行手続き(間接強制)を利用する
面会交流において、たとえ面会交流の調停が成立した後であっても、それを履行しないからといって、誰かに子供を強制的に連れてきてもらうといったようなことはできません。
ですから相手が調停での決定に背いて子供を会わせない場合は罰金として金銭を払わせる、というのが面会交流に置ける強制執行(間接強制)になります。
罰金を支払わなければ、相手の給料や預貯金を差し押えることも可能です。
ここまでくれば金銭的なリスクや危機感から、相手方も面会に応じる可能性が高くなります。
別居中でも子供に会う権利をきちんと使えるためにすべきこと
別居中に子供に会う権利は誰しもが持っていて、基本的には拒否できません。
ただしこちらに落ち度があるとせっかくの権利を使えなくなる可能性があるので、きちんとした対応を行うようにしてください。
こちらでは、子供に会う権利をきちんと使えるためにすべきことについて紹介します。
別居した相手の気持ちを理解する
なぜいま別居状態になっているのか、相手の気持ちをしっかりと理解することは大切です。
夫婦にとって別居理由はさまざまですが、子供と同居している相手側に不満が溜まっていることが考えられます。
まずは相手の気持ちを理解し、こちらにある非を認め面会がスムーズにいくような手だてを考えましょう。
親権譲渡との交換条件にする
離婚時に親権を相手に渡すことを条件にし、子供のと面会時間を確保するという方法が考えられます。
子供を連れて別居している相手としては、離婚成立を望んでいる可能性は少なくありません。
子供を連れて行くということは、相手も離婚時の親権を望んでいるはずなので、双方にメリットがあり話しが進みやすいです。
親権で争った結果、子供とまったく会えなくなる状況を作ってしまうよりは、あらかじめ交換条件を用意しておきましょう。
養育費や生活費の援助をする
養育費や生活費をしっかりと払うことで、別居相手の心象を良くしておきましょう。子供への面会拒絶は別居相手の一存で決まってしまうことが多いです。
法的観点から見ると養育費と面会の関連性はありませんが、誠実な対応を取ることで相手の気持ちは変わります。
相手に「子供に会わせるくらいはしてあげよう」と思わせるくらいの対応を意識してみてください。
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まとめ
ここまでご紹介してきたように、たとえ別居しているとは言っても、あなたにも子供に会う権利はあります。
問題は、別居中の配偶者が、子供との面会に否定的な場合なのです。
それでも、ご説明してきたように、裁判所を通すことによって時間はかかっても面会をすることはできるでしょう。
ただ、このような段階に行く前に、別居する前にあらかじめ弁護士に相談し、子供と会う頻度や時間について取り決めをし、書面に残しておくことによって、時間を無駄にせずに済むでしょう。
別居していても、子供があなたの子供でもある事実には変わりありません。
別居をしてもスムーズに子供に会うためには、離婚問題に強い弁護士に早い段階からの相談をおすすめします。