過失相殺とは?被害者に落ち度があった場合の計算方法と注意点
交通事故の示談においては、よく「過失相殺(かしつそうさい)」という言葉を耳にしますね。でも、この「過失相殺」って一体何でしょうか?どのように判断されているのでしょうか?損害賠償額に影響する交通事故における過失相殺についてご紹介します!
過失相殺とは
加害者は被害者に対して損害賠償を支払うべきとは言え、全ての事故が絶対的に加害者が悪いわけではありません。それどころか「被害者の行動によって加害者になってしまった」ケースさえ考えられます。
過失相殺の計算方法
過失相殺は、損害額から被害者の責任割合を引く形で計算します。よく交通事故で10:0や6:4と言われるのがそれです。
過失相殺率の認定基準
保険実務、裁判実務で一番多く使われているのが『民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準全訂第5版』東京地裁民事交通訴訟研究会編 別冊判例タイムスNo.38 です。
交通事故の典型的なパターンごとの過失割合と過失相殺について主張立証すべき事実が記載されています。
過失割合の判定基準
過失割合の判定は、歩行者と四輪車・単車、四輪車同士、単車と四輪車、自転車と四輪車・単車のように事故の当事者と、駐車場、高速道路などの事故の発生場所によって過失の基本割合が基準化されています。
さらに、幹線道路、夜間の見通し、速度違反などの法令違反の有無、老人や子供、著しい過失、重大な過失などの修正要素の有無を検討し、基本過失を修正し過失割合を決定します。
過失割合の算定例
では、過失割合を算定してみましょう。
歩行者は赤信号で横断中、黄色信号で進行してきた自動車と衝突した事故。
状況は夜間で住宅地を通る幹線道路。歩行者は高齢者。
『民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準全訂第5版』(p92)によると、
事故当事者:歩行者対四輪車 場所:横断歩道 基本割合:歩行者50対四輪車50
修正要素は以下の2つ
・歩行者の過失に加算される修正要素:夜間+5、幹線道路+5
・歩行者の過失から減算される修正要素:住宅地‐10、高齢者‐10
以上より修正後の過失割合 歩行者40対四輪車60 となります。
過失相殺の知っておくべきポイント
過失相殺が論点となる場合に注意すべき点を紹介します。
保険会社の提示を鵜呑みにしない
被害者に落ち度があった場合でも、どれだけ落ち度があっていくらの割合が妥当であるのか?それは裁判をしないとわかりません。少なくとも保険会社の提示ではなく判例を確認することが望ましいです。
不当な金額で合意してしまうと覆すことが困難なため、大きな事故の時ほど弁護士に交渉をお願いすることが良いでしょう。
被害者に落ち度がなくても過失相殺される?
被害者に落ち度がなくても賠償額が減額される場合があります。それは加害者の落ち度が少ない場合です。例えば加害者に減額すべき事情が10あれば、過失の割合は加害者:被害者=90:0となります。
まとめ
過失相殺は加害者を守るために必要な制度ですが、被害者の落ち度という点に漬け込んで不当に賠償金を安く提示する場合が考えられます。相手の言うことを鵜呑みにせずおかしいと思ったら弁護士に相談しましょう。