パワハラにあたる言葉一覧-言動以外の注意点も解説
時代も違えば価値観も違う。時には「え、こんなことで?」という言動をパワハラ認定される場合もあります。何が、どうしてパワハラなのかを知ることで無用なトラブルを防ぎましょう。
・パワハラは、立場を利用した嫌がらせ
・基本的に、言わなくてよい言葉はパワハラと考えよう
・過剰なパワハラ告発には毅然とした対応を
パワハラとは?
社会人であれば一度は耳にしたことがあるパワハラという言葉。同じ職場で働く人に対し、自分の職場内での地位が優位であることを利用し、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為を指します。
なぜ、人はパワハラをしてしまうのか?
職場の人間に苦痛を与え、職場環境を悪化させてしまうパワハラは、百害あって一利なし。ですが、なぜ、人はパワハラをしてしまうのでしょうか?その理由に以下のことがあげられます。
- 職場内でのコミュニケーション不足
- 怒りや嫉妬などの感情
- 仕事のやり方や価値観の押し付け
- 職場における余裕のなさ
- ストレス
コンプライアンスの厳しさは時代や文化によって違う
自分の中での当たり前は、世代が変われば当たり前ではない可能性があります。
例えば産労総合研究所によると「職場の飲み会は好きですか?」の質問を20代~60代の男女300人にアンケートした結果、「好き」6.0%、「どちらかというと好き」25.1%、「どちらかというと嫌い」31.6%、「嫌い」37.2%となったようです。
特に、20代は男女問わず、「どちらかというと嫌い」、「嫌い」が過半数以上を占めています。
このように、価値観や環境のギャップがパワハラを引き起こす場合があります。社員の働きやすい環境を守るためには会社側でハラスメントについての理解を更新していくことが求められます。
参考サイト:独自調査:飲みニケーションは好きですか?/産労総合研究所
パワハラにあたる言葉一覧
社会的信用を失う恐れのあるパワハラ。無意識に使っている言葉は相手の地位や名誉を傷つけているかもしれません。
威圧的な態度を取る、声を荒げる、ものにあたる、周りの人たちに聞こえるように大声で相手をさげすむ行為は、パワハラに該当します。相手を傷つけ、精神的に追い込む言葉や態度は、名誉毀損罪や侮辱罪になり、刑事告訴の対象にもなり得るでしょう。
では、どのような言葉がパワハラにあたるのでしょうか。以下では、
- 攻撃的な侮辱
- 相手の人格・能力を否定する言動
- 指導に必要ない言動
- 脅迫
4つのグループ別に、パワハラに該当する可能性のある具体的な言葉を一覧にしています。確認してみましょう。
攻撃的な侮辱
- バカ、ボケ、クズ、ノロマ、カス、給料泥棒
- 死ね、殺すぞ、殴るぞ
- 何回言ったらわかるの?
- 普通、聞かなくてもわかるだろ
- 言われたことだけやれ、余計なことするな
- こっち見るな
- ふざけるな
相手の人格・能力を否定する言動
- そんな性格してるから仕事できないんだよ、他社でも通用しないよお前
- たいした仕事してないんだから、ボーナス・給料カットな
- 〇〇さんは仕事ができて頼りになる、それに比べてお前は~
- おまえを採用して失敗だったわ、早く仕事辞めろよ
- こんな成績でよく会社来れるな、また成績トップか……どんな手を使ったんだか
- お前仕事できないんだから死ぬ気でやれ
- みんなやってるぞ、おまえ以外できてるぞ
- 高卒・中卒はだめだな
- 母子・父子家庭育ちは礼儀がなっていない
- 何か発達もってるの、お前病気か?
- 不細工、ハゲ、デブ、チビ、ヒョロガリ
- ババア、ジジイ、ガキ
- 女はすぐに騒ぐ(泣く)
- ゆとり・ゆとり世代は使えない
脅迫
- 失敗したらお前が全責任を取れ
- おまえの代わりはいくらでもいるぞ
- 契約が取れなかったら退職しろ
- 逆らうと昇格させないからな
- プロジェクトから外すぞ、いつでもおまえを飛ばすことができる
- おまえのせいで会社は損失だ
上記のような言動が横行するならば職場について対策が必要です。
パワハラに当たる言葉を言ったら、即違法なのか?
パワハラに当たる言葉としてここで紹介された言動をすることは望ましくありませんが、このような言葉を言ったから即座に違法となるか?と言われればそうと限りません。同じ言動でもその文脈や背景、関係性によっては意味が変わるでしょう。また、言動をどの程度行なっていたか、例えば5分ほど叱責したのか、2時間正座させて攻め立てたのかでは違法性も異なるはずです。
したがって、パワハラに当たる言葉を言ったから必ず違法ではない一方、パワハラに当たらなそうな言葉でもパワハラの要件に該当する形で行えば違法となる危険性があります。
パワハラの定義は以下にあたる言動です。
・優越的な関係を背景としている
・業務上必要かつ相当な範囲を超えている
・労働者の就業環境が害されている
パワハラにあたる言動を発見したら早急な対処を
社会問題として認識されるようになったパワハラは、気を付けていても無意識のうちに、自分自身または職場内で行われているかもしれません。万が一、職場内でパワハラに当たる言動をしている人間を発見したら、早急に対処しなければなりません。
パワハラの対処には以下の2つがあげられます。
- 具体的な言動レベルの研修が必要
- 弁護士の助言や判例解説が有用な理由
具体的な言動レベルでの研修が必要
パワハラの対処は会社側の一方的なアナウンスでは、対処しきれない可能性があります。社外で開催される労働者参加型の研修やセミナーを受けさせる必要があるでしょう。
日常的に使用している言葉がパワハラに該当するか否かを、労働者に直接伝えて自覚させる必要があります。
弁護士の助言や判例解説が有用な理由
パワハラに該当するか否かが判断できない場合は、弁護士に相談するのが最も有用でしょう。理由としては、法律のプロである弁護士が、問題になっているその行為がパワハラに該当するかどうかについて、過去の判例も踏まえながら解説してくれるからです。
パワハラになった場合、会社はどんな責任を負うのか?
パワハラは職場内で行われるため、加害者はもちろん会社も責任を負う立場になります。会社には労働者を雇用する際に義務として、安全・快適な環境の確保に努める「職場環境配慮義務」があります。
しかし、パワハラが行われるような職場は労働者にとって安全・快適な環境とはいえません。つまり、会社として、労働者に対し、職場環境配慮義務を果たしていないと考えられるため、債務不履行責任が問われる可能性があります。
会社が労働者のパワハラを見逃していた、気が付かなかった場合、パワハラを行った労働者と連帯責任で損害賠償責任を負わなければならない場合も出てくるでしょう。
さらに、労働者が職場内で行ったパワハラが、会社の意思に基づいており、会社そのものの行為だと判断された場合、被害者側に損害賠償責任を負う可能性があります。
まとめ
一時代前に許されていた悪口も本来は慎むべきもので、パワハラに敏感な現代なら尚更です。「こんなことくらい気にしなくてもいいのに」という気持ちが加害者にあっても、パワハラにあたる言葉は十中八九余計な一言である事実は否定できません。
パワハラはやめよう、と抽象的に指導するだけでなく弁護士に助言を受けながら詳細なパワハラ対策をすることがイメージダウンや法的紛争のトラブル回避に重要です。
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